五十六話
なんだか自分でもどこに向かっているのか分からなくなってきました
まあ、すでにまとまりがつかなくなっていますけど…まだ三章が終わっていないのにもかかわらず四章の妄想が広がっております
ネタバレになりますが、四章によって増える女の子は盲目エルフですね。設定もある程度考えてあり、どのように堕ちていくのかも決まってます
ただ、しばらくは他のオリジナル作品を書くと思います
「…………ん?」
ふと、違和感を感じた。
いつもは朝目を覚ますとそこにはミリオナの姿があり、俺は尻尾に包まれてぬくぬくとしていたのだが……。
「ミリオナ?」
上体を起こし、名前を呼びながら部屋を見回すが姿が見えない。
ただ、違和感を感じたのはそのことではない、もっと別の何かであるが……いまはそれが分からない。
昨日は夕食を食べたあとすぐに寝ただけで、早起きして何かをするとは言っていなかったはずだ。
……いや、いままでずっと一緒にいたぶんの仕事が溜まっていたのだろうか。
ミリオナと一緒に過ごすようになってから、常にそばにいた。その間に仕事をしている姿は見ていない。
国を支えているのは彼女一人と言っていいほどだ。数日抜けただけとはいえ、国が回っていくのには大きな打撃となるだろう。
……ただ。
彼女のいる場所が俺と初めて会った場所で、そこにはミリオナのほかに五人。慣れ親しんだ気配を感じる。
「……まだ、夢見てんのかな。昼頃だと思ってたけどさすがに早すぎない?」
自分で言っておいてなんだが、別にそうでもないかと納得する。
彼女たちのポテンシャルは簡単に測れるようなものではないし、こういった計算違いが起きるのは当たり前と言えるか。
まだ寝ぼけているからか頭がうまく働かない。
ポケットから棒つき飴を取り出して口に含み、彼女たちのもとへと向かう。
「…………体調崩したか?」
向かう途中、口の中に広がる飴の味に違和感を感じる。
デコに手を当ててみるが、熱があるわけでもない。
こういったことは今までにもあったが、こうなったときいつも頭が働かず、精神も安定しないために前の世界では治るまで引きこもって過ごしていた。
本当は今も引きこもりたいところだが、そうも言ってられない。話さなければいけないことがあるのだ。
……今の状態でどこまでうまく伝えられるか不安はあるが。
「おいっす」
特に言い合っている声も聞こえないので、気にせずに開けたのだが少し後悔した。
なにかが渦巻いて見える。
こう、ドロドロとしたヘドロのような、濁った空気が部屋の中を埋め尽くして渦巻いていた。
「ユエ、おはよう」
「ん、おはよ。悪いなミリオナ。予定よりもだいぶ早い」
「いんや、特に気にしてないさ。……それに、早くレナとミオが無事なことを確認できてうれしく思うね」
先ほどまでの濁っていた空気は俺が部屋に入ってすぐに霧散した。
そしてミリオナは朗らかな笑顔を俺に向けながら言葉をかけ、両脇に座らせたレナとミオの頭を優しくなでている。
「ただ、妾が聞いてもどうやったのか教えてくれないんだが」
「そりゃあ、話さない契約で人にしたんだもの。諦めなって」
そう言われても根っからの研究者気質なのか、詳しく知りたいと表情に出ている。
だが、どれだけ尋ねられようと教えられないものは教えられないのである。
「月様!」
ミリオナの表情を見て内心で楽しんでいると、明るい声を出してメルが俺に飛び込んでくる。
衝撃を流しつつ受け止めて頭を撫でてあげると、だらしなく頬を緩ませる。
「おかえり、メル。レイナにミーニャも」
「ただいまです、月さん」
「遅くなって申し訳ありません」
メルのように突進ではなく、トコトコと可愛らしく寄ってくるミーニャの頭も、メルを撫でている手と反対の手で髪を梳くように撫でていく。
レイナも体を俺のほうに向け、頭を下げるのだが……。
「うん、レイナ。ちょっとこっちおいで」
「……はい?」
そう呼び掛けてメルとレイナを俺から少し離し、立ち上がってこちらへときたレイナの頬を思いっきり引っぱたく。
――パァン!
