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ラルフ視点。 短いです。

 

 約九年前。




「何てことをしてくれたんだ!!」


 俺は当主である父親を怒鳴りつけずにはいられなかった。


「ご、ごめんよ~、ラルフ。だって似てたから……」


 似てるとかそういう問題ではない!!


「俺が結婚したいのはルリアナ・フォース子爵令嬢だ!! ファーク子爵令嬢ではない!!」


 この父は、こともあろうに求婚状を誤配してしまった。

 俺はソファーに座り頭を抱えた。

 どうする? いや、婚約を結ぶわけにはいかない。俺が愛しているのはルリアナ・フォース、“リア”ただ一人なのだから。


「ファーク子爵家へ先触れを」


 求婚状の誤配を詫びるため、俺はファーク子爵家へと急いだ。




「あんまりですわ。間違いだなんて。わたくしに恥を掻けとおっしゃるの!?」


 俺はファーク子爵家に事情を話し、求婚状の誤配を謝罪した。

 ファーク子爵令嬢はハンカチで目を押さえながら大袈裟に泣いている、いや、泣き真似をしている。


「申し訳ない。非は全てこちらにある。令嬢に傷がつかないよう取り計らうつもりだ。どうかご納得いただけないだろうか」


 令嬢はさらに泣き(真似をし)出し、続けた。


「わたくし、社交界のいい笑いものですわ」


 令嬢の目には計算しつくされた光がある。彼女はこの状況を利用しようとしているのだ。くそっ、これ以上の混乱は避けたい。


「このような事態を招いてしまい、心からお詫び申し上げる。もし令嬢が望むならば、他の者を紹介させていただこう」


 令嬢は首を振って答えた。


「わたくし、ラルフ様がいいんですの」


 その言葉に苛立ちを感じたが、非はこちらにあり、強く出られない。


「どうかご理解いただきたい。私の心は別の女性にある」


 俺が何を言おうが、令嬢は俺との婚約を結ぼうと躍起になっているようだ。


 くそっ、リア以外の女と婚約など結べるか!


 このままではただの論争で事態は好転しない。

 俺は、この事態をどう解決するか策を練った。





「アダム、ユリアナ・ファーク子爵令嬢を愛している身分の釣り合う男性を探してくれ」

「はあ……?」


 俺は、ファーク子爵令嬢を本気で愛している男性を探し出し、彼女がその人物と恋に落ちるよう仕向ける計画を立てた。


 しかし……、


「難しいですね。彼女は貴族子息の間では恋多き女性として有名ですよ。遊び相手ならともかく本気の相手となると……」


 侍従のアダムに調べさせたところ、ファーク子爵令嬢は、とんでもない女だった。

 単に手近な候補を宛てがってもいいが、誤配の責任はこちらにあり、それはさすがに申し訳ない。


 俺は引き続き求婚の撤回を主張し続け、ファーク子爵令嬢との婚約を避けた。そして、彼女を心から愛する男性を探し続け、ついに該当者を見つけた。


 そこから、二人の出会い、偶然の再会、運命的な瞬間を演出し、計画通り二人は愛し合う恋人同士になった。

 ファーク子爵家は求婚の撤回を受け入れ、俺はルリアナに求婚できる立場となり、すぐさまフォース子爵家へ求婚状を送った。


 ここまで三年を要した。




 ***




 リアとの結婚生活は、夢のように幸せな日々だった。


 朝、目覚めるとリアが隣にいて、心は幸せで満たされた。

 彼女の温もりは俺の心をも温めた。

 リアと共に過ごす時間は、俺にとって最も大切な時間だった。彼女の存在は、心に安らぎを与えてくれた。


 リアも同じように幸せを感じてくれていると信じて疑わなかった。しかしそれは俺の思い込みだった。


 結婚して三年を迎え、帰宅した俺は絶望に打ちのめされた。


 リアが残した手紙には、俺への感謝と、本当に愛する人と幸せになってほしいという願いが書かれていた。


 本当に愛する人!? リア以外に誰がいる!? 


 リアは何か誤解している。俺は急いでリアを探したが、リアはすぐには見つからなかった。

 俺は自分自身も国中を探し回ったが、財務官として働く俺には時間が足りなかった。


 そこで俺は、決断した。財務官を辞めて騎士になることにした。騎士なら国中に拠点があり、国外に遠征に行くこともある。リアを探すには最適だ。

 リアは依然として見つからず、国外にいるのではないかと考えてもいたからだ。


 騎士として身体を鍛え、遠征には積極的に参加してリアを探した。

 何回目かの遠征でアルトレイア王国に足を踏み入れた。


 そして、俺と同じ黒髪、俺と同じ赤い瞳、何よりも俺に瓜二つの子供を見つけた。

 すぐに理解した。この子は俺の子だ!!リアは俺の子を産んでくれていたのだ。


 ついに、ついにリアを見つけることができた! 騎士になったことは、間違いなく正解だった!!







誤字報告ありがとうございました。

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