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四十九話

最近、更新遅くてすいません…

ちょっと、また新しい話に手を出してしまいまして、はい。まだ載せていないのですが、今4話目を書いております

まだしばらくは書きためておこうかな、と

誤字報告をいただきましたので、訂正致しました

誤)マグダ→正)マグマ

 レイナが横になり、眠りについた頃。


「アハッ……汚れ、ちゃっ……た。月様……汚れちゃった……。アハッ……アハハ、ハハ……。早く月様のところに行かなきゃ。薔薇の花(つきさま)がこれ以上枯れない(よごれない)うちに、ゴミを排除して、私で上書きしなきゃ……」


 焦点の合わない、ハイライトの消えた目から涙を流し、おぼつかない足取りでフラフラと歩みを進めている。

 遭遇する魔物らはメルを視界に入れるや否や、隙だらけだといわんばかりに襲いかかるが、肌に傷一つつけることすら叶わなかった。襲いかかった魔物らは何が起こったのか分からないままに首をはねられ、死んでいった。

 ドロップしたアイテムには一切目を向けることなく奥へと、奥へと進んでいく。

 突然、メルは歩みを止め、虚ろな目をさらに酷く濁らせて何もない虚空を見上げる。


「ああ……、月様、月様月様、ユエ様、ユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマユエサマ――――アハッ」


 そして月の名前を何度も、何度も繰り返し呟く。しばらくそのまま名前をつぶやいていると、不意に肩を一度、ビクッと跳ねさせた後。体をくの字にして自身の体をキツく抱きしめる。はたから見ても分かるほどにメルの体は震えており、口が開いたままになっているのか、唾液が漏れ出てアゴを伝い、地面に垂れている。


「アハッ……アハァッ……! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアアァァァ――――」


 何かを堪えるように、ノドが張り裂けるのではないかと思えるほど大きな声で叫び始めたメル。

 本来であれば、音を立てると魔物らが寄ってくる。声も例外でないはずなのだが、一向にその姿を見せることはない。なぜならばメルの叫びを聞き、本能から恐怖を抱いて怯え、少しでも遠くへと行くべく離れていっている。


「ダメ……だよ、月様……? そ、んな……そんなこと、したら……ダメ、早く……、早く戻らなきゃ……。メス豚、に汚された……月様を早くキレイに……キレイにしないと……」


 数分後、少しは落ち着いたと思いきや今度は頭を抱え、ブツブツと呟き始める。

 おもむろに顔を上げたと思いきや、凄まじい速さで洞窟内を駆け抜けていく。

 先ほどの叫びによって魔物らはどこかで身を潜めているため、途中で遭遇して時間を取られることもなかく、ものの数分でボス扉の前にたどり着く。

 それでもメルは立ち止まることはなく、扉に描かれている絵も確認しないままに中へと入っていく。

 その際。メルは月のことしか頭になく、周りには気が一切向いていなかった。そのため、いつも通りのメルならば簡単に気づくことが出来たはずであるのに、気配を消してメルの背後につき、ボス部屋へと一緒に入っていった存在に気づくことはなかった。

 中で待ち受けていたのは、身長およそ10メートルほどのミノタウロスであった。体毛は黒く光っており、武器が通りにくいと遠くから見ても分かるほどに引き締まり、盛り上がっている筋肉。ミノタウロスと同じ長さのハルバードを片手で軽々と持っている。

 メルは冷気と熱気を漂わせている双剣を構え、ミノタウロスへと正面からなんの小細工もなしに突っ込んでいく。

 ミノタウロスも無防備なままでいるはずもなく、迫り来るメルに向かってハルバードを振り上げ、脳天めがけて振り下ろす。

 途中までは受け止める構えであったメルだったが、第六感が何かを感じ取ったのか、受け止めることはなく横に飛び、射線上から逃れる。

 その判断は正しく、振り下ろされたハルバードを中心に半径数メートルにわたって地面を砕き、さらに広範囲の地面にはヒビが入っている。あのまま無理にでも受け止めていたのならば、小さくないケガを負っていたであろう。


