表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現想真魂録~幻想の勇者共が現代入り~  作者: 観測者S
第壱章 Welcome, to outside
4/62

第3話 食と住

その声は、唐突に聞こえてきた。


「おーーーい、れーーーむーーー!」

「霊夢さーーーん!こっちでーーーすよーーー!」


聞きなれた声が聞こえて、霊夢は驚きとともに反射的に振り向く。

するとそこには、その声の主達がいた。


「魔理沙!?早苗!?」

「よう霊夢、お前もこっちに来たんだな。」

「もしかして、霊夢さんも紫さんに襲われたんですか?」


魔理沙と早苗、そして知らない少年と少女が霊夢のもとに来る。

見知った顔に安堵しながら、霊夢も彼女らに駆け寄る。


「『も』ってことは、アンタ達も?」

「はい、突然現れて、急に無言で襲われました。」

「ホント、何考えてんのよあのババア」

「だよなぁ……幻想郷に帰るにも、何の手掛かりも無いしなぁ。」


「あっ、それなら、知ってそうな奴を見つけたわ。確か……『不知火』とか名乗ってたかしら。」

「その不知火はどこ行ったんだ?」

「さぁ。どっか行ったわ。」

「さぁって、お前なぁ。」


「話が見えん。霧雨、知り合いか?」

「私の事は『魔理沙』でいいぜ。こっちは博麗霊夢で、同じ幻想郷の人間だ。」

「博麗の巫女、博麗霊夢よ。『霊夢』でいいわ。あなたたちは?」

「如月慎だ。」

「弥生彩愛です!あなたも幻想郷から来たの?じゃあこの人も泊めてあげようよ!」

「もういい。好きにしろ。」

「っていうことなんだけど、霊夢ちゃんは、どう?」

「どうって、何が?」

「この二人が、家事をやることを条件に、私たちを泊めてくれる事になったんだ。それで、どうだ?」

「願ったり叶ったりね。よろしくお願いするわ。」

「よし、決まり!」

「とっとと帰るぞ。なんかもう疲れた。」


気が付けば、もう夕方だった。空が朱い。霊夢たち一行は彩愛たちの住む家へ向かう。

道中、早苗が二人の服装を見て尋ねる。


「そういえば、お二人は高校生なんですか?」

「そうだよ。私立高天原たかまがはら学園高等部二年。」

「へー。じゃあお二人の関係は?」

「か、関係?わ、私たち、べべべ別にそんな、付き合ってるとかじゃ……」

「只のいとこだ。いろいろあって同居している。」

「そうだったんですか。」


「もう、慎くんのバカ。」

慎の返答に、彩愛は不満そうにつぶやく。


「どうかしたか?」

「い、いや、何でもないよ。」


やいのやいのと雑談をしている間に、一つの家が見えてくる。


「それで、あとどの位で着くの?」

「あれだ。」


着いたのは、二階建ての大きな家。表札には『弥生』とある。

慎が門と家の鍵を開け、彼女達はその中に入る。


「お邪魔しまーす。」

「邪魔するぜ。」

「お邪魔するわ。……へー、これが外の世界の家か。」


霊夢ら幻想郷の住人は、現代的な家屋を見るのは初めて出会った。外見もそうだが、内装も見たことのない物ばかりだ。木で造られていないのは確かだが、煉瓦でもないし、全く何で造られているのか見当も付かない。

照明、壁紙、フローリング。その全てが新鮮であった。


「3人とも、ようこそ!弥生家へ!」


彩愛の案内で、一行はは家の奥へと進んでいく。階段を上り、二階へと進む。

彩愛は、階段に近い順に部屋を紹介していく。


「まずここが私の部屋。それで、向かいのこっちが慎くんの部屋。あっちの奥のがお母さんの部屋で、その向こうがお父さんの部屋。お手洗いは一階と二階にあって、お風呂は……」

