第34話 Go in Soul
ゲイザー「ねぇ、ちょっとアンパン買って来てよ。」
不知火「断る。」
ゲイザー「つれないなぁ。じゃあオレンジジュースは……」
不知火「断る。」
ゲイザー「じゃ、モンブラ」
不知火「断る。」
ゲイザー「まだ何も言って無いじゃない。」
不知火「……。」
ゲイザー「ところd」
不知火「断る。」
ゲイザー「……。」
不知火「……。」
不知火「断る。」
ゲイザー「まだ何も言って無いよ!?」
グリム「パトリオット……アポカリプス!!!」
拳が、霊夢に当たる寸前。
魔理沙「オラオラオラオラオラァ!!!」
突然飛んでくる金色の弾幕が、霊夢を拘束するアスファルトを砕き。
慎「よっと。」
空中に投げ出された霊夢を、慎が脇に抱えるように回収する。
そして慎がグリムの前を完全に横切った直後。
砕かれたアスファルトの破片にグリムの拳がぶつかり、そこから伸びる真っ赤で巨大なな魔力の柱が青空を穿つ。
慎「よし、生きてるな。」
霊夢「慎……」
魔理沙「メンバーチェンジだぜ。」
グリム「また増援か。そして……」
グリム「また会ったな。龍の剣士よ。」
慎「龍の剣士だぁ?」
抱えた霊夢をそっと降ろし、慎は訊き返す。
慎「俺はそんな中二チックな名前を名乗った記憶は無いんだがな。」
グリム「俺が勝手にそう呼んでいるだけだ。気にするな。」
慎「ああそうかい。」
健次郎「また会ったな……グリム!!!」
九重「正直お前の顔はもう2度と見たくなかったんだがな。」
グリム「ほう……これはこれは……」
そして後から姿を現した九重と健次郎を見て、グリムは目を見開く。
グリム「……探したぞ。あの時の復讐をするためになァ!!!」
山岸の声「目標の不可視エネルギー、増加中!!!気を付けて!!!」
霊夢「この声は!?」
慎「その話は後だ。魔理沙、霊夢と妖夢を連れて退け。」
魔理沙「……死ぬなよ。」
慎「善処する。」
霊夢「慎……」
魔理沙「立てるか?霊夢。」
慎「少し本来の作戦とはずれるが、まぁいいだろう。」
魔理沙は霊夢に肩を貸し、そして倒れている妖夢を拾って戦線を離脱する。
グリム「さて……いい加減選手交代にも飽きた。そろそろ決着をつけさせてもらうぞ。」
慎「『リベンジャー』、始動。封神、『青龍』。」
グリムが慎達を睨むと同時に、慎は茜から託された篭手を装着し、術式機構を始動させる。
篭手のロケットエンジンのパーツの噴射口と手の平の円形のモールドがオレンジに光り、今にも火を噴きだしそうに唸る。
健次郎「『力学的無双演武』始動!!!」
それに続き、健次郎も両腕に金属の腕輪をはめ、自身のユニットを始動させる。
やがて腕輪はどんどん大きくなり、健次郎の両方の肘から手首までを覆う。
そしてその腕輪(?)は電界を帯び、バチバチと蒼い火花を散らす。
九重「……『機械転生』起動。封神、『バステト』。」
それに続いて、九重も己の能力を起動させる。
懐から取り出した大きめの両口のスパナは半分から2分割され、それぞれを持ち手に刃が形成され、二振りの小刀、俗に言う『双剣』へと変化する。
さらに九重は封神をも現出させる。
その姿は、桃色の猫。額に3つ目の大きな目を持った猫のオーラは、九重と被るように現れる。
グリム「準備は整ったようだな。では……行くぞ!!!」
慎(待ってくれるとは思ってなかったが、まぁどうでもいいか。)
九重「各々の能力と術式機構の性能を鑑みたところ、私と如月で先陣を切り、隙を作ってケンジが重い攻撃を撃つ。異論は?」
慎「無い。」
健次郎「ああ、それで行こう。」
グリム「ホーネット!!!」
慎が話している途中に、割り込むように魔力を纏った蹴りが突っ込んでくる。
九重を狙って放たれた、まるで突然平行移動したような蹴りは九重を捉えた
様に見えたが。
グリム「……何?」
足が当たった瞬間、九重の姿が歪み、消え失せる。
九重「……何処を狙っている?」
その声はグリムの真後ろで響く。
即座に反応したグリムは後ろを振り向くが。
慎「ダァオラァ!!!」
グリム「グハァッ!!!」
振り向きざまに、ロケットの加速と蒼い龍のオーラを纏った慎の右拳がグリムの頬にクリーンヒットする。
グリム「グゥ……」
そしてグリムが体勢を取り戻すと、その視線の先には鉄の爪が。
反射的にグリムが壊すと、人型の鉄のロボットがグリムに襲い掛かっていた。
九重「そらそらどんどん行くぞ。」
