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ある少年の物語の始まり

作者: 武嶋悠

 この作品は、作者がはじめて書いた処女作で駄文です。

 読んでいただけるならとても嬉しいです。


 ※勢いで書いたようなものなので、話の流れが切れているところもあったり、話がまったく見えなかったりするかもしれません……ご了承下さい。

  六月九日、誤字・脱字の修正をしました。

 暗闇の森の月だけが唯一その足元を照らす光の中、体を覆い隠すようにローブを頭まですっぽりと羽織った人物が、己の体力の限界に挑戦するかのように走り抜けて行く。

 その人物が走ると無論のこと時折ローブが揺れる、その揺れるローブの下からはまだ幼さの残る顔立ちをした、必死の形相で走る少年の顔が窺えた。


 「(クソッ!!なんでこんなことになった!)」


 木々の根が地面から顔を出し、滅多に人も通らない整備の行き届いていない荒れた道、空に浮かぶ月の薄暗い光、当然足場が悪いのを承知の上で少年はこの道を走っている……いや、少年にはこの道しか走ることを許されていないのだ。

 何もこの荒れた道を走っているのはその少年だけではない、月明かりに照らされるように映し出されているのは、走る少年の少し後方を駆けてくる異形の姿をした五~六匹はいると思う犬の群れ。


 群れで行動する彼らを人々は《(シャドー)》呼ぶ。

 その姿は外国の警察犬を想像してしまうような巨体、力強く地面を蹴り駆ける強靭(きょうじん)な筋肉を備えた四肢を持つ。しかし、その犬を《(シャドー)》と呼ぶ所以(ゆえん)は……胴体の腹と背から霧状に噴出している『黒い何か』。

 『黒い何か』……霧状の時点では人体に害を与えるものではないと言われているが、人としてまた生き物としては、そこに存在しているの(‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘)に得体の知れないもの(‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘)というだけで恐怖してしまう。


 しかしその『黒い何か』も、本体たる《(シャドー)》が臨戦態勢をとることにより形状を変える相手に襲い掛かっていく。


 例えを挙げるならば、今まさに少年を噛み殺そうと走ってきている《(シャドー)》六匹。

 その全ての『黒い何か』は、霧状から先端の鋭さに恐怖を覚える鎌の形に変化し、二匹を中心に最初は統率の取れた陣形で駆けていた者たちは、その陣形を崩し少年を追い込もうと徐々にその包囲網を完成させていく。


 木々が生い茂る中を走り続けてどれぐらいの時間が経ったのだろうか、少年の体力は少しずつ限界に近づきつつあり、《影》は足場の悪い地面、木々の間を軽い足取りで移動しながら、今にも少年へと飛び掛れそうな位置へと陣形を変えていく。


 少年は内心すごく焦っていた、刻一刻と自分の命が奪われそうになってきているというのに具体的な解決策はなく、また走る速度も落ちてきているというのに《影》が一斉に襲ってくる様子がない。

 まるで追い詰められた弱者をジワジワと弱らせ、心身共に果てた時に殺そうとする強者の余裕みたいなものが、少年の全身にプレッシャーとして降り掛かってくるのが感じられた。


 それでも《(シャドー)》が包囲を完成させるまでには、少年との間に距離がある。しかしその距離も後数分もすればゼロになるだろう。

 周りの景色は相も変わらず木が立ち並び、地面の所々からは木の根が顔を出している。あえて先ほどと違う点を挙げるとするならば木の根が顔を出している地面が、水捌(みずは)けが悪いのか泥と化しており走る速度と体力を容赦なく奪っていく。


「(この悪循環を抜けるには……)」


 体力の限界が近づくにつれ、思考も低下してきているのには気がついていた。だからこそ最悪の結果になる最良の選択をしようと最後の力を振り絞り、泥の地面が途切れて(‘‘‘‘‘‘‘‘‘)いる方へと(‘‘‘‘‘)向かって走る。

 

 「Brrrr!?」

 「Bauuu!!!!」

 「……ッ!」


 小年が本来の移動方向とは異なる進路へと向かって駆けだした事に意表を突かれた《(シャドー)》の半数は、泥や木の根といった足場の悪さに転びはしたがまだ半数は速度が落ちたものの少年を追いかけようと駆けてくる。


半数までに減ったといっても、この森の中では……とくに夜の森を支配する《(シャドー)》が三匹も追いかけてくるのである。手持ちが戦闘用ナイフ二本、解体用ナイフ一本という装備では心許無い。


 「(じゃぁ、ここで……)」


 ガッ!!バキ!!ズザー!!

