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獣医禁書  作者: 深口侯人
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祝日?何それ?

そしてゴールデンウィーク。

僕の勤務する動物病院は、たとえ祝日であろうと週1日の休診日以外ならば休診にはならない。

それはゴールデンウィークやお盆、正月も例外ではない。

その理由は院長曰く「病気は平日休日関係なくやってくるから。」だそうだが、それなら何故この病院に休診日が存在するのか?

謎である。

もはや院長が敵にしか見えなくなっていた僕にとっては、儲けを少しでも多くするための詭弁にしか思えなかった。

ただし、オーナーも旅行に出かける人が多いようで、病院に連れてこられる患畜の数もさすがに減るため、いつものような人数は要らない。

というわけで、病院は従業員たちに任せて、院長は一家で海外旅行へ。

…死ねばいいのに!!

いや、死ななくてもいいから病院を続けられないほどの重症を負ってくればいいのに!!


そして、残された従業員は年3日しかない有給休暇を各人1日ずつ、交代で無理矢理使わされる。

今、さらっと「有給休暇は年3日」と書いたが、気付いた方はおられるだろうか?

「少ない!!」という点はこの場合、問題ではない。

下手すれば有休など無い動物病院もあるのだから。

問題はゴールデンウィーク、お盆、正月の年3回の世間的な長期休暇に対して有給休暇の日数も年3日、しかもそれは本人の意思とは無関係に取らされるということだ。

つまり盆と正月にも同じ現象が起こり、自分の取りたい時には有休は取らせてもらえないのだ。

そう、求人広告の見栄えを良くするためのお飾りの“有休”である。

果たして、こんなものを「有休」と言って良いのだろうか?

ちなみに「病気などで休む場合は?」との疑問をお持ちのあなた。

ご安心を。

その時は日割りで給料が引かれるだけである。


「週休2日」は嘘っぱち、「有休年3日」は形式的、言及の無かった祝日については当然の如く通常勤務…。

いったい我が病院の休日数はどうなってしまっているのか?

大手企業などの休日数は年120日前後で、土・日・祝日と夏季・冬期休暇を合わせるとだいたいこんなもんだ。

さらに有休が年20日ほど貰えるらしい。

中堅企業や大きい動物病院はちょっと減って年110日ほど。

祝日が休みではなかったり、夏季・冬期休暇が短かったりするのだろう。

有休も5~10日とちょっと少なめで設定されているみたいだ。

そしていよいよ真打ち登場。

“オーナーに優しい”我らが動物病院の年間休日数は…、年100日ほど!!

祝日が休みではなく、夏季休暇も冬期休暇も無く、有休も年3日。

しかも、休診日当番があったりするので数字上の休日数ほどは休めていない。

さらに、日々の業務は大抵12時間以上の労働を強いられるのだ。

もちろん、休憩時間は含まないで12時間以上だ。

はっきり言って給料の額に見合ってないと思う。

患畜とオーナーには優しいかもしれないが、従業員にとっては厳しい病院である。

そもそもオーナーに優しくするなら、もっと従業員を増やしてローテーションを組み、休診日をなくしたり、夜間診療をすれば良いはずだが、「管理が面倒」とか「採算が取れなくて利益が減る」とか思っているのか、そんな話は一切出てこない。

まぁ、病院によっては週休1日だったり、有休すらないところもあるらしいから我が病院はまだマシらしい。

ちなみに、「我が病院」などと書くと、プライドの高い院長には「お前の病院じゃねえよ!!オレの病院だろ!!」とつっこまれるだろうが、「院長の病院」とか「僕が勤める病院」とか書くのは面倒なのでこの先も「我が病院」でいく。


まぁ、そんなこんなで色々と問題になりそうな労働条件だが、労働基準法の適用については前に紹介したとおりだ。

確かに、下を見ればもっと酷い職場はあると思う。

しかし、「だからお前も我慢しろ。」とか「もっと悲惨な人が居るのに愚痴をこぼして情けない。」とか言われる筋合いは無い。

何故、わざわざもっとひどい労働条件の職場と比較して自分はまだ恵まれていると思わなければならないのか?

快適に働きたいと思うことは贅沢な考えで忌むべき事なのか?

より頑張っている人が居るなら、自分もそれに合わせて頑張らなければいけないのか?

ましてや、僕は国家資格の中でも取得難易度が高いと言われている獣医師免許を持っているのに、もうちょっと待遇が良くてもいいのではないか?

そんな想いが頭の中を駆け巡る。

「若造のくせに生意気を言うな。」とのお叱りの言葉があるかもしれないが、特に最近の若い獣医師は少なからずこういう思いを持っているだろう。

ただでさえ人材不足なのに、いつまでもぞんざいな扱いを続けている病院の院長は気を付けるがいい。

そのうちに若手が入ってこなくなり、病院が潰れてしまう危機に瀕するだろう。

待遇の改善が無理なら、せめて従業員に慕われる優しい院長であれ!!


…話が横道に逸れて色々と愚痴ってしまったが、ともかく、小さい動物病院はなかなかシビアな勤務時間の所が多いのだ。

元気になった動物とオーナーの笑顔だけが心の支えとなる職場である。

そして、『週休1日で有休も無しだと年の休日数が50日かぁ…、そんな病院でも頑張れるほどやる気がある人はすごいね。僕は到底そこまで頑張れないなぁ。』と他人事のように哀れんでいた状況をこの後、実体験する事になるのもまた先のお話だ。


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