第26話 術式機構
栞里「慎と乾介が……病室で……二人っきり……デュフフフ」
魔理沙「なぁ妖夢、あれ何のことだ?」
妖夢「さぁ?」
勇太「……お前らは知らない方がいいと思う。」
放課後。
慎と乾介の病室
天音を含めた文研部が集まっていた。
そこでは、先日霊夢達が九重達から手に入れた情報を報告していた。
栞里「……と、言うわけだ。」
慎「なるほどねぇ。」
まとめると。
・狂犬はとにかくヤバい
・狂犬と九重と科学部部長は因縁がある
・しかし『アカネ』については確認できず
という事だった。
慎「封印を内側から解いた、ねぇ……。」
霊夢「どんな封印を施したのか知らないけど、内側から破れるって相当ね。」
慎「……九重の事だから機械式、一様に状態が変化するとはいえどうあがいても規則的……」
妖夢「そういえば、『拘束陣のコードを全て学習した』って言ってましたね。」
魔理沙「やっぱ物理で破壊するしかねぇよなぁ。」
彩愛「でも物理的な破壊も無理なんでしょ?」
早苗「ならもっとハイペースで攻撃すればいいんです!」
慎「簡単に言ってくれるが、今のままじゃ全員絶好調でも無理だろうな。」
早苗「そんなのやってみなきゃ……」
慎「無理だ。俺が無理だったからな。」
魔理沙「まぁ魔力の量的にも、強化版幽香だからな。そりゃあ楽には行かないか。」
勇太「それで、どうするんだ?」
慎「どうにかする。」
天音「まぁ言っても無駄だろうが、無茶はするなよ。」
慎「どっからが『無茶』なのか、詳しく教えてほしいな『霜月先生』。」
天音「まったくお前は……。」
乾介「……。」
ガララララッ
不意に病室のドアが開く。
拓海「話は大体聞かせてもらったよ。」
そして現れたのは、科学部の疋田、高橋、藤田であった。
慎「何しに来た?ただのお見舞いじゃないだろう?」
智美「科学部として、首を突っ込まさせていただきに来ましたの。」
桃華「ここ最近の九重先生、ちょっと部室に顔を出したらすぐ部長とどっか行っちゃうのよ。だから何してるのか気になってね。」
拓海「そんな時に君達だ。君達の話を聞いた後の様子がいつもとは違ったからね。何かあると思ったんだけど、どうやら当たったみたいだね。」
乾介「盗み聞きは良くないと思います。」
智美「それは申し訳ありませんでしたの。」
早苗「皆さんも能力を持ってるんですか?」
桃華「いいえ、私達には能力は無いの。」
霊夢「じゃあどうやって戦うのよ?」
拓海「これさ。」
疋田が病室の窓を開ける。
拓海「ここは病室だから、控えめにしないとね。」
妖夢「何をするんですか?」
智美「まぁ見てれば分かりますの。」
疋田は懐から魔方陣の描かれた手袋を取り出し、はめる。
そして窓に向かって手を開き。
拓海「操蟲指揮紋、始動!」
疋田がそう叫ぶと、窓の外からやってきたのか、大量の『蟲』が手袋を中心に集まってきた。
乾介「うわっ!虫っ!」
拓海「『虫』じゃなくて『蟲』ね。それも僕特製の。」
魔理沙「なんか『リグル』みたいだな。」
霊夢「これは能力とどう違うの?」
慎「……『術式機構』だな。」
拓海「よく知ってるね。そう、これは『術式機構』、能力を持たない僕たちでも戦えるようにする為のものさ。」
桃華「一番の違いは、使用者が限定されないことね。やっぱり使用者によって出力に差はかなり出るけど、それでも一応は誰でも使えるわ。」
勇太「でもよ、人数が増えても逆効果な気がするんだけど……」
栞里「そうだな。師走先生の話からするに、大人数は逆に危険か。」
慎「少人数で交代しながらならどうだ?」
天音「それだな。後は狂犬がどこにいるかだが……」
魔理沙「それなら問題ないぜ。あの時はっきりとアイツの魔力を覚えたからな。その気になればいつでも追えるぜ。」
彩愛「後は慎くんの怪我が治るだけだね。」
早苗「でも確か、全治3か月って……」
慎「いや、後二日だ。回復を加速させた。」
早苗「そんなことまで出来るんですか?」
栞里「そんなことして、体には悪影響は無いのか?」
慎「やってしまったものはもうどうしようもない。今更喚くな。それに、これは俺の体を使った実験でもある。この薬の効果のな。」
乾介「……。」
その後、色々とどうでもいい話に発展し、程なくして解散した。
御神楽市・市街地・乗用車内
里中「化け物1号と2号か……。」
荒垣「これで『シャドウ』の仕業です、なんて言ったら洒落にもならねぇ話だな。」
