第16話 庭師、見参。
能力紹介
『リボルバー・スラスター』
能力・高速で巨大な『ボールペンの芯』を射出する。
道具・ボールペン
使用者・最上 悠理
起動前は普通のボールペンだが、起動すると大きなガトリング砲となる。
威力はかなり高く、通常の軍用ヘリならば一撃で鎮める。
暴走体を伴わずに覚醒した。しかし、もしこのボールペンに暴走体が存在したならば、おそらく街一つくらいなら一日もあれば壊滅しているのではなかろうか。
あの状況で落としたことに気が付いた最上は、実は無意識に街を一つ救っている……のかもしれない。
気が付けば、私は見知らぬ場所にいた。
私の名前は魂魄妖夢。幽々子様の命で、霊夢さんたちが幻想郷から突然消えたことを調査していた私は、突然紫様に襲われ、ここに至る。
どうしてこうなったのか全く分からない。しかし、焦っても仕方がない。ここはとりあえず、状況を把握しよう。
まず、ここは冥界でも幻想郷でもない。まず第一に、幻想郷なら少なからず感じる妖怪の気配がまるでない。それに、冥界に充満している僅かな霊気も感じない。
感覚を集中しても全く感じられない。つまり、ここは私の知らない場所である。
……どうしよう。
なんとなく、周囲を見回す。今私がいるのは、狭い通路の中で、その先には大きな通りがあるようだ。
私を今囲んでいる壁は、何だかよく分からないもので出来ている。こんな材質は見たことが無い。
それにとても高い。そのおかげで陽の光が遮られている。薄暗いし、とりあえず出よう。
大きな通りへ出ると、そこには見たことの無いものだらけだった。
まず、木造の建物が全く見えない。なんだか石みたいなもので出来た建物の壁が光っている。
通りにいる人々の服装もそうだ。やはりここは、私の知るどの場所でもないだろう。
しばらく辺りを見回していると、そこには知った顔があった。
あれは……霊夢さん?
その近くには、魔理沙さんに、あれは確か、守矢神社の巫女だったか。いつかの宴会で合ったことがある気がする。
気配からして、三人は本物だろう。
それともう二人。彼女らと同じくらいの年齢の男女が、三人と一緒にいる。
なぜ三人があの男女と一緒にいるのだろう。もしかして。
あの二人の人間が、霊夢さんたちが幻想郷からいなくなった元凶ではないだろうか。
そう思えば、紫様が私をこちらに飛ばしたのも、『あの者を打ち倒して霊夢さんたちを連れ帰ってこい』ということなのかもしれない。
仮に違ったとしても、あの者たちが三人をこちらに引き止めているのは間違いないだろうし、敵かどうかなんてのは斬れば分かることだ。
女の方はそうでもないが、男の方は殺気というか、戦い慣れている感じがする。
だが、魂魄流剣術指南役の私があのような優男に負けるはずがない。悪いが、一瞬で終わらせてもらうとしよう。
物陰に隠れ、こっそりと背後から近づく。
まだ気付かれていない。その油断が命取りだ。
妖夢「覚悟っ!」
慎side
今日もかったるい一日だった。
いつも通り、単位を得るために授業に出る。
いつも思うのだが、数学や物理なんて授業の意味はあるのか。あんなのちょっと考えればわかるだろ。教科書を見るまでもない。
早苗「次の数学の小テスト、どうしましょう~」
魔理沙「余裕だろあんなん。魔道書の解読の方がよっぽど難しいぜ。」
霊夢「そうなの?まぁ私はいつも寝てるからよく分からないけど。」
彩愛「それでよく赤点とらないね。」
霊夢「まぁ全部勘だし。」
どうやら全ての人間がそうではないようだ。まぁ、当たり前か。
今日は依頼は来なかった。まぁ、いつもは半月に一人くらいだし、別段おかしいことでもない。
後は面倒な事さえ起きなければいいのだが。
そう思うこと自体がフラグであった。
先ほどから殺気を感じる。それで隠れているつもりならおめでたいヤツだ。
俺だけならまだしも、彩愛にも殺気を放っていやがる。
あと大体5秒くらいか。
5…4…3…2…1…
白い髪の少女「覚悟っ!」
慎「村正っ!」
上から斬りかかってくる。村正を召喚し、受け止める。
弾かれた少女は後ろに下がり、距離を取る。
霊夢「妖夢!?」
少女「三人とも、迎えに来ました!さぁ、今のうちに早く!」
慎「まるで俺が人攫いみたいな言い方だな。」
少女「それ以外になにがあるというんです!」
彩愛「慎くんはそんなことしないよ!」
少女「そんなことは斬れば分かります!」
ここまで大胆な挑戦は久々だ。面白い。
慎「……お前に俺が斬れるか?」
少女「私に斬れぬ物など、あんまりない!」
つまりちょっとはあるんだな。
まぁいい。敵なら……斬る!!!