見れば、九重がその辺にある廃棄された冷蔵庫に双剣の片方を突き刺している。
するとたちまち冷蔵庫はバラバラになり、組み替えられ、人型ロボットとなってグリムに特攻していく。
グリム「小癪な!!!」
それらを悉く一撃で粉砕していくグリム。その周囲には砕かれた鉄の廃材がばらまかれる。
そして背後から、ロボットとは違う一撃がぶちかまされる。
グリム「……なるほどな。以前とは戦い方を変えてきたか。」
健次郎「……。」
それは健次郎の右ストレート。
九重の『バステト』によって感覚を狂わされていたグリムには、気付くことはできなかった。
健次郎「プラズマ収束!!!」
健次郎がそう叫び、両手を前に構えると。
グリムの周囲にばらまかれた廃材がグリムに引き寄せられ。
その鋭利な部分が、突き刺さる。
グリム「グァアァッ!!!グゥゥ……」
健次郎「確かに貴様の再生は速い。だがこのようにしてしまえば即座には回復できんだろう。」
そして体中に鉄骨の刺さったグリムを健次郎が持ち上げ、
健次郎「ジェネティック……」
綺麗に垂直に、真上に投げ飛ばし、
健次郎「エメラルド……」
それを追うように、健次郎も垂直に飛びあがり、
健次郎「カイナティ……」
空中でグリムをキャッチして……
健次郎「バスタァァァァアアアアア!!!」
思い切り、地面に叩き付けた。
叩き付けられたアスファルトに、放射状のひびが入る。
健次郎「如月!!!」
万が一を想定して、グリムの傍を離れる健次郎。
そしてグリムの落下地点に向けて、慎がリベンジャーを装備した掌をを向け。
慎「はぁっ……てぇいや!!!」
慎の掛け声とともに、掌の丸いモールドにエネルギーが集まり、龍のオーラと合わさって打ち出されたエネルギー弾は、倒れているグリムを捉える。
そして着弾と同時に爆発が起こる。
だがやはり。
グリム「流石だな……だが!!!」
グリム「最後に喰らうのは、俺だ!!!」
慎(動きを止めるには、一撃で結構なダメージを与えるしか無さそうだな……。)
グリムは、傷を瞬時に癒して立っていた。
慎「……アイツに死の概念ってあんのか?」
九重「さぁな。」
健次郎「むぅ……やはりそう簡単には沈まんか。」
グリム「ハァッ!!!」
慎達が疑問を述べている中、グリムはお構いなしに慎に突っ込む。
慎「こっち来たかっ!!!」
慎(なら……)
避けきれないと判断した慎は、グリムの腕を掴み、組み合うことで拳撃を防ぐ。
グリム「フン!!!」
腕に組みついてきたグリムが腕を払うと、それに合わせ、慎もリベンジャーのブースターを点火する。
慎「はぁぁぁぁああああ!!!」
そのまま呼吸できるギリギリまで高度をあげ、
慎(ここで……決めるっ!!!)
慎「 龍皇・斬牙蹴衝!!!」
ブースターで加速した、龍のオーラを纏った右足で、グリムに空から蹴りかかる。
グリム「ブラックホーク……」
それに合わせ、グリムも黒いオーラを纏い、腰を低く構え、拳を構える。
そして。
慎「スェアアアアアアアアアアア!!!」
グリム「スティンガー!!!」
腕と拳が、ぶつかる。
辺りを、とてつもない衝撃波が襲う。
九重「くっ、あああああああっ!!!」
健次郎「これしきっ、あああああああああっ!!!」
山岸の声「皆さん!!!」
慎「ハアアアアアアアアアア!!!」
グリム「ウオアアアアアアアア!!!」
吹き飛ばされる二人。
とてつもないエネルギーを感知し、3人を心配する山岸。
そして、意地と好奇心とでぶつかり合う一人と1匹。
その結末は。
九重「――」
健次郎「――」
山岸の声「師走さん!?金剛寺君!?聞こえますか!?返事を!!!如月君!?」
慎「がっ、はぁっ……」
その場には、立っている者はおらず――
グリム「ハァッ、ハァッ、ハ、ハハ、ハハハハハ!!!」
――否、一人だけ、立ち上がった。
グリム「どうやら、この勝負、俺の、勝ちみたいだな……。」
慎「……ざけんな、俺ぁ、まだ死んでねぇ……。」
右足を焼け焦がし、仰向けに倒れている慎と。
右腕を庇い、肩で息をするグリム。
グリム「この俺に、ここまでのダメージを与えたことは、誉めてやろう。」
グリム「その事に敬意を表して、一瞬で潰してやろう。」
グリム「安心しろ。愉しませてくれた礼だ。楽に殺してやる。」
慎(どうする……この状況……)
慎(右足は死んでる……そうだ、確かコイツは『相手の戦意に比例して戦闘力が上がる』んだったな。)
慎(なら、その逆は……?)
