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7月23日 唸れ、天地無双斬05

「ゴウリキ・アカツキ、キリノハ・リンドの両名を説得し仕官させる事に失敗いたしました。」


アミル・テスカールに指示していた、両名の士官への勧誘任務、その報告を王国国王は特に落ち込んだ様子も見せずに聞いていた。


それも当然であろう、キリノハ、ゴウリキ両名への仕官の話は、武術大会以降、その存在を知っている全ての国が行ってきたが、そのことごとくが失敗に終わっている。


また、彼ら自身がどの国にも仕官するつもりは無いと宣言しついる。


つまりは、ほぼ100%成功しないと言うことだ。


だと言うのになぜ、国王はアミルへ、ゴウリキ達の士官への勧誘と言う任務を彼に与えたのだろうか。


それは、アミルの立場に問題があった。


彼の生まれは、王国でも五本の指に入る大貴族、テスカール公爵家の長男として生まれた。


少々臆病な所もあるが朗らかな性格と誰もが美青年と呼べる容姿に、様々な政治的問題を解決できる聡明な知性を彼は持ってた。


普通ならば誰もが認める大貴族の跡取りとして期待されたであろう。


だが、彼にはたった一つだけ足りないものがあった、それはレベルだ。


レベル10、それが彼の成長できる最高レベルであった。


レベルキャップが100の人間が百万人に一人の才だとするならば、レベルキャップが10と言うのは百万人に一人の不幸といえる


レベル10と言えば、一般的な6才の子供と同レベルだ。


彼はどんなに頑張っても6才の子供にしか勝てないのだ。


彼は身体能力に大きな障害を抱えていた。


それでも、体を使う仕事以外ならば人並み以上にこなせたのだから公爵と言う地位に付くのに何の問題も無かっただろう。


王国以外ならば。



王国では、レベルによる身分制度を実施していた。


これは、日夜モンスターの驚異にさらされる環境に置いて、より的確に無駄無く人を配置し、効率的な王国運営をする上で必要な措置だった。まあ、差別を助長させていると言う一面もあるが。


その制度に置いて、貴族とりわけ政治に直接関わってくる者達のレベルは、50以上と定められていた。


本来ならば、政権に関われるはずの無いだが、そこは彼の公爵の息子と言う立場と有能さがそれを可能にしてしまった。


だが、それで彼の抱えている問題が解決するわけもなかった。


レベル10の人間が政権に関わっている、その事は、厳格な王国の身分制度を崩壊させる危険をはらんでいた。


その為に王は決断した、彼には政治の舞台から去ってもらう事を。


そうと決まれば早速、公爵家を彼の弟に継がせ、隠居でもしてもらう予定だったのだが、彼は有能過ぎた、彼は居なくなれば仕事に大きな支障が出るほどには頼られ重要な位置に居た。


このまま、訳もなく彼を政治から下げれば、内側に争いの種を撒くことになりかねなかった。


ならば、何か大きめの失敗をしてそれを理由にやめさせてしまえば、波風も大きくならないのではないかと考え付いた。


そして、その頃、ちょうどのタイミングで現れたのが、ゴウリキとキリノハであった。


彼らの実力は常にモンスターの驚異にさらされている王国にとって喉から手が出るほど欲しいが、先に放った斥候の報告により彼らが王国に、さらにはどの国にも付く事は無いだろう事も理解していた。


