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第19-i話 最後の晩餐

観測者は観続ける。


繰り返す終焉と開闢を。


観測者は許されない。


その輪廻を覆すことを。


この記憶は、運命の歯車が廻りだす前の記憶。


(幻想郷)(現代)が交わらない可能性。


まだ、何も動き出す前の世界。


当たり前に起こる終焉を、当たり前に迎え入れるはなし――

弥生亭・平日・朝



テレビ「……では次のニュースです。昨日未明、○○県御神楽市の□□通りで、遺体が発見されました。」


テレビ「遺体には全身に打撲痕があり、またほぼ全ての骨が粉砕骨折しているようです。」


テレビ「これで同様の遺体が御神楽市内で12体発見されたことになり、警察は『完全なる連続殺人』として更なる捜査を続けることを表明しています。」


テレビ「また、この一連の事件に関する情報は少なく、暴走体またはその他の人外による被害とする可能性もあり、」


テレビ「世間には『シャドウワーカー』の出動を示唆する声もあります。」


テレビ「警察は御神楽市内における不審者の情報の提供や、注意の喚起を行っており……」



彩愛「なんか物騒だね。」


慎「そうだな。」


彩愛「噂だと、現場を見た人は必ず殺されてるんだって。」


慎「そりゃ恐ろしい話だ。」


彩愛「あ、そうそう。慎くんあてにお手紙来てたよ。」


慎「アメリカから……父さん達か。」


彩愛「確か、世界に日本の剣を広めようとしてるんだよね。」


慎「だからって息子1人残して行くのもどうかと思うけどな。」


彩愛「おばさんも小夜ちゃんも、うまくやってるといいね。」


慎「そうだな。」











数分後・弥生亭・玄関先



prrrrrr



慎のスマホに電話がかかる。



慎「はいもしもし。」


スマホ「あの、寺島由紀恵ですけど……!」


慎「どうしました?」


由紀恵「乾介が、襲われて、助けてください!」



慎「今、乾介はどこに?」


由紀恵「あの、○条○丁目の……」


慎「分かりました、すぐ行きます。」



通話を終了する。



彩愛「何かあったの?」


慎「まぁな。俺はたった今急用ができたから、お前は先に学校へ向かっててくれ。」


彩愛「分かった。先生には何て言えばいい?」


慎「そうだな……『野暮用』とでも言っておけ。」


彩愛「分かった。それじゃ、先行ってるね。」


慎「おう。さて……」


慎「現地までは距離があるな。バイクで行くか。」


慎「来い、『ムラマサ』!!!」



慎の手の平に幾何学模様が現れ、そこに慎の愛用の木刀『ムラマサ』が出現する。


そして玄関先に止めてあるバイクにキーを差し込み、ひねると、そのままグリップを回してエンジンを動かし、美由紀から聞いた場所へ急行する。











高天原・市街地



到着すると、確かに人外ではあるが暴走体ではなさそうな存在(グリム)が寺島とティラノ君を襲っていた。

見た感じは、お伽噺の狼男と似通っており、二足歩行している狼のようだが、体型はアメフト選手によく似ている。

寺島は壁にもたれかかって頭から血を流しており、ティラノ君は暴走体の時のように巨大化しているが、両足と胴体が砕けている。



慎「……まだ生きていてなによりだ。」


乾介「如月……先輩!!!」


ティラノ君「旦那!!!」


慎「よう。」


グリム「……何だ貴様は。」



寺島ににじり寄っていたグリムが慎の方向を向く。



乾介「先輩、コイツ無茶苦茶強いです!」


ティラノ君「ケンスケだけでも連れて逃げてくだせぇ!!!」


グリム「お前の知り合いか?だったら詫びねばな。いやなに、人探しをしていて、たまたまそこにいた小僧に話を聞いたら、知ってはいるようだが話してはくれなくてな。」


グリム「これは俺に対する挑戦だと思い、相手をしてやっていたのだが……」


グリム「当の本人は戦わず、よく分からん魔獣でもないゴミクズをぶつけてきたものでな。」


グリム「少々腹が立ってしまってな。気付いたらこうなっていた。」


慎「……お前は何者だ?」


グリム「まだ名乗っていなかったか。俺はグリム、前いた場所では『狂犬シーザーク』とか呼ばれていたな。」


慎「人探しと言ったな。誰を探してる?」


グリム「カガクブとか言うところにいるココノエという女だ。それと、その部下のケンジという男と、アカネという女についてだ。」


慎「残念だが、心当たりがないな。他所よそを当たってくれ。」


グリム「そうか。それは残念だ。ああ、それともう一つ。」


グリム「貴様からは強者の匂いがする。いや、血の匂いと言ったところか。」


慎「……何の話だ?」


グリム「誤魔化すことはあるまい。貴様のその俺に対する警戒、それはもはや『疑心』ではなく、完全に『敵意と殺意』を持っている!」


グリム「初見の相手にここまでの殺意を抱けるものなど人間にはそうはいない。いるとすれば、相当な修羅場をくぐってきた者のみだ!」


