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二十三話

んん…特に何もないな

ってことで物語スタート!

 戻った時、メルとミーニャはまだ寝ていて仲良く手を繋いでいた。

 俺とレイナはそのまま2人を起こさず、朝食の準備を始めている。……と言っても、レイナとメルが持っていた干し肉に途中で採ったりした果物が中心で並べるだけなんだが。

 創造で食べ物とか作れないこともないけど、やっぱりそれだとつまらなくなるし。


「美味しいもを食べたいって思うけど、こうやって調理せずにそのまま食べるっていうのも結構好きだよ」


 俺は近くにあったリンゴみたいな果物を手に取り、一口。


「……見た目はリンゴなのに、味はレモンに近いな。不思議な感覚だ」


 俺はそのままレモン味のリンゴを食べ進めていく。

 もともと、見た目と考えている味が一緒だと思っていなかったので驚きもそんなにない。それにこれは酸味も強くなく、あとからくる甘さがクセになる。


「「…………ん」」


 メルとミーニャが目を擦りながら体を起こす。


「「…………ん?」」


 そしてキョロキョロと2人して辺りを見回し、俺を見つけて目を輝かせた後、手を繋いでいることに気がついて顔を見合わせる。


「どうしてミーニャと手を繋いで寝ているの!」

「そ、それは私のセリフです! 月様の腕に抱きついて寝ていたのにどうしてメルと手を繋いで寝ていたのですか!」


 2人は繋いでいた手を振り払い、顔を見合わせたまま言い合いを始める。

 俺とレイナはそれを止めずに朝食を食べ進めながら見ている。

 ……あぁ、ここまで長かった。

 この4人で旅を始めてからの名物となったメルとミーニャの言い争い。

 始めは言い争いなんて生温いものではなく、武器アリ魔法アリの喧嘩(とっくみあい)で、お互いのことをお前やらコレ、ゴミ、雌豚など挙げればキリがないほどに罵り合っていたが……2人ともこんなに可愛いのに、汚い言葉遣いは似合わないので、ちょっと”お話”をして直していくことにした。