王国への士官を進める交渉の任務。

二人の実力が規格外の戦力為、他国にでも取られたら確実に国が危険にさらされる、そんな、かなり重要な任務だ。


しかし、確実に失敗する事は目に見えている。ならば、この任務を彼に与えその失敗の責任をとる形でアミルにはやめてもらおう、かなり強引ではあるが仕方がない。


仮に成功したのならば、彼に対して誰も文句を言う事が出来なくなるだろう、レベル240とレベル352にの後ろ楯がある人間に誰が好き好んで敵対するものか。



そうして国王はアミルにその指令を出した、そして彼は、王の期待通りに失敗し帰ってきた。


「アミル・テスカールよこの失敗の責をとって、貴殿の公爵家継承権の剥奪と領地での療養を命ずる。」



こうして、アミル・テスカールは療養と言う名の幽閉生活を送ることになるのだった。




領地内での療養生活に入ったアミルは今の状況を大いに喜んだ。


思い出されるのは、ゴウリキとキリノハと初めての士官の交渉を行ったあの日、そして、それから続いた交渉と言う名の地獄の日々。


あまりに辛く恐ろしいあの日から逃れられたのだ、今の彼は、もう何をする気力も無かった。


仮にもし、今までの立場を追われずに本来の仕事に復帰していたとしても、以前のように仕事をこなせなかっただろう、いや、すぐさま自分から仕事を辞めたかもしれない。


それほど彼は心身共に疲れ切っていた。



そして、彼が再び動き出すには、それから半年もの時間をゆうした。






半年後ーーーーーー



王国は未曾有の危機に見舞われていた。


大災害。


モンスターが大集団となって押し寄せる現象である。


本来ならば、一万程のモンスターが国に押し寄せるのだが、今回は桁が違った、その数は十数万とも言われ、レベル100超えのモンスターの姿もちらほらと見える。


十数年に一度のペースで発生するのだが、そのたびに王国騎士団に多大な被害をもたらしていた。


しかも、今回はそれの十倍以上の規模だ王国は崩壊寸前の状態であった。


その頃、王国内テスカール領の領主の館にて。



アミル・テスカールは、日課となった、使用人達とのお茶会を楽しんでいた。


生家である領主の館に戻って来ても最初の一ヶ月は何もする気が湧かずに、部屋で引きこもって生活していた。


そんな彼を館の人々は見放さず、優しく受け止めるように見守り励ましていた。


そんな努力が項をそうしたのか、一ヶ月を過ぎた頃から徐々に部屋から出歩くようになり、2ヶ月、3ヶ月と経つ内に、使用人とお茶会をしたり、趣味であったチェスをしたりと徐々に本来の明るさをとり戻していった。


そして、6ヶ月経った今では完全に以前の彼の姿を取り戻していた。


円満に使用人達との談話も進み、そろそろお開きと言った所で慌てた様子で一人の使用人が飛び込んでくる。



「アミル様、急いで館から逃げ出す準備をしてくださいませ大災害です。魔物の、魔物の大群がこの町まで迫って来ております。」


いきなり使用人が告げた言葉に驚く、大災害が起きたなど今の今までの知らなかったのだ。


アミルの様子に別の使用人が謝罪の言葉を告げる。


「申し訳ございません、アミル様はこの地より出られぬ定め、ならば、余計な心配などせずに療養していただく為に、皆で相談しあって秘密にする事に決めたのです。」


使用人達の判断はある意味正しかったと言えるだろう。


今は良くなったとはいえ6ヶ月前は永遠と部屋に引きこもるような生活をしていたのだ、何が原因でそうなったかは使用人達は知らなかったが心労に繋がるような情報は極力カットするように決めていた、また、本来の規模の大災害ならばこのテスカール領に魔物が来るまでに終息している筈だったのだから。アミルに知られるはずが無かったのである。


アミルは自分を思っての使用人達の判断に心を温め、同時に心を痛めていた、もっと早く大災害の事を知っていたら被害が広がるまでになんとか出来たかもしれないのにと


「皆の心配はわかった、だか、今は状況を正しく知ることが大切です。詳しく話して下さい。」


アミルの指示に使用人は従う。


「今回の大災害は史上類を見ない程の大規模な物のようです。早期に防衛にあたった、王国騎士団と各領主の領軍は大打撃を受け撤退。今は、このテスカール領前の大草原にて再編成と迎撃の準備をしております。」


「そうか、魔物の群れは今どこに?」


「現在、隣の領地を蹂躙しつつこちらに向かって来ております。後、五時間ほどで王国騎士団の軍と接触するでしょう。」


使用人の話を聞いて考える。おそらく、魔物と王国騎士団の戦闘は王国騎士団の敗北に終わるだろう、地理的に考えてここがまともな兵力で戦えるほぼ最後の防衛線になるだろう。