グリム「このようにあからさまに強いヤツと相対した時はどうする!答えは一つしか無かろう!」


グリム「目の前に極上の『餌』があるなら!!『喰らう』他には無い!!」


グリム「さぁ!!!殺し合おうではないか!!!」



グリムが興奮しながら叫ぶと、慎の体が重くなるような感覚を感じる。

グリムから発せられる、ほぼ無限と言ってもいい魔力に、体が潰され始めているのだ。



乾介「先輩、逃げて!!!」


慎「成程、お前は敵のようだな……」


慎「ならば……滅するのみ!!!」



しかし、殺気と本能を全開にするグリムに対し、慎も木刀ムラマサを水平に構えることで応える。



グリム「そうこなくてはな!!!」


慎「オオオオオオオオオッッッ!!!」


グリム「ウオアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」






そして。

木刀と拳は幾度と交差し。

封神かみを持たない人間ひとと、異世界から来た狂犬けものは、互いに互いを滅し合う。






グリム「ホーネット!!!」


慎「ッ!!!」



体勢を崩した慎の足元に、ありえない速さでグリムが飛び込んで来る。

そして。



グリム「飛べ!!!」


慎「グアッ!!!」



そのまま空中へ『殴り飛ばされ』た。



グリム「そして……」



飛ばされている慎に追撃をかけようとグリムが跳躍する。

そして空中で拳を振りかぶり。



グリム「沈め!!!」


慎「やべっ!!!」



残酷なようで、運命は廻る。



慎「ごうはっ!?!?」



空中から叩き落とされた慎は、そのまま真下のアスファルトにクレーターをつくり。



グリム「今の感じ……おそらく体の中はもう砕けたな。動けまい。せめて、戦士として誇り高く葬ってやろう。」


グリム「感謝するぞ。俺がここまで昂ったのは久方ぶりだ。」


乾介「そん、な……」


ティラノ君「旦那……?旦那!!!返事してくだせぇ!!!」


慎「……。」


グリム「散れ、人の子よ……む?」



グリムが慎に歩み寄ると、それに呼応するかのように。


慎から、蒼い蒸気が沸き上がる。



慎「……ざけんな、俺ぁ、まだ死んでねぇ……。」



そして、よろめきながらも、しっかりと殺意を持った眼でグリムを睨みながら、立ち上がる。

右目を、金色に染め上げて。



グリム「……往生際の悪いやつだ。その体で、どう俺に勝とうというのだ。」


慎「……たとえこの足が千切れても、この腕でお前の頭をもぎ取れる。」


慎「たとえ四肢がはじけても、この顎でお前を噛み千切れる。」


慎「たとえ顎が砕けても、お前を睨み続けられる。」


慎「たとえこの目が潰れても、俺のこころが、お前に殺意を向け続ける。」


慎「そう簡単に、俺は、負けない!!!」


慎「オオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」



慎が雄たけびを上げると、蒼いオーラはやがて龍を形成する。



慎「推して参る!!!」



そして一歩踏み出した慎は、物理法則を無視した加速を行い、一瞬でグリムの眼前に迫る。

それを驚異的な反射能力をもったグリムが腕で弾くと、そこから無理矢理体を捻って木刀を振るう。



慎「スェア!!!」


グリム「ちぃっ!!!」



蒼いオーラを纏った木刀を、片腕で防ぐ。



グリム「フン!!!」



そして木刀を腕で弾いたグリムは。



グリム「オラァァツ!!!」


慎「ッァァアアアアアアアアァッッ!!!」



慎の左腕を掴み、豪快に振り回す。

その左腕を残し、遠心力により体は腕を離れ転がっていく。



慎「ガァッ……ハァッ!!!」


乾介「先輩!!!もうやめてください!!!」


ティラノ君「それ以上戦ったら……」


慎(????)「黙れぇッ!!!」


ティラノ君「旦那……。」



そして立ち上がった慎は、その両目を金色に変えていた。


狂気と絶望、そして怒気に満ちた金色に。



慎(????)「言ったろうがよ……俺ぁ簡単には負けねぇってよ……。」


慎(????)「『負けを認める』って事ぁよ……『自分を殺す』のと同義なんだよ……」


慎(????)「だからよォ……」



そして、慎の口元が歪む。



慎(????)「目の前にいるコイツはよォ……ぶった斬ら(ぶちのめさ)なきゃよォ……」



そして今度は、意思のもとに宿る清らかな蒼ではなく。

この世の負の感情が具現化したような、真っ赤なオーラが噴き出す。

心の中に潜む、己の知らない己。心の影。シャドウが、『表』に現れる。



グリム「蒼くなったり赤くなったり……忙しいやつだな。」


慎(シャドウ)「我は影、真なる我……」


慎(シャドウ)「我は心の海に潜みし者……」


慎(シャドウ)「降り臨め、生きとし生けるものを殺し尽くす者!!!」



慎の目の前に、一枚の真っ赤なタロットカード……『運命』を示すカードが現れ。



慎(シャドウ)「我が心の鎧(ペルソナ)として顕現せよ!!!『ヒノカグツチ』!!!」



カッ!!!



