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7月16日四葉学園文芸部02

「小説において冒頭の一文は非常に重要な意味を持ちます。高名な作品はその最初のみで、その小説がどのような小説なのかを説明し終えてしまうと言っても過言ではありません。『国境の長いトンネルを抜けると………』とか『我輩は………である』などや『親譲りの………で』のように、皆も一度は読んだ事のある作品のこれらの書き出しが有名ですね。」


「そうなん?」


花火の解説に、吹雪があくびを噛み殺しながら質問する。


「吹雪君、一応文芸部なのだから、有名な作品くらいは読んで欲しいかな。」


花火の言葉に


「スレイ○ーズや魔術師オー○ェンなら読んだことあるぞ、てかラノベしか読んでねぇ」


吹雪が答え。


「僕は、教頭をな「ちょっと」って「まって」た話と、猫が最後に「ダメ!!」話は読んだかな。」


紅葉がネタバレを語り。


「私って花火に付き合って入っただけだから、そもそも本を読まないわ」


桜花がなぜ文芸部に入ったのか問いたくなるような事実を口にした。


それぞれの告白を前に、花火は立ち直るために一分ほど時間を要した。


そして、


「と、取り敢えず、文芸部の活動として、一人づつ冒頭の一文を強く意識して短編小説を書いてきてもらいます、期限は1週間です。以上」


やや強引に、全員へ一週間で短編小説を書いてくるようにと指示を出した。




「といったことが一週間前にありまして、今日はそれぞれが書いてきた小説の発表をする日ですよ。」


「紅葉君、なに一人で呟いているの?、発表会を始めるよ。」


てきぱきと全員にあれこれ指示していき、発表会を始められる状態に持ってゆく花火。ちょっと強引にも見えるが、協調性のないメンバーを纏め上げるのならば、これくらいの強引さが必要なのかもしれない。


「みんな、準備は良い?、発表会を始めます。まずは私の小説から、冒頭の一文は『紫色の魚が口から小さな火を吹きながら目の前を泳ぎ去る。』よ、」


人数分に印刷された、花火の書き上げた小説を皆が読み始める中、吹雪が笑いを堪えながらようにつぶやく。


「てか、紫色の魚って、ぷっぷっぷぷっぷ」


それを目ざとく見つけた花火が食ってかかる。


「なによ?、文句あるの??」


「だって、紫色の魚だぜ、ありえねー。」


吹雪の指摘に花火が反論する。今日もちょっと頬が赤くなってきた。


「冒頭の一文はインパクトも大事なの、多少、おかしいほうが記憶にも残りやすいのよ。」


「でもこの魚、ぜってー毒もってるよな。紫だし。」


「なんだか、散々文句を言われてるけど、あなたの小説はどうなのよ。」


花火は、吹雪に対抗するために彼の書いた小説を読む事に決めたようだ。提出され印刷された小説の中から目的の物を選び出す。


そして、その小説のタイトルを読んだ時点で、それを地面に叩きつけた。


「読めるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


小説のタイトルには’ボインボイン’と書かれていた。


ちなみに冒頭の一文は『おっきい方、小さい方どっちがお好み?』と書かれていた。


後に、冷静になってタイトルだけで判断せずに中身もちゃん確認してから評価しようと考え直した花火が読み出し、その1秒後に破り捨てた事は余談である。


「つ、次に、紅葉君の書いてきた小説を読もうかな」


花火は、気を取り直して、紅葉の小説を読み出す。あまり目立たないが、この文芸部の中で一番の実力者である。吹雪とのやり取りで、動揺している心を鎮めるために安全そうな小説を選んだのだ。


ただし、最初に飛び込んできた一文が『親譲りの猫である、吾輩は国境の長いトンネルを抜けると無鉄砲で子供の時から損ばかりしている雪国であった。』と有名小説の冒頭をごちゃまぜにしたという内容だった為に、花火の期待を見事に裏切った。


しかし、花火はそこでめげずに小説を読んでいった、内容はさすが紅葉と言った所だろう、話の内容から起承転結がしっかりと分けられ、表現方法にいくつも見習うべき点が見受けられた、そして、いつの間にか読みいってしまい、読み終わる頃には、先ほど沈んだ心はいつもの位置へと戻っていた。


タイミングを見計らっていたのか読み終わるとほぼ同時に桜花が声をかけてきた。


「花火ちゃん、私の小説も読んで欲しいわ。まだ読んでないの桜花だけなのだもの」


「うん、いいよ」


快く承諾する花火、しかし、桜花から手渡された小説のタイトルを見て凍りつく。


小説のタイトルは'花火ちゃん観察日記'


肝心の内容は、『○月×日晴れ、今日は花火ちゃんが、生徒会長に話しかけられていた、なんでも「コーラと牛乳を混ぜて飲んだら美味しいだろうか」と真剣に相談を持ちかけられていたそうだ、以前、花火ちゃんは生徒会長の事をカッコイイとか言ってたけど、あの性格は無いなと思った。』と書かれていた。他の内容も似たようなもので、びっちり一週間分の花火の行動とそれに対する桜花の感想が書かれていた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


慌てて、桜花の小説、'花火ちゃん観察日記'を回収してゆく花火。


「小説って何書いたらいいかわかんなくって」


と一人誰にでもなく弁明する、桜花


(花火ちゃんと、吹雪君以外の男の子が仲良くしている部分を多めに書いたのに、吹雪君は、嫉妬するどころか気にもしていない様子だわ、という事はやっぱり吹雪君は花火ちゃんに恋愛感情を持っていないのかしら??)


とか水面下で思っていたりはするが。


四葉学園文芸部の面々は、今日もまた一部の小説(?)を闇に葬り去りながら部活動に勤しむのであった。




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