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怪奇事変 異霊地巡礼

掲載日:2026/10/20

第五十怪まで短編を書き続けられ、そしてまた見て下さりありがとうございます!

この五十怪をもちまして、怪奇事変は不定期更新となります、宜しくお願いします。

より深いインスピレーションを求める為には、よりリアリティーな体験を求めるべきだ。

 そう思いだってかつて活動をしていたチャンネルもそこそこに持っていた心霊系動画配信者と共に訪れた場所がある。

 私も何度か曰く付きの場所を訪れた事はあったが、あんな体験は二度とごめんだと思う体験をした事を話そう。




 第五十怪 異霊地巡礼




 「と言う企画がありまして」


 「別に構わないけど、僕としては寄り恐怖に近いリアリティーを体験して、それを執筆できれば構わないさ」


 心霊系動画配信を生業としている少数派で周るチームとして活動をしていた彼等は、まだチャンネルもそこそこで成長もしていなかったと思う。

 全ての動画はやらせと思わせないため余すことなく全てを世間に晒しだす事が彼等のセオリーだが、別段この手の活動者にしては珍しくないやり方だったと当時は思ってたし、今も思っている。


 「では日程はこちらで」


 「……」


 当時の僕は浮かれていたのとは半分、慢心した気持ちもあったのだと思う。

 何せ心霊系の小説の売れ行きは中々の数字を出していたし、メディアに取り上げられてテレビの出演にも出ていたから天狗になっていた。

 そんな傲慢な態度に彼等も根っこの部分ではあまり歓迎してなかったのかもしれない。


 「後の事はマネージャと打ち合わせしてほしい、こっちも忙しいんでね」


 「ええ、分かりました」


 相手は少々困った表情を浮かべていたが、いちいち相手の態度など気にする様子を伺うだけ無駄だと感じ、そのまま帰路についた。

 先方とは住む県が離れていた事もあり、帰りの新幹線で執筆の続きを書いていた。

 今でも思う事があるとすればリモートなどでやり取りもできたはずだが、やはり当時はリアリティーを求めて少しでも執筆のネタ探しになればと思って現地に赴いたのかもしれない。

 別に企画の内容に沿った出来事じゃなくても、その現地に行く際、或いは帰る際に起きた出来事でも良かったのだ。

 少しでも執筆のネタになるような恐怖があればと、そんな縋る様な思いもあったのかもしれない。


 


 そして約束の日がやってきた。

 撮影は彼等が率先して行う事となり僕はオマケと言う形だ。

 内容は廃村の捜索、何て事のない始まりだが、いちよこの廃村にもストーリーがあるらしい。

 何でも謎の集団失踪をする前から、奇妙な伝統として受け継がれていたこの村特有の作法と言うものがあるらしく、それに使われていた物が——


 「見てください、ありました」


 日本人形——良く、怪談の類で必ずと言って良いほど出る物だ。

 

 「で、これが何なの?」


 「この村の…儀式的なものに使われてたって聞いてます」


 近くのマネージャが小声で説明してくれる。

 どうにもこの村には特殊な風習があり、亡くなった者が死後も悲しまない様に呪いの一種として雛人形を贈るそうだ。

 雛壇に置かれている人形の頭は全て取られていたが、総勢すれば50以上の数が並んでいるのが分かる。


 「ただ廃村になる前から、雛人形の頭が落ちると言った怪奇現象が起きてからと言うものの、頭の落ちた雛人形の数に比例して村の住民が謎の消息を絶つと言った事例が見受けられるようになったとか」


 「それで?」


 「当時は警察も動いてはくれていましたが、結局本人は見つからず、不気味に思った住民からもこの風習を取り下げた事例があったそうです、それでも取り下げる前にあった雛人形の頭は落ちて行って、最終的には消息不明の人数は頭の落ちた雛人形と変わらないとか」


 「当時此処に住んで居た住人をゲストとして連れてきた方がリアリティーが増すんだが……」


 「そうしたかったんでしょうが、当時この村に住んで居た住人も遠方で謎の失踪を起こしてるって……」


 「なるほど、本格的な怪異か、面白い」


 ペンと手帳を取って状況を書き込んでいく。

 特段ノイズだったのは彼等の声が耳に入って来る、それ以外は全て順調であった。

 だがしばらくして物音が聞こえた。

 当然、前を進んでいる彼等からの音だと思ったがそうではなかった。

 コトンと言う何かが落ちた音だった。


 「あれって、さっき言ってた話の雛人形かい?」


 「え、えぇ……」


 強張った表情を浮かべるマネージャに呆れつつ、首が落ちた雛人形に近づこうとすると悲鳴が聞こえた。

 前方からだ、豹変した表情を浮かべる彼等の一部がこちらに向かって走ってくる。

 

