第18話 晩餐の予感
妖夢が弥生家に来てから、次の月曜。
原校・H2-3教室・朝
天音「編入生を紹介する。」
妖夢「魂魄妖夢です。よろしくお願いします。」
ガヤガヤ
モブ「なんか最近編入生多くね?」
モブ「これで四人目だよな。」
モブ「まぁ可愛いからいいけどさ。」
モブ「てかあの白くてふわふわしたやつ何?」
モブ「多分、能力的なアレだろ。知らんけど。」
モブ「銀髪か……リアルに見る日が来ようとは……」
栞里「なぁ、彼女も幻想郷から来たのか?」
周りがざわついている中、文月が訪ねてくる。
慎「そうだ。そして三人同様、アイツも文研部に放り込む。」
彼女も編入させる事にした。理由は、彼女の管理が楽だからに他ならない。
数百年前に失踪した魂魄の人間が現れるとは思っていなかったが、たまにはそういう事も起ころう。
モブ「ってかさ、もしかしてコイツも慎と同居してんのか?」
モブ「さぁ?聞いてみれば?」
モブ「はいはーい!如月慎君とはどんな関係ですか~?」
妖夢「はい、私が分家で、彼が本家の方で、簡単に言えば遠い親戚にあたります。」
モブ「なんだ~、思ったより普通じゃん。」
モブ「十二宗家だしね。」
モブ「っつうか、今考えるとさ、この学園十二宗家多くない?」
モブ「そうだっけ?えっと、如月、弥生、文月に霜月……」
モブ「ウチだけで四人もいるよ!」
モブ「あとほら、理科の師走じゃん?それから生徒会長が確か水無月で……」
天音「ハイ静かに。」
天音がパンパンと手をたたく。
天音「それじゃ魂魄さん、あそこの席に座って。」
妖夢「分かりました。」
天音「そういうわけで、あまり彼女を弄りすぎないように。それじゃあ今日の連絡ね。まずは~」
今回は何事もなく終わってくれた。やはり東風谷だけが特殊だったようだ。
昼休み・教室
妖夢「疲れました……。」
彩愛「そりゃそうだよね。あれだけの質問攻めに遭えば……」
魔理沙「アタシらの時も凄かったもんな。」
霊夢「あの時は誰かさんのせいで今日の妖夢より酷かったけどね。」
早苗「それは……まぁ過去の事ですし、水に流すって事で!」
慎「それは被害者が使う言葉だ。」
魔理沙「そういや、さっきからちょくちょく耳に入ってくる『十二宗家』って何なんだぜ?」
彩愛「十二宗家っていうのはね~」
彩愛が十二宗家について説明する。
十二宗家とは、元々は『極月』という一つの家で、初代天皇の神武天皇の弟が当時の事情で完全に天皇家から縁を断ち切らねばならなかった時、他の人間を連れて作り上げたのがその『極月』である。
それからは天皇家で無くなったことをいいことに子供を作りまくり、結果12人の男子が生まれた。
その12人がそれぞれ当主として名乗りを上げたのが、睦月家をはじめとする『十二宗家』である。
その苗字はそれぞれが後に月の名前を名乗り、さらには十二宗家の血を引く者のみが発動できる能力も存在する。
それが封神であり、それらは『己の遺伝子』を道具として発動する。
普通の能力とは違い、『捨てられる』事が『死』以外にありえない為、暴走体は生まれないが、同時に『対話』も行われないことになる。
また、どのように封神が覚醒するかも未だ明らかになっていない。
長々と書いたが、要は天皇の親戚である。
霊夢「なるほどね。よく分かったわ。よく分からないけど。」
魔理沙「その『てんのう』って何だ?凄いのか?」
勇太「ちょっ、それは流石に無いでしょ!」
早苗「まぁ幻想郷に天皇陛下はいらっしゃいませんからね。いいですか、天皇というのは~」
十二宗家は、それぞれが様々な分野で活躍していたこともあり、国内における知名度は高い。
例えば如月家は、日本一の剣豪として知られ、俺の親父は道場の師範代で、俺に剣を教えた人だ。
霜月家は世界的にも人気だった日本舞踊の踊り手で、大きな劇団をもってたな。
まぁもちろん暗殺を得意とする皐月家みたいなのもいれば、文月家に至ってはもう何が凄いのかいまいちよく分からない。
強いて言うなら、妄想のスピードと濃さだろうか。
栞里「しかし気付いてみれば、ここも大所帯になってきたな。」
今現在、俺達は俺自身、彩愛、霊夢、魔理沙、東風谷、妖夢、文月、斎藤の8人で机を並べ、弁当を広げている。
