三十二話
いやー、本当は昨日の夜に書けてたのだけれど、意味はなく一晩置いてみました
もしかしたら、二章の内容をちょいちょい添削するかもです
まあ添削したら活動報告か、次に話を乗せたときに報告します
ってことで物語スタート!
二段ベッドに感動を覚えるのもいいけれど、本来の目的を果たさなければ。
レイナがこの階は人族の、上の階には他種族の奴隷がいると言っていたが、初めて来たのだし全部見て回ることにするか。
こういったのは自分の足で、自分のペースでゆっくりと見ていきたいため、レイナにそのことを伝えて背中から降りる。
「……改めて見ても、綺麗な部屋だな」
大事な商品だからだろう。
2人で一部屋使用しており、その部屋は清潔感が漂い、奴隷たち本人も綺麗にされている。食事も十分に与えられているらしく、痩せ細っていたりしている子もいない。
服は見た感じ麻だろうか。簡単な作りの服だが、それのおかげか体のラインがハッキリと出ている。
年齢などバラバラで、下は6歳ぐらいのロリショタから上は50歳を超えているであろう、おじさんおばさんまでいる。
ロリショタは特殊性癖の持ち主やこの頃から訓練を始めてパーティーに入れるなどの活用法がある。おじさんおばさんは、家政婦などの理由で買うのかな?
「…………ん?」
ゆっくりと見ていきながら奥に進んでいくと、ある男の子と女の子に違和感を覚えた。
「この子たちは姉弟なので一緒の部屋に入れております」
俺が立ち止まったのを見てか説明をしてくれる。
確かに、いままで見て男女が一緒の部屋だったというのは見なかった。見た感じの感想も、くすんだ金髪の、どこにでもいそうな普通の子供って感じだ。だからこそ違和感がある。この建物の入り口に立っていた弱そうな男のように。
説明を受けずともなんとなく姉弟だか兄妹だかといったのは推測できるが、俺が気になったのは普通である点もあるが、もう一つ。
「月様? どうしたの?」
「なあ、メル。この子たち見てどう思う?」
じっと動かない俺にメルが腕を組ませてきながら話しかけてくる。
特に腕を組んできたことに反応せず、鉄格子の向こう側で不安そうにしながら俺を見ている姉弟を指差しながらメルに尋ねる。
「どう……って聞かれても、普通の姉弟だと思うよ? レベルも低いし、戦闘の役に立つとも思えない。それに……これといったスキルもないから」
「んー……レイナは?」
今度は俺の後ろをずっとついてきていたレイナに聞いてみる。
「私もメルと同じですね。……月様は何か気になることでも?」
「あー、なんでもないよ。少し、気になったことがあっただけだから」
レイナにも普通に見えるのか。
奴隷を扱っているここも見逃しているから、もしかしたら俺以外に誰も気づいていないのか?
「……なあ、爺さん」
「はい。何でございましょう?」
「この子たち2人、キープで」
「畏まりました」
少し離れたところで俺たちを見ていたが、名前を呼ぶとすぐにそばへと来てくれる。キープ、と伝えると2人を部屋から出し、何処かへと連れて行ってしまった。
「月様。どうして選んだの?」
「なんとなく、かな?」
勘違いだったら恥ずかしいのでぼかして答えておく。
「お待たせいたしました。あの子たちは別室で待機させておりますゆえ、引き続きゆっくりと選んでください」
「ん」
このままここで待っているのか、移動していいのか。と考えようとしたところで爺さんが戻ってきた。
人族の奴隷はこの子たちを最後に一通り見終えたので、上の階へと移動する。
「これは凄い」
二階には獣人、エルフにドワーフなどがいた。獣人には犬に猫、ウサギなんてのもいる。
下の階と同じようにゆっくりと見て回っていく。……が。
「なんだかパッとしない」
可愛い子や好みである子はここや、下の階の人族にもいたが、そういった目的で買うと嫉妬する可愛い猫ちゃんが3匹いるので、心の内に閉まっておく。
それを除くとなると、あの姉弟の印象が俺の中で強かった。
「レイナ。あの2人なんだけど、いい?」
他に欲しいと思った子もいなかったので、最初に決めたあの2人だけになった。
一応、財布の紐を握っているレイナに尋ねてみると、少し悩んだそぶりを見せたが頷いてくれた。一番の理由は、あの子達に欲求を持っていなかったというところだろうか。
「それでは、こちらです」
後ろをついて回っていた爺さんが案内をするため、先頭切って歩いていくのでその後をついていく。
意識を奴隷のほうに向けていたから気にしていなかったが、響たちもなんだかんだ言いながら楽しんでいる。
孝義に至っては、一目惚れでもしたのか獣人の猫耳を1人、買うそうで。
俺としてはあの孝義が一目惚れをするなんて思ってみなかったが、世の中なにがあるか分からないものだ。
