第20話 The Tyrant
グリムがその場で回転蹴りの構えをする。その間合いでは届きそうにはないから、大方ソニックムーブとかそんな感じか。
それならばその衝撃波を切り払えばいい。
グリム「ヴァリアント!!!」
慎「ッ!!」
そう思ったのもつかの間。ヤツはなんと、高速かつ蹴りで突進してきた。
しかも、その推進力は回転蹴りの回転のみである。
そしてその足には炎が灯っている。
すんでの所で横によける。
グリムはそのまま俺の後ろに在った民家に突っ込み、全壊させる。
慎「……意外と速いな。」
これは意外と大変そうだ。
グリム「なるほどな。やはり貴様は、今までの奴とは違うようだな。」
煙の中からグリムが姿を現す。
慎「『今までの奴』?」
グリム「俺がここ数日『喰らって』来た奴等のことだ。今までは、たった一撃で動かなくなる連中ばかりだったのでな。」
慎「……そいつぁ大体何人位だ?」
グリム「あ?あー、人数など一々覚えてはいないが、そうだな……大体10人ちょっと位か。」
グリム「だが今はそんな事どうでもよかろう!!!さぁ、続きをしようではないか!!!」
大変に加えて面倒な奴だな。
この口ぶりからして、最近の殺人はコイツが犯人か。
なるほど、犯人が人間じゃない、それも知能が割と高いヤツが犯人だと、警察も特定出来ない訳か。
ヤツを再び捉え、村正を構えなおす。
グリム「グスタフ!!!」
慎「青龍!!!」
今度はパンチで突っ込んでくる。流石にあの速度を青龍無しで対処しきれはしないだろう。
体に蒼い龍のオーラを纏う。
そしてヤツが目の前2メートルぐらいになったところで。
慎「龍迅翔!!!」
体を横に反らし、村正で下から上に斬り上げる。
するとそこに、蒼く質量を持った残像が現れる。
そしてそこに吸い込まれるようにして、グリムが突っ込んでくる。
グリム「グッ……」
グリムは少し後ろにのけ反った。その隙を逃す俺では無い。
慎「龍牙刃!!!」
オーラを纏った村正で斬りかかる。だが。
グリム「グロウラー!!!」
ヤツの周りに黒いオーラが現れる。
そしてそのオーラに村正の刃が弾かれる。
慎「チッ……。」
グリム「ホーネット!!!」
慎「ッ!!!」
体勢を崩した俺の足元に、ありえない速さでグリムが飛び込んできた。
そして。
グリム「飛べ!!!」
慎「グアッ!!!」
そのまま空中へ『殴り飛ばされ』た。
今ので肋骨が数本折れたな。
グリム「そして……」
飛ばされている俺に追撃をかけようとグリムが跳躍する。
そして空中で拳を振りかぶり。
グリム「沈め!!!」
慎「やべっ!!!」
ロードが間に合わない。どうする!?
霊夢「慎!!!」
ヤツの拳が俺に当たる直前、空中の俺は飛んできた霊夢に拾われた。
そのまま地上に降りる。
霊夢「大丈夫?」
慎「大丈夫、まだ肋骨が4,5本折れただけだ。」
まだ肺に刺さっていないのが救いか。
霊夢「それって大丈夫なの!?」
慎「まだ生きてるからな。」
霊夢「そういう問題……?」
グリム「ほう、乱入者が来るとはな。いいぞ。大歓迎だ。一匹残らず喰い尽くしてやる。」
魔理沙「霊夢!慎!」
妖夢「援護に来ました!」
やがて魔理沙と妖夢もやってくる。
魔理沙「コイツが、さっきのバカでかい魔力の源だ!」
慎「なるほどな、そんな気はしてたが。」
グリム「数が増えたなら、今一度尋ねよう。カガクブのココノエという女を知らないか?」
霊夢「知らないわ。」
グリム「そうか。それは残念だ。」
慎「それより、彩愛はどうした?」
魔理沙「早苗に任せてきたぜ。」
慎「そうか。……グフッ」
魔理沙「大丈夫か!?」
霊夢「慎!」
妖夢「慎さん!」
吐血した。さっきので内臓も潰れていたらしいな。
こうなると長期戦は無理だな。とはいえ、この狂犬を短時間で相手しきれるとは到底思えない。
さて、どうしたものか……
グリム「苦しいか。ならば俺の情けで、今楽にしてやろう。」
グリム「楽しかったぞ。お前は俺が『檻』から出た後で初めて戦いになった相手だ。」
グリム「敬意を表して、全力で葬ってやろう。」
グリム「ブラックホーク……」
グリムが拳を後ろに、大きく構え、その拳に力を溜める。
そして黒いオーラを纏う。
さっきの蹴りの加速を考えると、この体では避けられまい。
『無想転生』が無難か。
霊夢も魔理沙も妖夢も身構える。無理だ、お前らじゃこの状況は覆らん!
グリム「……スティンガー!!!」
慎「夢そ……」
速すぎる!!!間に合わん!!!
ドォォォオオオン。
辺りに轟音が鳴り響く。
気付けば、自分は地面に転がっていた。
辺りを見回すと、他の三人も同じような感じで転がっている。
恐らく、先ほどの攻撃が何らかの形で防がれ、衝撃波で吹っ飛んだのだろう。
そしてグリムを探すと。
謎のローブの男が、グリムの拳を『片手で』受け止めていた。
化け物2号かよ。
霊夢「……不知火!?」
慎「不知火?あいつがか?」
グリム「……今日は客が多いな。まぁ、その分喰らい応えがあっていいのだが。」
不知火「……ズェア!!!」
不知火がグリムを左手で受け止めたまま、右手の大きな太刀で斬りつける。
グリム「グアッ!……フフフ……」
グリムは大きく吹き飛ぶが、体勢を整えると、不敵に笑った。
不知火「……退け、如月 慎よ。」
慎「あ?」
何故こいつは俺を知ってる?
不知火「……今はまだ、貴様が相手出来る存在では無い。」
慎「お前は、何者だ?」
不知火「……。」
だんまりか。まぁいい。
霊夢「あなたは味方なの?」
不知火「……さぁな。」
はっきりしねぇな。
とりあえず立ち上がろうとする。
慎「っ!」
しまった、さっきの衝撃波で左足も折っていたか。
こいつぁ大人しく退いた方が良さそうだ。
慎「そんじゃ、お言葉に甘えて。」
霊夢「立てる?」
慎「物理的には。」
霊夢「もう。ほら肩。」
霊夢に肩を貸される。
霊夢「行くわよ。」
妖夢「乾介君も。」
乾介「ありがとうございます、魂魄先輩。」
魔理沙「ほらお前もだ。」
小さくなったティラノ君「すまねぇ……。」
それぞれがそれぞれを抱え、その場から飛行し離脱する。
グリム「喰らい損ねたのは少々名残惜しいが、貴様もなかなか喰らい応えがありそうだ。」
不知火「……斯様な化け物を飼っているとはな。我ながら悍ましいものだ。」
グリム「さぁ行くぞ仮面!!!」
不知火「我は『焔』。我は『業』。我は『真』。」
不知火「我が魂は仇成す全てを捉え、我が刃は捉えた全てを滅す!!!」
不知火「我が名は『不知火』!!!推して参る!!!」




