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7月19日唸れ、天地無双斬

天地無双斬キリノハ・リンドは、激しく攻めの斬撃を放ちながら、相手の強さに内心舌を巻いていた。


この世界において、レベルと言うものは強さの絶対的な指標である。


例えば、レベル10の騎士とレベル12の一般人が、勝負した場合、十中八九勝つのは一般人の方だろう。


これがレベル10の騎士とレベル11の一般人ならば勝敗は五分と言った所だろう。


一般人と騎士との強さの違い、つまり、日々の鍛練や戦闘技術と言ったもので身に付けた技は、1レベル分の差を埋める要素程度にしかならない事が一般的だ。


レベル20の人間が、レベル80の人間の連続攻撃を交わし続ける事の異常さが理解できるだろう。


(確かに、異常な事態だが、彼の噂を考えるとそう可笑しな事でも無いのかもしれないな)


彼女は、目の前の男と戦う切っ掛けとなった出来事を思い出すのだった。


「レベル20の男がレベル60台の冒険者に決闘を挑んでは次々と倒して回っているですって?」


最初にその噂を聞いた時、彼女は自分の耳を疑った、その話を口に出したのが彼女の友人で無ければ、鼻で笑って追い返したであろう内容、それほど荒唐無稽な出来事である。


この町で最高レベルのレベル80である彼女は、この町の治安を守る仕事についている。


この世界には、レベルキャップと言う現象がある。


簡単に言うのならレベルの上限が決まっているのだ各個人別に。


レベル20がレベルキャップの人間がいくら修行したところでレベル20以上にはなれないのである。


そうなってくると必然的に各々が付く職業と言うものが決まってくる。


レベル20の人間が町の警備隊に入りたいと言っても当然はね除けられる、レベル30の一般人に負ける警備隊員なんて誰が必要と言うだろうか。


必然的に警備隊に入れる者はレベルキャップが高い者と決まってくる。


まあ、レベルキャップの値が高いからと言って警備隊に入らないものも当然いるが。


そう言ったこともあり、今暴れている男がレベルの限界に苦しみ、それでも諦めずに修行し40ものレベル差の人間を撃ち負かすほどの技術を身につけるに至ったのだろう。


キリノハは、件の男についてそう予想する。


レベルで変わってくるのは純粋な身体能力のみ、それ以外の能力は変化しない。


レベルが変えられないのなら、レベルに関係の無い、技術や反応速度と言った物を鍛えたのだろう。


一般の常識では無理だと言われている事をやってのける程の力、血の滲むような鍛練の賜なのだろう。


逆境にめげず、それを克服した彼の姿には共感を覚えるが、だからと言って町で騒動を起こして良い言い訳にはならない。


彼女は、事態の収拾へと乗り出した。



左右に二つづつ、計四個の腕輪を付け、刀を持った筋骨隆々の男が目の前に立っていた。


キリノハは、鞘に納めたままの自らの大剣を無意識に強く握りしめる。


「あなたが、町で暴れまわっていると言う剣士ですね。」


「確かにワシは武者修行の為に強い奴と戦ってはいるが、時と場所と相手を選んでおるから、暴れまわってはおらんと思うがのう」


腕輪の男は少し困ったように答える。


「それでも、住民から苦情が出ている時点で暴れまわって居るのと一緒だと思うわ。」


「確かにのう、ならば、これ以上迷惑をかけぬように、早々に町から出ていくかのう、ただし、お主がワシと戦ってくれたらじゃが。」


男は好戦的な笑みを浮かべキリノハを見つめる。


「わかったわ、町外れの草原に行きましょう。」


キリノハは男と同じく笑みを浮かべうなずく。


男の提案は彼が言い出さなければ、キリノハが何かと理由を付けて言い出そうとしていた話だった。


彼女は純粋に剣士として、彼と戦ってみたかったのだ、本来逆転不可能な能力差を覆すその戦闘技術に興味があったのだ。


町外れへと移動し、お互いの得物を構える。


切っ掛けは何だったのだろうか、次の瞬間には、二人の刃がぶつかり合っていた。


互いに刃を振るう中、キリノハは男を観察する。


力や速さは通常のレベル20とほぼ一緒、本来ならば自らの一撃で楽々と打ち倒せる相手。しかし、その男は、その隔絶した技術力によってその破滅の一刃を受け流す、いや、さらには隙を作り出そうと受け弾く。