「あのー、今更なんですが、ご両親は?」


説明の途中、早苗が割り込む。


「……お母さんは、5年前に病気で死んじゃったんだ。お父さんは、仕事の都合で離れて暮らしてる。」

「あ、すいません、いきなりこんな事訊いちゃって……」

「いいよ、いつかちゃんと話さなきゃだったし。気にしないで?」

「はい……」


「……母ちゃんが死んで、辛いって時に、なんで父ちゃんは支えてやらないんだよ。やっぱり、どの世界でも、『親父』は『親父』なんだな。チクショウが!」


早苗が罪悪感を感じているそばで、魔理沙は憤りとともに拳を握りしめていた。


魔理沙は『父』という存在を、概念を嫌悪していた。

数年前。魔理沙の母親が病気で倒れた時、看病していた所を父親に呼び出された。

なぜ父親が経営していた商店の手伝いをしなかったと怒られ、それに反論した所、口論となり、結果親父に勘当された。

魔理沙にとって『父』とは、『妻を蔑ろにしてでも利を追求する存在』であった。


その過去を知っていた霊夢は。


「あんたが気にしてもしょうがないでしょ。みっともない。」

「みっともないってお前……そうだな。みっともなかった。」


知っていたうえで、魔理沙をなじった。

それが霊夢なりの気遣いだと魔理沙も知っていた。


「それじゃあ気を取り直して、ここが慎くんのお部屋でーす!」


いつの間にかルームツアーが始まり。彩愛が部屋の扉を開ける。

筈だった。


「あれ?開かない。なんでだろう?」


彩愛がドアノブを引いたり押したりしてみるが、びくともしない。


「そりゃそうだ。鍵掛けてるからな。今開ける。」


そういって慎はポケットから薄い板の様な物をとりだす。するとその前面が黒かったものが光りだし、その面を指でつつきまわしたりしている。

"スマートフォン"と呼ばれるその存在を、幻想郷出身者は知らなかった。

ガシャン、と一般家庭の鍵には似つかわしくない解錠音が響く。


「あ、開いた。それじゃみんな、入って来て~」

「すごい……まるでSF映画みたい……」

「現代にも魔法はあるんだな~。ん?でも魔法は現代で失われたから幻想郷にあるんじゃないのか?」

「俺の部屋なんだがな。」


「これ、どうやったの?」

「これが現代の『科学』だ。」

「ふーん……。」


スマートフォンを見せつける慎。

霊夢はわかったふりをした。わかるつもりはなかった。訊いてみただけだった。


「綺麗な部屋ですね。」

「綺麗っつうか、殺風景っつうか……」

「ベッドと、机と、後は、何にもないね……」

研究室(あのへや)にベッドを置いてから、この部屋に戻らなくなってな。」

「使う物は全部研究室(あっち)に移して、他は捨てた。ベッドの布団は洗ってある。寝るには十分だ。」

「よし、次行こう!次はお母さんの部屋だね!」


あまりにも殺風景すぎる部屋。

雰囲気を切り替えるため、彩愛は()()()()と仕切る。


「おおー、何か可愛い部屋だな。」

「お母さん、ビーズアートが趣味だったからね。いっぱいあるでしょ。」

「よし決めた。私はこの部屋にするぜ。」