乾いた音が響き、場を静寂が支配する。
「…………ぇ?」
いきなり頬を叩かれたレイナは頬を抑え、『何故?』と疑問の目を向ける。が、叩かれたこと以外の理由でも頬を赤らめ、疑問の影に僅かな興奮が見て取れる。
ただ、それは一対の――二つの瞳ではなく、一つの瞳だけである。
先ほどまで俺の立ち位置とレイナの座っている位置の関係上、顔の半分が見えていなかった。だけど俺に正面を向いたとき、レイナの右目が閉じられており、そこに一本の深い傷跡が刻まれていた。
「……その傷、どうした?」
自分でも思っていた以上に低い声が出た。
それに先ほどのビンタも、レイナの右目に刻まれた傷跡を見て衝動的にやってしまった。
…………。
確かに、衝動的ではあったが……自身の気持ちに嘘はやめよう。
俺はレイナの傷を見て、嫉妬したのだ。
俺の”モノ”だと思っていた。
そのまま美しく、自身の手によってのみ穢れている”モノ”だと。
だが、ソレによってレイナを穢したのは俺だけではなくなってしまった。
そのことを理解したとき嫉妬が沸き起こり、誰かに穢されたことに昂ぶりを感じ……そして興奮している自分がいる。
「この傷は迷宮の最深部にいるボスから受け、回復薬を飲んでその傷は塞ぎましたが……痕が残ってしまいました」
レイナが右手で傷跡をなぞりながら説明をしているが、話半分でほとんど右から左へと流れていく。
「そう。俺以外の手でレイナは穢されちゃったね」
「っ!?」
両手でレイナの頬を挟んで固定し、傷跡に舌を這わせる。
「ああ、かわいそうに。一生残る傷跡をこんな目立つところに刻まれて」
左手の指先で優しく触れるようにして傷跡を撫でる。
「そんなレイナには、あとでお仕置きが必要だね」
「…………っ!」
耳に口を寄せてレイナにだけ聞こえるように呟くと、肩をピクリとさせたあとに心なしか息を荒げているような気がする。
頬を叩いた時も考えたが、レイナはいじめられて喜ぶ変態性癖を持っていると思う。
…………考えすぎかもしれないが、その傷跡もこれを見越してのことであったのならば感心してしまう。
このままレイナに構っていたい気持ちはあるが、残念ながらやらねばいけないことがある。続きはそれらが終わってからになる。
「俺ももう少し三人とじゃれていたい気持ちはあるけれど、今は他にやることがあるからまたあとでね」
レイナの頭を撫で、もう一度メルとミーニャの頭も撫でて三人から離れ、レナとミオのもとに向かう。
「二人とも、何か調子悪いとかない?」
「……大丈夫」
「だ、大丈夫!」
「そかそか。なら、約束していた奴隷から解放する件、いまやっちゃう?」
前にそのようなことを話した。親に会ったら奴隷から解放すると。
約束を果たそうと伝えたつもりだが、何故か二人の表情は曇り、あまり嬉しそうでない。
「最初に親と会ったら解放するって話したときは嬉しそうだったのに、どうした?」
「そ、その……はじめは利用するだけ利用して、約束も簡単に破られると思ってたんだけど……」
「……ユエ、いい人。恩を返す」
おおっと? 意図せずして好感度を上げていたようで、だいぶ二人から信頼されているようだ。
「それは嬉しい話だけれど、まずは俺よりも先に孝行してあげる人がいるでしょ? すぐに死ぬつもりはないから、それが終わってから恩を返してもらおうかな」
二人の首につけられた首輪を指先でつつき、外しながらそう伝える。
「わ、分かったわ。ちゃんと待っててよね」
「……分かった」
「うん、いい子だ」
首輪をしまい、二人の頭を撫でてから立ち上がってミリオナのもとへと向かう。
「いろいろと予定が狂ってきたけど、とりあえずみんなで朝食にしようか」
「……それはあの三人もか?」
「当然。殺すつもりで飛ばしたんだろうけど、生きて帰ってきたんだ。もて成さなきゃ、ミリオナの格が知れるよ?」
「それは分かってるが……まあ、よい。すぐに準備させる」
嫌そうな顔をしながらもミリオナは女中を呼び、食事の用意について伝える。
女中が部屋から出て行ったのを見送ってから手を二回たたいて注目を集める。
「今はいがみ合いとかなしにして、朝食にしよう。その後に俺のほうから伝えることがある」
本来この家の主はミリオナであるはずなのに俺が仕切ってもいいのかな? とか考えつつ前半は朗らかに。後半は少し真面目なトーンで話す。
三人とミリオナは嫌そうな顔をしながらお互い顔を見合わせていたが、雰囲気を察してくれたからか、俺が言ったからか。殴り合いとかに発展することはなかったのでホッとする。
ただ、俺も朝食を食べている間に考えをまとめなくちゃいけないんだよな。
メルたち三人が想定していたよりも早く帰ってきたために、今後のことも変わってきたのかもしれないし。
食後に少し休憩と言う名の時間稼ぎでも行わせてもらおうかな……。
相変わらず飴の味に違和感を感じつつ頭痛もしてきたな、と。痛む頭に手をやりながらうまく働かない思考をいまは止め、食事の用意ができたと女中が呼びに来るまでボーっと天井へと目を向けていた。
お気に入りが自分にとってすごい増えたと感じるのですが……こんな自己満足な作品をここまで読んでくださってる皆様には本当に感謝の言葉しか無いですね
中には途中リタイアされる方もいらっしゃいますけど
取り敢えず、二作品ほど10万文字まで仕上げたいなと考えてますが、息抜きとしてこちらの続きを書くかもしれませんが、あまり期待はせずに……あ、もとから無いと。はい、分かっております
それでは、作者はラブライブのファイナルへと行ってきます
……もしかしたら、ライブ後の興奮によるテンションで書くかもしれませんね