そんなことを考えながらボーッと歩いていると、気がついたらキープと言った姉弟のいる部屋にいた。
「そういえば、いくらなの?」
今更だが、この子たちの値段を聞いていなかった。見ていた時の周りの反応からするに、そんなに高いってわけでもないと思うけど。
「はい、実はその子たちはなかなか買い手が見つからず、困っていたものでして。本来は金貨3枚なのですが、1枚とさせていただきます」
「別にそういう情報とかいらないから。いくらかって聞いただけ」
「失礼いたしました」
1を聞いて10を知ってくれる分には構わない。むしろ、1しか説明をしていないのに10理解してくれたらこれほどいいことはない。だが、1を尋ねて2以上返ってくるのは鬱陶しい。時と場合によっては1を尋ねられて5以上答えなければいけないときもあるかもしれないが、商人をやっているのならば客ごとに対応を変えるべきだ。
「……レイナ、足りる?」
「はい。この子たちを5000回買ったとしてもお釣りが山ほどくる程度には稼いでいましたので」
「そっか。ありがと、レイナ。…………いつか、お礼とは別に依頼受けて返さないとな」
最後のつぶやきは誰にも届かないように言った。
今回してもらったことに対してお礼は必ずするが、それとは別にお金を返す。
貸しは忘れて借りは倍にして返せ。
俺のモットーの1つ……だと思う。
「ゆ、月!」
「ん?」
ボーッとしていたら、響に肩を掴まれて揺すられながら名前を呼ばれた。
そんな必死そうな顔をしてどうしたのだろうか?
「月は金貨1枚がいくらなのか知っているのか?」
「いや、知らないけど?」
「よく聞け、月。この世界で銅貨は100円。銀貨は1万円。金貨は100万円なんだ」
「ああ。……それで?」
「それで……って、月。100万円がどれだけの大金か知らないのか?」
何をこんなにも必死になっているのだろうか。たかが100万ぐらいで。
「月さんって、もしかしてお金持ちなんすか?」
「あー……どうなんだろ。少なくとも金に困ったことはないな」
刀が久しぶりに口を開いた気がする。いままで、あれほどまでに鬱陶しかった印象があったというのに。
もしかしたら、奴隷を見て回っている間に騒いでいたのかもしれないが、そのときの俺は見ているほうに意識を向けていたので気付いていないだけだったのかもしれい。どっちにしろ、鬱陶しいのが無かったのはいいことだ。
「……もう十分っす」
響と刀が何かを諦めたような顔をしている。
俺がお金持ちならば、孝義と沙織は大金持ちだ。麗は有名なラノベ作家でだいぶ稼いでいると思うし。
だいぶ話がずれたな。
爺さんもどうしたらいいか、少し困っているようにも見えるし。
そういえば…………。
「なあ、ついでにミーニャを奴隷にできない? そうすれば、また面倒なことにならないだろうし」
この街ではグリスがいるから何もないが、他の街だと無理だろう。ならば、ここでついでにミーニャを(物理的に)俺の物にすればいい。
「は、はい。本来、料金がかかりますが今回はタダとさせていただきます」
おそらく、先ほど不快な思いをさせたことに対する償いだろうか。別に断る理由もないので頷いておく。
「それでは、こちらを首にはめてください。その後に主となる人の血を垂らせば、終わりでございます」
契約って、魔法陣とかもう少し派手なのを期待していたんだが、ただ首輪に血を垂らすだけなのか……。楽なのはいいことだが、少し残念だ。
爺さんから首輪を受け取り、ミーニャを近くに来るようにと声をかける。
身長差があるので片膝をつき、ミーニャの首に首輪をつける。そしてレイナからナイフを受け取り、親指の皮を薄く傷つけて血が滲むのを待つ。
「今更だけどミーニャ。いいか?」
「うん、大丈夫だよ月さん」
「そうか」
最後に一応確認をとり、親指に滲んで出てきた血を首輪に付着させる。
すると、ギルドカードを作った時のように首輪が光り始める。それはすぐに収まるが、光る前と特に何かが変わった様子はない。
買った姉弟にも同じようにするが、ミーニャのときと同じで首輪が光るが何か変わった様子はない。
「これでいいのか?」
「はい、無事に契約は出来ております。説明などは必要でございますか?」
「レイナかメルにしてもらうから大丈夫」
「左様でございますか。本日はご利用いただきありがとうございました」
恭しく頭を下げる爺さんを背に、建物を後にする。
★★★
「さて……そこの姉弟たちよ。そろそろいいんじゃない?」
ソリアの働いている気に入った店に戻ってきた。
イスに座り、コーヒー(仮)を啜りながら対面に座らせた姉弟に目を向ける。今更だが、この子たちの名前も何も聞いていない。姿を偽っているのだから、たとえ質問して答えたとしてもその答えを俺は信じないだろうけれど。
