第25話 情報交換
慎がゲイザーと対話した、次の昼。
慎side
高天原学園付属御神楽総合病院・慎と乾介の病室
主治医の平賀が、俺の検診に来ていた。
平賀「うーん……」
慎「どうした?」
平賀「経過は順調……どころじゃないね。今度は何したんだい?」
平賀は俺が御神楽市に来てから、ずっと俺の主治医をやっている。
夕べ寝る前に一気飲みした『超回復薬』の効果で、怪我の治りがえげつないほど早くなっているからな。そりゃ疑問にもつか。
慎「ちょっとな。」
平賀「君は寿命を縮めたいのかい?」
慎「今回は色々とあるんだよ。」
平賀「医師としてはぜひともやめてほしいんだけどね。」
コンコン。
病室のドアがノックされる。
すると、面識のない3人の大人が入って来た。
大柄なコートの男「失礼する。」
茶髪ショートの女性「お邪魔しまーす。」
水色の髪の女性「邪魔するで。」
何かを邪魔しに来たのなら、いなくなって欲しい所だが。
茶髪ショートの女性「君が『如月 慎』君だよね?」
慎「どちら様で?」
茶髪ショートの女性「私達、こういうもので~。」
3人が警察手帳を見せる。
なるほど、如何に辿ったのかは知らんが、最近の連続殺人の話か?
しかしカタカナで『ラビリス』て。何人だよ。
乾介「警察……?」
平賀「君の怪我の仕方があまりにも特徴的過ぎたのでね。守秘義務も確かにあるけど、これ以上怪我人を出さないことに協力することの方が大事に思えたから。」
慎「……そうか。」
荒垣「それで、ちっと話を聞かせてもらってもいいか?」
慎「……。」
正直、この問題には他者に首を突っ込ませたくない。この手であの化け物を屠らなければ気が済まないのだ。
しかし、現状は大した情報もない。ここは公的機関の手を借りるのも、癪ではあるが一考か。
慎「……ああ、構わない。」
里中「そっちの君も、いいかな。えっと、確か『寺島 乾介』君。」
乾介「あ、はい、大丈夫です。」
ラビリス「じゃあまず最初に。その怪我、どうしたん?」
慎「化け物にやられた。」
嘘は言って無い。
里中「化け物?」
乾介「はい。最初は僕が襲われてたんですけど、如月先輩に助けられて。」
慎「ここいらで発生する『暴走体』の事はご存知だろうが、アレとは言い難い性質でな。」
慎「まず強さが段違いだった。こちらの攻撃が全て意味を成さなかったからな。」
ラビリス「それで、どうやって逃げてきたん?」
慎「化け物2号が現れてな。その隙に脱してきた。」
荒垣「その『化け物』と『化け物2号』について、何か知っていることは無いか?」
慎「さぁな。俺ぁ何にも知らん。」
乾介「僕もです。」
ラビリス「ほな次。犯行時刻……というか、襲われたのは何時頃なん?」
乾介「確か学校に行こうと家を出た後だったから……」
慎「八時過ぎだ。」
里中「他に何か、気になった事とか物とか無いかな?」
慎「特にないな。」
乾介「えっと、僕も特にないです。」
里中「そっか。まぁ何かあったら、ここに連絡してよ。これ、3人のケータイ番号。」
里中とか言う刑事から1枚のメモを渡される。
荒垣「情報の提供感謝する。そんじゃあ俺達はこの辺で。」
ラビリス「絶対犯人はウチらが捕まえたるから、大人しく寝とき。」
里中「それじゃ、さよなら~。今度肉奢ったげるね~。」
そして3人は病室から出て行った。
平賀「さっきの刑事さんも言ってたけど、大人しく寝てる事。それじゃ、僕ももう行くね。」
慎「おう。」
平賀もいなくなった。
慎「お前は何時位に退院するんだ?」
乾介「きっと放課後に皆さんでお見舞いに来るでしょうから、その時に一緒に。」
慎「そうか。」
まだどうせ暇だし、寝るか。
場所は変わって、どこかの路地裏。
不知火は腰に携えた日本刀を抜いて構え、発する。
不知火「……『阿修羅』、起動。」
その日本刀は漆黒よりも黒く光り、形を変える。
光が収まる頃には、日本刀は大きな太刀へと姿を変えていた。
不知火「夢想……」
それを低く、腰に構えて。
不知火「……ハァ˝ッ!!!」
空虚を斬る。
すると、その空間に亀裂が生じ、そこからは白い空間が広がっていく。
やがてあたりが真っ白な空間になると同時に、その存在は姿を現す。
ゲイザー「やぁ、久しぶり。」
取りあえず『白い』空間……『固有境界』の中に。
