六十一話
お久しぶりです。
ついに(180÷10)禁の小説を書いてしまった作者です。
お気に入りが1000件を超えて意味が分からない作者です。今後もこんな間を開けての更新になっていくと思いますが……
甲本は氷の棘によってできたかすり傷の手当てをしながら先程の先頭を思い返していた。
「ねえ、私とあいつ……何が違うのかしら?」
「何が違うと聞かれても……なにもかも、と答えるしかないわ」
周囲への警戒を続けたまま、レーチェは甲本の近くに生えている木の根元に座り、口を開く。
「甲本さんから前の世界についての話を聞かせてもらったことから考えると……甲本さんや他の勇者たちはこの世界に馴染んでからの成長力が凄いわ」
「あいつは……?」
「……勇者として召喚されてから一度、遠目に見る機会があって、さっきの先頭を見て確信を抱いたのだけれど……あの子たちは召喚される前から相当修羅場をくぐっていると思う。それにここにきてからの心構えも甲本さんたちより確固たるものがある気がする」
レーチェの予想はそれほど外れているわけでもなく。
修羅場。ほとんどが……いや、その全てが朱莉絡みである。
心構えも側から見れば確固たるものを抱いているように見えなくもないのであろうが、知らない方がいい事も世の中には存在する。
「少し、厳しいことを言うけれど」
「なんでもいい。強くなれるなら」
「才能が全てよ。どれだけ努力しようとも、最後には才能が物言うの」
その目に少しの寂しさが見て取れたが、甲本はそれに触れることはなく、目を閉じる。
「……あの子、天宮くん? 私が全力で戦っても甲本さんと結果は同じだと思うわ。戦況を瞬時に把握してあらゆる可能性を想像する頭脳が一番の武器ね」
「……魔法じゃなくて?」
「確かに、魔法も無詠唱であそこまで出来る人なんて他に見た事も聞いた事もないわ。仮に他の人があそこまで魔法を扱うことができても彼のようにはいかないわ。同じ状況になることなんてほぼ無いし、その時の最適解はその時々によって違う。それをしっかりと使いこなせる頭脳があってこそなのよ」
「頭脳……」
甲本や他の勇者たちも月には及ばないものの、この世界で戦っていくには十二分以上に持っている。
しかし、それを活かせていないのもまた現実であった。
やらなければやられる、だから盗賊なども相手にしてきた。
割り切ったと思っていても、実際に割り切れていないことなど多々あるため、彼ら彼女らは前の世界での価値観が邪魔をし、一線を越えることができないでいるのだ。
「想像できることは実現する、といった名言があるんだけど、文字通りの意味。だから様々な可能性を想像できるほど対処もできるってね」
「とりあえずの目標は天宮に怪我を負わせることね。才能が及ばなくとも努力と機転で勝てるってことを証明してみせる」
「目的地は一緒なのだし、またすぐ会うことになるけど」
それを聞いて甲本は嫌そうな顔をするも、仕方ないとため息をついて立ち上がり、月たちが歩いていった方へと足を向ける。
☆☆☆
「……何しているの?」
振り向けば怪訝そうな表情を浮かべた甲本と純粋な疑問を抱いているレーチェがいた。
先に進んでいると思っていたのに、こんなすぐ近くにまだいた事であろう。
「ここに恐らくエルフたちが張った結界があるんだけど……壊していいものか悩んでる」
「……いえ、壊すのは流石に」
「壊したら、恐らく敵対関係になる。ただ、さっきから見られてるのは分かっているが……出てこないんだよな」
感じる視線も一つだし……ああ、そういやや。
「ミリオナから預かった手紙があったな」
「忘れてたの?」
「印象に残ってなかっただけ」
「それを忘れてたって言うのよ……」
何を言っているのかよくわからないが……手紙がよく見えるようにしながら再び声をかける。
「これ、エルフのお偉いさんに渡してほしい手紙なんだが。差出人は獣人の国のトップだ」
言い終えるか終わらないかのあたりで風が吹き、目を閉じて開けば手に持っていた手紙が消え、感じていた視線がなくなる。
「しばらく待ってりゃどうにかなるでしょ」
「ねえ…………な、なによ……」
「これ以上近づかないでください」
「お前は敵だ」
何か話したかったらしい甲本が俺に声をかけようとしたが、言い切る前にレイナたちが間に入り込んで邪魔をする。
「ちょ、ちょっと話をするだけじゃない」
「敗者は黙っていればいい」
「なんだかんだいってまたキスしてもらうつもりなんでしょ?」
「そ、そんな訳ないじゃない! 天宮、なんとかしなさいよ!」
「何もしてこないから、このまま話せば?」
「……私に戦い方を教えてほしいの」
「無理」
「何が足りないのか、天宮のそばで戦い方を見せてもらうだけでも……え……無理?」
