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五十一話

どーも、五十話のあとがきでサブタイをお詫びにするとか言っといて続けちゃう作者です

まあ、長いのはあとがきにまた綴っていきましょーか

 時は月とミリオナが手をつないで街へと出かける……デートを始めた頃まで遡る。




「それで、何を見せてくれるのかな」

「まあまあ、そう慌てなくても。妾がしっかりと案内するから」

「そう。……まあ、この視線は少し鬱陶しいかな」


 屋敷を出てから直接的に何かあったわけではないが、ずっとまとわりつくような視線を感じていた。

 値踏みするような感じだ。しかも微妙に聞こえるような声で話しているし、耳障りでもある。


「それは……できれば我慢してくれ。人族から受けた仕打ちはだいぶ根付いているから簡単には取れないんだ」

「別にいいさ」

「そう言ってくれると助かる。それじゃまずは飯屋から行こう」


 手を引っ張られる形で歩いていく。これが俺から引っ張っていくものであったなら、おそらくイチャモンつけられたりして絡まれていたことだろう。

 まあ、そのうち絡んでくるやつは出てくるだろうけど。


「でも、朝食を食べたばかりなのに行くところが飯屋って……ミーちゃんは食いしん坊?」

「…………否定できない」

「別に嫌いなわけじゃないよ? むしろ無理して我慢するよりも素の部分を出してくれる方が信頼してくれてるって気持ちになって嬉しいし」

「…………そっか」


 俺に背を向けて何やら呟いたようだけど……ゾクゾクきたから嬉しいことでも考えてくれているのかな。

 道のりの途中にある建物が何屋なのかを教えてもらいながらもあまり会話が途切れることなく歩くこと数分。目的の飯屋に着いたようだ。


「いらっしゃーーーー……いませ」


 ミリオナが先に入っていくと元気な声で挨拶をする店員であったが、続いて俺が入ると途端に嫌な顔をし、対応も雑になる。


「おい、小娘ーーーーわぷっ」

「はいはい、んな事で目くじら立てない立てない」


 さすがヤンデレ予備軍といったところか。そんな些細なことを見逃すことなく突っかかっていこうとする。

 そんな些細なことで反応してくれるのは嬉しいが、本当に思っているのなら事後対応まで考えて欲しい。

 まだ午前。一日は長いというのに揉め事で帰ることになるのはゴメンだ。


「んで、ここは何屋なん?」


 突っかかっていこうとしたミリオナの頭を撫でて落ち着かせ、席に着く。

 先ほどの事でまだ腹が立っているのと、俺に頭を撫でられた嬉しさで面白い表情をしているが…………そろそろ料理を頼まないと店員さんとか他の客からの視線がキツイものになってきて新しい扉が開きそうですよ? すでにある意味では手遅れだけども。


