第29話 Re:狂犬捕獲作戦(仮)
テレビ「あなたの~テレビに~時価ネットたなか~」ピッ
テレビ「不死鳥戦隊!フェザーマンL!」ピッ
テレビ「ドイツへ移籍後初得点をあげた日本代表の天田選手!その後のインタビューでは……」ピッ
テレビ「ジュネスは今日もお客様感謝デー!来て、見て、触れてくださいクマ!」ピッ
テレビ「そして今週のオリコン1位は!9年前に爆誕したスーパーユニット『かなこっこ』だァーッ!」ブツン
慎「……つまんね。」
翌日、昼。
高天原学園付属御神楽総合病院・里中の病室
山岸「こんにちは、千枝ちゃん。ごめんね、もうちょっと早く到着できてれば……」
里中「あっ、風花さん。」
荒垣「どうだ、調子は?」
里中「絶好調……とは言えないっすね。」
ラビリス「そうか……。」
先の戦いで重傷を負った里中に、荒垣と山岸、そして一時的に右腕を失ったラビリスが見舞いに来ていた。
里中「すんません、アタシが不甲斐ないばかりに……」
荒垣「お前が悔やむ必要はねぇ。さっさと怪我治せ。」
ラビリス「ほな、うちら如月君のトコ寄ってくから。」
山岸「お大事にね。」
里中「うん、ありがとう。」
そして、慎がいた病室。
荒垣「……いねぇな。」
ラビリス「どっか別んとこにいるんとちゃう?」
山岸「そうだね。探してみよう。」
平賀「ああ、荒垣君、それに山岸も。」
慎の所在を探しに行こうとしていた所に、荒垣の高校の同期、そして山岸の部活の先輩である平賀が話しかける。
山岸「お久しぶりです、平賀先輩。」
荒垣「おう、平賀か。今如月がどこにいるのか分かるか?」
平賀「多分学校じゃないかな?1時間くらい前に退院したからね。」
ラビリス「退院!?あの怪我で!?」
平賀「全治3か月のけがを3日で治してたよ。医者としてはもう二度と……できれば一度もやってほしくない行為なんだけどね。」
山岸「全治3か月のけがを3日で……どうして、っていうかどうやって?」
平賀「なんか凄い気合が入っているように見えたよ。それほどまでに例の化け物にご執心なんだろうね。」
荒垣「アイツ1人で討ちに行くつもりか!?」
平賀「さぁね。お仲間もいるみたいだし、そうとは言い切れない。」
ラビリス「だとしても、早いとこ止めにいかんと……」
荒垣「そうだな。確か、如月が通ってるのって、原校だったか?」
山岸「早くいきましょう。その如月君って人、会ったことはないけど、なんだか心配です。」
放課後・文研部部室
天音「集まったな。」
翌日に展開されるであろうグリム討伐作戦の説明のため、乾介を除く文化研究部のメンバーと疋田、高橋、藤田が集まっていた。
慎「いや、まだだ。」
ガララララッ。
健次郎「失礼する。」
九重「教師を呼び出すとはいい身分だな如月。お前狂犬に半殺しにされたんじゃなかったのか?」
慎「さて、そろったところで問題だ。全治3ヵ月の怪我を負わされ半殺しにされた俺はどうやって3日でここまで回復した?」
彩愛「それって、あの回復薬じゃないの?」
栞里「回復薬?」
慎「惜しい。1文字足りない。」
勇太「1文字……1文字……」
智美「『G』とか?」
拓海「『絶』とか?」
魔理沙「『真』とか?慎だけに。」
九重「……くだらんな。ケンジ、戻るぞ。」
慎「正解は『超』回復薬だ。」
健次郎「……まさか。」
慎「師走先生のデータベースから借用したよ。」
九重「貴様人のデータを勝手に……というより、超回復薬を使っただと!?」
慎「そうだ。」
妖夢「何なんですか?その『超回復薬』って。」
九重「私が説明しよう。」
九重「超回復薬とは、怪我の回復速度を加速させるための薬だった。」
霊夢「だった?」
九重「ああ、『だった』。」
