二十六話
はい、体調はほとんど治りました。
心配してくださった方(いるか分からないけども)、また、存分にゲームに戻ることが……はい、早く書け、ですね。分かります。
そんなことは置いておき!
お気に入り登録が200を超えました!
こんな駄作なのに付き合っていただきありがとうございます!
これからも気長に頑張りたいです!
それと、月のルビについてですが、今回は全部にルビを振りました!(ルビの降り忘れがあったらごめんなさい!)
まあ、下らない話もそこそこに、物語スタート!
活気にあふれた街、スピリト。
この街に来た月たちは3日も滞在していた。
この3日、月が当初考えていた予定では、ギルドのランクを目立たない程度にゆっくりと上げながら、ただのんびりと過ごす。
――はずだった。
「……お前ら、いつまでいるの?」
「そう嫌がらないで下さいっす」
「そうよ。もう少し協調性というものを持ちなさい」
この3日、街に来た勇者5人に見つかった月はその後、付きまとわれて過ごした。
そのために、ギルドの依頼をこなすときも一緒にいるため好きに動けず、依頼を終えた後も付きまとわれているためにのんびりと過ごすことも叶わなかった。
唯一の安息地だと思っていた宿屋にいたとしても、彼らが押しかけてくるため、結局は夜、寝るときにしか休める時はない。
そして今は、ギルドを出た後にメルとレイナに案内されて行った場所である、喫茶店のような店にいる。……勇者5人とグリスも一緒に。
月はこの店の雰囲気が気に入り、レイナにこれからはずっと、飯を食べるときはココを贔屓するように言っていた。
届いた料理も合格ラインに達していたためなお気に入り、月は上機嫌でレイナからギルドについての説明を聞きながら、これからどうするかを考えていた。
そして説明も最後に差し掛かった時、月の未来は決まった。
☆☆☆
「ここです。月様」
「ほう」
連れてこられたのは落ち着いた雰囲気が漂ってくる、木で出来た喫茶店のような店だった。
数席だがテラスもあり、今日みたいに天気が良く、程よい気温のときはいいだろう。
「あ、レイナさんにメルちゃん。いらっしゃい」
店に入ると、ほわほわした雰囲気の女の子がやってくる。この店の落ち着いた雰囲気と良い感じのバランスがあり、気に入った。
「レイナ。いい天気だし、テラスで食べない?」
「はい」
「およおよ? 見たことのない男の子に女の子がいるね? 私の名前はソリア。この店の店長であるお父さんの娘なのだよ!」
無い胸を頑張って反らしながら腰に手をあてて自己紹介をする女の子、ソリア。
癖っ毛のある青色のショートヘアに、足が隠れるくらいスカートの丈がある淡い緑色のワンピース。その上に白いエプロンを着ている。
「俺は月。こっちがミーニャ」
「うむうむ。ユエくんにミーニャちゃんね。それじゃ、決まった頃合いを見計らってまた来るね〜」
俺も軽く自己紹介をすると、彼女は「うんうん」と頷いた後、店の奥に引っ込んでしまった。
俺たちはテラスに移動し、イスに座る。テーブルも丸い形をしていて柔らかい印象を受ける。こういったちょっとしたことで店の雰囲気はガラリと変わるんだよな。
さて、店の観察は終えたわけだが……こう言っては失礼な気がするが、ソリアは若干アホの子な感じがした。特にこれといった根拠はないけど、雰囲気が。
「月様、何になさいますか?」
「んー、どんなのあるの? ザックリとした説明でお願い」
「ザックリと、ですか……。サラダ、肉、スープ、パン、デザート。飲み物にはジュース、酒、コーヒー……といった感じでしょうか?」
「あー……そうだな。レイナのオススメってある?」
まあ、ザックリって言ったのは俺だけど……まあ、いいか。何の肉って教えられても分からないし。話を逸らす意味でもオススメを聞いておけば問題ない。
それよりも、この世界にコーヒーがあるのか。でも、俺ってカフェオレよりも数倍甘くしたやつしか飲めないんだよな……頼めば作ってくれるかな?