ほんのちょっと前までは四人だったのが倍になったのだ。
勇太「ついこないだまでは4人だったのにな。」
魔理沙「やっぱ飯は誰かと食う方がうまいぜ。」
慎「味は一切変わっとらんだろう。」
魔理沙「そういう事じゃないんだぜ。一人だと寂しいだろ?」
慎「そうか?」
霊夢「幻想郷にいたころは、一緒に食う飯を手に入れるのに必死だったからね……」遠い目
勇太「どんな暮らししてたんだよ……」
霊夢「そんなの決まってるじゃない。毎日神社の掃除して、たまにお賽銭が入ったらそのお金でご飯食べる。」
勇太「何かもう幻想郷のどの辺が幻想なのか分かんねぇ」
霊夢「そんなの名前だけよ。こっちの方が断然快適じゃない。」
慎「家と職場があればな。」
いつも通り、どうでもいい話で時間を潰す。
放課後・文研部部室
部室に移動し、妖夢に文研部の概要を説明してから文研部に入れた後、寺島達と話をしていると、不意に教室にノックの音が響く。
また依頼だろうか。
乾介「どうぞ。」
一ノ瀬「失礼します。」
最上「失礼します。」
栞里「おや、君たちはこないだの。また依頼か?」
入ってきたのは、こないだ依頼を解決したばかりの二人だった。
前回の依頼、個人的にはかなりいい暇つぶしになった。とはいえ、あんなことをやり続けていたら流石に睡眠時間が確保できなくなるが。
最上「いえ、まだちゃんと言って無かったので、お礼を言いに。」
一ノ瀬「あの日は色々とバタバタしてましたし、警察とかテレビとかで色々と忙しかったもので……」
妖夢「この者達は……?」
慎「前回の依頼の依頼者だ。しかし、報酬は既に受っとっている。こちらはこれ以上の要求はないが?」
最上「それなんですけど、お父様に皆さんの事をお話したら、『ぜひお礼がしたい』と言っておりまして……」
最上「それで、ウチのグループのレストランに招待しよう、という事になりまして……」
彩愛「それって、最上グループのレストランに、って事……?」
魔理沙「れすとらんって、前に行ったような所か?」
慎「最上のレストランだからな。値段はあそこの倍ぐらいと思っていい。」
魔理沙「マジか!」
霊夢「それをタダで!?」
乾介「あの高級レストランですよね!?」
早苗「美味しいなら何でもいいです!」
勇太「なんかこいつ等といると疲れるわ……特に東風谷……」
彩愛「そんなこと言わないの。せっかくだし、ご馳走になろう?」
勇太「あ、ああ、そう、だな、ははは……」
栞里「それで、それはいつになるんだ?」
最上「皆さんの都合のいい日でいいそうです。」
妖夢「状況が良く……」
慎「つまりは、タダ飯が食えるって話だ。」
彩愛「そういう事。ねぇ慎くん、早速明日の夜に行くっていうのはどうかな?」
慎「異論はない。好きにしろ。」
栞里「明日の夜だな。家族に確認を取らねば。」
勇太「俺も、おじいちゃんに訊かないと。」
がらららっ。
部室の扉が開く。
天音「ああ、続けてくれて結構。ちょっと置き忘れた資料を回収しに……」
一ノ瀬「あっ、霜月先生も!実は~」
天音「ほう、食事とな。それで、酒は出るのか?」
最上「えっと、多分ワインが出るかと……」
天音「明日の晩だな。よし乗った!」
慎「流石、酒には目が無いな。」
それでいいのか教師。
まぁ、学園長もちょっとアレだし、別にいいや。
次の晩。
学校の前に着いた黒塗りの外車で、俺達はそのレストランへと送迎された。
最上の父であり、最上グループ会長の最上義則と挨拶し、そのまま食事会がスタート。
天音はもうかなり酒が入っているし、幻想郷のメンツはナイフとフォークの使い方も知らない為、一から教えることに。
もうしばらくは、こういうのんびりした日常を、送れたらいいな。だって面倒事やなんだもん。
同時刻・別の場所
???「……ようやく出られたぞ。」
???「前は、『こっち』で『食事』を始めた瞬間に『連中』に封印されたからな。」
???「だがおかげで、封印の術式のパターンもある程度暗記できた。」
???「これからどうするか……まずは……復讐だ!!!」
???「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!」