とグリムを睨み。

そしてカードが砕けると、赤い光と共に、慎の頭上に、鋭利な爪を携えた紅蓮の巨人、ペルソナ『ヒノカグツチ』が現れる。



ヒノカグツチ「……。」


グリム「ほう……先ほどの玩具とは違って、喰い応えがありそうじゃないか。」


慎(シャドウ)「行くぞ狂犬(ワン公)ォ、『木っ端微塵切り』!!!」



慎(シャドウ)の命令に従い、ヒノカグツチの巨大な爪がグリムに襲い掛かる。



ヒノカグツチ「滅ベェッ!!!」



グリムはそれを拳で迎え撃つも、押し切られ吹っ飛ぶ。



グリム「グァッ!!!やるではないかッ!!!」


慎(シャドウ)「まだまだ行くぞォ!!!『刹那五月雨撃ち』!!!」



吹き飛んだところに、ヒノカグツチと慎(シャドウ)の高速の連続斬りが迫り、その体を抉っていく。



グリム「グゥウウウウ……」


慎(シャドウ)「やれ!!!」


ヒノカグツチ「……!!!」



体につけられた無数の傷を再生させているグリムを、ヒノカグツチが鷲掴み、慎(シャドウ)はムラマサを腰低く構え。



慎(シャドウ)「無影無響……疾風!!!迅雷!!!」



拘束していたヒノカグツチごと、グリムを一刀両断する。



慎(シャドウ)「グハァッ!!!ハァッ……」


グリム「グアアアアァッ!!!グウウウウウウウッ……」



ペルソナとペルソナ使いは間隔が繋がっているため、慎にも一刀両断された痛みが走る。

グリムは両断されたものの、すぐさま再生を始める。



グリム「やるな、異界の剣士よ……。」


慎(シャドウ)「オ前ハコロス、今コロス!!!」



もはや慎の瞳が黄金になるだけじゃなく、白目も真っ黒に染まっている。

その眼が放つのは、狂気と殺意。その眼がているものは、敵。



グリム「いいだろう。ならば、こちらも最大の暴力わざで相手してやろう。」


慎(シャドウ)「ハアアアアァア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝!!!」



グリムが拳を振り上げ、魔力を高めると同時に、慎も村正を上段に構え、蒼い龍のオーラを限界まで引き出す。



グリム「パトリオット・アポカリプスゥ!!!」


慎(シャドウ)「無影無響……劫魔滅殺ゴウマメッサツゥ……」



1人と一体の放つエネルギーにより、周囲のアスファルトは剥げ、空気は戦慄する。



グリム「ウオアアアアアアッッ!!!」


慎(シャドウ)「新月!!!」




そして木刀と拳がぶつかり合い。




辺りは黒い光と白い闇に染まり。




そしてそこに残ったのは、一つの影。




慎「……。」


乾介「先輩……。」


ティラノ君「旦那……よかった……。」



その影も、やがてその体を支えるものがなくなり、力なく倒れる。



ティラノ君「旦那?旦那ァ!!!」


乾介「誰か、救急車!!!母さん!!!」










数ヶ月後




高天原学園付属御神楽総合病院・慎の病室



平賀「うん。今日もいつも通り。」


平賀「いつも通り……意識は回復せず、と。」


彩愛「慎くん……。」


拓海「弥生さん、今日は挨拶に来たんだろう?」


彩愛「うん。」


彩愛「あのね。慎くん。」


彩愛「今日はね。決戦の日なんだ。」


勇太「数週間前に突然現れた、正体不明の怪物。」


勇太「今日はそいつらが大量に押し寄せてくるらしい。」


拓海「でも、心配はいらないさ。斉藤君も弥生さんも、いまでは立派な戦士だからね。」


拓海「目が覚めた時には、君の分の敵はいないかもしれないね。」


桃華「九重先生に言って、科学部も全面的にバックアップしてもらう事になったわ。」


桃華「だから、負けることは無い。心配はいらないわ。」


乾介「僕とティラノ君も、全力で戦います。」


ティラノ君「旦那は気にせず、どっしり構えててくだせぇ。」


彩愛「十二宗家もみんな手伝ってくれる。だから、こっちは私達に任せて。」


彩愛「それじゃ……いってくるね。」










その身に封神かみを宿しし者たちは、襲い来る終焉に抗う。


されど芯を失った戦士は、それを退けるに至らず。


やがて終わる世界に飲まれ、全ては始まりへ回帰し。


世界は、廻り続ける。











何週目だろうか。


文明を持った生命が、地上に現れ始めた頃。


世界の全てを観測続ける、観測者は捉える。


これまでに起こり得る、全ての終焉と開闢のシナリオに存在しないイレギュラーを。



ゲイザー「時空が……揺らいだ?」


ゲイザー「まさか『初号機アイツ』が?いや、でも……」


ゲイザー「……もしかしたら。これは……」




不知火「私はこれより――」


不知火「――『不知火』だ。」

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