「決めるの早いですね。というか、魔理沙さんって可愛い物好きだったんですね。初めて知りました。」

「あ、それ私も。あんたって意外と乙女だったのね。」

「失礼な。これでも私は乙女なんだぜ!」

「最後はお父さんの部屋!こっちこっち~♪」


「何か凄いですね、この部屋。」

「叔父さんはラジコンが趣味だからな。ヘリコプターやら戦車やら、いろんなのが置いてある。」

「かっこいいですね、この部屋!私、ここにします!」

「そうなると博麗は俺の部屋か。」

「世話になるわね。」

「よし、お部屋も決まったことだし、ご飯にしよう!」

「19時を過ぎたあたりか。確かに、いい時間だな。」

「そういや、腹が減ってたのを忘れてたぜ。」

「じゃあみんなで下に行こう。」


一行は来た道を戻り、一階へ降りた。

一階には四角いテーブルに四つの椅子があり、そこに慎が一つ椅子を足し、席は五つ。

慎が台所に立ち、調理を始める。テーブルと台所は隣り合っており、台所に対して縦にテーブルが設置されている。

"カウンターキッチン"。これまた幻想郷人初めての文明。


適当に座り今後の事を話していると、10分程度で慎が調理を終え、料理が運ばれてきた。


「彩愛、運ぶの手伝ってくれ。」

「はーい!」



テーブルに料理と皿が並べられる。どれも幻想郷では見たことのない物ばかり。

特に博麗神社に奉納される賽銭で生活している霊夢には一生縁のなかった光景が目の前にある。

やがて慎と彩愛が着席し、食事が始まる。


「それでは改めて。魔理沙ちゃん、早苗ちゃん、霊夢ちゃん、ようこそ弥生家へ!これからどの位一緒かわからないけど、しばらくの間、ここを自分の家だと思って、安心して過ごしていってね!それじゃ、いただきまーす!」

「なんか、宴会の時の音頭みたいだな!」

「宴会?もしかして、お酒飲んだことあるの?」

「幻想郷では、常識に囚われてはいけないのです!」

「外の世界では可能な限り囚われてもらう。面倒事は起こしたくないからな。」

「なあ、お酒はこっちじゃあまり呑まないのか?」

「この世界における、今俺たちがいる『日本』という国では、20歳未満は飲酒禁止。購入すらできない。さらに、国に届け出て許可をもらわない限り、酒を作ってはならない。」

「マジかよ!?」

「難儀な世界に来たものね……」

「まあ、バレなきゃ問題ないがな。」

「そういう事言っちゃダメだよ?慎くん。お酒は二十歳になってから。」


「それはそうと、この料理美味しいですね!」

「そうね。こんな美味しい料理、食べたことがないわ。」

「しかも味が自然すぎて、驚くことすら忘れてたぜ。」

「そりゃどうも。」


「でしょう?慎くんはね、お料理もすっごく上手なの!うちのクラスにね、末光君っていう町一番のグルメキングがいるんだけど、なかなか評価が厳しくて、強面のラーメン屋さんの人の心も簡単に折っちゃうような人なんだけど、前に調理実習で慎くんの作った料理をたべて、『完璧すぎて、非の打ちどころが無い!君こそ世界最高の料理人だ!』って言って、泣いて握手を求めたぐらい、すっごくお料理が上手なんだよ!」


