十八話
更新のペースが遅くなったよーな…
……俺がサボりすぎてるだけか
本当はこの話に月のステータス書こうと思ったけど次になりそう
場面展開の多い、いままでで一番酷い駄作な気がする…
ま、気にせず物語スタート!
「今からでもあいつ探して殺しに行くか」
村についた月が最初に呟いた言葉がそれだった。
だがすぐに頭を横に振り、助けるべく行動を起こす。
「一人ひとりにやっていたら時間が足りない……魔力は無駄にあるし纏めてやりますか」
広場に転移した月はイスの上に立つ。
そして目を閉じ、広場に村に住んでいる魔族全員を転移魔法を使って移動させる。
人の数に対し、広さが足りないため、多少重なったりしているが仕方ないと月は割り切る。
もともと女子供は広場に集まっており、転移させたのは広場から少し離れたところで戦った男の魔族たちと隙を見て逃げ隠れたが、見つかってケガを負わされた子供の魔族たち。
「初めてやるけど……なんとかなるでしょ」
そういった月の体から魔力が漏れ出ていき、広場全体を覆う。
そしてその魔力は魔族一人ひとりを包み込んでいく。
すると男、女。大人子供関係なく、みるみるうちに傷口が塞がっていく。
「死人が出なくてよかった……かな」
周りを見回し、寝息を立てながら寝ている魔族たちを見て安堵の息を漏らす。が、月は首をかしげる。
魔族側に来てから一番時間をともに過ごしたミーニャが見当たらないのだ。
「全員を移動させたと思ったのに……広場以外に気配はないし……村にいなかった? でも何故?」
人差し指の第二関節を咥えながらいろいろな可能性を考えていく。
そして一番可能性が高いと思われる考えにいたり、風魔法をうまく使って空に飛び上がる。
「……やっぱり」
月は自分の考えが合っていることが分かり、転移魔法を使って移動する。
☆☆☆
「……はぁ……はぁ」
ミーニャは花に囲まれて横になっていた。
治癒を使って擦り傷などは治したが、レベルが低く、背中の肩から腰にかけてつけられた深い傷は治すことができずにいる。
「……このまま……死んじゃうの、かな」
朦朧とした意識の中、ボーっと空を眺めながらミーニャは子供のころを思い返していた。
父親があれだったため、母親はミーニャを生んですぐ死んでしまった。
自分勝手であった父親はこの僻地である村にとばされる。当然、村の住人からは嫌われるが赤ん坊に罪はないと、世話をしない父親の変わりに村で赤ん坊であったミーニャを育てた。
すくすくと元気に育つミーニャ。
育ててくれた村のためにとミーニャは恩を返すため、笑顔で困っている人たちを手伝っていった。
ミーニャが5歳のころから父親は姿を消しており、村はミーニャを中心に笑顔が絶えずに生活していた。
だけど、ふと。1人になったとき、ミーニャは心のどこかにぽっかりと埋まらない穴について考える。村のみんなはたくさんの愛情を込めて育ててくれた。だけどその穴が埋まることはなかった。
「…………月、さん」
ここにいるはずのない人の名前を呼び、ミーニャの目の端から涙が一粒、流れ落ちる。
つい最近出会った人間族の男。
小さい頃、他の子供たちと一緒に勉強したときに魔物と同じぐらい酷い存在だと教えてもらったため、あまり良い印象は持っていなかった。
だけど心のどこかで月を。月の温もりを求めていた。
人間族は最悪だと教えていた村の大人たちも月のことを受け入れている。
彼はそんな不思議な存在だった。
「月、さん……」
ミーニャは月の名前を呼び、力なく腕を空へと伸ばす。
もう一度、あの温もりに触れたい。
声を聞きたい。
名前を呼んで欲しい。
頭を撫でて欲しい。
そばにいて欲しい。
……だけどその願いは叶うことはない。
広場で小さな子供たちを纏めているとき。騎士の格好をした金髪の人間族の女がいきなり現れて剣を振り回し、次々と仲間を……いや、家族を斬っていく。誰も殺されていない。だが、手当てをしなければ死ぬほどの傷を全員に負わせていった。
そして見下すような目線で一言。
『今回の件。全部はミーニャの父親、ガイアスが企てたことだ』
そう言ってどこかに行った女騎士。
それを聞いたミーニャは何も考えられなかった。