 少年は一度だけ後ろを振り向くと《(シャドー)》三匹との間に距離が開いているのを確認し、わざと(‘‘‘)地面から顔を出している木の根に足を絡ませる。

 当然、体は地面へと倒れ無様に寝転がる体制になるのが目に見えていたが……少年は地面に倒れる直前に受身を取り、その勢いを利用し泥を跳ね飛ばしながら勢いよく転がっていく。


 まるでその先にある地面の切れ目(‘‘‘‘‘‘)を意識して行ったような、不自然な場所での横転。突然の少年の行動に予想することが出来なかった残り三匹の《(シャドー)》はその場で泥や木の根に無様に足を取られ転んだ。

 

 「Brrr!?」

 「Baaaaaa!!」

 「Garrrr!?」


 《影》が転んだのを見届けるまでもなく、少年の体は地面の切れ目(‘‘‘‘‘‘)へと吸い込まれていった。








※※※





 「…………う、う~ん」


 どうやらワザと地面から落ちて気絶し、そのまま寝てしまっていたようだ。

 

 地面に大の字に放り出され、仰向けになっているから空が見えた。その見上げた空は清々しいほどに青く澄み渡っており、どこからか小鳥の鳴き声も聞こえてくる。

 気絶していた間に一夜明けたのか太陽が山の上まで顔を出しており、《影》に追われていたのが昨日だということが安易に分かる情景が目の前に広がっているが、生憎と起きたて脳には一夜明けたことよりも自分の体の状態の確認が先だと伝えてくる。


 「(こんな仕事をしてればこんなものか……)」


 手足の指の感覚があるかを恐る恐る確かめ、少し身動ぎして体の調子を確かめる。

 体には不思議と(‘‘‘‘)痛みはなく、立ち上がろうと思えばすぐにでも立ち上がれるが……体はなんともなかったので今は生き延びれたことを感じていたい、だから寝たままの状態で周囲を確認する。


 まず、右手だけを動かし地面の感触を確かめる。


 ジャリ…………。


 小石や砂の混じった表面がゴツゴツとした岩肌の手触り、所々に生えているのか時たま草のフサッとした感触も確かめられた。


 寝たままで首を動かし辺りを見れば、周りには硬そうな岩の壁が自分の位置から両側に(そび)え立ち行く手を阻む。飽く迄(あくまで)寝転んだままで見えている(左右横という)範囲だけ……。

 

 「よっこらしょっと」


 おじさんくさいと言われても仕方ないと感じつつ上半身だけを起こす。

 

 「……これはまた」


 上半身だけを起こして見た光景は、先が遠すぎて見えない崖の間に出来た不自然に整備された道(‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘)

 自分がどこにいるの確認するため、ローブの右内ポケットからここいらの地形が詳しく描かれている地図を取り出しみて見るが。

 自分がいた森の中から、おそらく《影》と遭遇して逃げ惑っていた森の中間地点までの絵は描いてある。

しかしそれ以上は泥が付着して乾いているために、詳しく読み取る事が出来ない。


 そしてもう一つ、とても気になることがある。


 「地面が湿っていない……何故だ?」


 少年が感じた不可解な点、それは地面が湿っていないことであった。


 先ほどまで少年が《影》と遭遇して逃げ回っていた森は、先日から降り続けていた雨のせいで地面が濡れていた。だが、自分が目覚めた場所は雨で濡れておらずサラサラとした砂の手触りがする。

 なぜ先ほどまでいた森の中と此処では地面の湿り方が違ったのだろうか、まぁ不思議に思うことでもない。


 環境や地域によって、雨が降ったり降らなかったりするのは当たり前のことだ。


 「(実際、そこまで気にすることでもないか……)」


 少年は、なぜこんなことをしてまで森の中に入り《影》に追われていたのか……そんなことを考えながら今の状況をどうしたらよいかと周囲を見渡した。


 そもそも少年はこの森に《薬草》を取りに来ていた。しかしこの《薬草》、森の出入り口や草原の草が生い茂っている所では一切育たない、だが森の深部ではその《薬草》は群として育っておりかなりの量を収穫することが出来る。