話に聞くだけで無く実際に体感し改めて思い知る相手の実力、これ程の動きならばレベル60台の者たちとまともに戦えたのも納得できる。


だが、これだけではない、キリノハは確信する。攻撃力が圧倒的に足りないのだ、男が何の技もなく刀を振るい、キリノハに刃を当てたとしても、彼女の体にはかすり傷一つ付かないだろう、レベル差とはそれほど絶対なのだ。


それゆえにわかる、男が何か決定的な技を隠し持っていることを、40ものレベルの壁を越えられる程の攻撃方法があると。


それを知るため、キリノハは数回の攻防の後に、わざと大きく隙を作り出した。


男が隠し持っている攻撃手段を引き出す為だ。


「ふむ、その誘い乗ってやろう、凌いで見せよ、食らえ!!!、天地無双斬!!!」


男に自らの策を見抜かれた事に舌打ちするが、すぐさま相手の技を見極めようと意識を集中する。


だが、男の構えを見た瞬間、彼女の背筋に言い様の無い悪寒が襲ってきた。


すぐさま、意識を観察から全力の回避へと切り替える。


男は、下段に構えた刀を力強く振り上げる。


それと共に巻き上がる烈風が、人一人飲み込める程の大きさの竜巻を作り上げる。


キリノハは驚愕し確信する。これこそが彼の秘密、レベル差を覆す攻撃手段だと、同時に、アレを食らっていれば自分でも無事では済まないだろうと。


竜巻が収まり、二人の間が一旦仕切り直される。


キリノハは彼の技量を素直に称賛する。


「素晴らしい技だな、幾多の逆境を乗り越えて、その技を身に付けたたのは流石だと言おう、だが、しかし、」


素早く踏み込み、斬劇を男に向けてはなつ。


「勝つのは私だ。」



キリノハの斬劇を芸術的な技量で受け流す男。


「そう言う、お主もただのレベル80では無い強さ、ワシと同じように技術の修練をしておるな。」


払い、振り上げ、突き刺し、連続で攻撃し続けるキリノハ、反撃を許すような隙を見せれば、先程の技を確実に放たれる。それは避けなければならない。


「その通り、熟練具合では、遥かに負けているわ、でも、だからこそ、この勝負負けるわけにはいかない、レベル80の意地を見せてあげるわ。」


鍛え上げられた実力と磨かれた技で攻め続けるキリノハと。見るものを虜にしそうなほど美しい流水のような動きと、マシーンのように冷徹で機敏な精神力で攻撃を捌き続ける男。