「…………ご注文は?」

「蕎麦二つ」

「…………かしこまりました」


 ミリオナが手を挙げると店員がやってくる。俺にチラリと目を向けるが嫌そうに顔を歪めたあとにフイッと顔をそらす。

 そんなに嫌ならば初めから見なければいいものを。

 店員は注文を聞き、一度頭を下げてから厨房へと伝えに向かう。

 この世界にも蕎麦があるのか。

 また、この国だけとか? ……なら、どれだけ発展しとるんよ。人族とはなんぞや。弱いからこそ知恵つけていかないといけないのに。

 もしかしたらそういった天才はいると思うが、意見が通らないんだろうな……。元の世界でも偉大な功績が認められたのは死んでからっての多いし。


「あ……ユエの分まで頼んじゃったけど、大丈夫?」

「ん、それなら平気。蕎麦大好きだから」

「蕎麦、食べたことあるの?」

「毎日……ってわけじゃないよ。週に一回あるかないかぐらいじゃない?」

「そうなのか。妾は二日か三日に一回はくるぞ」

「たいぶだね」


 あの屋敷、そんな頻度で抜け出しているのか。それだと女中さんたちも慣れたものなんかな。


「ユエが蕎麦を食べたことがあるのに妾は驚いているよ」

「そう? 俺が召喚されたって話はしたと思うけど……もといた世界は食文化もだいぶ進んでいたんだよ」

「妾の知らない料理もたくさん知っていそうだね」

「そりゃあ、食材からして違うのだし。逆に、この世界にも俺の知らない料理はたくさんあるよ」


 料理ができたようで。店員さんが嫌な顔を隠そうともしないまま木で作られたトレイに載せて運んでくる。


「…………お待たせいたしました」

「ん、なかなかに」


 ふと声が出てしまうほどに食欲をそそるいい匂いが。全部食べきれるか少し不安であったが、これならば余裕だろう。

 蕎麦の上に山菜の天ぷらがのっている。揚げ物まであるとか獣人の国ほんと、なんなのだろうか。

 一緒に置かれた箸を手に持ち、いただきますをして食べ始める。


「美味いな。麺の硬さまで俺好み」


 周りでは、俺が箸を使えることに驚いているのがほとんどである。おそらくは使えない姿を見て笑おうとでも思っていたのだろう。


「ユエも気に入ってくれて妾も嬉しいよ」


 本当に嬉しいのか、ニッコリとしながらミリオナも蕎麦を食べ始める。

 ダシの味もカツオに似ている気がするけれど、何かが違う。作っているところを見てみたい気もするが、無理だろうな。

 麺が伸びないうちにとお互いに無言のまま食べ進めていく。


「…………ん、美味かった。ごちそーさま」

「妾もお腹いっぱいだ」


 ほぼ同時に食べ終わり、汁まで全部飲み干した。もうこれ以上は食べられないと思う。

 そんなことを考えている間、ミリオナは尻尾を持ってきてそこからジャラジャラと音がする小袋を一つ取り出している。

 持っていくものが小物だけならばカバンとかいらないな。ちょっと羨ましい。


「それじゃ、次いこっか」


 店員さんを呼び、ちょうどの金額を払ったらしいミリオナに続いて俺も立ち上がる。

 通貨はミリオナが払っていたのが銅貨だったから人族と一緒らしいが、物の価値までは分からん。文字も読めないし。


「そんで、次はどこに?」

「飯の後はデザートだよ!」

「……………………」


 まだ食べますか。さすがに満腹なんだけど。

 まあ、払ってもらってるし、案内してと言ったが特に指定しなかった……いや、何があるか分からないからできないんだが、特に何も言わなかった俺も悪いけどこうも連続で食べ物関係ですか……。


「ちょいと待ちな」


 店から出て次の店へと行こうとしていた矢先、扉の付近に座っていた獣人のおっさんに声をかけられた。


「…………」


 面倒事の予感満載なため、目を向けることなくミリオナの背を押して店から出て行く。


「ま、待てってーーーーっ!」

「料金、ちゃんと払っていこうか?」


 後を追いかけてこようとしたらしいが、恰幅のいいおばちゃんの獣人に捕まっているのをチラリと見て、次の店へと案内してもらう。


「さっきの、何だったんだろうね?」

「この国の知識が何もないから詳しくは分からないけど、食事代をミーちゃんが払ったからとか? もしくはちょっとした憂さ晴らしみたいな感じで声かけたとか」


 はたまた、ロリでコンな人かも。

 次の店までの移動中、建物やその並びをみて思うのだが、この国は元の世界の日本と似ている。明確な違いを挙げるならば科学技術が魔法によってそれほど進んでいないことか。


「次はここ!」


 たどり着いた店から漂う匂いからして、この店は和菓子屋だろうか。

 手を引かれて中に入っていくと、その予想は当たっていた。席は五割ほど埋まっている。

 まあ、米があるくらいだから餅もあるよな。

 ただ、餡子を餅で包んだり、餅を餡子で包んだりしているものはなく、全部丸めた餅の上に餡子を乗っけている感じだ。これじゃ、あん団子だな。大きさが一つ成人男性のこぶし大はあるけど。

 箸を使ったり手で食べていたりと人それぞれである。

 今更の今更だが、獣人といってもほとんど人族と変わりなく、ただ耳が違うのと尻尾が生えているだけだ。あとはスペックも違うだろうけど、見た目からして言えばその二つだけ。