 「次から次へと一体なんだい」


 僕の言葉を代弁し、マネージャが理由を聞くと、突如仲間の1人の頭部が落ちたと言う懐疑的な内容を突き付けてきた。


 「……さっきから何を言っているんだい?」


 「いや本当何ですって!早く此処から——」


 その時、彼は僕の方ではなく、正確には僕の後ろにある雛人形を見ていた。


 「アンタが落としたのか?」


 「違うよ、自然に、勝手に落ちたんだ」


 「嘘だ!そんな訳——」


 「そもそも老朽化が進んでいる場所なんだから何も不思議じゃないだろう?それと何かい?仮に僕がこの雛人形の頭部を落としたら何かマズイ事でも起きるって話かい?」


 「……」


 しばらく黙る彼と、合流した仲間が血相を変えてこの場から離れようと提案してきた。

 仕方なく彼等の指示に従う形になってしまったが、これで今日のロケは中止だと分かってしまうのは非常に残念だと思い、車に乗車すると、またあの音が聞こえた。


 「……おい、何でそれ持ってるんだ?」


 メンバーの1人が言うと、そこには雛人形を大事そうに抱えたメンバーが居た。

 彼もまた顔を蒼白にさせながら口をパクパクと開閉した矢先——助手席に座っていた男の頭が落ちた。


 「は、早く出せ!」


 車内は悲鳴と怒声で行き交っていた。

 当然僕も、今見たものを信じがたいと思っていたし、受け入れがたい真実だと思っていた。

 しばらくして走ったあと、ようやく明かりが見える場所まで来ると、皆平常心を少しずつ保てるようになっていた。


 「一体どういうことだい?彼は生きて——」


 助手席を確認するも、先ほどまで頭部が落ちた身体は消えて無くなっており、何処かへ行ってしまったかのようだ。

 

 「やっぱり噂は本当だったんだ」


 そう口にするグループのメンバー。

 企画内容は頭には入っているし、先ほどマネージャからも噂は聞いたが、イマイチ危険性が直結しない。


 「先ほど僕は、僕のマネージャから噂を聞いたが、君の知ってる噂って一体どんな噂なんだい?」


 「あの雛人形達は……死者の魂葬と言って、死後1人で寂しくない様にって渡される遺品の様なものだ」


 「それで?」


 「死者の魂が無事にあの世に迎えると、遺品となった雛人形も役目を終えて首が落ちる仕組みになってるらしい……けど」


 濁すような形で言葉を紡ぐ男に僕は急かした。


 「早く行ってくれないか?」


 「べ、別の噂があったんだ」


 「別の噂?」


 「ああ、本来の取り決めた儀式と真逆……藁人形の様に相手に呪いをかける儀式、その呪いにかかった者は——首が落ちて、その後胴体も失踪してしまうという恐ろしい呪いだ」


 「なんだそれは!?」


 「ただの噂だと思ってた、雛人形はあくまで形式的に使われた道具だったはず、でも人形には魂が入りやすいから、それを利用した別の儀式があるって」


 「……」


 「ただの掲示板の出鱈目だと俺だって思ったんだ、それにアンタだって見ただろ?あんな老朽化している場所に原型を留めた雛人形の残りなんてそんなある訳ないって」


 「だが実際はあった、そして呪われたってことか」


 「信じがたい話だがそうだった、俺達が進んだ先には小さな社があって、その中に雛人形があって、首が落ちたんだ、そしたら……仲間の1人が突然」


 男の話が本当だとすれば雛人形は少なくとも3体あったことになる。

 男達が見つけた雛人形、僕が見た雛人形、そして最後に持っていた雛人形……だが何時の間に所持していたのだろうか?


 「彼は何時、雛人形を持っていたんだ?」


 「わからねーよ!アイツが何時の間に人形を持っていたのかなんて——」


 怒りに任せて冷静差を失った言葉で叫ぶ男の表情が曇った。

 その視線の先を辿ると——ポツリと置いてある雛人形が見つかった。


 


 事件性がある話ではあるが怪異的な問題で捜査は難航しているらしい。

 未だに見つかっていないグループの彼等、そして最後に話した彼、しばらくして僕のマネージャも担当が変わったが、そのマネージャも突然の失踪を遂げてしまっている。

 あの雛人形を目視した人物は間違いなく呪われてしまうのであろう。

 流石に執筆する気にはなれなかったが、それらしい内容で本にする事はできた。

 だが何故僕だけは無事だったのか……単なる憶測だが、何かしらの逆鱗に触れてしまい、怒りを勝って呪われたとしたら、それは僕も入っているかもしれない、そのはずだ。

 或いは——もしかしたら僕は******だったかもしれないと思い、調べてみた結果、遠い親戚にそれらしき血筋があった事を知った。

 

 そして実家に帰った際に古い書斎と大きな箱の中に入った雛人形を見つけたのだった。

 それはまるで生きているかの様な様子でこちらを見ていた。



  第五十怪 首無し雛人形

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