「――ぐうっ!」


 振り下ろした後の隙だらけである懐へと突っ込み、一気にカタをつけようとしていたメルであったが、ミノタウロスは筋力にものいわせて無理矢理ハルバードを引き戻し、面の部分が当たるように横薙ぎに振るった。メルは予想外のことに回避することができず、壁に打ち付けられる。

 完全にではないが、とっさにハルバードが振るわれる方向へと飛んだことによって威力は減らしていたが、それでも少なくないダメージを負った。


「……っぐ、うっ、あ……、……あ…………れ?」


 壁から這い出てきたメルは、頬を何かが伝う感触に目を白黒させ、混乱している。その様子を見て勝利を確信したのか、恐怖心を煽ろうとミノタウロスはハルバードをわざと引きずり、地面を削る音を聞かせながらゆっくりと近づいていく。しかし、そんな音もメルには遠く、剣を離し、震える手をおそるおそる頬へと伸ばし――――触れる。


 ――ヌチャ


 普段の柔らかい肌触りとは別に、ヌメリとした感触が手のひらに伝わる。


 ――見たくない


 ――知りたくない


 ――理解したくない


 そういった考えがメルの頭の中を駆け巡るが、心と体は別の生き物のように、その願い叶わず頬から手を離し、目の前へと持ってくる。


「――――…………ぁ」


 それを見て、否応なしに理解してしまったメルはその場に膝から崩れ落ちる。

 手のひらには赤黒い血がノッペリとついており、それから視線を外して目に映った地面にも、頬を伝ってアゴから垂れてできた血だまりがあった。

 もう片方の手に持っていた剣もスルリと抜け落ち、地面に当たってカランと音を立てる。


「ぁ、ぁぁ…………、ぁぁぁ……、…………」


 手で顔を覆い、言葉がうまく出てこないのかうめき声をあげ始める。

 そんな彼女に影が差す。

 ミノタウロスがメルの元まで近づいていたのだ。

 射程範囲内に入ったメルにトドメを刺すべく、ハルバードを両手で持って振り上げる。


「……………………で」


 ぽつりと小さな声で何かを発したメルであったが、そんなものでミノタウロスは動きを止めるはずもなく。振り上げたまま、力を込めるためか筋肉を膨張させる。


「……お前、の……せい、……で」


 先ほどよりもハッキリとした声で発するが、ミノタウロスはそれに反応することなくハルバードを――――


「ねぇ、どうしたの?」


 ――振り下ろすことなく、その巨体からは想像できないほどの素早さでその場から飛び退く。

 ミノタウロスが立っていた場所はマグマへと変わっており、完全に避けきれなかったからか右足の一部にヤケドの跡が見える。しかし、そんなことに一切見向きもしないメルは緩慢な動作で立ち上がる。いま、どのような顔でいるかは俯いているために、影となって見ることができない。

 そのままの状態で足を使い、落ちている剣を蹴り上げて回収する。もう1本も同じように回収しているメルはミノタウロスに背を向けており、隙だらけであるはずなのだが仕掛けようとしない。よくよく見てみるとミノタウロスは震えており、怯えの色がありありと浮かんで見える。

 双剣をアイテムボックスへとしまったメルはミノタウロスに背を向けたまま動こうとはしない。

 このまま膠着状態へとなってしまうのかと思われたが、変化はすぐに起こった。

 足場はそのままに、メルを中心に半径3メートルの地面がマグマへと変わった。そしてマグマの一部分が盛り上がっていき、龍の姿をかたどる。

 それはメルの周りを一周した後、ミノタウロスへと向かって突っ込んでいく。

 視野が狭くなっていたミノタウロスは気づかなかった。自身へと向かってくるマグマの龍は1匹だけ(・・・・)だと決め込んでいた。前から迫り来る龍をジャンプして避けたが、空中という身動きが取れない空間へと身を晒しているミノタウロスに時間差で迫っていた小型の龍が背後から(・・・・)ミノタウロスの体に巻きつく。


 ――――グゥオオオオォォォッッ!