 こんなにも愛くるしいのに何が嫌なのだろうか。

 もしかして、覚醒とか能力解放、ビーストみたいな感じで完全な獣に変身するとか? 何それ超見たい。

 くだらなくないことを考えつつもミリオナの話はしっかりと聞いています。


「これを見ても驚かないところを見ると、ユエは知ってるね?」

「まあね」

「あ、二つちょうだい」


 席に着くと先ほどよりはだいぶましな対応の店員であった。

 遠くから俺を見ては嫌な雰囲気を出していたが、接客するときは作り笑顔であったし、舌打ちなんかもされなかった。

 この店、料理の種類は一つしかないのか、ミリオナは特に名前を言うことなく個数だけ伝える。


「この店、アレしかないの?」

「そうだけど……ユエの世界だとたくさんあるの?」

「まあ、そういった考えに関しては変態だと言えるまでには」


 店員が注文を受けて離れて行ったのを見届け、ミリオナに声をかける。

 でも、今思ったけど聴覚とか人の何倍もあると思われる獣人相手に内緒話は意味ないと思った。

 今更感。


「お待たせしました」


 五分ほどだろうか。水とともにあん団子を二つ載せた皿を二皿、木で作られたトレイに載せて運んでくる。

 やはり先ほどの話が聞こえていたからか、さらに情報が聞けるかもしれないとその店員は引っ込むことはなく、俺たちの席より少し離れたところで待機している。


「まあ、美味いね」

「何だか引っかかる言い方」

「そりゃあ、こう言ったら何だけどレベルが違うから」


 視界の端に映る店員さんの耳がピクリと動くのが見えたが、何も言ってこない。


「なら、どうやるのか教えてもらっても?」

「そうだね……まずは餡子。このほんのりと甘みがあるのもあるけど、この店の作り方を知らないから何とも言えないが雑味が少しあるね。俺の知ってる作り方だとその雑味もなくなるし、甘さの調節もできる。それに豆がそのまま入っているけど、これを粒餡といって、豆がないこし餡ってのもある。人によっては同じ味だけど好き嫌いがあるよ」


 水を口に含み、喉の渇きを癒してから続ける。


「餅の方に関しては俺が知ってるのと変わらないから特にはいいかな。んで、後はその餅と餡をどうするかだけど、こうやって餅の上に餡をのせるもあれば、餡を餅で包んだり、その逆で餅を餡で包んだりするのが大方の食べ方かな。それぞれ名前があるけど、それはいっか」


 あの店員さんはメモ帳のようなものを取り出し、俺が言ったことを書いていってる。


「そういや、この店以外にも餡を使った料理を出す店はあるの?」

「いや、妾が知る限りはここだけ」

「なら、餡の作り方は言わないでおこうか。もしかしたらここだけしか知らないのかもしれないし。材料を揃えられるなら後で作ってあげるよ」


 蕎麦を食べてお腹いっぱいだと思っていたが、話していると小腹が空いてきた。太るような気もしたが、この程度で太っていたらいまごろデブになっているだろうし、気がつけば皿の上には一個、無くなっていた。

 だけど、贅沢を言えばもう少し甘いほうが俺は好きかな。あと粒よりこしのほうが好き。

 ミリオナの皿はすでに空となっており、物欲しそうな目で俺の皿に乗っているのを見ているから、苦笑いをしながらそれを差し出す。


「さっきも言ったけど、お腹いっぱいだからさ」

「そ、そうか。なら、もらおう」


 精神年齢は見た目に対しての相応のものになるといった考えがあるが、そう思う。

 実際、目の前にいるミリオナは子供みたいな反応をするのだから。

 美味しそうに餅を食べる姿を見て、誰が数百年生きているものだと思うだろうか。しかも、この国のトップ。


「餡の作り方でも聞きたいのかな?」


 俺に近づいてきたはいいが、人族に頭を下げて教えを請うなどできるかっ! みたいなプライドでもあるのか、なかなか声をかけてこようとしない先ほどの店員に顔を向け尋ねる。


「……………………はい。教えていただけるのであれば」

「プライドよりも店を優先する心意気、嫌いじゃないよ」


 店員さんの中で葛藤があったのか、天使と悪魔が争っていたのか。

 それはわからないが、先ほどの作り笑顔はなかったが教えて欲しいと口に出した。


「ミーちゃん。ちょっと教えてくるから、時間つぶしてて」

「ん、分かった」


 店員さんに連れられて俺は厨房の方へと向かう。

 まあ、ミリオナが迷子になることは簡単に予想でき、面倒ごとになるまで発展するのも分かっていたことだが、実際にそれが起こる未来まで見えていたとしても…………まだ店員に伝えていないが教えた対価にモフモフさせてもらえる欲求には勝てないよね!

また、一話から書き直すと前話で書いたと思いますが、何だか考えていたら、この話には沿った形になるけど…全然違くね?って感じになりました


みなさん、ワンパン○ンはご存知でしょうか。あれ、みたいな感じを想像していただければと思います。

これはこれでこのまま続け、これに沿った形でだけれど少し変えて新たに書き進めていこうかと。


まだ、やるやる言っといて何もやってないですけど(笑)

できれば纏めてから毎日か二日に一回更新みたいな形に来てみたい(願望)


何か聞きたいこと、分からないことがあれば感想で何でも聞いてくださいな

答えられる範囲で答えます

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