八話
…特に話すことはない、かな?
今回少し、ヤンデレいけたかもしれない!
まだまだ軽いけどね!
ってことで物語スタート!
「ねえ、月」
「な、なんだ?」
白は俯いているため、前髪で表情が隠れて見えない。
「やっぱり僕も連れてってよ」
「……ん?」
「だから、僕を一緒に連れてって」
「…………」
「ずっと月と一緒に居たい」
白がユックリと。一歩ずつ俺に近づいてくる。
その姿を幼馴染と被って見え、一歩。後ろに下がりそうだったが、白の頬に流れて見えた涙を見て、その場から動かず、俯いたまま俺のことを正面から抱きついてきた白の背に手を回す。
「白。そのままでいいから聞いて欲しい」
「……うん」
「もし。もしも、だ。俺がポイントを使って白と一緒に異世界に行ったとしよう」
「……うん」
「一緒に行ったとしても常に一緒にいられるわけじゃないんだよ」
「…………」
「白を一緒に連れて行ったとき、白のステータスは低くなるんだよね? 危ないことに巻き込まれるかもしれない可能性は異世界じゃ高いんだよ」
「…………」
「今のままだったらさ、夜の時間。俺が寝たときにしか会えない。っていうのがあるけれど」
「…………」
「この時間だけは誰にも邪魔されずに二人きりでいられるんだ。一緒に異世界に行ったら邪魔が入ったりするかもしれない。それに、ずっと二人で旅するわけじゃないかもしれない。二人きりの時間なんて取れなくなることのほうが多いかもしれないんだよ?」
「…………」
「それでも一緒に異世界に行くって言うなら、俺はレベルを上げてポイントを溜め、白と一緒に異世界を周るよ」
白はしばらく、俺の背に回した手をもぞもぞと動かしたりしていたが、考えがまとまったのか俺の服で顔を拭き、見上げてくる。
「言い包められた気がしないわけじゃないけど、”二人きり”の時間があるのは重要だね。僕はここにいるよ」
「うん。ありがと」
「……なんか僕は、浮気をしている夫を健気に待つ美人妻みたいだね」
「あ、ああ。そうだな」
……自分で美人と言うほど自信があるのか。
まあ、白が女と分かってから可愛く見えるけれど。
「そうだ白。聞きたいことがあるんだ」
「ん? どうしたの?」
「俺たちはさ、異世界であるはずなのに言葉が通じるのはスキル欄にないけど白の力のおかげだよな?」
「うん。そうだよ」
「さっき、翻訳が英語に一瞬なったのは白のちょっとした仕返しだったりするのか?」
「うん。そう……そうだ。思い出した」
まずい。そう思って白から離れようとしたときにはもう遅かった。
いつ力を使って作ったのか、白を基調とした天蓋付きのベッドが俺の後ろにあり、そこに押し倒される。
そして腹の上に白は乗っかる。
マウントポジションを取られた俺はもう、為す術もない。
無理やり起き上がればなんとかなるかもしれないが、白を相手にそんなことはしたくない。
また、起きればいいかとも思ったが、それをやったら次はないような気がしてできない。
なので大人しくしているしかないのだ。
「な、なあ白。少し落ち着こうよ」
「あはは。面白いことを言うね、月は。僕はもう我慢の限界なんだよ」
白は体を倒し、顔を俺の首に持ってくる。
「んん。月のいい香りがする。そしてとても美味しそうだ」
「っん」
俺の首に顔を近づけた白は匂いを嗅ぎ、そのまま舌で首をなぞり上げてくる。
「月。僕だけの月。”アイツ”には渡したくない」
「……アイツ? 誰のこと?」
そのまま首を舐めてくる白が言ったアイツが誰だか分からなかったので聞いてみる。
白は顔を離し、恍惚とした表情で俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。
「昨夜、月の部屋に来て月の頬を一度撫でて出て行った銀髪の女だよ」
「その娘がどうかしたのか?」
「ん? 月はその娘に鑑定を使っていないの?」
「ああ、使ってない」
「んー。んー。……まあ、いいか。その娘の持つスキルの一つに”真実の瞳”があるんだよ」
「真実の瞳、ねぇ。言葉通りならステータスとか隠蔽しても意味がない、と?」
「うん。その通りなんだよね」
「でも、そんなスキルはポイントで取れる欄になかったけど?」
「あれは俗に言うユニークスキルだからね」
「なるほどね。……俺たちには一つもないようだが?」
「ただでさえポイントっといったチートなものがあるのに、さらに望むのかい? それこそつまらなくなっちゃうよ?」
「それもそうだな」
なるほど。そういった配慮があったのか。
…………ん? ってことはその銀髪の少女には俺のステータスが見えていると。
それを親である国王や妃が知らないわけはなく。
…………。………………。
あれ、まずいんじゃね?
