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現想真魂録~幻想の勇者共が現代入り~  作者: 観測者S
第弐章 In your mind, maybe.
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第9話 追跡

慎は窓から見えた黒い影を追う。見える限り、3人。

黒い影らも一ノ瀬を追っているあたり、おそらく彼らが一ノ瀬を襲ったのだろう。

何か情報が得られるかもしれない。


村正を手元に召喚する。今度は家からは飛んでこない。

霊夢に言われて出したときと同じ、『術式』による転移である。


気配を消し、追いついた。

黒い影らは覆面をかぶり、市街地の路地裏から一ノ瀬を狙っていた。


黒い影のうち一人の肩をトントンと叩く。


「!?」

「よう。」

「ぐっ……。」


村正を首元に突き刺し、そのまま引き抜く。

力を失った肉の塊が、そのまま倒れる。


「おっと。」


後ろからつかみかかる、2人目の腕を躱し。

真下に振り下ろされるナイフを横に躱す。


待ってましたと言わんばかりに、避けた先にサイレンサー付きの銃を撃ってくる。

それを村正で弾く。慎にとって、銃弾は見慣れていた。

人影が銃弾を弾いたことに驚き、一瞬固まる。


その隙を見逃さず。

村正を持ち手で回転させ、逆手に持ち変え。

正面から胸、そして気管、脊髄とを一瞬で貫く。


人影は生命活動を停止し、力なく倒れていく。

刀を引き抜き、血を振り払う。


銃弾が飛んできたので、今殺した人影を盾にする。


慎「そっちか。」


手に持ってる死体から先ほど使われたハンドガンを奪い、弾が飛んできた方向へと打ち返す。

人影が動いた。

物陰に隠れ、村正の力を開放する。


慎「村正、起動。ロード、『影踏みシャドウダイブ』。」


影に潜り、敵の足元で実体化してから足首に切りかかった。


「ちっ。」


が、躱された。


黒い影は焦りから銃を乱射する。慎は飛んでくる弾の7割を躱し、3割を弾いていく。

そのうち5発は敵の体に打ち返されていく。


弾が帰ってくることが予想できなかった黒い影は、回避行動が遅れ。

結果弾はヤツの右膝と脇腹に当たり、立てなくなった。


銃を握っている、利き腕であろう右腕を切り落とし。

足で踏みつけ、左の肩も外す。


「さーて……。」

「うぐっ……」


床にあおむけにして押し付け、村正を首元に左手であてがう。

耳に見える通信機器を奪い、右手で握り砕く。


「お前らのは雇い主(飼い主)誰だ?」

「……。」


だんまり。だがそれは慎の想定内。

この程度で喋るようなら、そもそもこんなスパイまがいの仕事が任されるはずもない。


「で、この質問が終わるころにはさ、多分お前は死ぬんだろうが。」

「……。」

「こうなることも、作戦開始前に想像できたはずだな?」


「……。」

「なら、少し反逆してみないか?」

「勝てるはずもない相手に当たる可能性のある仕事をお前に押し付けた、雇い主(飼い主)に。」

「我々は、元々、そういう契約で、動いている。」


駒になることに抵抗がない。

この時点で、慎から見れば"人としての尊厳を捨てて"いた。

そうなれば、自尊心を崩して怒りを買い煽る方法が通用しない。

何か持ち物から、付け入る隙を探さなくては。


すると、懐から一枚の写真が出てくる。

それともう一つ、銀の懐中時計。

懐中時計には、慎の見覚えのある家紋が彫られている。

この家紋は……


「お前、の皐月家()の工作員か。」

「……。」

「こっちの写真は……」


人影の覆面を剥ぐ。

それは、目の前の男の写った家族写真。


「任務中に身元が割れる代物を携行するとはな。」

「……。」


「繰り返す。雇い主(飼い主)は誰だ?」

「……。」

「失血死したいか?」


「飼い(いぬ)として死にたいなら手伝ってやる。どうする?」

「……。」


「……新島グループ。」

「やっと話す気になったか。内容は?」

「一ノ瀬宮の、捕縛。」

「理由は?」

「そんなものは、知らん。」

「依頼人の名前は?」

「……会長、新島にいじま武久たけひさ……。」


最後に首謀者の名前を残し、影だった男は命を落とす。

アスファルトには一面の赤。


「……死んだか。」


情報の一端を手に入れた慎は、新たな疑問に至る。

それは、なぜ新島グループが宮を誘拐しようとしたのか。


新島グループとは、風邪薬やら自動車やらと、ほぼあらゆるジャンルで展開・成功しているグループである。

3年ほど前に、ライバルの最上ホールディングスを抜いてから、一気に成長した。

最近になって最上ホールディングスの成長も目覚ましい物があり、再びしのぎを削っている。

その大手企業が、一ノ瀬と何の関係が?


