二十五話
いやー、新学期、始まったねぇ…
授業が辛い!
しばらくはほのぼの系じゃなくてこれに専念すると思うけど……うん、更新の速さとか変わらないかも…
まあ、そんなことは気にせずに
物語、スタート!
「たしか……メルニアだったはず」
城を出たとき、初めて異世界にきて泊まった宿にいた。
なんでこんなところにいるんだ?
ってか、やっぱり再会よりも遭遇のほうがしっくりくるな。
それほど長い間、別れていたわけでもないし。そもそも、俺はメルニアと親しい仲でもないからな。
「メルニア? どうしてここに?」
メルが俺から離れ、メルニアの近くに行く。なので俺はいま、ミーニャにおんぶされる形になっている。
「メル様。お久しぶりです。レイナに渡したいものがあってですね……この街に寄ると思って来たんですよ」
「……私に?」
最初にギルドに入っていき、メルニアを見て固まっていたレイナがようやく動き出す。
今の感じからしたら、俺はレイナとメルニアが顔見知りだと思う。
レイナはメルの師匠みたいだと思うから……そこから繋がっていたりとか、かな? でも、宿に泊まったときはメルとメルニアでも面識があったようだし…………まあ、どうでもいいか。いつかは教えてくれるだろうし。
なんてことを考えていたら、メルニアは腰に巻いていた手のひらサイズの大きさをしたポーチのようなものから、明らかにそのポーチに入らないであろう大きさの、綺麗に磨き上げられた剣を取り出す。刃渡りは目測で70センチくらいか? 無駄な装飾などなく、性能を重視した……まあぶっちゃけ普通の剣だった。
「これ、あなたに返しておこうと思ってね」
「別にいいのに」
「そういうわけにもいかないわ。もともとはあなたのものなのだし、それのこの剣が1番あなたにしっくりくるんじゃないの? 旅をするのにはそういうの、大事でしょ?」
「そうだけれど……」
「返すわね。変なもの使って死んでもらっちゃ困るもの」
はじめは受け取ろうとしないレイナだけど、言い包められて……かな? 最後は受け取っていた。
「メルニアはもう、剣を振らないの?」
「メル様。50をすぎたババアにそれは辛いですよ」
アハハと腰に手を当てながら笑うメルニア。
その姿を見て、あと10年はいけると思ったのは俺だけでないはず。
「そろそろ私は帰りますね。宿を主人に任せているんですけど不安しかないので」
「そう。またね」
「また泊まりにいくね、メルニア」
レイナとメルはそれぞれ別れの挨拶をして握手をするが、俺とミーニャはそんな仲ではないので軽く頭を下げるだけで終わる。
そしたメルニアがギルドから出て、姿が見えなくなった途端。
凄まじいほどの殺気が俺とミーニャを包む。
言うまでも無く、殺気を発しているのは俺がミーニャに背負われているのをみたレイナとメルである。
……このギルドにきて今の今までずっと大人しかったのに。
周りにいる、出来る冒険者たちが怯えているから止めなさいって。……なんて言ったところで話を聞かないから意味なんてないんだけどさ。
「月様? いつまで引っ付いているのですか?」
「ごめんね、月様。私が離れたからミーニャに引っ付かなくちゃいけなくなったんだよね?」
このままでいると、後々面倒なことになりかねない……ってかもうすでに面倒なことになっているか。
あれからだいぶ時間も経って楽になったし、もう大丈夫だろう。
「……あ」
俺がミーニャから離れて立つと、残念そうな声が聞こえてきて、また抱きしめそうになるがグッとこらえる。ここで感情のままに行動したらこのギルドが壊れるのは目に見えている。いや、ギルドが壊れるだけで済むならまだマシなほうか。
「落ち着け2人とも。登録しに来たのに、いつまでも時間かけてるなんてアホらしくなってくる」
そう声をかけながらそれぞれ2人の頭を撫でる。
うん、これで少しは落ち着いたけど、こんどは冒険者たちからの嫉妬が鬱陶しい。
「まあ、レイナ。早く登録しよう」
「はい。こちらです」
カウンターのほうへ歩いていくレイナの後を、ミーニャを手招きしてよんでついていく。
メルはさっき頭を撫でたときに俺の手を取り、そのまま腕を組んでいる。