ゲイザー「毎度呼び出して悪いね。ボクからはキミに干渉できないから、こうやって来てもらうしかコンタクトを取れないから、しょうがないかもだけど。」
不知火「……何の用だ。」
ゲイザー「キミの言う『現在のキミ』に会ってきたよ。」
不知火「……それで?」
ゲイザー「でも『彼』にはボクから干渉できた。確かに似てるけどさ、本当に『彼』なの?」
不知火「……現時点では、未だ『干渉されない力』を手に入れてはいない筈だ。」
ゲイザー「なるほどねぇ。それで、キミはいつまで動けないの?」
不知火「……もう暫くだ。」
ゲイザー「具体的に分からない?」
不知火「……約500日、と言ったところか。」
ゲイザー「前キミから聞いた話も考えると……もうすぐ、いや、もう『アレ』は動き出しているね。」
ゲイザー「しかし本当に困るよねぇ。『今のキミ』が動けないときに動き出すなんてさ。」
不知火「……。」
ゲイザー「……ホントにキミは話しずらいね。何か返してくれてもいいじゃない。」
不知火「……もう十分か?」
ゲイザー「つれないなぁ、もう……あ、そうそう。あの『スキマ妖怪』。やっぱり手が伸びてた。」
不知火「あのスキマは少々遊びが過ぎるとは思っていたが、まさか八雲紫の意志にまで干渉できるとはな。」
ゲイザー「……旧友として、やっぱり心配?」
不知火「……何を戯言を。あのスキマは心配するまでもない。もし幻想と現実、双方どちらかに手をかけようものなら、私が斬る。」
不知火「そういう契りだ。」
ゲイザー「それよりも、藍ちゃんの方が心配?」
不知火「……。」
ゲイザー「素直じゃないねぇ。ともあれ、今は切り札がキミしかいない。」
ゲイザー「これまで観測者として、何万、何億、いや数え切れないほどの、世界の開闢から終焉を観測てきた中で……」
ゲイザー「……『今回』にだけ存在する、『キミ』だけなんだよ、『不知火』。」
不知火「……。」
ゲイザー「それよりさ、その仮面暑くないの?取ったら?」
不知火「……顔を見て確かめたいと?」
不知火は仮面に手を添える。
すると、彼の仮面と鎧が青白く光り、やがて消える。
そして鎧の下、仮面の中にいたのは、紅白の袴を着た少年だった。
ゲイザー「うーん、やっぱり年季が入ってるとはいえ同じだよなぁ。じゃあやっぱり『彼』なのかなぁ。」
不知火「……もういいか?」
その声は、今までのように低くくぐもった声ではなく、ごく一般的な、普通の男の声だった。
ゲイザー「声もそっくり、いや同じだね。あ、もういいよ。」
不知火「そうか。」
不知火が空中に手を翳す。
そこに一枚の青いタロットカード……『審判』を示すカードが現れ、
不知火「……『シラヌイ』。」
それを彼の能力を行使するための道具の太刀……『獄陣・阿修羅』で真っ二つに斬る。
すると不知火の足元が円の描くように青白く発光し、頭上に鎧と仮面が現れる。
やがて鎧は自ら不知火の体に装着されてゆき、最後に仮面が顔面を覆うことで、不知火は元の姿に戻った。
ゲイザー「『心の仮面』ねぇ。この世界には使える人が何人かいるみたいだし、人間限定って訳じゃないそうだけど、体に纏えるのはキミだけだよね。」
ゲイザー「そういえばこの街に来た、警視庁からのDKの協力員?応援?まぁ何でもいいけど、あの3人もペルソナを持ってるみたいだね。知ってた?」
不知火「ああ。」
ゲイザー「ふーん。まぁいいや。」
不知火「……用は済んだか?」
ゲイザー「うん。現状、ボクもキミもまだ動けないしね。あ、それと。」
ゲイザー「いくら広さや時間経過に定義が無いからって、この空間を物置にしないで欲しいな。」
不知火「……『構わない』と言ったのは貴様だろう。」
ゲイザー「えっ?いつ?何処で?」
不知火「……182,4683日前の、宴の席だ。」
ゲイザー「ひゃくはちじゅうにまん……ああ、思い出した。あれだけ煩い中で聞こえるか聞こえないかの声で確認されても……いやいい訳か。やっぱキミはキミなんだね。」
不知火「……もういいか?」
ゲイザー「うん。また今度ね。今出すよ。」
白い空間に扉が現れる。
不知火「……。」
不知火は無言でその扉を開き、くぐる。
その先は、先ほどまでいた路地裏。
そのまま不知火は、何処へともなく歩き出し、その姿を消した。