「最上ホールディングス、か。調べてみる価値はありそうだな。」


収穫はあった。今日はもう帰ろう。その前に。


「返り血、どうしようか……」


彼は大量の返り血と格闘することとなった。






「ただいま。」

「お帰り、慎くん。どうだった?」

「収穫アリ、だ。」


慎が帰宅すると、既に女性陣は家にいて、各々くつろいでいた。

トランプに興じる魔理沙、早苗、彩愛。それを眺めつつ煎餅を齧り熱い茶をすする霊夢。


「それで、いきなり飛び出して、何してたんだ?」

「情報収集。」

「もう情報掴んでたのかよ!」

「それで、成果は?」

「まぁ、最低限は。」


彼が研究室(へや)に荷物を置きリビングへ戻ると、全員はテーブルについていた。


「『一ノ瀬を襲った犯人』について。犯人は、『皐月家』の工作員だった。」

「『皐月家』?」


慎は、『皐月家』について説明する。

皐月家とは、一見すると普通の家だ。

だがその実態は、代々続く暗殺の専門家の集団。

今『表』にいる皐月家の家族は、そのボスと幹部であり、

依頼を受ければ、家族・友人関係なく殺し、

そしてその派生として、工作活動や諜報活動も行っている。

連中は行動の痕跡を一切残さず、それに例え警察が捕まえようとしても、まるで蛇のように逃げ回り、最終的には裁判で無罪に持ち込み逃げ切ることから、

裏社会では通称『蛇』と呼ばれている。


「そういえば、高等部の生徒会にも皐月って人がいたような……。」

「なるほどね。彼女の話と合わせると、その『蛇』って連中は、何者からかの依頼を受けて、宮を誘拐しようとしたわけね。」

「依頼主も分かっている。新島グループ会長、新島武久だ。」

「その武久って人、宮と何か関係あるの?」

「さあな。俺にもまだわからん。ただ……」

「ただ?」


「いや、いい。まだ確定しきれていない予想だからな。」

「なんだよ。もったいぶらずに言えよ。」

「そうか?じゃあ言うが……」


「多分、最上は新島に拉致られてる。」

「最上って、確か、宮さんの親友の……」

「根拠は?」

「半分は勘だが。もう半分は。」

「最上ホールディングスという会社が、新島グループとライバル関係でな。その会社と最上に関係があるのかは知らんが、もし社長令嬢とかなら、狙われる可能性はある。」


「なるほど。」

「ただどの道、わざわざリスクだらけの手段に出た根拠がよく分からないが。」

「うーん……」

「そうですねぇ……。」

「……。」


「よし、飯だ!」

「魔理沙?」

「分からない事をうんうん唸っててもしょうがないぜ。だから、まず飯を食おう!」

「まぁ……、そうだな。そうしよう。」

「じゃあ、早速準備しますね。」

「あ、それなら私も手伝うよ!」

「ありがとうございます!」


魔理沙がいい具合に話を切り上げる。文研部には、明日にでも報告しようか。

雰囲気が変わる。その時、霊夢は"何か"を感じた。

それは、常に彼女を導いてきた"勘"。


"目の前の少年が、外道に堕ちているのではないか"。


「ねえ、慎。」

「どうした博麗?」

「今の情報、誰に聞いたの?」

「蛇本人に。」

「どうやって?」

「ちょっと後ろから肩叩いてから聞き出した。」


返答に不審点は無い。

仮にそうだとして、彼女自身にどうすることも、どうするつもりもなかったが。


「……ふうん。」


寝首を搔かれ、次の朝を拝めない。

その可能性が、一瞬霊夢の頭をよぎる。


「なあ。お前らってさ、どうやって空飛んでんの?」


唐突。

霊夢がその疑惑に頭を回し始める前に、慎は全く異なる話題をぶつける。

それが意図したものかはさておき、彼女がそれ以上思考することはなかった。


「どうって……こう、ふわーっと。」

「……よく分かった。」

「私の場合は、それが能力だったりするんだけどね。」

「ほう。じゃあ魔理沙と東風谷も、お前と同じ方法で飛んでんのか?」


「さぁ。ただ、私の場合が、能力によるものってだけ。」

「じゃあお前の能力って?」

「『空を飛ぶ程度の能力』。そう呼ばれてるわ。」

「それが『程度』とはな。恐ろしい世界だ。」


皮肉めいて幻想郷を評価する慎。

霊夢とてそこに否定はなかった。実際そうなのだから。


「少なくとも幻想郷じゃ、実力者は空くらい飛べて当然だからね。」

「つまりは、あまり意味のない能力なのか?」

「そういうわけでもないわ。『空』、つまりは『地の上』、『(ことわり)の外』へ飛ぶ。つまり、何者からの干渉も受けなくすることができる、ということよ。」

「なるほど。使用者の解釈次第で効果が変わると。」


このやり取りを以って、彼は、『実際に見て』、『やっていることを理解した』。

この問いの目的は、慎がそれを把握することにあった。

それこそが、彼の能力を拡張する。


「さあ皆さん、ご飯できましたよ~!」

「今日は私特製のキノコたっぷりシチューだぜ!」


こうして、現代入り3日目が終わっていった。

どうも、観測者Sです。今回も読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、慎の異常さが現れた回だとおもいます。

なにせ、最初の二人の工作員は問答無用で殺し、三人目も死の一歩手前まで追いつめてますからね。

しかもそれに対して、慎は何も思わない。

あとはまあ、色々とややこしい話でしたね。あまり議論に魔理沙が割り込まないのは、話しについていけてないからだったりします。

それと、章のタイトルにも意味がちゃんとあったりします。そのあたりから展開を想像しながら読んでいただけると、面白みが増すかな、と思ったりしています。

誤字脱字、日本語の間違い等がありましたら、教えていただけると幸いです。

それでは、また次回で。

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