「新規登録を2人、お願いします」
「は、はい」
見た感じ、俺と同い年くらいの娘が受付を担当していた。緊張しているのか、背筋をピンと伸ばして対応する。
俺たちから見て死角になっている場所に置いてあったのか、羊皮紙を2枚と羽ペン、インクを取り出す。
「せ、説明など――」
「私からするので大丈夫です」
「わ、分かりました」
羽ペンを受け取ったレイナは俺とミーニャの代わりに必要事項をスラスラと書いて埋めていく。その間に受付の娘が俺とミーニャに説明するため、声をかけようとしたがレイナが遮る。
……涙目になってるから、少しは手加減ってか遠慮ってか、もう少し優しくしてあげようよ。
「月様。ミーニャ。これに血を少し垂らしてください」
渡された羊皮紙にレイナから受け取ったナイフで指を少し傷つけ、血を垂らす。
一滴垂れたところで傷が塞がったけど、足りるかな?
ミーニャのほうを見てみると、俺と同じように一滴垂れただけで傷が塞がっている。魔族だから回復力が早いのか。
「これで平気?」
「はい、そろそろだと思います」
何が? と聞こうとする前に持っていた羊皮紙が光り始めた。
手を離してみるとそれはその場に浮いたまま、落ちることはなく光っている。
そして光は弾け、消えた。
「……ん? 消えちゃったけど?」
「いえ、それで大丈夫です」
「んー、ならいっか。それじゃどっか別の場所でゆっくり教えてもらおう」
レイナが大丈夫だというなら大丈夫なのだろう。
そろそろ周りの冒険者たちからくる嫉妬の目から逃れたい。このままだと手を出しそうだ。
あくびをしながらギルドから出るべく、振り返ると誰かが入ってきた。
とたんに……ギルド内の空気が悪くなったような気がした。
「……ん?」
「おいガキ、邪魔だからどけよ。俺様の歩く先に立っているな」
ボーッとしていたら、気がつくと目の前に足があった。
見上げてみると……なんだろう。見るからに小物感というか、かませ犬の立ち位置にいるような。そんな男がいた。
顔立ちは……怖い作りだけど、見せかけだけって感じだし、筋肉もついているけど、無駄って感じが大きい。背は2メートル超えてるけど……ただそれだけだ。
後ろにはコバンザメのようについて回るだけの、もっと小者臭がする男が2人いる。
「おい、聞いてんのか? 邪魔だからどけって言ったんだよ」
動かない俺にイラついているのか、肩を少し強めに押された。
バランスを崩したふりをして、たたらを踏みながら2、3歩下がる。
「「月様!」」
「月さん!」
3人が俺のそばに寄ってくる。そして傷がないのを確認してホッとした後、俺の肩を押した男を睨みつける。
俺が関係しているため、迫力が増している。
俺の肩を押した男も睨まれて一瞬怯えるが、睨んでいるレイナたちの顔を見ると下卑た笑みを浮かべる。
「ほお、ガキのくせにいい女連れてるじゃないか」
男は下心丸出しで全身を舐めるように3人のことを見ていく。
……ってか、さっき男が触れた肩から臭ってくるんだけど。レイナたちもそれに気づいたのか、顔をしかめて俺の肩を見てくる。
「月様……これは」
「うん、分かってる……すごい臭いから綺麗にするよ」
いつも通り、水魔法の応用で綺麗にするけど……臭いは取れたが、風呂に入ってこの服も洗濯したい。綺麗にしたとしても生理的に無理だ。
結局、風呂を作って入ろうとは思っていたけど実際にはやってないんだよね……。
いい機会だし、獣っ娘をモフモフするのは少し我慢して、この街でゆっくりしていくか。風呂を作って入ったり、服を見繕ったり、状態異常は消えないけれどベッドでゆっくり寝たり、風呂を作って入ったり、風呂を作って入ったりしたい。
勇者たちはまだここまで来てないと思うし、会わないと思うから大丈夫だろう。
ギルドで依頼とか受けてみたかったてのもあるし。
……ってか、さっきの勇者云々の件、フラグとかにならないよな? いや、もう考えた時点でアウトかもしれないけど、実際にはフラグなんてたまたま当たるだけだし……うん。気にしなくてもいいか。
「……うぐっ」
また考え事をしていたら、急に目の前の男が呻き声を上げながら腹を抑えてうずくまっていた。
……え、なんで?
