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猫の救世主

作者: るね

窓を開けていると、一匹の猫が入り込んできた。

その茶猫の目はサファイアのように美しかった。その吸い込まれそうな瞳に見惚れていて、その猫がとても汚れていることに気づけなかったの。そのことに気がついたのは、私のドレスにくっきりとした足跡がついてしまった後だった。

ハッとして、慌てて猫を抱き上げた。

「いったい、どこからきたの?ドレスが…」

すぐに追い出そうと思ったのだけど、雨が降り出すものだから、猫を追い出すことが出来なかった。

「雨がやんだら、帰ってね…」

その猫を見つめながらポツリと言った。



明日は私の結婚式。しかしあまり気が乗らない。彼のことは大好きだし、不満なことなんてない。ただ、将来に対する漠然とした不安が拭えない。そう、いわゆるマリッジブルーってやつだ。

「にゃー」

猫が鳴く。きれいな鳴き声。雨が止むまでとはいえ、家の中に居させるならお風呂で綺麗にしてあげようかな。そう考え、お風呂場で洗ってあげるとその猫はまるでシルクのように真っ白になった。

びっくり、茶ねこが白猫になってしまったわ。

それによく似てる…。


その猫は、幼い頃に実家の近くにいたノラ猫にとても良く似ていた。私の両親は共働きで、幼少期1人で過ごすことが多かった。寂しい時に、どこからともなくやってきて遊んでくれたその猫は私の救世主だった。学校で仲のいい友達ができた頃から、いつの間にか現れなくなってしまったけどその時の猫によく似ていた。


「また来てくれたの…?」

なんてね、都合のいい解釈かもしれない。不安を感じてたからまた現れてくれた。そんな風に考えてしまう私は小説の読みすぎかもしれない。

でも、心が軽くなった。

大きな変化って誰しも漠然とした恐怖を覚える。けれど、あの人とならきっとやっていける。張り詰めていた緊張の糸が猫のおかげで一気に解けた。

「ありがとう」

そう言いながら猫の方に目を向けようとした。しかしその猫はもうそこにはいなかった。

「あれ」

あ、帰っちゃったのか…。窓の外を見たらいつの間にか雨は上がり、空には星が瞬いていた。



結婚式当日、私は純白のウェディングドレスに身を包む。

「あれ、そのドレスすそにそんな柄あったけ。でもかわいいね」

そう言いながら、不思議そうに私を見つめる彼の瞳は、心なしかあの猫に似ている気がした。


「ありがとう。私の、救世主様からの贈り物なの」


就活からの現実逃避で、初めてお話を書いてみました。

拙い所が多々あると思いますが、温かい目で見ていただけたら嬉しいです。

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