この勝負、どちらかが隙を見せれば一撃で決まる。


それゆえに高められる極限の集中力。


二人の争いは続く。夜になり、朝日が巡り、初めてから1日が経とうと言う時、とうとう決着が着いた。



男が、足下の不安定な石を踏み外しバランスを崩す。


すぐに立て直そうとするが、1日中戦い続けた体は予想以上に疲労が貯まっていたのだろう、すかさず、キリノハは男の刀を弾き飛ばす。


こうなれば男に彼女の攻撃を防ぐ手段は存在しない。首もとに大剣を突き付け勝利を宣言する。


「勝負あったな。」


男は地面に腰を落とすと、楽しそうに笑う。

男の体力は限界でもう気力だけで立っていた状態だったのだ



「はっはっは、久しぶりに負けたわい。」


キリノハは剣を納めると、男と同じように笑う


「ほとんどギリギリでした、私が勝てたのはほとんど運でしょうね、っと」


キリノハも気を抜いた瞬間、全身から疲れが吹き出してきた。あまりの疲労に脚の力が抜ける、そのまま逆らわずに、座り込むと体を休め始めた。


「この時を待っていたぜ。」


下品なダミ声が辺りに響き渡る。


キリノハが声の方に視線を向けると10人程の男達が立っていた。


彼女は、それらに見覚えがあった。彼らは町の犯罪グループのメンバーだ、全員がレベル60から70の間で、実力の勝るキリノハにいつも悪事を潰されている者達だ。


「誰かと思えば、この間ぶちのめした連中か。」


男も、彼らを知っているようだ。


ダミ声男は、品の無い笑い声をあげながら言葉を紡ぐ。


「ひゃっはー、ここまで上手くいくなんてな、そいつの悪い噂をばらまいたかいがあったぜ、共倒れとはな。」


男の悪いを意図的に流して、警備隊であるキリノハと戦いになるように裏で手を回していた事を告げるダミ声男。


「くっ、ふざけるな。」


奴等の策にまんまとはまってしまった事に苛立ちながら、彼等と戦うために立ち上がるキリノハ。しかし、その姿は先程の決闘で疲弊し立ち上がるのがやっとと言う状態だった。


それを見て、ますます、楽しそうにするダミ声男


「その様子じゃ、いつもの力なんて出せねぇよなぁ、オレらの邪魔を散々してきた借りを返してもらうぜ、そこの腕輪野郎も一緒だ。」


「くっ!!!」


キリノハはふらつきながらも四肢に力を込める、今の体調で彼らに勝てる保証はない、だが、一人でも多くの敵を倒そうと心を決める。


そうして、己が敵に特攻を仕掛けようとした時、隣から声がかかる。


「ちょっと待って、もらえねか?、キリノハ殿、ここはワシに任せてもらいたい。」


キリノハは男を見ると告げる。


「ダメよ、あなたは満身創痍で動けない、刀もあんなに遠くに飛んでいる。私が行くわ」


「まあ、まあ、これを見てもらえるかのう」

そう言って、何かを投げて寄越す男。反射的に受けとったそれは、レベルカードだった。


レベルカードは個人毎に発行される、その個人のレベルを示すカードだ。


カードを見ると、『ゴウリキ・アカツキ レベル20』と記されていた。


キリノハは渡されたカードの意味がわからず聞き返す。


「?、これがどうしたのですか。?ゴウリキ殿」


「次にこの腕輪を見てくれ。」


そう言って、彼女に見えるように、両腕に2つづつ計4つの腕輪を見せるゴウリキ。


「この腕輪は、半減の腕輪と言ってな、本来は呪いのアイテムに分類される物でな、身に付けた者のレベルを半分にする効果がある。」


キリノハは、彼から言われた事実に耳を疑う。


「見てろ。」


そう言って腕輪の一つを外すゴウリキ。


その瞬間、レベルカードの表示が『ゴウリキ・アカツキがあるので レベル40』になる。


あまりの事に事態に追い付いてこれないキリノハを他所に、残る腕輪もどんどん外してゆく。


それにあわせて、レベルカードも、80、160、と最終的に320と言う、とんでもない数値になった。


「あ、あぁ?」


あまりの事に意味のある言葉の出せないキリノハ。


「それでは、ちょっと潰してくるかのう」


先程までとうって代わり、軽く立ち上がるゴウリキ、


今、起こっている事を全く知らずに見下した笑顔を浮かべこちらに来ようとした男達の動きが驚愕で止まる。


当然だろう、もう、動けないと思っていた男が軽快に立ち上がり、目にも止まらぬ速さで移動すると、次の瞬間には遠くに飛んでいた自らの刀を持ち上げていたのだから。


そして、瞬き程度の時間でゴウリキは男達の隣に立っていたのだ。


「人の決闘にケチをつけるとは許すマジ、唸れ!!天地無双斬!!!」


轟風が襲ってきた、烈風など生ぬるい、木々を引き抜き、地殻を巻き上げ、天を引き裂く、正に天地無双。


キリノハは、身を低くし体に力を込める、吹き飛ばされないように、必死に大地にしがみついた。視界端で町の建物が倒壊してゆくのが見えた。


余波だけでこれなのだ、中心地の威力は押して図るべしだろう。実際、風が収まったあとそこを見ると、町を丸々飲み込めそうな大きさで、落ちたら怪我では済まなそうな深さの大穴が空いていた。


「はっ、はは」


今までの常識を軽く超える現象の連続に乾いた笑いが出る。


そこべゴウリキが戻ってくる、すでに腕輪を両手に戻していた。


「久しぶりに全力を出したから手加減がわからなかったわい。」


そう言って、ゴウリキは満足そうに笑うのであった。


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