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7月22日 唸れ、天地無双斬04

王国騎士団、副騎士団長である彼は今大会での優勝を確信していた。


レベル90である彼とまともに闘える相手が居ないであろうと予想されるからだ。


この武術大会に出場する人間は大抵がレベル80である。


それよりはレベルが低い者は実力で勝てないとわかりきっており出るはずもなく、そより高い者は純粋に数が少ないのだ。

十年前に優勝した少年以来、一度も、レベル90の選手が出場していないのだから、今回も彼以外が出ることは無いだろうと予想できる。


そして、予想通りになれば、後は実力で明らかに劣る者達を数回打ち倒せば優勝だ。


実に楽な話である。


彼は大会が終わった後、騎士団団長に就任することが決まっている。


前任の騎士団団長が年齢を理由に引退するからだ。


団長に相応しい功績を、まだ若い彼に箔をつけるために目をつけられたのが、この武術大会なのである。


実際、本国も彼が負けるとは思っていない。


そう、この大会は彼のために用意された通過点の一つに過ぎないのだ。


武術大会の第一試合、それを観戦しに来たのもただの、退屈な作業と化している大会を少しでも楽しもうと思って来ただけなのである。


だと言うのにだ、彼の視線は一人の男に集中する。


男は、公国のとある貴族の三男、彼もまた、自分と同じくレベル90である。

その彼が第一試合で戦って居た。


副騎士団は舌打ちする、楽勝だと思っていた仕事に思いがけない壁ができたのだ面白く無いに決まっている。


試合は当然、三男の圧勝ムードで進んでいた。


その時、なんとなく視線を向けた観客席を見て、さらに、舌打ちを追加する。


観客席にはまたもや、彼の知っている存在が居た。帝国の平民騎士、平民でありながらその突出した最高レベルで帝国一番の騎士になった男だ、もちろん、レベルは90だ。


一度の大会に三人ものレベル90の人間が出場するなど前代未聞だ、先ほどまであった楽観的な気分など吹き飛んでしまった。


控え室に戻って、自分の試合まで調整をした方が良いかもしれない。


そんな事を考えていたら、いつの間にか、第一試合が終わり、第二試合の選手が会場に入場してくる所だった。


そして、三度、見知った顔を見たことに驚愕する。


彼の視線の先に居たのは、キリノハ・リンドだった。


なぜ、彼がキリノハを知っているのかと言われれば、簡単で騎士団の同僚だったからである。


キリノハは当時からレベル80でありながら、その卓越した技術でレベル90の副騎士団長とまともに闘える戦闘能力を有していた。


レベルの差ゆえか、キリノハが副騎士団長に勝つことは一度も無かったが。


下手をすれば勝ちかねない勝負がなんどもあった。


その事に副騎士団長は恐怖を覚えた。レベル80の相手に負けたレベル90、常識ではありえない出来事、そんな事になれば騎士団内の笑い者になるだけでなく、副騎士団長と言う立場まで危うくなる。


そう思いたった彼は裏からあらゆる手を回し、彼女が騎士団に居づらくなる状況を作り出し、数年前に辺境の町の警備隊へと追いやったのだ。


だと言うのにだ、彼にとっては最悪とも言える形で彼女が現れた。


当時でも隔絶した剣技を誇って居た彼女だが、この数年で更に磨きがかかっているのならば、10レベル差を覆す可能性がある。


そう彼に思わせる程の実力が以前から彼女にはあった


楽々と勝てるはずの大会に次々と強敵が現れたのだ、見放しの良い平和な平原が行きなり暗黒の闇の中に覆われたようなそんな、不安感が彼を襲った。


しかし、すぐに気持ちを切り替える、気落ちしても始まらないのだ、まずは、キリノハが今どれ程の技術を持っているか見定める事に決める。


キリノハの対戦相手はよく知らない大男だった、彼には精々キリノハの技を引き出してもらわなければならないななどと考えて居ると、試合開始のアナウンスが始まる。


「これより、第二試合を行います。西、キリノハ・リンドウ選手、レ・・・」


やはり、キリノハだったか、レベル80でありながらどこまで闘えるのか見せてもらおう。


「・・・レ、レベル240!!」


「は?」


ありえない数字に間抜けな声が出る。


個人差はあるが最も高い人物でもレベルキャップの値は100のはずだ。


それをゆうに140も超えるだと?奴は、伝説の英雄だとでも言うのか?