九重「怪我の回復速度を加速させるということは、細胞の分裂速度を加速させるという事だ。」
九重「人間に限らず、細胞を持つ個体全てには細胞分裂の回数には限りがある。」
九重「しかしこの薬は、加速された分裂速度は元に戻らない。」
九重「過剰に分裂した細胞の組織は、いずれ内部崩壊を起こし、バイオリズムに乱れが生じる。」
九重「……ケンジがその例だ。以上に増幅した細胞組織によって、筋肉が異常なほど増加している。」
九重「私が改造手術を施さなければ、余命はあと1週間ほどだったろうな。」
慎「まぁつまり、ハイリスクハイリターンな代物って訳だな。」
早苗「じゃあ、慎さんはそんな薬を……」
慎「服用ったことになるな。」
彩愛「なんでそんなことを……」
慎「今から伝える作戦を否決させない為だな。」
天音「……言ってみな。」
慎「あの狂犬を、『俺の身体』に封印する。」
健次郎「なっ!!!」
桃華「それって、どういう……」
魔理沙「本気で言ってるのか!?」
慎「まぁ、やらなきゃ俺が死ぬんだけどな。」
霊夢「どういうこと?」
慎「まぁ簡単な話だ。デフォルトで再生速度が異常な化け物を取り込めば、上がりきった再生スピードも問題なくなるのでは、という予想だ。」
慎「その為に、魔理沙の知識を借りる。」
魔理沙「どういうことだ?」
慎「『アカネ』なる人物に接触してきた。」
慎「それによると、以前は魔法使いの技術を用いてグリムを封印したそうじゃないか。」
慎「それと同じようなことをするだけだ。生命体に封印する術は既にあるのだろう?」
魔理沙「そう、だけど……」
健次郎「茜に会ったのか!?」
慎「ああ。そしてこんなものを託されたな。」
懐から、茜から託された篭手、『リベンジャー』を取り出し、見せつける。
健次郎「これは……」
拓海「如月君、それは?」
慎「行成茜の術式機構、リベンジャーだ。」
早苗「茜って……ああ、例の。」
慎「『私の代わりに連れてって』だとよ。どうする?幼馴染。」
健次郎「……茜に話したのか。」
慎「ああ。」
九重「なるほど、お前という存在と茜とで、『他の選択肢を消しに』来たか。」
智美「どういうことですの?」
勇太「タイムリミットギリギリで現状の最善手を突きつけ、そして自分を人質にとる。」
勇太「そうするともう、他の作戦を探してる暇はない。慎はこれを狙ってたんだ。」
彩愛「どうしてそこまでするの!?」
慎「他に思いつかなかったからだ。それに、俺は売られた喧嘩は買う主義なんでな。」
慎「勝つためなら、手段は選ばんさ。」
慎「というわけで、今から九重と部長殿、そして魔理沙には新型の拘束機関の作成を手伝ってもらう。」
慎「当日は俺一人で出撃る。少人数の方がいいらしいからな。」
九重「私たちは手伝うとは言って無いぞ。」
慎「ここで断れば生徒を一人見殺しにすることになるな。」
九重「……チッ、これだからお前は気に食わん。」
健次郎「先生……。」
慎「アンタも、幼馴染の意志は無視できないだろう?」
健次郎「……分かった、協力しよう。」
魔理沙「なぁ、他に方法は無いのかよ?」
慎「今更考える暇はない。行くぞ。作戦決行は明日だ。時間が惜しい。」
そういって慎は部室を後にし、九重と健次郎もそれに続く。
魔理沙「……って待てよ!」
そして魔理沙も追うように退室する。
智美「……行ってしまわれましたわね。」
彩愛「やっぱり駄目だよ!!!慎くん1人で行くなんて!!!」
拓海「それには僕も同意だ。なぜ彼はあんなに一人で動きたがる?」
早苗「慎さんっていつも一人で行動してるんですか?」
天音「ああ。前回が例外なだけで、大きな事件や依頼の時は大抵アイツ一人で戦いに行ってるな。」