それは、この戦場を抜かれる事はすなわち、王国の滅亡に繋がるだろう。


使用人達を見る、6ヶ月前のあの交渉とは名ばかりの地獄で精魂尽き果て脱け殻のようになった自分に、嫌な顔せず付き合い救ってくれた者達。


彼らを守りたい、そう強くアミルは思った。


「状況は把握した、ならば、私はこれから戦場に行く。」


彼は戦わなくてはならない、そうでなくては、あの6ヶ月前が意味をなさなくなる、死にそうな思いをして、いや、何度か死にかけて過ごしたあの時間はこの為にあったのだとアミルは確信する。


彼の突拍子もない発言に、それを押し留めようとする使用人達。


当然だ、レベル10が戦場に赴くても、盾代わりにもなりはしないのだから、むしろ邪魔になる。


アミルはそんな使用人達を黙らせる一言を発する。


「みんな聞いてくれ、私のレベルは・・・・・」




アミルが決意を固め戦場へ向かわんとしていたその頃、キリノハ・リンドは山を割っていた。


何かの比喩をしている訳では無い、本当に山を真っ二つにしているのだ。


ここは公国と帝国の国境、両国の間には長々と山脈が横切っていた。


そんな山脈を隔ててほぼ反対側の位置に、両国共に交易の中心となる町が存在していた。


公国と帝国は文化の違いもあり互いの特産品を高値で購買する関係だった。


ある時、誰かが言った。「この二つの町を最短ルートで行き来できたら、もっと儲かるのに」と


それは双方の町に住むもの共通の考えではあったが現実は厳しかった、山脈は長く険しくそして高かった。


山脈をわざわざ超えて行くくらいなら、例え遠回りでも山脈を迂回した方が遥かに安全で早くついたのだ。


誰がの言葉は、それまで何十人と同じ意見を発した者達と同じように消え去る筈だった。


「よかったら、あの山割りましょうか?」



だが、幸か不幸か消える前にキリノハの耳に届いてしまった。


そして、現在に至る。



「流石に、全力で振るうと一回で剣が使い物にならなくなるわ。」


もう十本目になる柄だけになった大剣を投げ捨てつつ愚痴る。


キリノハは両町から比較的近い中で最も標高の低い一点を選び、山脈を切った。


流石のキリノハも割りきるまでに十回ほど剣を振るう必要があったが。



まあ、回数の問題でなく斬撃で山を割る時点ですでにもう、普通の人間には追い付く事すら無理な次元に来ている訳だが本人にいまいちその自覚は無い。


そんな人外の偉業を目の前で見せられ、王国文官のマグネシース・アランドは自分がとんでもない指令を受けたのだと今さら後悔していた。


「さて、こちらの用事もすんだし、あなたの用件を聞きましょうか?分官さん」


マグネシースは緊張しながらも自らの役目を果たす。


「はい、今行われた、山割りにも関係していますが。各国のあなた方への士官を薦める交渉があまりにも多いとか、そして、二度と士官の話を持ちかけない事を条件に持ちかけた国の問題を解決してまわっているとか。」