いや、うずくまっているってことは、殴る蹴るとかしたと思うから臭いの元を辿っていけば……メルとミーニャ、レイナの手に辿りつく。
……………………。
「汚いから触っちゃダメだって。何してるんだよ。3人が汚れるじゃないか」
レイナ、メル、ミーニャの順に両手で手を包み、綺麗にしていく。でも、こう綺麗にしたといっても何かが受け付けない。……石鹸でも作ろうかな。
男の後ろにいたコバンザメAとBも倒れているけど……いっか。
「3人とも、そろそろ行こうか。どっかゆっくりできる場所で、ギルドについてレイナから教えてもらわなきゃ」
俺たちは転がっている男たちに触れないよう、避けて出口へと向かい、出て行く。
「レイナかメル、どっかゆっくりできる場所知らない? お腹もすいてきたから、出来れば美味しい食べ物が出てくる場所でお願い」
俺が先頭で出てきたはいいけど、この街について知っているわけでもなく、2人に案内を頼む。
「あ、ならレイナ。あそこがいいんじゃない?」
「まあ、そこしかないですね」
メルを先頭にしてその場所へと向かっていく。
そのお店で出てくる料理は美味しいものだと期待して。
☆☆☆
「あー、やっと着いたっす」
「誰かさんが余計なことをしなければもっと早く着いていたんだがな」
「そ、それはもう過ぎた話じゃないっすか! それにみなさんだって楽しんでたじゃないっすか!」
「それを言われたら否定できないわね」
森から5人の少年少女が出てくる。
まだ街の外で魔物がおり、危険だというのに空気は緩みきっており、緊張感の欠片も無い。
「それにしても、大丈夫っすかね? オークの集団を見つけて襲ったわいいですけど、何匹か逃がしたっすよ?」
「それはしょうがないと割り切るしかないわよ。あのまま集団を放置しているよりは遥かにいいなのだから」
「今更戻ってもどこにいるか分からないっすもんね」
「北条、大丈夫か? あのオークの集団と戦闘してからここまでずっと走ってきたわけだけど」
「だ、大丈夫です……。岩井さんにおんぶして走ってもらったので」
「そうか。無理はするなよ?」
5人はその場で立ったまま話をしていると、少し経ってから誰かが森から出てくる。
「グリスさん、大丈夫っすか?」
「ああ、心配はいらん。一定の距離を保っていたからな。まあ、今度からは同伴しなくてもいいだろう」
「え~! これからもグリスさん同伴がいい!」
「まあ、あくまで同伴なしはこういったあまり強敵がいない場合だけだがな。ドラゴンなんかを相手にするときは同伴しないと俺が殺される」
「ならいっか」
グリス、と呼ばれている男と合流した5人は街へと足を向ける。
そして門兵のチェックを通過し、街の中に入ったとき。
少年の1人が両腕を上に突き上げながら大きな声をあげる。
「スピリトに着いたぁぁあ!!」
この世界の国の配置とかまだ、詳しく言ってないけど…まあ、いいか
変にごちゃっても分からないだけだし、なんとかなるさー
ってことでまた次回〜