「クワイエトカウという名前の大人しい性格をした魔物……? 魔物がいるのですが、そのお肉がとても柔らかく、美味しいです」
「ほう、そうなのか。なら、それを中心にいくつか頼んで、みんなでつつけばいいか。それよりも、どうして「魔物」の部分で疑問に思ったんだ?」
「はい。クワイエトカウはその大人しい性格と肉の美味しさ、メスだとミルクも絶品なのですが、昔から家畜として育ててきたので、分類がこれといって決まっていないので……」
「んー、そういうもんか」
普通に生き物、とかでもいい気がするんだけど。
クワイエトカウ……ねぇ。
quiet(大人しい) cow(牛)で、クワイエトカウなんだろうな……。
………………。…………。…………くだらな。
それにしてもソリア、こねぇな。
注文が決まった頃にくるとか言ってたのに。
「レイナ。ギルドの説明は料理を頼んで全部揃ってから、ゆっくり食べながらのときにでもしてくれ」
「はい、分かりました。……ソリア」
柔らかく俺に対して受け答えをした後、今まで聞いたことがないようなほどに低い声でソリアの名前を呼ぶ。
「は、はいぃぃぃい〜!」
すると店の中からドタドタた音を立てながら慌てた様子でソリアがやってくる。
気のせいかもしれないが、体感温度が2、3℃下がったような……?
「あ、あのあの、レイナさん……? いつもよりも厳しいなぁ〜と感じるのですけど……?」
そう声をかけながらやってきたソリアにレイナは目を細めて睨みつける。その視線から逃れるようにソリアは俺の背中に隠れる……って、さっきよりレイナの目がキツくなってると思うんだけど。しかもプラスアルファでメルとミーニャからも睨まれるし。
「当たり前です、ソリア。私とメルだけならまだいいでしょう。……ですが、今回は月様もいるのです。いつまで腹を空かせて待たせておくつもりですか?」
「ふぇぇ……す、すいません〜」
「あー、レイナ。もういいからさ、注文しよう? このままじゃ先に進まないからさ」
「……月様がそう言うのなら」
空気が元に戻ってホッとする。
もしここで暴れられて物とかを壊し、出禁とかになったら困る。
注文を聞き終えたのか、ソリアがまた店の奥に戻っていく。
「レイナ」
「はい」
「この店の雰囲気とか気に入ったから、この街にいる間はここ、贔屓にしよう」
「分かりました。注文を取りに来ないのが少し、あれですけど、それを補うほどの良さがありますから」
「まあ、そうだな」
俺は背もたれに体重を預け、目を閉じる。
……この世界に来てから2週間と少し経ったのか。
この世界にきてから、やってきたことを振り返ってみようか。
勇者として召喚されて謁見の間に通され、まず、国王に偉そうな態度取ったやん?
………………。
次に面倒って思って城を抜け出したやん?
………………。
考えを読まれてたメルと一緒に行動して、泊まった宿屋でさっそくヤるやん?
………………。
そしてそのまま寝ているメルを置いていったやん?
………………。
森抜けて、知らないうちに魔族領に行って、なんだかんだあって村一つ燃やしたやん?
………………。
また移動して獣人の国を目指していたけど、今はこの国でゆっくりしている、と。
………………。…………。
……あれ?
こう、経緯とかを抜きにして文字だけとかにしてみると俺がやってきた行動ってのは、一般的に鬼畜だな。それ以外の何物でもない。
特に、メルとヤって置いていったとか。いやでも、それには理由が一応あるんだけど……まあ。
「……メル、ごめんな」
「え……? えっと……ゆ、月様? きゅ、急にどうしたの?」
普段しない、真面目な顔をしてメルに目を合わせ、謝ると慌てて混乱しているのか、考えがまとまっていないように思える。
「いやさ……いま、ここにきてからのことを振り返っててさ、結果的にだけど、宿屋に置いていったこと」
「……いま、もう大丈夫だよ。だって、また会ったときに待ってたって言ってくれたから」
その時のことを思い出したのか、少し辛そうにしながらも無理して笑顔を作るメル。
その笑顔を見ると……自分で間不謹慎だと思うが、興奮する。それと同時に胸を締め付けられて苦しい感じも。
性的興奮は女の子だけだが、男でも嗜虐心は刺激される。
俺の中で大切。のカテゴリーに入った人、物、事は傷つけられるのを酷く嫌う。それは自分自身にも当てはまることだが、それを持ってしても傷つけたいという欲求が芽生える。
……こんな壊れている俺を嫌っているが、好きでいる。という自分がいる。
「月様。結果的に置いていった……というのは?」