ラビリス「そうやねぇ……。」
午前中に慎に話を聞きに行った、その○○署への帰り道。
『シャドウ』とは、里中や荒垣、そして当時の彼らの仲間たちが戦ってきた怪物である。
シャドウとは人間の心の奥に潜む、『認めたくない自分』。そしてそれを御する力が、『ペルソナ』である。
里中は、学生時代のとある連続殺人事件の渦中で己のシャドウと『向き合い』、『もう一人の自分』を手に入れた。
そして荒垣は、死への覚悟をトリガーにしてシャドウを『引きずり出して』制御し、『心の仮面』を手に入れた。
さらにラビリスの正式名称は、『対シャドウ特別制圧兵装五式・ラビリス』。元来シャドウの制圧を目的に製造されており、その後色々あってペルソナを手に入れた。
そして、なぜ『シャドウの仕業』だと『洒落にならない』のか。
それは、基本的に『シャドウはペルソナによる攻撃しか効かない』からである。
一部例外はある。例えば、ラビリスにも組み込まれている『黄昏の羽』。この物質が組み込まれた兵器ならばダメージを与えることができる。
しかし普通は通常兵器や核でも意味をなさない。無論、封神や能力、術式機構も例外ではない。
つまりはペルソナ使いしか対処できないのである。
ラビリス「せやけど、ここ数年はシャドウの反応も出とらんし、その可能性はあらへんのとちゃう?」
里中「そうだね。じゃあ、シャドウでもなくて暴走体でもない怪物って事になるのか。」
荒垣「色んな所でそんな話は聞くが、それらは大抵地元の組織や大手企業が終息させてる。この街にだってあの『最上』がいるじゃねぇか。」
荒垣「だとしたらやっぱり、今まで確認されてないタイプの存在のせい、って可能性もあるな。」
ラビリス「……っ!?」
荒垣「ラビリス、どうした?」
ラビリス「付近に未知の生体反応在りや!これはどのデータとも違う、もしかしたら……」
里中「今言ってた新種……化け物1号!?」
荒垣「一応確認してみるか。場所は?」
ラビリス「地図データと照合……見つけた、今出すで。」
車のナビに、ラビリスの索敵機能から得た場所が表示される。
荒垣「よし、飛ばすぞ!!!」
荒垣たちの車はスピード違反ギリギリの速度でその場所へと向かった。
御神楽市・市街地・路地裏
ラビリス「ここや。」
グリム「……なんだぁ?」
里中「ッ!!!酷い……」
そこには、かろうじて人間のものであったと推測できる肉塊と、それを不満そうに足で踏みつける狼男?がいた。
荒垣「……殺ったのはお前だな?」
グリム「殺った?……ああコレの事か。少しは腹の足しになるかと思ったのだが、存外見掛け倒しだったのでな。気付いたら潰れていた。」
グリム「そもそもこの世界の人間は魔力を僅かにも持っていないのだな。確かに、これではまともな食事にはならんな。」
荒垣「……『食事』だと?」
グリム「ああ。ただの食事だ。他者の戦意が、俺にとっての餌だからな。闘ってないと飢え死にしてしまうのだよ。」
里中「そんな……」
ラビリス「戦意が目的なら、なんで殺してまうん!?何もそこまでせぇへんでも……」
グリム「だから言っただろう。『気付いたら潰れていた』と。ここの人間が弱いだけだ。俺のせいではない。」
里中「……あんたは、人間を只の餌としか思ってない訳?何の罪もない人たちを殺しても、何も思わないの!?」
グリム「そうだな。この世にある全ての生物は俺の捕食対象だ。それに生命体は本来、弱肉強食。弱い物が喰われる。そこに罪の有無は関係ない。」
荒垣「……よぉく分かった。てめぇは一刻も早くひっとらえなきゃなんねぇようだな。」
里中「そうっすね。顔中クツ跡だらけの刑にしてやる!!!」
ラビリス「ほな、覚悟してもらうで。」
グリム「フッ……ハハハッ……フハハハハハハッ!!!」
グリム「どうやらこの世界も捨てたものではないようだな!!!」
グリム「まさかこんな極上の餌が、こうも簡単に見つかるだなんて!!!」
グリム「先日の二人は喰らい損ねたが、なかなかどうして、この三人も戦い抜いてきた極上の匂いがする!!!」
グリム「犬も歩けばなんとやらというが、少し檻に閉じこもっていただけでこうもいい環境になるとは!!!」
グリム「俺が喰らうための強者の多いこの世界、ここは最高の餌場ではないか!!!」
グリム「さぁかかってこい!!!この世界の魔導士、いや戦士達よ!!!」