自分勝手でバカな父親だとは聞かされていたが、最後の一線は越えないと信じていたから。
裏切られ、何も考えられずにいたミーニャは気がついたときには花畑の真ん中で横になっていた。
「…………」
目を閉じ、空に伸ばしていた手から力が抜け、意識を手放そうとしたミーニャ。
その手を誰かが優しく包み込み、温かいものが体に流れてくる。
「大丈夫だったか。ミーニャ」
「……月、さん」
ミーニャは嬉し涙で視界がぼやけるが、その目は確かに月を捉えていた。
それでも左手を伸ばし、月の顔に触れて月がそこにいることを確かめる。
「温かい……」
そう呟き、ミーニャは気を失った。
☆☆☆
「っは……はぁはぁ……」
月が召喚された国の剣士たちが訓練する広場。
そこでは魔族の村を襲った金髪の女騎士が剣を地面に突き刺し、杖の代わりにして体重を預け、青い顔をして息を整えている。
周りには剣の訓練をしていた兵士や勇者たちがいきなり現れた彼女を見て驚いていたが、彼女自身にそんな余裕は無かった。
「あと少しでも遅かったら死んでいた……」
彼女が月から逃げることが出来たのは、ネム・ナリシュが偶然作成に成功した、持っている者に命の危機が及ぶとき、あらかじめ設定していた場所に転移するというもの。
小指の爪先ほどの大きさをしており、紫色で丸い形をしている。
作成に必要な材料が材料なため、偶然作成に成功した以降は作られていない。そのため、数も少なく、冒険に出ている亡くすには惜しい人材にのみ配られている。
彼女は口の中に仕込んでいたそれを月からの攻撃を受ける前に本能で”死”を感じとり、躊躇なく使ったのだ。転移したあと、あの場はどうなったか彼女は知る由もないが、死んでいた。ということだけは理解していた。
二度と会いたくない。
彼女は今、そのことだけを考えている。
その実力からか、苦戦を体験したことはあったとしても、死の恐怖を今までに体験したことの無い彼女。月と対峙したとき、ステータスを見て弱いと思っていたために油断した分、さらに恐怖を募らせている。
そして止めとなったのは月の目だ。
月は知り合いを……特に自分が気に入った相手を傷つけられるのを嫌う。
そのため月が気に入ったものを傷つけた彼女は彼から負の感情がこもった目を向けられた。
長い髪の隙間から向けられた感情がこもっておらず、目の奥に垣間見える闇。
その目を真正面から見た彼女の精神はボロボロだった。
だから……。
「……あの、大丈夫ですか?」
辛そうにしている彼女に近づいていき、声をかけた勇者の一人。守一剣。
「……近づくなっ!」
だが、彼女は守一の顔を見た瞬間、差し伸べられた手を払いのけ、離れようとする。だが、足をもつれさせて転びそうになったところをグリスが支える。
月が黒目黒髪だったため、完全なトラウマになっているのである。
「何があった、シア。……いや、まずは部屋で休め。落ち着いたら話を聞く」
グリスが肩をかし、城へと入っていくのを見ながら、佐倉楓は近くにいた兵士に声をかける。
「……あの女の方は?」
「ああ、勇者様方にお話していませんでしたね。彼女はシアノス・フィニスタさんです。彼女は今のグリスさんを圧倒できるほどの実力を持っているんですけど……何があったんでしょう。あんな状態のシアさんを見たのは私、初めてです」
「……ありがとうございます」
佐倉は引っ掛かりを感じたが、お礼を言って守一の下へと向かう。
「守一。そう気を落とすな。何があったから分からないが混乱しているらしい」
「ああ。落ち着いたら俺たちにも話を聞かせてもらおう」
傷ついた様子はなく、守一は佐倉にありがとうとお礼を言って訓練に戻っていった。
☆☆☆
「…………メル」
「……誰よ。って……れ、レイナ?! ど、どうしてここに? いや、その前に月様は!?」
「あなたが寝ている間に何処かへ行ったようですよ。メルニアに聞きました」
睡眠食堂の看板が掲げられた二階建ての大きな宿。
その一室でいま、城で勇者のサポートをしているはずのレイナが蔑むような目でベッドの上で横になっている第二王女であるメルリーナを見下ろしている。
レイナの格好はメイド服ではなく、動きやすい革の服に矢と矢筒を腰から邪魔にならないように提げている。