「面倒なので」
断られた理由が予想外なのか、呆けた顔をしている。
いまこうしているのが奇跡と言っていいほどレイナたちが大人しいというのに、面倒ごとをわざわざ引き起こすこともあるまい。
俺に来るならばいいが、おそらくは甲本に向くだろうし、いいことがあるわけでもない。
「戦い方ならそこにいる人の方が適任だ。俺のは参考にならん。それにそれを学ぶためにここへ来たんだろ?」
「それはそうだけど……」
「一緒にいる間、気が向いたら助言ぐらいはしてやるよ」
驚いた顔でこちらを見て来る甲本には悪いけど、見張りが戻って来たようで。
「案内する。全員付いて来る」
姿を見せたのは小さくて可愛らしいエルフの少女であった。
いくつか気になるところがあるとすれば、着古された服、目のあたりを包帯で覆っていることと、体に痣が見えることだろうか。
「ケガ、治すか?」
「何を悠長に聞いてるの! 手当てしないと!」
「余計な事はしなくていい。見失わないよう付いて来る」
近づいて手当てをしようとした甲本の手を払いのけ、エルフの子は背を向けて歩いていく。
「甲本。確かに元の世界では褒められた事だが、この世界ではそうとも限らん。なんらかの罰なのか掟なのかがあった場合、面倒ごとになるだけだ」
「…………分かったわ」
「まあ、予想できる事はハーフか他のなんかしらの理由でこれから向かう集落のエルフたちからあの子はハブられてるってことかな」
「……あなたは心でも読めるの?」
前を歩いていたエルフの子は立ち止まって振り返り、俺の方へと正確に顔を向けていた。
目が合っているというわけでもないのに、俺の方が心の奥底まで見られているような気がする。
「いんや、心は読めない。見た情報から推測しただけだよ」
「……そう」
再び少女は前を向いて歩くが……心なしか歩く速さがゆっくりになった気がした。
「ここ」
「着いたか」
「私は仕事に戻る」
あれから十分ほど歩き、目的の場所へとたどり着いた。
少女は用が済んだとばかりに踵を返し、来た道を戻っていく。仕事とは見張りのことだろう。
最後に一瞬だが、レーチェの方を見た気がしたが……気のせいだろうか。
分からないことはひとまず置いておき、ざっと見回してみる。
エルフの家は地面だったり木の上だったりと色々なところに建てられてあり、デカイ木に多少豪華な飾り付けをされた家が建っている。
それより奥にはもっとでかく、そして淡く光っているように見える木がドンとそびえ立っていた。
「おお、レーチェか。久しいな」
「お久しぶりです。長老様」
「様はいらんと言っておるではないか。そちらさん達は初めて見るのぉ?」
「天宮月。手紙を見てもらったと思って話を進めると、書いてある通りブラブラと見て回りたいだけだ」
そのまま俺がレイナたち、加えて甲本も紹介していく。
「今時珍しいの。私等だけでなくあやつらに対しても偏見など持たずに接するのは。言葉通り何もないところだがゆっくりしていくといい」
握手なのだろう、手が差し出されるが……どうするかな。
さっき集落を見回した時にそこそこの数のエルフが隠れているのは分かったし、長老とか言われてた目の前にいる歳食ったエルフの手には微かだが魔力が集められているのを感じる。
「ええ、よろしくお願いします」
結局いきついた答えは……相手の思う壺にことが進んだところを愉快に壊していく、だ。
手を取った瞬間、俺の足元に魔法陣が浮かび、そこから伸びた鎖でがんじがらめに縛られる。
「動くなっ! 動けばこやつの命はないぞっ!」
半ば反射でレイナたちが俺を助けようと動く前に、長老の声が響く。
俺がある意味特殊とはいえ、万に一つも可能性があるならばそれは避けなければならない。そのため、例えそれがハッタリであろうがレイナたちはその場から動くことはできず、濁した瞳を長老へと向けている。
「この鎖、結構硬いんだ」
「当たり前だ。エルフでも一人二人では解除できぬ。人族ならば十人単位で人が必要だろう」
「そんなもんか」
鎖だから腐り……で。
そこそこ厄介なものではあるのだろうが、適当に魔力を込めて鎖なんぞ腐らせれば。
「案外脆いな」
「な…………」
長老だけでなく、隠れていたエルフたちも驚きから気配がダダ漏れになっている。
取り敢えずは全員縛り上げてあの子のことについて聞いて見るかな。
正直、伏線とか忘れてます
何張ったかなぁ……どれだけ張ったかなぁ……
回収……無理かなぁ……
何度も書いてるから信用ないが……初期から書き直ししたいかなぁ……
サークルに入っておりまして、ハーメルンの方で投稿させていただいてる二次創作を本にして出します
だからどうといったことはないですが
また次がくるまで気長な待って……くださると嬉しいです