第39話 それは避難か陰謀か
むかしむかしあるところに、ひとりのおとこのひとがいました。
そのひとはまっくろなほのおとともにあらわれ、たくさんのきつねたちにたすけられました。
おとこのひとはきつねたちをたすけたあと、ながいながいたびにでました。
そしてたびのとちゅうでたどりついたしまぐにで、ようかいのおんなのこと、みこさんといっしょに、ようかいをまもるためのせかいをつくりました。
そしてそれからしばらくたったあと、おとこのひととおなじかおのおとこのこがうまれました。
そのおとこのこはさみしがりやでしたが、がんばりやさんでした。
そのどりょくがみのり、おとこのこにはたくさんのおともだちができました。
でもおともだちはおともだちじゃありませんでした。だからおとこのこはかなしみ、いかり、すべてをめっしました。
そしておとこのこは、『おともだち』をしんじることができなくなりました。
時間は少しさかのぼり。
幻想郷・紅魔館 廊下
吸血鬼の少女「咲夜。」
メイド「ここに。」
幻想郷にある、血の様に赤い大きな館、『紅魔館』。外観からは想像できない広さを持つその館の主、『永遠に幼き赤い月』レミリア=スカレーットが、最も信頼する従者、『完全で瀟洒なメイド』十六夜咲夜を呼び出していた。
レミリア「咲夜。突然だけれど、今から現代に行ってもらうわ。」
咲夜「現代に?」
レミリア「ええそうよ。まぁ言ってみれば研修ね。」
咲夜「しかし何故突然現代なのでしょう?それに、勝手に現代に発っては妖怪の賢者が……」
レミリア「その辺は大丈夫よ。それに、この幻想郷は狭いわ。現代の方がより多くの事を学べる。この私のメイドたるもの、より高みを目指してもいいとは思わない?」
咲夜「は、はぁ……。それで、出発はいつ?」
レミリア「今からよ。必要な物は向こうで揃えなさい。幻想郷と現代じゃ通貨が違うらしいから、お金は持って行っても意味がないしね。」
レミリア「向こうについたら、この者を尋ねなさい。彼が、向こうのあなたの主よ。」
咲夜「これは……」
レミリアは咲夜に一枚のメモを渡す。そこにあったのは、一人の男の白黒の似顔絵と、その人物の名前。そしてその人物の住む家の外観が描かれていた。
咲夜「如月、慎ですか。」
レミリア「彼には、『ゲイザーから話は通している』と言えばいいわ。」
咲夜「分かりました。それで、研修はどのくらい?」
レミリア「その時になったら迎えに行くわ。でもそうね……大体1年はいてもらおうかしら。」
咲夜「分かりました。それで、移動手段は?」
レミリア「エントランスの所にスキマがいるから、彼女に送ってもらいなさい。私も見送りに行くわ。」
紅魔館・エントランス
咲夜とレミリアがエントランスに向かうと、そこにはスキマを開いて待っている八雲紫がいた。
咲夜「それでは、しばらくの間、お元気で。」
レミリア「ええ、あなたもね。」
紫「さっさとしないとスキマ閉じちゃうわよ~」
咲夜「では、行ってまいります。」
咲夜が隙間に入ると、スキマは閉じられ。
そして同時に、レミリアと紫の姿が、煙と共に一瞬で移ろい。
二人の仮面の男、不知火となり、片方はもう片方と重なるようにして、姿を消す。
不知火「……間に合ったか。」
不知火「スキマ、そして化け狸。貴公等の能力、使わせてもらったぞ。」
そう言い残し、その場に現れた殺気と入れ替わるように、不知火は姿を消した。
紫(?)「逃がした、いや、勘図かれたか……まぁよい。」
紫(?)「『これまで』とは違い、『今回』で方を付けさせてもらうぞ……二号機、そしてオリジナル。」
紫(?)「そなた等がどのような隠し玉を持ち出そうと、余には勝てん。せいぜい『いつも』より早まる終焉に恐れおののくがいい。」
現代・弥生亭・リビング
慎「で、そのスキマとやらから出ると、家の前にいたと。」
咲夜「さようでございます。」
彩愛「それで玄関から呼びかけられて、お客さんだってわかって、とりあえず慎くん達が帰ってくるまで待っててもらってたの。」
慎「そうか。」
妖夢「慎さん、ゲイザーって誰ですか?」
慎「まぁ知り合いみたいなもんだ。」
霊夢「咲夜は追い出されたわけじゃないの?」
咲夜「追い出された?」
魔理沙「私達全員、紫に幻想郷を追い出されてきてるんだぜ。」
早苗「突然襲い掛かって来て、気が付いたら現代にいまして。」
霊夢「私は神社壊されたしね。」
妖夢「その紫様は本物なのでしょうか?それとも私達を追い出した方が本物?」
慎「まぁ聞く限りは、同一人物の行動とは思えないな。二重人格の可能性も捨てきれないが。」
彩愛「あるいは、咲夜ちゃんだけ普通に幻想郷から出した理由でもあるのかな?」
慎「とりあえず、お前はこの家のメイドって事でいいんだな。」
咲夜「はい。」
魔理沙「今回はやけにすんなりだな。」
慎「もう慣れた。部屋を準備する。出来たら準備するから、その辺で寛いでろ。」
咲夜「分かりました。」
慎「あと呼び方な。『ご主人様』と『旦那様』禁止な。面倒だから。」
咲夜「では、なんとお呼びすれば?」
慎「あ?あー、そうだな……適当に『リーダー』でいいや。」
咲夜「ではリーダー、これから一年あまり、よろしくお願いいたします。」
慎「おう。」
翌日・朝 原校H2-3の教室
天音「例によって、また転校生だ。」
咲夜「十六夜咲夜と申します。どうぞよろしく。」
剛「『例によって』というのは?」
栞里「実は、彼女でこのクラスの転校生は6人目になるのだ。」
剛「何と!?」
勇太「なぁ、また幻想郷から来たのか?」ヒソヒソ
慎「どうやらそうらしい。」ヒソヒソ
モブ「どうせまた如月絡みだろ?」
モブ「俺もアイツぐらい頭良くて勉強できれば、何人も女子を侍らせたり……」
モブ「無理無理。お前そもそも顔がダメだから。」
咲夜「……なかなか、騒がしい環境なのですね。」
天音「まぁそういうな。事情は慎から聞いてる。まぁ幻想郷に帰るまでの間、仲良くしてやってくれ。」
咲夜「ええ、よろしくお願いします。」
彩愛「先生、咲夜ちゃんの席はここですか?」
天音「そうね。じゃ、あそこの席についてくれる?」
咲夜「分かりました。」
幻想郷から誰かが来ると、何かが起こる。
ただ、今回に限っては、それはまた先の話。