 始めは”お話”をしてもその場限りで時間が経つと戻ってたが、何度も繰り返すことって大事だよね。今では仲良く言い争っている。

 ……お、これは見た目が梨なのに味はスイカみたいだな。俺、スイカとメロンはそんなに好きじゃないからレイナにでもあげるか。


「ほれ、レイナ。あーん」


 俺は一口かじった食べかけの果物を隣に座っているレイナの口元に持っていく。


「ゆ、月様?」

「あーん」

「……あ、あーん」


 戸惑っていたレイナだったが、もう一度言うと頬を赤らめながらも口を開け、俺が持っている果物をかじる。


「美味しい?」

「は、はい。美味しいです」

「それならこれ、食べ終わるまで……」

「ゆ、月様! 私には!?」

「あ、あの……私にもお願いします。月さん」


 全部食べるまで続けようと思っていたら、さっきまで言い争いをしていたメルとミーニャが詰め寄ってくる。


「んー……そうだね。でも、これはレイナの。メルとミーニャのはまた別のでやってあげるよ」


 そのおかげで、朝食の時間がいつもの倍以上にかかった。




「さて、装備の点検も終わったし、行くか」

「今更だけど月様。武器は何もないの?」

「ん? 持ってないよ」


 朝食の後片付けも終え、メルたちの持つ武器の点検も終えて獣人の国に歩き始めた時、手を繋いでいるメルから疑問の声が。


「魔法を使うには媒体となる杖とか、中には指輪やイヤリングなんて人もいるけど……月様、持ってないよね?」

「うん、ないけど……普通じゃないの?」

「確かに媒体が無くても魔法は使えますが、あるのとないのとでは違いますね」

「んー、やっぱそんなもんなのか。まあ、俺は無くても別に問題ないよ。必要になったら造ればいいし」


 前を歩くレイナが補足の説明を入れてくれる。

 そういった杖とかの媒体が必要って、固定観念を捨てれば平気だと思うんだが……。それ壊されたらどうにもならないし。


「月様」

「ん? どうした?」


 レイナとキスをした場所を過ぎ、小川をまたいで森の中を少し歩いていたとき。

 不意にレイナが立ち止まる。


「少し、ゴミを掃除してきます」

「んー、無視してもいいと思うんだけど」

「すいません。それほど時間は取らせませんので」

「まあ、ほどほどにね」

「はい」


 邪魔されたことをまだ根に持っていたのか、レイナは1人、進む方向から逸れて奥へと行ってしまう。

 無関係なゴブリンたちよ……ご愁傷様。

 見たこともないゴブリンたちに心の中で合掌。


「あの、月さん。レイナさんはどこに?」

「んー、ストレス発散? なんにしてももう戻ってきたよ」


 10分とかからずに戻ってきたレイナ。


「おかえり」

「はい、お待たせしてすいません。すぐに行きましょう」


 怪我を負ったわけでもなく、特に問題はないようで。

 一度頭を下げた後は何事もなかったように再びレイナを先頭に歩いていく。


「あの、レイナさん。どこに行ってたんですか?」

「お花を摘みに」

「あ、そうだったんですか。すいません……」


 どこに行っていたか気になっているのかミーニャが直接尋ねると、振り返り真顔でそう言われ、頬を赤らめて俯き、俺と繋いでいる手に力がキュッと入る。

 この世界にも、レイナのような言い回しがあったんだな。


「それでレイナ。獣の国まであとどれくらい?」

「そう、ですね。獣人側の領地に入るまであと2日ほどです」

「あと2日、か。……ふふふ、あと2日」

「「…………」」


 思わず笑いが漏れたけど……問題ない。メルとミーニャが引いているような気がするけど問題ない。

 俺は自分に正直になる。たとえ引かれようとも曲げるつもりはたぶんない。

 ………………。

 …………。

 そんなことよりも魔物が一切出てこない。

 昨日、弓で狙ってきたゴブリンを見てから魔物のマの字すらない。思い返してもこの4人で旅をしてから……いや、俺が城を抜け出してからの戦闘を含めても両手で足りる。

 …………なんならいっそ、盗賊とか出てこないかな。

 見たことない植物とかがあるから歩いているだけでも退屈はしなかった。

 だけどこうも続くとさすがにねぇ……。


「…………ん?」

「月様? どうかしたの?」

「月さん?」

「……いや、何でもないよ」


 ……気の、せいか?

 いま、全身に悪寒が走った気がしたんだけど、白の言っていた副作用の前触れかな?


「月様」

「ん? どうした?」


 考え事をしていたらレイナに呼びかけられた。

 さっきのことは忘れてもいいか。


「このペースで行きますと、昼過ぎあたりに大きな街の近くを通るのですが、寄っていってもいいでしょうか?」


 ……街、か。

 そういえば俺、召喚された国。しかも城の中の一部と窓から眺めた景色しか知らないんだよな。


「ん、いいと思うよ。俺もじっくりこの世界のこと見てなかったしいい機会だ」

「ありがとうございます。そろそろ食料が無くなりそうでしたので。あとは少し、武器を」

「そうだね。街に行ったら自由行動……って言いたいけど。この2人は何するか分かんないからね。纏まって行く?」


 俺の提案にレイナは少し考えた後。


「いえ、それでしたら私だけ単独で。月様は申し訳ないのですが2人のことをお願いします」

「まあ、そうなるか。ごめんね、任せて」

「いえ、慣れていますから」


 今更だけど、レイナがいなかったらこのパーティーは崩壊していたね……。ちゃんとレイナにも構ってあげないと。


「「月様」」

「月さん」


 3人に呼びかけられたけど……。


「どうした?」

「少し離れたところで誰か戦っています」


 ああ、なるほど。”どうでもいい”と思っていたから無視していたけど…………今でこそ3人は俺が絡むと性格が変わるけど、根は優しいんだよな。


「いいよ、行ってきな。俺もすぐ行くから」

「「「はい」」」


 3人は頷いて、駆け出していく。

 んー、戦っているのは”視た”ところ剣士が男と女、1人ずつ。盾を持った重装備……あれはまんま盾職でいいのか? まあ、その男が1人。弓を持った弓術士(きゅうじゅつし)? の男が1人。杖持った女の魔術師が2人の6人パーティーだ。

 男女混じったパーティーって恋愛関係の(もつ)れから崩れることってよくあるらしいよね。

 まあ、そいつらがでかい棍棒持ったオーク? だと思うやつら5匹……あ、後ろに杖持ったオークが1匹いた。計6匹のオークに押されていた。……少し表現が違ったな。弄ばれていた。

 盾職の男が3匹のオークを相手にしているけど、盾、装備共にヒビが入ってるし、数分もしないうちに壊れるだろう。1匹ずつオークの相手をしている剣士の2人も女の方は片方腕が折れて血を流しているし、男の方は肋骨が何本かやられてるな。弓術士と魔術師はこれといった外傷はないけど、矢が残り数本と魔力が尽きている。