「早く服を着て月様を追いかけますよ」
「分かったわ……」
シーツを剥ぎ、テーブルの上に畳まれて置いてあった服を着る。
レイナは待っている間、壁に背を預けて目を閉じている。
「……そういえばレイナ。メイドとしての仕事はどうしたの?」
「ああ、それなら辞めましたよ」
「そう。辞めたの」
「ええ」
「…………」
「…………」
服を着ながら、メルがふと尋ねる。
それに対し何の反応も示さず返すレイナ。
そこでしばらく、沈黙が訪れる。
「…………え!? 辞めたの!?」
「ええ」
「何で!?」
「それはメルがよく分かっているでしょう」
「……月様は私のものよ」
「それは月様が決めること」
服を着終え、剣を手に取ったところで驚き、勢いよくレイナのほうを向くメル。
その理由を聞き、目を細めてレイナのことを睨むが、レイナは壁に背を預けたまま片目を開けて一度だけメルを見てまた目を閉じ、淡々と返す。
「まあ、いいわ。私は一人で月様を追いかける」
「死にますよ?」
「…………」
「メルニアが言うには、月様、あの森に入ってしまったらしいです」
「…………」
「どうしますか?」
「…………今回だけよ」
「そうだといいですね」
喧嘩腰のメルに対し、レイナは歯牙にもかけない。
納得がいかないようだが、この場では無理やり自分を納得させてレイナと共に月を追いかけると決めたメル。
「……レイナ。敬語は?」
「誰が、誰にです?」
「……なんでもないわ。…………行きましょうか」
メルを先頭に部屋を出て階段を降りていく。
「おや、メル様。よく眠れたかい?」
「ええ、よく眠れたわ……本当に」
階段を二人が降りるとメルニアが元気よく声をかける。
不甲斐ないとばかりに唇を噛むメル。
メルニアはそれを見てもニコニコと笑うだけ。
「もう、行くのだろう? これ、持って行きな」
脇に置いてあったバスケットをレイナへと手渡す。
「森に入る前に歩きながらでも食べるといいさ」
「ありがとうございます」
受け取り、お礼を言うレイナ。
メルも隣で軽く頭を下げる。
「では、行ってきます」
「気をつけて行って、無事に帰ってきなよ」
「はい」
「うん」
宿から出て、森へと向かいながら早速、バスケットに入っていたサンドイッチを食べ始める。
「月様は私のものだから」
「それは月様が決めることです」
「ふふっ。月様に会ったら今に分かることよ」
「そうですか」
森に着くまでの数分。ずっとこのやりとりを繰り返す二人。
「メル。くれぐれも足を引っ張らないように」
「分かっているわ。私も月様に会えないで死ぬなんてごめんよ」
入り口に着き、二人はそこで足を止める。
そして視線を一度合わせ、森の中へと入っていく。
「月様は私のものだから」
「それは月様の決めることです」
あのやり取りをまた繰り返しながら。
☆☆☆
「…………なんだか寒気がしたような? 気のせいだよな?」
「月さん、大丈夫?」
月がミーニャが目を覚ましてから背負って花畑から村へと戻る最中。
立ち止まり、体を震えさせる月。
心配になったミーニャは月の耳元で囁く。
「大丈夫大丈夫。風邪じゃないと思うから。…………そろそろ来る頃かな」
「え? 何て言ったの?」
「ん? 村のみんなもそろそろ目を覚ますころかな? って」
「そっか……ありがとう、月さん。私を……村のみんなを助けてくれて」
「俺もみんなのこと気に入っているからね。あいつを殺せなかったのは少し残念だけど、今度会ったら逃がさないつもりだから」
「……うん」
ミーニャはぎゅっと手に力を込めてさらに体を密着させる。
今、この場にいるのは自分と月だけ。
この時間を少しでも大切にしたくて。
二度も命を助けてくれた自分だけの……。
穴の空いた心を満たしてくれた優しさに、見た目だけで判断をしない広い心。
自分が抱えるこの気持ちを伝えたらどんな顔をするのだろうか。
そんなことを考えながらミーニャは眠りについた。
いつも、その場の思いつきで書いていくからなぁ…辞める気は無いけど
誤字脱字、見つけたら教えてくれるといいな…
Twitterの名前も不思議ちゃん
@tethugaku
だからー
次回の更新は…ほのぼの学園ものになるのかなw
ってことでまた次回〜