三十五話
テスト勉強?ナニソレおいしいの?
ってことで書いちゃった☆
まあ、今夜から、たぶん、本当に、きっと勉強するさ……(遠い目
ではでは、物語スタート!
「…………ん」
眠い目をこすりながら体を起こし、周りを見回してみると、窓から月明かりが差し込んでいた。
時間が経ったと意識したら、腹の虫がなる。
食べてないのって、昨日の昼からだから、4食抜いたのか? 朝、起きたけれど何も食べずに寝たような……。そう考えると空腹感が強くなってきた。
食事を抜きすぎて力が出ず、ヨタヨタとした足取りで部屋を出て行く。
「月様。おはようございます」
「んぁ、レイナ。おはよ」
まだグリスたちは戻っていないのか、レイナがイスに座って紅茶を飲んでいた。
そのままゆっくりしていればいいのに、俺の姿を見るとわざわざ立ち上がって挨拶をしてくる。
「座って待っていていいよ。俺はこれから飯食べるから……ソリア」
「は〜い」
ほんと、声を出さなくても来てくれるのはありがたい。何度でも思う。
「重くないけど、美味しくて腹が膨れるもので。あと、フレンチトーストはもう食べないから、ソリアたちで食べていいよ。材料が無かったら言ってくれれば渡すから」
「ありがとうございます〜!」
いまにもスキップをしそうなほどに嬉しそうな雰囲気を出しながら厨房に戻って行った。
少しでも空腹感を紛らわすために、コーヒー(仮)を飲みながら待っている。
「そう言えば、勇者たちは?」
ふと、周りが静かだなと思っていたら勇者たちがいないのか。
「彼らはギルドのクエストを受けに行きました。いまいるのは、私と月様の2人だ――」
「お待たせしました〜」
タイミング悪く、ソリアが料理を運んでくる。だけどレイナ。ソリアに悪気はないのだから睨むのは止めてあげよう。ほら、涙目になって怯えてるじゃないか。
「ソリア、ありがと。戻っていいよ」
「は、はい〜」
パタパタと音を立てながら戻っていく。その際、目の端に涙がうっすらと見えていたけど……触れないでおこう。あとで砂糖でも持って行こうかな。
運ばれてきた料理に目を向けると、リゾットのようなものだった。
この世界にも米があるにはあるらしいが、日本米よりも外国米のほうが近いかもしれない。ジャパニカ米が一番しっくりくる。元いた世界ではごく少数しか栽培されておらず、イタリアとかでパエリヤ、リゾットなどに使われていた。
何度か本格的なパエリヤとリゾットを食べたことがあるから、しっくりときた。
米の種類はこの1種類しかないうえ、ほとんどの家庭ではパンなどが主食になるため、食べるとしたらこういった場所でしかないらしい。
「んまんま」
ここの店の料理は何を食べても美味い。もう、ここに住みたい。金の代わりに食材提供するから……。出処は不明だけど。
「そろそろこの街を出て行こうかな、と思ってる」
「……すいません。私の我がままで迷惑をかけてしまって」
「んー、なんだかんだいって楽しかったし、気にしてないよ」
確かに、勇者の半分と再会するとは思わなかったけど……まあ、大きな失敗をして傷を負ってから会うよりはよかったかな。……まあ、面倒だった。って本音はあるけれども、俺も少ないけれど得たものはあったのだし。
それより、いよいよ獣人たちに会える。レナとミオの様子を見てみるに、魔族の村のようにすぐ触り放題。ってわけにはいかないだろうけども、時間をかけてゆっくりと打ち解けていけたのならば、最終的には俺の勝ちだ! ……なんの勝負かは分からんけども。
今日はミオと一緒に寝てみようかな。
あ、ホモ的な意味じゃなくて普通に話して寝るだけ。
ミオは確かに可愛い顔をしているが、なんだかなぁ……といった気分だ。
まあ、一緒に寝るのを嫌がるのならば強制はしないが。むしろ、レナとが強く反対しそうだ。
…………。
いつも、すぐに寝てるけれどもやはり、人の温もりが欲しいのはある。
昨日はレイナがいたけれども、あれは寝たっていうより寝落ちだな。うん、微妙に俺の中では意味が違う。
ってか、何を考えているのかだんだん分からなくなってきた。まだ、寝ぼけているのだろうか?