「そ、そうか。なんだかよく分かんねえが、とにかくすげえな。」

「うん!」


「それでお前ら、幻想郷にはどうやって帰る?」


慎が話を切り替える。


「私はとりあえず、不知火を探してみようと思う。何か知ってるみたいだったし。」

「ただ、協力してくれるかどうかは怪しいけど。」


唯一この中でヒントを拾っているのは、霊夢のみ。


「うーん、私達も何か手掛かりを見つけられればよかったんだがなぁ。」

「すいません、私達は何も見つけてなくて……」

「いいわよ。とりあえず、まずは不知火を探すわ。」

「そうか。」


「ねえ慎くん、私たちも手伝おうよ!」

「……どうせ断っても彩愛(おまえ)ひとりで動くだろうし、なら最初から乗っといた方がマシか。」

「何か悪いわね。泊めてもらった挙句、手伝ってもらうなんて。」

「まぁ、どうせ暇だしな。俺も博麗大結界とやらに興味が沸いた。」

「そう、ありがとう。」


「というわけで、これからよろしく頼むぜ。」

「うん、よろしく。」



幻想の住人と、現代の住人。

境界を越えて、ひとまず意志はひとつに定まった。



「あ、そういえば。」


今度は早苗が話を切り替える。


「さっき慎さんがいっていた、『研究室(おへや)』ってどこですか?見てみたいです。」

「あー言ってたわね、そんなこと。」

研究室(おれのへや)は地下にある。仕方ない、基本俺はそこにいるし、案内しておこう。」


一行は食事を終えると、慎の案内で地下へと向かった。

先ほど二階に上がるのに使った階段の側面にある、鉄の扉。

とりわけ巨大という訳でもなく、まるで倉庫の扉である。


「あの、ここって物置じゃ……」

「そう見せてるからな。?」


そう言って慎は扉を開ける。

そこには、下り階段が伸びていた。


「隠し階段かぁ。パチェの図書館にもよくあったなぁ。」

「よくある只のカモフラージュだ。進むぞ。」

「何かワクワクしますね!」


一行は階段を降りる。


その先には、真っ白な部屋があった。

そこには大きなデスクと椅子、そして6枚のモニタと巨大な2台のPCが壁際に並び。

その奥にはハザードシンボルの描かれた鉄の箱。

部屋の奥にはベッドと、また二つの別の扉があった。


「おおおおおおお!!!凄いじゃないですか!!!素晴らしいじゃないですか!!!まるでロボットアニメの指令室みたいです!」

早苗が興奮する。


「ここは設計や計算、理論構築のための部屋だ。この先に、工房と演習場がある。」

「なんかよく分からんものだらけだが、これらはなんなんだ?」


「こっちは発電機。この家の電力は全てコイツで補っている。」

「これらコンピューターは、片方は情報収集及びハッキング用、もう片方はデータ保存用のサーバーだ。」


「何言ってるか全然分からなかったが、とにかくイイ物ってことは分かったぜ。」

「工房って、具体的にはどんなものを作っているんですか?」


早苗が目を輝かせ、食い気味に質問する。


「そうだな……最近だと、遊星ギアを用いたモーメントとか、太陽炉とか。縮小版ガンダムとかか。」

「ガンダム作ったんですか?」

「まあでも、一回観測られば十分だったから、もう全て破棄したが。」

「残念……見てみたかったです、本物のガンダム。一回見て終わりなんて、勿体ないですよ。」

「お前の価値観なぞ知らん。」


この研究室を以って、弥生家ルームツアーは閉幕した。


「それで、明日はどうしようか。」

「お前らがここで生活するために必要なもの、日用品や衣類を買いに行く。明日は土曜日だから時間があるしな。」

「わかったわ。明日は何時に出るの?」

「そうだな、11時位に出発しよう。」

「お風呂、お湯沸いたよ。三人ともお先にどうぞ。疲れてるでしょう?」

「そうですね。それじゃあお言葉に甘えて。」


入浴を済ませ、それぞれ割り当てられた部屋に戻り、布団にる。


霊夢は疲れていた。本当に疲れていた。この疲労はすべてあのスキマ妖怪のせいだ。郷に帰ったらぶっ飛ばしてやる。


体が疲れていても、頭が疲れていないせいで中々寝付けない。

水でも飲もうと、霊夢は部屋を出る。


一階に降り、キッチンで水を飲む。そのとき霊夢は、人の気配を感じた。

誰か(トイレ)にでも起きてきたのだろうか。


一瞬、ふとなぜか不知火のことが頭によぎる。そんなはずあるわけない。

だが。、霊夢の勘が、ここに不知火がいると告げていた。

あの冷たい声を思い出す。


「……誰だ?」


声が、重い。もしかしたら、と思い、物陰に隠れる。

そして、声のした方向を覗く。


人影が近づいてくる。


「……博麗か。寝るには早かったか。」

「えっ?ああいや、そういうわけじゃなくて、なんでもないから。」

「そうか、まぁいい。俺ぁ研究室(へや)に戻る。おやすみ。」

「お、おやすみ……」


人影は、不知火ではなく慎だった。もしかして、不知火は慎なのだろうか。

いや、そんなはずはなかった。何より、霊夢と不知火が話していたころ、慎は魔理沙たちと一緒にいたはずである。

霊夢はこの事について考えるを止めた。明日も予定があり、少しでも寝て英気を養うべきと。

彼女は部屋に戻り、この何とも言えないモヤモヤ感と共に、眠りについた。




どうも、観測者Sです。今回も読んでいただき、ありがとうございます。

文章の長さにはこだわらない事にしました。これにより、回ごとに長さがバラバラになるかもしれませんが、ご容赦ください。

さて今回、霊夢と魔理沙たちが合流しました。そして、寝床の確保と。

慎の研究室ですが、高校生一人が保有するには不釣り合いすぎる代物が登場しましたね。あの研究室の発電機があれば、ウチもブレーカーが落ちなくて済むのになぁ、なんて。

まあ実際は、あんなもの作るのは不可能でしょうけど。

誤字脱字、日本語の間違い等ありましたら、教えていただければ幸いです。

それでは、また次回で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