 マグマで作られた小さな龍はミノタウロスに巻きつくと、その胴を細く、長く伸ばす。そして体の色を薄い青色へと変色させるのと同じく、メルの周りにできたマグマの色も青色へと変色する。小さい龍のしっぽから細い糸のようなものが伸びており、それはメルの周りにあるマグマへと繋がっていた。

 巻きついてきた小さな龍をどうにかしようともがき苦しむミノタウロスが気づくことはない。体を細くした小さな龍はミノタウロスの盛り上がっている筋肉に食い込んでいるため、指が引っかかることはない。

 ついに堪え切れなくなったのか、ハルバードを落とし、自身も地面に身を投じてゴロゴロと転がり始める。そこへ追い討ちをかけるように、最初ミノタウロスへと突っ込んでいった龍が、同じくその体を薄い青色へと変色させて開いている口に向かっていく。それに気づいたミノタウロスは口を閉じようとするが、その度に小さな龍が締め付けを強くしてそれを許さない。

 知能がないはずのミノタウロスの目から涙がこぼれた時、龍の体は口の中に入る手前で体を縦に五等分し、それぞれミノタウロスの両手両足、首に巻きついて頭としっぽを地面に突き刺して動けないよう固定する。


「…………簡単殺すとでも思った?」


 いつのまにかミノタウロスの顔の横にはメルが立っており、ハイライトのない目の端をつり上げて見ていた――いや、見ているようで見ていなかった。

 メルの目にはミノタウロスの今の(・・)姿は映っておらず、こうやって殺そうかな? といった方法の過程とその結末が万華鏡の、ように同じものが映ることがなく見えていた。


「……もう、声も聞きたくないし、黙ってて」


 ふと、思い出したようにミノタウロスの口を見て呟き、土で口を塞ぐ。窒息死されてはこの鬱憤を晴らすことができないメルは鼻を塞がずにいる。


「まったく。死んでもそのまま死体が残っているのならばその後も鬱憤ばらしに使えるのに」


 ため息をつきながらもミノタウロスを踏みつけて上に立つ。そして腹の辺り土でイスを作る。イスの脚の先は鋭く尖っており、メルが座ると重さが加わることにより、ジワジワと肉に食い込み、深く深くと突き刺さっていく。。声を出そうにも出せず、動こうにも動けないミノタウロスは何もできない。

 そんなことは知ったことではないメルは足を組み、左手の指で虚空に円を描く。すると青色をしたマグマの中から濁った紫色をした直径が50センチほどの球体が出てくる。それは宙に浮かんでおり、メルのそばまでフワフワと飛んでくる。次にメルがバツを虚空に描くと、球体に線が走り、100に届くのではと思えるほどの数へとバラバラになる。メルが腕を振り上げると、それらはグニャグニャと蠢き、その形を刃渡が20センチ程のナイフへと変える。


「なんだか面倒になっちゃった。……それと、お前なんかに時間使っている暇がないの思い出した。早く月様のところに戻らないと」


 はぁ……、とため息をもらしながらメルは腕を振り下ろす。ミノタウロスの体に次々と濁った紫色をしたナイフが突き刺さっていくが、それを見ても眉一つ動かさない。

 ミノタウロスの体が消え、イスに座ったままのメルは地面へとそのまま落下するが、何かしたのであろう。地面がクッションのように柔らかくなり、衝撃を吸収し、何事もなかったようにメルは立ち上がる。


「……………………」


 そして目の前に突き刺さる長剣。

 それはミノタウロスからドロップしたアイテムである。

 刃渡がメルの身長ほどもある長い剣。しばらくじっと見つめてその場から微動だにしなくなる。


「……………………」


 長剣に手を伸ばし、地面から引き抜く。それをアイテムボックスにしまうメルの表情は苦虫を噛み潰したようであった。

 余計な考えを追い払うかのように頭を左右に振り、ボスを倒したことで現れた階段へと向かうが、10歩目を踏み出したところで地面に受身も取れず、倒れこむ。


「…………ぅ、……ぁ」


 何か話そうとしていたが、言葉になることはなく、メルは意識を手放した。









 意識を失い、無防備な状態でいるメルに近づく1つの影が。

 その影はしばらくの間、メルのそばに立って何もせずに見下ろしていたが――


「………………ふぅ」


 呆れたような、諦めたような息をもらし、メルを背負って階段へと足を向け、下の階層へと降りていく。

千ポイントにいきまひた!なんだか分からないけどめでたいめでたい!

ここの伏線回収まだ?ここの部分おかしいなどあった教えてくださいね!

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