7月04日 妖刀
7月4日
20:30〜21:00
23:30〜0:00
「『夜刀』なる、妖刀を私に譲ってただきたいのです。」
村を訪れた若い刀鍛冶を名乗る青年の言葉に、長老は、眉をひそめる。
「あなたが、誰から何を聞いてこのような山奥の村にこられたかは知りませぬが、『夜刀』などと言う妖刀など知りませぬな、お引き取り下さい。」
長老の否定の言葉を聞き、しかしさらに刀鍛冶は言葉を紡ぐ。
「この村の方々が妖刀の存在を秘匿しておられる事は存じ上げております、しかし、私には使命があるのです、憎き妖刀『狂斎』を討つと言う使命が。」
長老はなにかを考えるようにゆっくり目を閉じた、しばらくのち、何か口の中にあるものを押し出すかのように、大きくため息をついた。
「妖刀には妖刀をもって打ち倒すですか、仕方ありません、こちらへ付いて来てくだされ」
刀鍛冶は言われるままに、長老の後を付いて行く。
しばらく行くと、長老は森の中へと入っていこうとする、行く先に不安を感じてどこへ行くのかと声をかけると。
こちらをちらりと振り返りただ一言「『夜刀』の元へ」とだけを口にし、森の中へ消え行く、刀鍛冶は慌てて森の中へと飛び込んだ。
しばらく森の中をついて行くと、長老が唐突に問いかける。
「刀鍛冶殿は、『夜刀』についてどれほどご存知か?」
「詳しいことは、ただ、月の出ていない夜に、誰にも見つからず人を襲い、ただ切り殺した死体だけを残して行く妖刀だと、誰の目にもその刃は写ることなく、まるで夜が斬りかかって来るように思える事から『夜刀』と名付けられたと」
刀鍛冶は自身の知っている事を話す。
「ふむ、世間では『夜刀』はそのように認知されておるのですな」
「では、一般に知れ渡って居ることが真実出はないと?」
刀鍛冶の問いかけに長老は振り返り答える、いつの間にかずいぶんと森の奥へと来てしまった事にその時、気づく。
「妖刀『夜刀』の真実を今、貴殿に語ってさしあげましょう」
長老が手を振り上げると、森の至る所から忍び装束を身に纏った男たちが、長老と刀鍛冶を囲むように現れる。
「こ、これはいったい!?」
刀鍛冶の問に答えず長老は言葉を紡ぐ。
「『夜刀』は、人の振るう刀にあらず、国の振るいし刃なり。すなわち、『夜刀』とは、国の依頼を受けて人を殺す、暗殺集団の名前じゃ、正確な名は『夜刀衆』と言う。姿を見せず、暗殺する様が人々の間で妖刀の仕業にされて居るとはワシもしらなんだぞ小僧」
先程までと、全く違う恐ろしいまでの威圧感が刀鍛冶を襲う、これが、長老の、いや、暗殺集団『夜刀衆』の頭領の真の姿なのだろう。その姿に、刀鍛冶は一種の見惚れにちかい状態になっていた。
しかし彼は直ぐに正気に戻る、自ら戻ったのではない、胸に異様な熱さを感じたからだ。見ると、胸から刀の先端の様なモノが突き出ていた。
周囲に居た忍び装束に刃を突き立てられたのだと気づいた時にはもう遅かった。
四方八方から突かれ、切り刻まれ、刀鍛冶の意識は闇へと落ちていった。
その光景を見ていた長老はつぶやいた。
「悪く思うなよ小僧、我らの秘密を守るために志半ばで果てるがいい。」