「なあ、白。時間軸ってどうなっている?」
「時の進み方は一緒だよ」
「…………そうか」
それを聞いた俺は急いで食堂に戻るため、起きようとした。
そう、したのだ。
「今回は逃がさないよ。月」
「早く戻らないと俺のステータスが!」
「あの娘なら大丈夫だから安心して、ね?」
「何を根拠に言っているのさ……」
「一応、神様やってます」
「……そうでしたね」
「だから大丈夫。気がついたら終わっているから、ね?」
白は俺の服の中に両手を突っ込んで直接体を触ってくる。
「お、落ち着こう。白」
頬を朱に染め、口の端から涎を垂らしながら何かをブツブツと俺に聞こえない声量で呟く白に何回目かの同じ言葉をかける。
そんな白の表情だが、目だけは元の世界にる幼馴染の朱莉が機嫌の悪いとき……特に、女関係のときと一緒だ。目からハイライトが消え、俺を見ているのか見ていないのか分からないあの目だ。そしてブツブツと何かを呟いているところも似ている。
「……ふふっ。大丈夫だよ、月。僕は神様だからある程度は未来のことも分かるんだ。だからあの娘と月があんなことをしても僕は寛大な心で許してあげるよ。だって月の初めては僕が貰うのだから。……月だって口ではなんだかんだ言いながらも本当は期待しているんでしょ? 反抗しているのは口だけで顔や体は僕のことを受け入れているよ」
「いや、俺初めてじゃないんだけど……」
「…………」
あ、これは本当にまずい。……いや、最高かもしれない。
今、考えることじゃないかもしれないが俺のポイントが高いのは元いた世界でアニメやラノベにはまっていた。授業中なんて寝ているか妄想をしているかの二択だったし、常に今起きている異世界召喚みたいなことが起きないかと切に願っていた。
そして中でも好きなキャラの属性がヤンデレだった。
そういった本とかもヤンデレものが多かった。
幼馴染の朱莉がヤンデレになった理由は”あの事件”だと思う。白がこうなった理由は推測でしかないが長らく一人だったところを俺と出会って変わった、みたいな感じか?
そして今、俺がまだ経験がないと思っていた白に真実を告げ、それを聞いた白の顔から表情が消えた。
その表情は、先程までの恍惚とした表情に目から光が消えていたときよりも最高にいい。
「……月、初めてじゃないの?」
「ああ。中2が俺の初めてだな」
「へぇ、そっかぁ。なら今、僕で上書きをしなきゃ」
「……お、落ち着こう」
そう言っている俺の顔はきっと、嬉しくて笑っていただろう。
「何日経ったのかな?」
「いや、たぶん一日……かな? そんなに経ってはいないと思うけど」
お互いに正面から抱き合う形で横になっている。
ベッドや服、体は白の力で綺麗になっている。
「ふふっ。僕の体から月の匂いがする」
「いや、俺の胸に顔を押し付けて匂いを嗅いだら俺の匂いだろう」
「んーん。ちゃんと僕の体からも月の匂いがするよ」
「そうか」
「うん。それに月を僕で上書きできてこれ以上にないくらい嬉しいよ」
「まだ、満足していなさそうだね」
「いくらしても僕は満足しないさ」
白が胸から顔を離したかと思えば、今度は首を甘噛みしてくる。
俺の手は白の背に回したままで好きにさせる。
「でも、一旦終わりにしないとね」
「ん?」
「僕は寛大な女だよ。月が異世界で何人女を侍らそうが、ここでは僕と二人きりなんだ。僕と月だしか存在しない、ね。……だから一回起きるといいよ。僕は”ずっと”月のことを見ているから」
「ん、そうか。それじゃまたな、白」
「うん。またね月」
………………。
…………。
…………………………。
あのときと同じように、目を閉じて元に戻ろうとして、目を開けても白がいる。
「……白」
「ふふっ。月をこのままここに居させて、ずっと……ずっと一緒に二人きりってのもいいかもしれないね」
「異世界……周りたい」
「だ、大丈夫だから! 今度こそ戻れるようにしたから!」
俺に嫌われるとでも思ったのか、慌てる白もこれまた可愛い。
「それじゃ今度こそまたね」
「うん。楽しみに待ってるから」
そして目を閉じる。
開けて見るとすぐ目の前にあの銀髪少女の顔があった。
「……あ、起きた」
「……え?」
八話目にしてやっとヤンデレが出てきたような…?
後2、3話のせたら閑話を挟むかもしれないとだけ言っておこう
今日、期末テストの半分が返ってきたけど、まあどうでもいいか…
ってこでまた次話〜