グリムが慎に近づくころには、グリムの腕は完治していた。
グリム「さらばだ。龍の剣士よ。」
慎「ああ。負けだ負けだ。」
グリムが、腕を振り上げ、拳を握る。
山岸の声「如月君!!!」
そして、振り下ろされる。
しかし、その拳は慎の右腕によって止められる。
嵌めていた篭手は手の平の部分が粉砕される。
グリム「いつまでもしぶとい……それに俺の力が、弱まっている……?」
慎「つ~かま~えたっと。」
グリム「なっ!?」
慎はグリムの拳をがっちり掴んで離さない。
慎「一生懸命お前のダウン取る方法探してたけど、よく考えてみたら戦う必要すら無かったわ。」
グリム「何だと!?」
慎「どうした?俺はもう戦う気はない。早く殺せよ。」
グリム「貴様ァ、ふざけるなァ!!!」
慎「予想通りだな。」
山岸の声「不可視のエネルギーが、減少?一体何が……」
慎「簡単な話だ。お前は戦意で強くなる。なら、その戦意が0になれば弱くなると考えたわけだ。」
グリム「ふざけるなよ、俺はお前の敵なんだぞ!!!馬鹿にしているのか!?」
慎「喚くのはこの状況を脱してからにしろワン公。今おあつらえ向きの首輪をくれてやる。」
グリム「や、止めろォォォオオオオオオオッ!!!」
慎「却下。」
慎「第666拘束機関、作動。」
慎が呟くと同時に、慎の右腕に魔方陣が浮き上がり。
その中心から鎖が伸び、グリムに巻き付いていく。
グリム「ふざけるな、俺はまた、こんな所で……ッ!!!」
慎「安心しろ。お前はこれからずっと俺の中だ。」
その鎖はグリムを捉えると、凄まじい勢いで慎の右腕へ引きずり込む。
グリム「アアアアアアアアアアアアアアア」
そして、グリムは完全に取り込まれると。
慎の右腕から魔方陣は消え、そして。
慎「……ハッ。俺の、勝ち……だ……。」
慎の意識も、消えた。
山岸の声「如月君!?如月君!!!誰か、そうだ荒垣先輩!!!戦闘終了しました、けど負傷者が!!!救急車の手配を!!!」
数時間後。
ゲイザーの固有境界
慎は、再びこの『とりあえず白い空間』にいた。
そして、部屋の内装から判断するに、ここはおそらく病院の病室と判断できる。
慎「……ここは……」
ゲイザー「あ、まだ動いちゃダメ。」
慎「あ?」
気付けば、慎の下には魔方陣を描いたシートが敷いてあり、その魔方陣に手をかざすように、慎の横にゲイザーが佇んでいる。
慎「どういうことだ?」
ゲイザー「今は応急処置中。」
慎「何の?」
ゲイザー「キミが行った封印の。」
慎「どういうことだ?」
ゲイザー「簡単に説明するね。キミの使っている封印だと、狂犬の魔力がキミにダイレクトに流れ込んでくる。」
慎「それの何が問題なんだ?」
ゲイザー「一部の例外を除いてね、この世界の存在は、魔力を持てないんだよ。魔力に対する耐性が無いんだよね。」
慎「じゃあグリムや魔理沙は?」
ゲイザー「魔理沙って娘は特殊なプロセスを踏んで魔力を得ているし、狂犬に至ってはこの世界の存在じゃ無い。」
慎「この世界の存在じゃ無い?」
ゲイザー「うん。それでね、そんなこんなで、今のキミには魔力に対する耐性が無い。」
慎「耐性が無いとどうなるんだ?」
ゲイザー「結論言えば、死ぬよ。」
慎「どの位で?」
ゲイザー「……もって1週間かな。」
慎「……で、お前は俺にどう対処するつもりなんだ?」
ゲイザー「簡単な話さ。『耐性を持ってる』事にすればいい。」
ゲイザー「つまり、キミと狂犬の『存在』を融合する。」
慎「……するとどうなる?」
ゲイザー「ボクの行う術式だと、今体を支配している人格、つまりキミの人格を残して、狂犬の人格は消える。ただいきなり莫大な魔力を以っても扱いきれないから、ほとんどの魔力をその封印機構に残すけどね。」
慎「俺への副作用は?」
ゲイザー「狂犬の体の特性が移る。まぁ分かりやすい所で言えば、今のキミの体の状態だと、寿命が約1億年位伸びるかな。」
慎「……マジか。」
ゲイザー「うん、マジ。」
慎「……まぁ、死ぬよかマシだな。やってくれ。」
ゲイザー「うん。もう始めてる。あとは寝てていいよ。お疲れさま。」
慎「ハァ。じゃ、お休み。」
ゲイザー「まさかこんな形で収束するとはね。」
ゲイザー「でもこれで、世界は『分岐』した。皮肉なものだよね。破滅に向かって廻したつもりが、救済に向かって廻しているかもしれないなんて。」
ゲイザー「ここから先はボクも知らない。さぁ、どうなるんだろうね。」
ゲイザー「もしかしたら繰り返しも今回で……終わるといいな。」