そもそも奴のレベルキャップは80のはずだ。


観客達も突然告げられた法外な数値に唖然としている。


会場内の雰囲気に気づいて居ないのか、それともわざと無視しているのか、アナウンスが続く。


「東、ゴウリキ・アカツキ選手、レ、レベルは、352ぃぃ」


流石のアナウンスもゴウリキのレベルを告げた後の語尾がおかしくなっていた。


それも当然だ、有名なおとぎ話の主人公のレベルが360だ、その主人公に後8まで迫るこの人物はまさに物語の登場人物と言っても過言ではない。


夢物語に出てくるようなレベルを持つ人物、それが二人も同時に現れたのだ。今、この場で新手の冗談だと言われたらすぐさま信じたであろう。


実際、観客の半分以上は懐疑的だ。


だが、その疑いも


「初め!!」


勝負が始まった瞬間消し飛んだ。


ガキィン。


試合開始の合図と共に二人の姿が消え、耳が痛くなりそうなほど大きな金属音。


急いで二人の姿を探す。


居た、リングの中央だ。


二人は互いの刃を打ち合えそうなほど接近していた。いや、実際に打ち合ったのだ、二人の持っている試合用の剣が根元から吹き飛んでいる。


二人のぶつかり合いに剣が耐えられずに砕けたのだ。


よく見ると、周囲に粉々になった刀身の残骸が見える、あまりの勢いにリングにめり込んでいる。


観客席は静まり返っている。レベル200超えの者達の激突を見たのだ、話に聞くのと実際に見るのとでは説得力が違う。


懐疑的だった者達でもアレを見れば認めざるえないだろう、リングに足っている二人は紛れもない化け物だと。


化け物達は、柄だけになった剣を投げ捨てると、互い格闘の構えをとる。


そして。


どおぉぉん。


腹に響くような低い衝撃音が辺りに響く。


二人の拳と拳がぶつかり合っていた。


王国の祭りで打ち上げ花火と言うものを見たことがあるが、それに似たような衝撃と音。


大気が震えている事を肌で感じかれる。


ドンドンドンドン


先ほどよりは小さいがそれでも十分な衝突音が小刻みに聞こえる。


おそらく拳や蹴り、体術での戦闘を繰り返して居るのだろう。


おそらくと言ったのには訳がある。見えないのだ、彼らの動きが、レベル90の能力をもってしても追えない動き。


辺りには攻撃的な音のみが不確定な旋律になって響く。


ズドオォン


一際大きい音と共に、音の連鎖が止まる。


リングには土煙が立ち込めている、よく見ると、キリノハがリングの中にめり込んでいた。


投げつけられたのか、叩きつけられたのかは知らないが、地面に人がめり込むなんて、冗談じゃない。そこから何事もなく立ち上がるキリノハも大概だ。


これ以上見ていても、常識が壊れるだけだ、あんな化け物に勝てるか、副騎士団長は観客から静かに立ち去った。




この年、毎年行われてきた武術大会において大きなルール変更があった。

大会が始まってからルール変更されるなど初めての事であった。


変更内容は、出場資格についてであった。


大会に出場出来る者はレベル1~100までとする、また、上記の範囲外の者であっても、半減の腕輪を装備して範囲内に収まるレベルになれば出場資格を有する。


との内容であった。

武術大会第二試合終了直後と言う本来ならばありえないタイミングではあったが。


それを公表したことで、ある一人の選手以外が全員棄権すると言う前代未聞の事態を未然に防げたのだから行幸と言えよう。


「唸れ、天地無双斬!!!」


武術大会決勝戦、化け物の登場に一時は棄権も考えていた副騎士団長だったが、突然発表されたルール変更を見て思い止まった。


勝ち残った方の化け物、ゴウリキ・アカツキが半減の腕輪を4つ付けてレベル22の状態で戦うことを宣言したのだ。



いくら強かろうとレベル22の相手に負けるはずがないそう思っていた。


剣圧によって巻き上げられる大気が竜巻を生みだし副騎士団長を吹き飛ばす。


(化け物はどんなレベルになっても化け物と言うことか。)


薄れゆく意識の片隅でそんな事を考えながら副騎士団長は意識を失った。

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