 《薬草》は根が地中深くまで伸び、茎がだいたい10cm~15cmと森の深部で育つ他の草花より短くすぐに発見できるのだが。薬として使えるのは、茎の先っちょについている花であり茎の部分は治療に使えないどころか、毒薬になってしまうほど大変危険なものである。しかもこの《薬草》の花は日が昇ってからの数時間しかその実を咲かさず、日が昇る前に森に入り花が咲くのを待ってから回収しなくてはならない。


 つまり《薬草》を収穫したいのなら、日の出と共に作業を開始すればいいだけの話であるのだが、そうは問屋がおろさず。この森には日の終わりから日の出まで、まるで森の守り手とでも呼ぶべき《影》という生物が森の出入り口を徘徊(はいかい)している。

 《影》は人を見ると襲ってくるが、他の森に生息している生物には一切の手出しをしてこない。あくまで人間だけを襲うのだ。

 ならば《影》が活動しない日の出に森の中に入るという手もある。しかし、《薬草》の生えてる深部までは、大人の足で二時間、子供の足では四時間以上もかかってしまうほどの広大な森。

 日の出から数時間しか薬に出来る花を咲かせない《薬草》を採りに行くには、大人であれ子供であれ圧倒的に時間が足りない。


 ならば、どのようにして薬になる《薬草》を手に入れるか。


 答えは簡単だ。花が咲く前から……つまり夜が明ける前の時間から森の奥深くまで移動し《薬草》の群生地を見つけその場で待機していればいいだけ。


 それだけの簡単な仕事とも言えるが、この森には先ほどから語っているように、夜になると動き出す《影》という危険度の高い生物がいる。森の深部に夜のうちに近づく、それは自殺行為となんら変わりのないバカらしい行動であり。《薬草》を採りに行くには死を覚悟する必要がある。

 しかしその入手の難易度の高さ故か、報酬の額は高く子供一人ぐらいなら数ヶ月は生活できるだけの金額が一挙(いっきょ)に手に入る。

 

 危険は伴うが、報酬も好く自分の怪我治すことが出来る薬を作るために使う《薬草》ということから、手に入れようと森の深部に入り込もうとする人は後を絶たない。

 

 普通なら、大人数十人と組み大規模なチームで行動するのが、《薬草》を手に入れなおかつ《影》からも教われない最良の手段なのだが。このように大規模となるとチーム内での配分が問題となり、子供の場合は配当が一番少なく、微々たるお小遣い程度しか貰えない。


 いくら割りのいい報酬だと思うかもしれないが、子供に出来るのは少量の荷物や《薬草》の採取ぐらいなもの。《影》との戦闘になれば、足手まといとなりすぐに見放される。運よく《影》から逃げ切れ、《薬草》を手に入れていたとしても子供は荷物もちしかしておらず、正当な配当に期待するだけ無駄である。


 だからこそ少年は一人で森の中に入り、《薬草》を手に入れようとしていた。

 しかし運が悪いことに《薬草》の群生地を見つけた瞬間、自分が来た道の方角から六匹の《影》が現れ、追いかけられたのだ。


 「(金を手に入れようとしてこの様か………笑えるな)」


 自虐な思考をしていることに笑みを浮かべながら、体を起こし大地に立つ。

 ローブに付いた砂や埃を手で簡単に払うと、体を軽く伸ばしたり屈伸したりを繰り返し行い、痛めてるところがないかを確認してから森へ戻ろうと歩き出す。


 さすがに自分の身長以上もある岩の壁を何の道具もなしに登っていくのは、幼い物見でもそれくらい分かる。


 「(この道は、どっちに繋がっていることやら)」


 青空の下いつのまにか頭上に位置していた太陽に妬ましさを感じながら少年は、町に行くのかそれとも森へと戻るのかも判らない道を歩き始めた。


 

 失敗の次には成功がまっていると信じて………。

 お読みいただきありがとうございます。

 前書きで語っているように、この作品は作者がはじめて書いた処女作で駄文です。

 

 感想、誤字脱字の指摘、その他一言でもいいので感想お待ちしております。


 ここまで読んでいただき、まことにありがとうございます。

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