思考の波に沈んでいた意識がレイラによって引き上げられる。
「んー、ああ。説明して……いなかったね。もともとはさ、本当にただ、村を見て回ろうと思っていたんだけど、宿屋を出るときメルニアに、行っちゃいけない森がある。って言われたからさ、見に行きたくなったんだよ。その時にレイラがこっちに向かっている気配があったから、森の外だけ見て帰るんじゃなくて、行けるとこまで行ってみようかなー……って思ってたら、気づいた時には魔族領に」
「「…………」」
「メルは起きないって分かっていたから、1人で行動することになる前にレイラが合流するのも分かっていたんだよね」
「……なら」
「ん?」
「……なら、もう私を置いて行ったりし――」
「お、お待たせしました! 残りもすぐに持ってきます! だから怒らないで!」
何か言いかけていたメルだったが、タイミング悪くソリアが、料理を運んでくる。
さっきのことをまだ引きずっているのか、最後に一言付け加えてからまたすぐに奥へと残りの料理を取りに戻っていった。
「月様」
「ん?」
俺の目を真っ直ぐに見つめてくるメル。
「もう、私のこと置――」
「お待たせしましたぁ!」
またもや、何かいいかけていたメルの言葉を遮ってソリアが料理を運んでくる。
そしてまたすぐに奥へと戻っていく。
「ゆ、……月様」
「ん?」
「もうわた――」
「お待たせしましたぁ! これで注文された料理は最後です!」
3回目。
もう、タイミングを計っているのか? と疑いたくなるほどだ。
まあ、本人の様子を見る限りだとそういった感じは一切しないが。
それでも、やはり邪魔されたほうはいい気しないようで。……それゆえ、今もメルの周りが少し歪んで見える。
「すべて、揃ったので。ゆっくりとお楽しみくださ――ひぃっ! め、メルちゃんそんなに怒ってどうしたのさ! 私何かしたの!?」
「…………」
一礼して顔を上げたとき、ようやくメルの様子に気がついたソリアは顔を青くし、ガタガタと震え始める。
ソリアが何を言ってもメルは何も答えず、ゆっくりとソリアに近づいていく。逃げたくても恐怖で体が動かないのか、「イヤ……イヤ……」と言いながら首を横に振っている。
「た、助けてください! レイナさん! ユエさん! ミーニャちゃん! 本当に助けてくださぁぁぁい!?」
メルはソリアの襟を掴んで引きずっていき、建物の影に移動してその姿は見えなくなった。
「ああああぁぁぁぁぁぁあ!?」
建物の影に姿を消してから数秒後。
とても大きな悲鳴が街中に響いたとさ。
「それじゃ、食べようか」
すっきりした顔で戻ってきたメルが席に座ったのを確認して、運ばれてきた料理を食べ始める。
「助けてって言ったのに……助けてって。名前まで呼んで……助けてって」
そしてすっきりした顔のメルとは反対の、げっそりとした顔で戻ってきたソリアは俺の後ろに立ち、耳元でずっと呟いてくる。
このままレイナからギルドの説明を受けてもいいけど、鬱陶しい。簡単に追い払う方法は……。
…………。
「助けてって言ったのに……助けて――」
「なあ、ソリア」
「――はい、何ですか?」
俺が名前を呼ぶと耳元で呟くのを止め、少し離れて何かを期待しているような目を向けてくる。
そんな彼女にとびっきりの笑顔を見せながら一言。
「いい加減黙らないと犯すぞ?」
何を言われたのか理解できないのか、ソリアは固まるが、数十秒も経ってから理解したのか、顔を真っ赤にさせながら首を何度も縦に振った後、一度頭を下げてから店の奥へと行ってしまった。
…………さて。
「3人とも。冗談だからそうカッカするな」
正面を向くと、レイナたちが拗ねたように頬を膨らませていた。
…………これだけならばただ、可愛いだけだろう。
だが実際には、物理的効果があれば、ものすごく規模の大きいクレーターなどが余裕で出来るほどの殺気が俺に向けられている。
ここしばらくは大人しかったけど…………やっぱり、こっちほうもありだね。てか、病んでるほうが俺は好きだ。いつ、後ろから刺されるかなんて考えるだけでゾクゾクしてくるね。
「大人しい子が俺は好きだな」
そう呟いたとたんに殺気も止む。
ヤンデレは扱いにくいといった印象があるかもしれないが、実際問題そうではないのかもしれない。
まあ、この子たちが例外。であるだけなのかもしれないけど。
「さて、レイナ。本題であるギルドについての説明をしてもらおうかな」
誤字脱字、意見などがあれば気軽にコメント下さい!
次回も3日前の回想の続きです!
ってことでまた次回!
(ちなみに、この時点で次の話、一文字も書けてないです)