「どうして……分かったの?」
いまだ姿はそのままだが、姉の方が初めて口を開く。
そして尋ねられたわけだが。
「偽ったまま話すのは失礼だとは思わない?」
「………………」
そう返すと、目を下に向けて黙ってしまった。
「安心しろよ。お前らが人族じゃなくても危害を加えるような奴はいないから。……まあ、もし加えるような奴がいたら俺が守るさ」
「…………」
コーヒー(仮)を啜りながら手をヒラヒラと振りながら声をかける。
……これで信じてくれたのならばそれでいいが、俺の中で獣人の警戒心はそう簡単に解けないと思っている。なにか手っ取り早い方法が欲しいもんだが、こういったのは焦ってやると失敗する。やっぱり時間をかけてゆっくりと――。
「……分かりました」
………………。
どういった心境の変化だろうか。
あれだけ警戒していたように見えたが、こんなにも簡単にいくとは思わなかった。
その間にも姉弟たちの変化が始まっていく。くすんでいた金髪から綺麗な金髪へとなり、耳が消えて獣耳がはえる。背はそのままだが肉付きが少しだけ変わっている。姉の方の胸が気持ち程度に盛り上がっただけだが。そして弟は2本。姉の方は5本の尻尾を生やしている。顔立ちも変わっていた。
そして変身? 変化? が終わった姿は――。
「狐っ子きた!」
「「っ!」」
思わず叫んでしまったため、姉弟たちを驚かせてしまったようだ。
「ごめんごめん。つい、嬉しくって」
「……嬉しい?」
だって狐っ子だよ? 狐っ子。しかも弟は2尾で姉は5尾だよ? モフモフだよ? モフモフ。分かる? モフモフだよ? お前たち2人は自身がどれほど貴重な耳や尻尾を持っているか理解していないのか?」
「月ってこんなんだったっけ……?」
「いや、だいぶキャラが変わっているっす」
「そうよね……あの召喚された時の落ち着いた感じは何だったのかしら?」
「……元いた世界での月さんも同い年か疑うほどに落ち着いていたのに」
「確かに、少しテンションが上がっているな」
離れたところに座っている勇者組が何か言っているがそんなのは関係ない。そして先ほどから俺の後ろに立っているレイナ、メル、ミーニャから心地いい殺気が飛んできているが今の俺には目の前のことでいっぱいだ。それほどまでに気持ちが高ぶっている。
「…………ふふっ」
コーヒー(仮)を飲み干し、カップをソーサーに置いた時に気が緩み、つい嬉しすぎて笑みがこぼれてしまった。
姉弟、勇者組は肩をビクッと震わせ、レイナたちの心地いい殺気は霧散した。
席をゆっくり立ち上がり、姉弟の後ろへと歩いていく。
その際に顔が見えたが強張っていたが、何故だろうか。
「……あ――」
姉の方が何か言いかけていたが、俺が優しく頭に手を乗せると、黙ってしまった。
少しタイミングが悪かったかな、と考えたが、それはすぐに霧散し、姉の頭に触れている手のひらへと意識が集中する。
俺はいま、最高に幸せだと実感している。
向こうにいた世界で夢にまで見たうちの一つが今、実際に行われているのだから。
指で梳いても引っかかることの無い髪。触れるたびに反応する耳。ずっと触っていたいほど癖になる尻尾。
どれをとっても最高だった。
そのうえ、普通だった顔立ちも綺麗な美少女、美男子へと変わっている。
もう、なんだろう。この嬉しさを言葉に表せないほどに嬉しすぎて、今何を考えているのかも少し分からなくなってきていたり。
姉から弟へと移動し、同じように頭を撫で、髪を梳き、耳をいじってから尻尾をいじっていく。
少し触り心地が違うが、それはそうだろう。まったく同じというのは無い。
「ほぅ……」
合わせて10分ぐらいだろうか。ずっと撫で続けていたが話が進まないので仕方なく、席に戻る。
「それじゃ、まだ名前とか聞いてないけど早くて今日……もしくは明日にでもやってほしいことを言っておくよ」
自分でも順番がおかしいと思っているが、最後に収まるところに収まればいい。と考えているから問題ない。
俺は少し離れたところに座っている勇者たちを指差し――。
「あいつらと殺し合いをして欲しい」
――ニッコリと微笑みながらそう告げる。
あー、来週の月曜日からテスト一週間前になっちゃいますねー……
それまでにもう1話……出来れば2話行きたいところですけれども、もしかしたらサボって1話も載せないこともないことはない…
誤字脱字とかあったら、コメントとかくれたら嬉しいかなぁー…って思ったりしてるけれども、あまり高望みはしていないです。はい。
もしかしたら今日か明日、あらすじのところを書き換えたりする”かも”しれないけれど、変わらなかったら、『ああ、サボったんだな』とでも思ってください…
ってことで、また次回〜
……やっぱり、ダラダラ書くのって楽だよね(ぼそっ