 頑張って傷を負わせても後ろにいるオークがすぐに治している。

 そのオークを倒しに向かおうとすると、大きな棍棒を持ったオークが邪魔をする。


「運がなかったけど、俺たちが通りかかって助かったな」


 あと1分も持てばレイナたちが到着するだろう。

 ……あ、女の剣士が疲労から倒れた。

 片腕でなんとかといった様子で頑張っていたけど、限界だったようだ。その女剣士を男の剣士が助けようとしているけど、オークが邪魔をする。

 弓術士が弓を放つが、棍棒で弾かれてしまっている。

 うんうん。可愛い、綺麗な女の子が絶望に染まる顔ってそそるよね。

 でも、このまま殺されるか、女としての辱しめを受けたらレイナたちが悲しむだろう。たぶん、このままじゃ間に合わないだろうし。

 他の人たちはどうなろうと知ったこっちゃないけど、俺が気に入った人が悲しむのは許せないからね。


「…………行くか」


 そう呟き、俺は瞬間移動といった非常に楽な方法で女剣士と棍棒を振りかぶっているオークの間に立つ。


「……えっ?」


 後ろから驚いた声が聞こえる。

 オークも表情は変わってないが雰囲気から驚いているように感じられる。周りも俺が急に現れたことで動きが止まっている。

 いまなら簡単に殺れると思うんだけど……武器の損傷が激しいから無理か。体力的にも気力で保たせているだけだから限界だろうし。


「…………お?」


 いち早く気を持ち直した目の前にいるオークが、俺を潰そうと振りかぶっていた棍棒を振り下ろしてくる。


「よ、避けて!」


 後ろから女剣士の叫びながらそう言ってくるのが聞こえてくるけど……俺が避けたら自分が潰されること、分かってるのかな?

 取り敢えず、振り下ろされた棍棒は力に逆らわないように逸らしておく。

 大きな音を立てながら俺のすぐ横に振り下ろされた棍棒。それのせいで土煙が巻き上がるが、それが晴れると大きく抉られている地面が見える。


「……ふぁ」


 眠気からあくびがでる。

 それを舐めていると勘違いしたのか、オークが再び棍棒を振り上げる。


「あとは任せたよ」

「はい」


 俺が伸びをしながらそう言うと、茂みから返事をしながらレイナが飛び出してくる。

 そして短剣を手に持ち、そのまま勢いを殺さずに飛び上がってオークの首を斬りつけ、胸を思いっきり蹴飛ばして後ろに倒す。


「おお、さすが」

「ありがとうございます」


 後ろに倒れたオークの首と体が離れ、そこから赤黒い血が思いっきり吹き出す。

 俺に血がかからないように気を配ってくれたのか。

 少し遅れてメルとミーニャも茂みから飛び出してくる。


「よし、3人とも! いまからオークを1番多く倒した子に俺を含めた3人に1日命令権をあげよう!」


 俺がそう言った瞬間、ぶわっと空気が膨らんだ気がした。レイナたち3人を中心に。

 そして3人の姿がぶれたと思ったら、盾職の周りにいたオーク3匹の首が飛んでいた。

 次に、男剣士の近くにいたオークの首が飛び、最後に杖を持ったオークの首が飛んでいるのが見える。


「ん、お疲れ様」

「月様! 誰が1番!?」

「ゆ、月さん! 誰ですか!?」


 労うが、レイナだけ俺に頭を下げ、メルとミーニャは俺に詰め寄り、結果を聞いてくる。


「そうだね。盾職の周りはそれぞれ1匹ずつ。次に倒した男剣士の側にいたオークはレイナだね。最後の杖持ったオークはメルとミーニャが同時だったから、まあ引き分けだ」


 そう伝えると2人は肩を落として残念そうにする。少し離れたとこにいるレイナも少し残念そうに見える。


「まあ、引き分けだったけど、俺に対して1つだけ、出来る限りのことだけど言う事聞くけど?」

「「ほ、本当!?」」

「うん」


 そう伝えると、メルとミーニャは仲良く手を取り、やった! と喜んでいる。

 本当、つくづく俺は気に入った子に対して甘いな、と思う。変える気はないけど。

 レイナも嬉しそうだし、この提案は悪くないと思う。


「あ、あの……助けてくれてありがとうございます」


 振り向くと、6人全員が揃って頭を下げている。


「気にしなくていいよ。助けたいって言ったのはあの3人だし、俺はその意見を尊重しただけだから。お礼を言うならそっちに」


 そう伝えると、足取りはゆっくりだがレイナ、メル、ミーニャへとお礼を言っていく。

 さて、このまま一緒に街まで行くのかな? 置いて行ったら今度こそ殺られると思うし。

これ、昨夜には載せられたんだけど、もう少し長くするか悩んでたんよ……すいません、嘘です。ゲームしてました…

ま、まあ、また次回〜

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