7月24日 四葉学園帰宅部
私はこれから始まる四葉学園の学園生活に期待で胸を膨らませていた。
四葉学園は小中高大学とエスカレーター式に登っていけるのだが、高校と大学は外部からの一般入試も受け入れている。
小中は校舎が併設されているが高校と大学は、そこから少々離れた土地に建っている。
上記の理由で生徒が爆発的に増えるために併設すると様々な問題が発生するかららしい。
しかも、エスカレーター式に上がってきた生徒より一般で入ってくる生徒の方が多い、具体的には1:3くらいの割合らしい。
したがってエスカレーター式で上がってきた生徒のみですでにグループが出来上がっていて、一般入試で入ってきた生徒が孤立する、などという展開はない。
一般入試組の私としては嬉しい話しである。
まあ、そんな状況でも友達作りの苦手な私がうまく友達を作れるかと言われれば、疑問が残るが。
ちなみに、中学時代に中がよかった者たちは全員この学校に進学していない。
なれない学校で一人の生活が始まるのか、下手打っていじめには合わないようにしないと。
っと、いけない、いけない、まだ入学式も始まっていないのに無意味に不安がる必要もないな。
今、私は学園前の桜並木に立っている、入学式が始まるまで後一時間ほどある。このままゆっくり歩いて行っても十分に間に合う時間だ。
舞い落ちる桃色、私は桜の花びらをぼんやりと見つめながら歩みを続ける。
しばらく、歩くと何やら言い争うような声が聞こえた。
声の方を見てみると、二人の少女が向かい合いなにやら大声で言い合っている。
周りの人々は、厄介事はごめんとばかりに遠巻きに彼女達を無視して通り過ぎている。
まったく、せっかくの入学式だというのに気分の悪いことをする人間もいるものだと。私も他の無関心たちと同じように通り抜けようとする。
その時、不意に二人の言い争いの内容が聞こえてきた。
「だから、猫耳少女の耳は四つなの!!!猫みたいな形の頭の上に付いている耳、猫耳と人間の耳部分に付いている人耳の合計で四つなの!!!」
「何度、言ったら分かるのさ?猫耳少女の耳は二つ、四つもついていたら気持ち悪いじゃん!!」
く、くだらねーーーーーーーーー!!!
中二病は中学で卒業しろよ、お前ら高校生だろう、第一、そんなファンタジーな生物実際に会える訳無いんだから、言い争うだけ無駄だよ。
「第一ね、漫画とかでよく猫耳少女が書かれているけれど、なぜ人耳の部分は何時も髪の毛で隠されているの?それはそう人耳の部分には何も無いから。あるべき部分に耳のパーツがないとそれを見た人間は違和感を覚えるのそれを緩和するために猫耳少女が描写される時は常に人耳にあたる部分は髪で隠されているさ」
たしかに、漫画では、猫耳少女の人間の耳があるはずの部分は確実に髪の毛で隠されているけれど、言われてみると確かにそれっぽい、猫耳は二つ説が有利かな?
「愚かね、そんなは浅はかな意見で耳が二つだなんて主張するなんて、いい?まず猫耳少女の猫耳はイミテーションです。そして、人耳の方が人間と同じく耳の機能を有しています。」
四つ耳を主張する少女が、突然とんでもない事を言い出した。
「なぜそう主張できるか!!それは、骨格の問題です。耳というものは音を拾いそれを脳に伝える機能を有しています。鼓膜、蝸牛、三半規管、耳の奥にはそんな沢山の器官が詰まっています。これがもし、猫耳少女の猫耳の奥に付いていたとしましょう、そうなった場合、これらの器官に場所を取られて、脳の体積が激減します。そうなった場合、猫耳少女はまともに日常生活を続けることも困難となるでしょう。したがって、猫耳少女の猫耳は形だけの存在であり、実際の耳の機能は横についている人耳が有していると主張します。その為、猫耳少女の耳は四つあるの。」
朝から猫耳がどうとかいう話で口論になるくらいだからただの馬鹿だと思っていたのに。なんだかえらく、医学的な事をもちだされた。
と言うかよくこんな話題で、そこまで考えられるものだな。
「いい、絶対耳は四つなの。そうじゃないと日常生活が送れないの」
「そ、それでも、耳は二つなのさ!!」
こんどは、耳二つを主張する少女の方が劣勢になった。
「「あなたはどっち??」」
二人が声をハモらして、私の方に振り向き誰かに問いかける。私では無いはずだ、だって彼女達とは初対面だ。
嫌な予感はしつつも右後ろを振り返るが誰も居なかった。
最後の望みにかけて左に振り返る、やっばり誰も居ない。
恐る恐る、無言のまま自分で自分を指差してみる。
My?
yes
同じく無言で頷く二人。
「何で私?」
思わず口に出る疑問、他にも沢山人が居るのに何で私なんだ?
「だって、ずっと見てたじゃん」
と二つ耳派の少女。
「そうそう、他の人は見てみぬ振りしてたのに、あなたのだけは私達の話を立ち止まって聞いてたの」
四つ耳派の少女がそれに同意する。
もしかして、自業自得ですか。
期待に満ちた目で私を見つめる二人、ここで逃げ出すのはあまりにもばつが悪い。
なら、なんとか彼女達の納得する答えを出そうと頭をひねる。
「こう言う場合は、まずは、猫耳少女の発生から考えるべきだな」
私は、咄嗟に考えた答えを搾り出す。
「猫耳少女と言うことはつまり獣人だろう。ここで獣人が猫から進化したとしよう、そうなると猫耳少女の耳の数は二つである可能性が高い。」
「なぜかというと、進化の元になった生物と進化後の生物とでは体の各器官の数がそう変わらないと言うことが考えられる。」
「猫から獣人に進化する際に耳の数が増えるなんて考えにくい。人間にだって昔尻尾が生えていた跡の器官が残っているんだ、それより遥かに複雑な耳が進化の仮定で突然増えたなんて考えられないね。」
二つ耳の少女が喜び、その反対側が落ち込む、わかりやすい反応だ。
ここで更に話を続ける。
「ただし、これは猫耳少女が獣人だった場合だ。」
私の言葉に二人が固まる、それを尻目に話を続ける。
「元が人間だったけど猫耳少女になってしまった場合は今までのには当てはまらない。」
「クスリに魔法、人体改造、幽霊憑依、いろいろ原因はあるだろうけど、この場合は、耳が四つになる。」
「魔法とか人体改造なら、人耳がそのまま上に移動して猫耳になる可能性もあるけど、その場合、さっき話してた、骨格やら脳やらが動く際にえらいことになるのでありえない、それなら、追加で頭の上にネコミミをつけた方が遥かに安全で簡単だ。」
「幽霊憑依の場合は・・・、幽霊が憑依した場合は・・・。とりあえず、結論を言えば、動物から進化した猫耳少女は耳が二つ、人間から変化した猫耳少女は耳が四つ、それが答えだ。」
最後の方で説明が怪しくなったが力業で押し通した。
て言うか何でこんな事で力説してるんだ私は。
「し、師匠。」
「大先生。」
尊敬の眼差して私を見つめる二人、と言うか変な呼ばれ方している。
「おっと、もうこんな時間だ、入学式に遅れてしまう。では」
なんだか、気恥ずかしくなった私は、入学式をだしにしてその場から逃げ出した。
この時は、三年間学園生活をこの二人と共に過ごすとは夢にも思っていなかった。