霊夢「これはただ不器用ってだけじゃ話が済まなさそうね。」
妖夢「……そうだ、明日、先回りしてグリムを引き付けておくというのは?」
桃華「いいわね。撃破はできなくても、足止めにはなるかもしれないわ。」
勇太「でも確か、相手が増えると向こうも強くなるんだろ?」
栞里「ならば交代制でいこう。2人づつ戦線に出て、危なくなったら交代する。」
彩愛「私達は何をすればいい?」
栞里「彩愛は慎が動いたら教えてくれ。勇太は、私のサポートを頼む。」
勇太「わかった。」
私立高天原学園・廊下
荒垣「おう、いたいた。」
慎「……この前の刑事か。」
九重「慎、彼らは誰だ?」
慎「グリムによる連続殺人の捜査をしている刑事だ。」
ラビリス「どうも。」
山岸「こんにちは。」
慎「で、何か?我々は急いでいるのだが。」
荒垣「単刀直入に言う。悪いことは言わねぇ。今回の事件から手を引け。」
慎「俺は売られた喧嘩を譲るほど人が出来てないもんでね。」
荒垣「相手は人間でも、ましてや暴走体とやらでもねぇんだぞ!?」
慎「そんなものは知らん。相手が宇宙人だろうと未来人だろうと異世界人だろうと超能力者だろうと、俺は俺として勝つだけだ。」
慎「相手が人間でないなら、今の日本では法は適用されない。警察の出る幕じゃない筈だ。なぜ他者の問題に首を突っ込みたがる?」
荒垣「市民を守るのが、警察の役目だからだ。それ以外に理由なんていらねぇ。」
慎「どのみち俺はこの事件から降りる気はない。行くぞ。」
慎が話を切り上げ、九重の研究室に向かって歩き出す。
山岸「……周りの人たちは、どう言ってるの?」
しかし山岸の一言で足を止める。
慎「……は?」
山岸「君の事について、すこし調べさせてもらったの。」
山岸「文化研究部の皆は仲間なんでしょ?だったら、リーダーの事を心配しない筈がないじゃない。」
山岸「なのにどうして、わざわざ自分から危険な場所に飛び込もうとするの?」
慎「……何故俺の行動に他者の意志が関わる?俺の意志で動いて何が悪い?」
慎「それに『心配してくれ』なんて頼んだつもりもない。寧ろその言葉を武器に人の行動を束縛しようとする。」
慎「俺の事を心配するのはそいつの勝手、そして俺がどう動くかも俺の勝手だ。」
ラビリス「仲間の心配が束縛するなんて、そないな言い方あらへんのとちゃう!?」
慎「それはアンタの価値観だ。アンタの価値観を俺に押し付けるな。」
慎「『心配だから』と一言いえば、それが根拠となり行動を中止させることができる。こんな都合のいい手綱を束縛と言わずして何と言う?」
慎「今回俺が一人で出撃るのはそれが最善だからだ。どうやら戦意を持つものが増えると奴さんも強化されるみたいだからな。」
山岸「じゃあせめて手伝わせてくれる?いいですよね、荒垣先輩?」
荒垣「……本当はお前を戦いには向かわせたくないが、お前が意地でも一人で出るというなら、しょうがないな。」
荒垣「うちの山岸は優秀なナビゲーターだ。恐らくあの化け物をサーチできる。そして俺とラビリスは住民の避難等警察を動かせる。」
荒垣「ガキ一人で暴れるよりは、こっちのほうがいいだろう?」
魔理沙「どうするんだ?慎。」
慎「……細かいブリーフィングを行う。師走先生、研究室まで案内してくれ。」
九重「場所はお前も知ってるくせに。まぁいい。警察の方々も付いてきてください。私の研究室へ案内します。」
魔理沙「なぁ、ナビは栞里じゃダメだったのか?」
慎「どうせあいつ等のことだ。何も言わずとも首を突っ込んでくる。」
慎「それよりも、まずはブリーフィングと……そして『首輪』を作らなきゃなぁ。」
慎「狂犬にお似合いの、悪魔のような首輪を。」