「……ふぅ」
一度、気分を変えるためにスプーンを置いてコーヒー(仮)を一口飲む。
たまに……いや、よくあることだ。考えてごとをしていると逸れていったりして何を考えていたか分からなくなるなんて。
とりあえず、あとはメルたちが帰ってきてから考えればいいか。
「そういや、もう夜だってのに帰ってくるの遅いな」
「はい。何かあったのか、絡まれているのか。見に行きますか?」
「それを含めてのクエストだけど……心配だし、これ食べ終えて一息ついてから行こうか」
「分かりました」
グリスとメルがいるから、よっぽどのことがない限りは負けないと思うけど……どうにも嫌な予感がな。
元いた世界で長年にわたって勘が鍛えられているから、よく当たるようになった。それを抜きにしても、嫌な予感ってのは当たるもんだ。
「…………ふぅ」
ほとんど食べ終えていたため、リゾットはすぐに食べ終わった。
コーヒー(仮)も飲み終えたし。
「行きますかな」
そう言って腰を上げようとしたところで――。
「ただいま、月様!」
「ただいま戻りました月さん!」
入り口から勢いよくメルとミーニャが入ってきて、勢いそのままで俺に飛び込んでくる。
「……おかえり」
当然、支えきれるわけもなくイスを巻き込んで後ろに向かって倒れる。打った背中とか腰が痛い……。
メルとミーニャの頭越しに、レナとミオ、グリスが入ってくる姿が見える。この様子を見て、憐れんでいるような、呆れているような目を向けてくる。
「元気そうでよかった」
体を起こしながら声をかけると、俺の腕にくっついてくる。もう、離れたくないとばかりに。一泊二日でもそんなに堪えたのか。
「レナとミオもお疲れ様。グリス、ありがとな」
「ああ。正直、必要なかったとも思ったが俺もいい経験になった」
「そか。レナとミオは?」
「……まあまあ」
「……うん」
「そか。なら、今度は俺と行こうな」
そっぽを向きながら、2人はそう答える。
それよりも、何もなかったことだし今日はもう寝て、明日の朝にまた話し合うとするか。
「レイナ。勇者様がたはどちらに?」
「クエストを受けると言って、行きました」
「まだ帰ってきてないのか」
悪い予感はこっちのほうだったのか。
…………しょうがない。
「俺が1人で行ってくる。グリスたちは夕食でも食べてて。俺はさっき食べたから」
「月様が行くなら私も行く!」
「わ、私も!」
「2人とも、ごめんな。出来れば俺たちだけで話したいこともあるんだ。大丈夫、ちゃんと帰ってくるから、な?」
腕を掴む力は弱くなったけれど……どうしたもんかな。
「すぐに帰ってくるからさ、少しの間だけ我慢してくれないか?」
「「…………」」
「ありがとな」
2人の頭を優しく撫でてから俺は、店を出る。
うん、みんな根は優しいからな……いまのも微ヤンデレより普通に離れたくないだけだと思うし。
でも、今の状態に甘えているとそのうち後ろから刺されそうだ。
後ろから刺される考えに行き着いた俺のテンションが少し上がりながらも街の出口へと目指していく。向かっているのはこの街に来た時に入ってきたのと同じところだ。
「ごくろーさん」
こんな時間でもちゃんと仕事をしている門兵に声をかけながらギルドカードを見せて街の外へと出る。
んー……っと、こっちだな。
「戦ってるのは……盗賊か」
微かに金属と金属が擦れる音が遠くから聞こえてくる。
もしかしたら他の場所かもしれないが、外れたら外れたでなんとかなるさ。きっと。
街の中では歩いていたが、街から少し離れて誰の目もないことを確認してからは手加減しているが走っている。それでも結構なスピードが出ているのだが、周りに誰もいないしいいだろう。
近づいていくにつれて音が大きくなってくる。そして血の匂いも。
「お、当たり」
まだ、だいぶ距離があるけれど、盗賊と戦っている勇者たちの姿が見えた。
このまま突っ込んでいくと普通にバレるので一旦止まり、気配を消して近づいていく。
……あれだな。
決意したが、実際にそういった場面にあって尻込みしてる。って感じだな。
まだ、それほど大きな傷は追っていないが、精神的にはだいぶ参っている。盗賊たちのほうは、姿を現しているので5人。隠れているのが3人か。
姿を見せている方の4人が剣を持っている接近戦。その後ろに立っている1人は杖を持っているから、魔法使いか回復職かな。隠れているのは弓術士だろう。だって、弓持ってるし。
弓術士3人は俺が潰して、残った5人を勇者たちに殺らせるか。
よし、決まったらすぐに行動しないとな。早く帰らないとメルとミーニャが何かやらかしそうだし。
風魔法で首をはねるか。体は氷魔法を使えば死んでも落ちないようにできるし、口も氷で覆っておけば声も出せない。噴き出る血も凍らせれば問題ない。残りのはねた頭は……転移魔法でも使って手元におけばいいか。
「……ぐっ」
「響!」
方針が決まっていざ殺ろうと顔を上げると、響の腹に矢が刺さっている姿が見えた。
あー……たぶん、毒塗られてるな、あれ。剣にも塗られてると思うし、さっきから行動が鈍くなってるのは、かすり傷から毒が入ってきて今頃効いてきたからだろう。意識と体でズレが生じて動かなくなり、矢がずぶり、と。
「…………はぁ」
予定変更するしかないか。
いまがチャンスとばかりに近接武器持った4人が攻めかかろうとしている。
その盗賊たちの目の前に転移する。
あー……転移は楽でいいな。一瞬で行けるんだもの。
「ゆ、月!」
「何だ? お前」
「んー、暇人が散歩ついでのゴミ掃除……みたいな?」
「……あ? 何言っ――」
話していても進まないので、分かりやすく行動で示した。
――しゃべろうとしていた盗賊の首をはねることによって。
それにより、この場がシーンと時が止まったように静まり返る。
一拍の間が空いたのち、立ったまま残っている盗賊の首から血が勢いよく噴き出したことで再び、時が動き始める。
「てめぇっ!」
残った3人が剣を振りかぶりながら俺に向かって来るが、まだ隠れて弓を構えて俺を狙っている弓術士の3人を盾として俺の目の前に転移させる。
転移させた位置的には、2人を即死に。1人は2人と少しずらして、死なないけれども深手にはなるかなー。ぐらいの場所に。
そして俺はちゃっかり血を被らないように離れておく。
「な! ……早くそこどけ!」
「ま、待て待て待て!」
「止めてくれ!」
勢いづいた剣はそのまま止まることなく、2人は切り裂かれ、1人は左腕を斬り飛ばされる。
「うん。考えていたことがその通りに行くってのは気持ちがいいものだ」
あー……テスト勉強やる気でねぇ……
このまま小説書いてちゃおうかな……
まあ、なんとかなると思いつつまた次回〜