第17話 やってきた『夢』
能力紹介
『一点突破』
効果・一撃の威力を数倍にする。
道具・メリケンサック
使用者・矢車 秀典
対人戦においてはそれなりに強いはずなのだが、使用者が悪かったためにガチ対戦だと全く役に立たなかった様子。
慎との戦いのあと、このメリケンサックは親の手によって没収され、矢車本人は転校し、そこで心を入れ替え、日々の生活に励んでいるようだ。
なお、転校先の学校では先輩に虐められている模様。
それは突然だった。
いきなり少女に斬りかかられ、土下座された。
わけがわからないよ。
慎「改めて、誰だお前?」
妖夢「わわわ私は、kkkk魂魄妖夢と申しまして、その、kkkkこの度は非常に無礼な振る舞いを・・・」
魂魄を名乗る少女が、土下座をしながら、焦って答える。
霊夢「ていうか、アンタ何でここにいんのよ?」
妖夢「実は、その、紫様に落とされて。」
霊夢「なるほどねぇ。ったく、本当に紫は何がしたいのかしら。」
彩愛「何で慎くんに襲い掛かったの?」
彩愛が怒りながら尋ねる。
妖夢「その、そちらの本家の方が、三人を幻想郷から消し去った犯人かと思いまして……」
彩愛「本家?」
慎「俺とコイツは、本家と分家の関係らしい。簡単に言えば、ネジとヒナタの関係だ。」
彩愛「あ~、なるほど。」
こんなことを話していると、人が集まってきた。
中にはどこかへ電話している者もいる。
魔理沙「なんか人が集まってんぞ?」
慎「そりゃそうだ。大通りの真ん中で刀持った人間が暴れて、そして大声あげて土下座してんだから。」
妖夢「刀が何か珍しいのですか?」
慎「この世界では刀を携行している者は犯罪者扱いされ、没収と罰金の支払いを命じられる。」
妖夢「そうなのですか?」
早苗「逃げましょう!」
俺達はその場から走り去った。
そして、気が付けば全員家にいた。なぜここだ。
早苗「危機一髪でしたね。」
慎「俺は全然そんな気はしていないがな。」
早苗「気分ですよ気分。」
妖夢「それで……」
魂魄の娘が話を切り出す。
妖夢「ここはどこなんですか?」
慎「お前ら風に言うなら、『外の世界』だろうな。」
彩愛「幻想郷から来たってことは、今住むところは無いの?」
何故お前はそうやって人を泊めたがる。
妖夢「はい、つい先程落とされたところでして……。」
彩愛「どうしよう慎くん、もうお部屋ないよ?」
慎「泊めること前提かよ。そうだな……。」
モノが無いなら、対処法は一つしかない。
慎「……作るか、三階。」
魔理沙「えっ!?」
早苗「そんなこと出来るんですか!?」
慎「工房で造りながら屋根裏へ転移して、屋根を持ち上げてやればいい。大体一時間位か。」
彩愛「よかったね!これで寝床は確保だよ!」
妖夢「えっと、話がよく……」
彩愛「つまり、あなたは今日から弥生家の仲間です!よろしく、妖夢ちゃん!」
妖夢「いいんですか!?」
全く、ウチは宿でもなんでもねっつーの。まぁ、一人目が来た時点でもう何人来ても変わらんが。
慎「部屋ができるまでその辺にいろ。出来たら呼ぶ。」
妖夢「ありがとうございます!それから、よろしくお願いします!」
魔理沙「私達も忘れてもらっちゃ困るぜ。」
霊夢「一応、一緒に生活するのよね。」
妖夢「はい、よろしくお願いします。」
それからしばらくして。
慎「出来たぞ。」
早苗「ホントに出来たんですか!?」
慎「ついて来い。」
俺は妖夢を連れて、新しく出来たばかりの三階に案内する。
三階には三つの扉があり、俺は最も入口に近い扉を開ける。
慎「ここがお前の部屋だ。寝具と机以外は何もないがな。」
中にはベッドと机が人ずつ、それと後は何も置かれていない棚と空の箪笥くらいか。
妖夢「すいません、なんかお布団まで用意していただいて。」
慎「買いに行くのが面倒だから作っただけだ。」
話していると、後ろから彩愛達もやってくる。
彩愛「勝手にこんなことしちゃっていいのかな。」
慎「叔父さんが怒ったところで解体はせんだろう。」
霊夢「後の二つの部屋は?」
慎「何かまだ増えそうだから作っといた。」
このところ住人の追加は面倒事が来るだけでしかない。あまり増えてほしくはないな。
……この感想すらフラグになりかねないから、創作物は恐ろしい。
この後はまた歓迎会が行われ、家の中を案内し、そのまま就寝となった。
実生活で自然に『炊事場』という言葉を使うヤツは初めて見たな。
さて、今日は久々に寝ようか。疋田のように日中に体力が尽きるのは御免だからな。
前に寝たのは丁度一週間前だったか。
ベッドに潜り、目を閉じる。
夢の中・どこかの廃工場
少年1「なぁ、俺達『友達』だろ?」
少年2「だったら、『友達』のために、死んでくれよ。」
俺「お、お前ら、何で……」
少女「にいさま……」
俺「小夜!?今助け……」
少女「にいさまは、だいじないもうとのために、しんでくれるよね?」
俺「……は?」
……我は影……
俺「それって、どういう……」
少年1「どういうって、それが『友達』ってもんだろ?」
少年2「お前と一緒にいたのも、その方が楽で都合がいいからな。」
俺「じゃあ、俺は今まで何のために……」
……真なる我……
少女「おねがい、しんで?にいさま……」
俺「……。」
俺「ははっ、そういうことかよ。」
俺「『家族』も、『友達』も、」
俺「全部俺を陥れるための罠だったって事かっ……!」
……我は汝の心の海に潜みし者……
俺「だったら、みんな『敵』だってことだよなぁ……」
俺「『敵』は、全部倒さなきゃ……」
……そうだ。全て……
俺「全て……『滅する』!!!」
……俺はお前だ。手を貸してやる……
……理性が邪魔なら……
……俺が替わってやるよ……
俺「全て……ぶっ殺してやる!!!」
俺「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
俺「殺れぇぇぇぇぇ!!!『ムラマサ』ァァァァァァァ!!!」
現実・慎の研究室
気が付けば、俺は寝ていたはずのベッドの傍に立っていた。
霊夢「こんな所で刀振り回して、どうしたのよ?」
そして後方には、霊夢がいた。
足元には、バラバラになったベッドがあった。
そして右手には、村正を握っていた。
霊夢「なんか魘されていたみたいだけど、大丈夫?」
慎「ああ、多分な。」
なぜ今になって『あの時』の夢を見ていたのか。
そんなことはどうでもいい。俺は視線を時計に向ける。
時計は、朝2時を表示していた。
慎「起こしたか?」
霊夢「ちょっとトイレに降りてきたら、アンタの魘された声が聞こえてきたから。」
慎「そうか。」
気が付けば、体が寝汗でびっしょりだった。早くシャワーを浴びなければ。
霊夢「そのベッド、どうするの?」
慎「……作り直しだな。10分ありゃできんだろ。」
シャワーを浴びるべく、俺は研究室から出る。
……今更だが、『あの時』の『声』は一体何だったのだろうか。
まぁ、今はどうでもいいか。早く汗を流して、ベッドを作り直して寝なおそう。