少女「魂魄流剣術指南役兼庭師、魂魄妖夢!」
慎「十二宗家如月家当主、如月慎!」
妖夢「参ります!」
慎「推して参る!」
魂魄?どっかで聞いたような……まあいい。
考えるのは……後だ!
妖夢「やぁっ!」
上段から切りかかってくる。それを村正で受け止める。
すると受け止めている刀に力が込められている。なるほど、競り合いか。
妖夢「っ!?」
本格的に拮抗する前に、刀身と俺の体を横にずらして少女の刀をいなす。
そのまま刃を滑らすようにして、少女を切りつけようとする。
慎「はぁっ!」
妖夢「っ!!!」
バックステップで避けられた。なるほど、俺にケンカを売るだけの事はある。
しかし何故もう一振りある刀を抜かない。それで俺を殺せるつもりなら、舐められたものだな。
妖夢「そこっ!」
今度は下段から切りかかってくる。それならば。
慎「よっと。」
妖夢「!?」
近づいてきたところで、少女の肩に片手をついて飛び越えてやる。
そのまま、こめかみに後ろ回し蹴りを叩き込んでやる。
慎「おらっ!」
妖夢「グッ!」
横に吹っ飛ぶ。しかし、立ち上がってくる。
普通の人間なら、この強さの衝撃なら理論上は気絶するはずだが、意外と頑丈だな。
立て直す時間をくれてやるほど俺は優しくない。よろけている少女に突撃を仕掛ける。
慎「スェイ!」
妖夢「ぐっ!」
踏ん張れるはずもなく、避けることが叶わなかった少女は、アンバランスな姿勢で受け止める。
その勢いで少女は背中から倒れる。さぁ、この状況をどうひっくり返すか、見せてもらおう。
慎「おらっ!」
真上から村正を振り下ろす。少女はこれを横に転がることで避けた。
よろよろと少女は立ち上がる。凄いな。これだけ下半身に負荷をかけてもまだ立てるのか。
距離を取った少女は、今度は中段から突っ込んでくる。
妖夢「やぁっ!」
その突撃を村正でいなしながら、感じる。
なんというか、動きが『型どおり』だな。ここまでわかりやすいとは。
刀への力の込め方からして、恐らくイメージは『魂魄流剣術』なのだろう。
『魂魄流剣術』とは、刀を己の一部と捉えることで、より直感的に、より繊細に刀を振るう剣術。
だが目の前の少女は、『己が刀の一部』になってしまっている。
いうなれば、『半人前』といったところだ。
横方向から切りかかる刃をはじき返し、鳩尾に拳を一つくれてやる。
妖夢「ぐはっ」
しかも動きが、まるで試合のような動きだ。さっきから腹や、そもそも『俺自身』を狙って刀を振っている。
俺を殺したいなら、四肢を削ぐために肩や腰を狙うか、それか頭だろうに。
さっき『斬る』とか言ってたけど、見たところ得意なのは『不意打ち』だけで、実践の経験、とくに『殺し合い』は経験がないのだろう。
それでよく『斬る』とかあんなに自信満々に言えたものだ。
さっきの鳩尾が効いたようで、腹を押さえながら立ち上がるも、真っすぐ体を起こせていない。
体は頑丈でも、痛覚は人並みらしい。
顔の前に刃先を突きつける。
慎「次から、ケンカを売る相手は考えような。」
妖夢「……あなたは、何者なんですか?」
慎「ただの、人間だ。」
一度村正を引き、そのまま顔に突き刺そうとする。
霊夢「ストーーーーーっプ!!!」
ここで霊夢の静止が入った。
妖夢「霊夢さん!?まだいたんですか!?」
慎「……知り合いか?」
霊夢「そうよ。コイツも幻想郷の住民。正確には白玉楼っていう、冥界にある屋敷に住んでるわ。」
妖夢「霊夢さん、この者は何者なのですか?」
霊夢「如月慎。あっちにいるのが弥生彩愛。紫にこっちに飛ばされてから、世話になっている家主よ。」
彩愛「どうも~」ノシ
妖夢「えっ?如月?」
慎「そうだな。俺は如月だ。」
思い出した。
『如月家』と『魂魄家』は、本家と分家の関係で、如月家が本家である。
確か二つに分かれたのは、資料によれば800年ぐらい前だったか。
確かこの少女、魂魄妖夢とか名乗ったか。ということは、コイツは魂魄家の者か。
ならば、遠い親戚にあたるのか。
妖夢「如月って、あの?」
慎「ああ。十二宗家の如月家だ。今は俺しか、如月家で生き残っている人間はいないがな。」
少女の顔で、どんどん焦っているのがわかる。
そして。
妖夢「申し訳ありませんでしたっ!!!」
土下座した。
大通りの真ん中で。いい迷惑である。