武術大会で圧倒的な強さとレベルを見せつけたゴウリキとキリノハには、大会終了後から、国はもとより地方領主などから多くの士官の誘いを受けていた。


士官をする気は無いと、ことごとく断って来たのだが、それでも、減る事は無く、逆に増えるような状態であった。


いちいち対応する事が面倒になった二人は互いに話しあった結果、一つの提案をするのであった。


『各国の問題を一つ解決するので、以降はその国とその国の地方領主は一切士官の誘いを行わないこと。』


これは、度重なる勧誘を防ぎ、自分達の実力を示し無用な厄介後とを避け、さらには、武者修行も出来るという、なかなか合理的な案だった。


今回の山を割ったのも、町で話を聞いた後、その国の王に山を割れば、士官の誘いを今後一切しないと約束させた。


「それで、今回は我々王国のお願いをきいて頂きたく参りました。」


意を決して、言葉を発したマグネシースにキリノハは予想外の言葉を発する。


「もう、お願いは聞いたわよ。」


「えっ?」


驚くマグネシースを尻目に言葉を続けるキリノハ


「王国の事だから自国を魔物のから守る戦力かそれに似たような物が欲しいって所でしょう。」


キリノハの指摘は的中している、マグネシースのお願いの内容も似たような物だったからだ。


「私は王国出身だから、求める内容も大体予想できたの、だから、手っ取り早く人を鍛えて送り返したのよ。あの王様ならそれで文句は無いだろうって。王国からの勧誘がそれから無かったからてっきり話が通っていると思っていたわ。」


王国からの勧誘が無かったのは、国王が早期に見切りを付けて、余計な刺激をしないために彼らとの干渉をできるだけしないようにお触れを出していたからである。


マグネシースは焦ったら、キリノハから伝えられた内容が寝耳に水だったからである、だから最も大事な事を聞き返す。


「鍛えて送り返したって一体誰をですか?」


「あなたの前に士官の勧誘に来た、アミルって子よ、彼のレベル220まであげて、ゴウリキ殿の技を教えてから、王国に返してあげたのよ。」




五時間後、王国テスカール領前、大平原。



緑大地だった大平原は大量の魔物のに覆われ、今や真っ黒く染め上げられていた。


王国騎士団団長は、目の前に広がる光景に絶望していた。


つい3ヶ月前、騎士団長に就任したばかりの彼は自分の運の無さにため息を付く。


団長就任の花を飾るべく出場した武術大会ではレベル22に敗北、それにけちをつけられもう少しで団長の座を逃すところだった、やっとの思いで就任したと思ったらこの大災害である。


全く、これからの人生の不幸が今に集結しているのではないかと思えるほどの不運だ。


もっとも、後一回不幸に耐えれば、後はもう不幸など心配する必要も無くなるが。


魔物に殺されれば、幸も不幸も無くなるからな。


などと自嘲ぎみに考える。


生き残れるなど微塵も考えられない、それほどまでに騎士団と魔物達の戦力は開いていた。


せめて、騎士らしく勇敢に戦って死のう、そう考え最後の突撃命令を出そうとした時、騎士団は彼の存在に気づいた。



魔物と騎士団の間に一人青年がこちらに背を向けて立っていた。


あまりの恐怖に狂った誰かが無謀にも魔物に向かったのだろう。そう判断し彼の存在を無視しようとした瞬間。


「唸れ、天地無双斬」



突如発生した竜巻が魔物の群れの一部を吹き飛ばす。


団長はその現象をいや、その技を知っていた。


6ヶ月前に身を持ってその威力を知っていた。


そして、その技を使える人物を知っていた。


だが、目の前の青年の姿は、その人物と似てもにつかなかった。



ならば、彼は一体誰なのか。


その答えは、すぐさま青年の口から発せられる事になる。


「我は、ゴウリキ・アカツキとキリノハ・リンドの弟子、アミル・テスカールなり、この地を犯す者は誰であろうと許さん。」


これが、王国史上、最強の騎士といわれる、アミル・テスカールの初陣であった。





お・ま・け


キリノハ「アミル君だけじゃ足りた無いかも知れないしもう一人くらい鍛えておこうかしら。」


マグネシース「え?」


キリノハ「ちょうど良い所に、ちょうど良い人材も居ることだし。」


マグネシース「あのう、キリノハさん?目が怖いんですけど、なんで、私は襟首を掴まれて運ばれているのでしょうか?」


キリノハ「大丈夫、怖くな、怖くな、アミル君だって生き残った。」


マグネシース「どこに連れていかれるんですか?」


キリノハ「そうね、とりあえずは、ドラゴ・・・、赤トカゲの住んでいる山かしらね~。」



マグネシース「助けて~!!」


その後、マグネシースは死んだ魚のような目でレベル160になって王国に帰還したのであった。


今までもそうだけど実力不足を痛感した。



説明不足すぎる。

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