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無慈悲な裏切り、そして新たな信用

生まれた頃から奴隷だった私は、常に誰かに虐げられながらも、この世界の生き方に慣れ、水臭い仕事をして生きてきた。

仕事をこなしていくうちに金の入る仕事に鞍替えをしていく事を覚え、私は大陸を統べる国が魔王を殺すために作られた数ある勇者パーティの一つに金で雇われ旅をしていたのだが、パーティに入り一ヶ月程度たったとある夜、野宿をしていた時にパーティリーダーでもあった勇者が不意に「おい、お前金の横領とかしてねえよな?」と唐突に言いがかりをつけてきた。私はやってもいないことをした風な口ぶりで言われそんな事をするわけないだろうと反論をしたが、リーダーは聞く耳を持たずに「お前以外に誰が金をわざわざ盗むんだよ?そんなに自分はしてないって無駄口を叩くんならこうするまでだな。」

次の瞬間、気づけば私はパーティの1人である魔法使いに拘束魔法を掛けられ、身動き一つできぬまま勇者の手により腹を貫かれ、私は瀕死の重症に陥った。

「ふん、雇われの身の癖におこがましいんだよ」「死体はどうします?このまま灰にでもしましょうか」「やめとけ、後始末が面倒になる。このまま放置してもどうせいずれ死ぬだろ」

雇われとはいえ、多少ながら信頼をしていたメンバーの声を最後に、私は体から力が抜けていき、瞼を閉じた。


私は身体を揺さぶられ、ゆっくりと瞼を上げた。

見れば、頭巾を被り料理をしている男と、身体を揺さぶってくる高価そうな服を着た女がいた。2人とも顔つきを見る限り若いように見える。

いや、それよりもだ。私はなぜ生きている?

女は私が目覚めたのを見た途端に声を荒げ「起きたよジャック!ちゃんと効いてるみたい!」と男に言っていた。

ジャックと呼ばれた男は料理していた手を止め「じゃあリリス、これでも飲ませてやれ」と女に対し小さな袋を投げ渡した。

目覚めたばかりで頭が混乱していたが、私はひとまず尋ねた。

「誰だお前らは..私に何をした?確かに腹を刺されたはずなのに..」

「え?回復魔法を使ったんだよ。もう少し私らが来るのが遅かったら手遅れだったかもね〜」

「いや..普通の回復魔法であんな大傷を治せる訳がない..それこそ魔法使いでも魔力を使い果たすはず...」回復魔法は魔力効率が悪く、基本的な回復はポーションで済ませるのが一般的だ。自身の治療ならともかく、他人に対して治療を施すというのは至難の業で、人命救助できるほどのレベルとなれば王国直属の救命隊(ヒーラー)に即抜擢されるぐらいだ。そんな技を私に使ったというのか...?

驚きで戸惑う私に対し、ジャックが野菜の入ったスープを差し出してきた。

「ほら、ひとまず食いなよ。疲れてるだろ?」とニコっと笑顔溢れる顔で言ってきた。

恐る恐る皿を受け取り、念のため毒らしきものが入っていないかを確認する為に匂いを嗅いだ...鼻の中に入ってきたのは香ばしくて良い匂いだった。

初めて嗅ぐその匂いはとても魅力的で、匂いを嗅いだその直後には思いっきりがっついて食べ始めていた。

裏切られた勇者の旅で食べた料理よりも遥かに美味しく、その味に私は口を唸らせた。気づけばすぐにスープを食べ切っており、思わず

「めちゃくちゃ美味いじゃないか!?何をどうやったらこんなに美味い物を作れるんだ!?」と本音をぶちまけた。

その言葉にジャックとリリスの2人はきょとんとした顔をしていた。

「いやぁ、普通だよ?こんなのお茶の子さいさいだ」

「材料さえあればもっと美味しいもの作れるもんねぇ〜。は〜あ、家の料理が恋しいや」

なんてことだ。彼等にとって、この料理はほんの賄いに過ぎないようだ。

驚きで情報の整理が追いつかない。こいつらは一体何者なのか...段々と興味が沸き、思わず私は口を開き

「なぁ、お前らは何者なんだ?ただの家の生まれじゃあこんな事できないよな?」と尋ねると、2人は口を合わせて行った。

『魔王の子供だよ』

「........は?」

思わず、そう答えた。

「いやいや、流石に何かの冗談だよな?な?」慌てて問いかけると、ジャックが

「いいや、冗談じゃない」と言って、頭巾を外した頭を見て、私は唖然とした。

ジャックの頭には確かに、鋭く、しかし綺麗な魔物のツノが生えていた。

「これを見れば、信じるよな?」と改めて確認するかのように尋ねてきた。

「.....あぁ、本当....なんだな...なら..なぜ私を助けた?魔王なら、人間を敵視しているのではないのか?」

魔物による被害が多く、その原因が魔王であるという共通認識になるのは当たり前で、様々な勇者一行が魔王を倒そうと歩みを進めるのだ。故に、魔王も勇者達を倒すために動く..はずなのだがな。

そんな疑問に対し、二人は答えた。

「いやいや違うよ!私達のお父様は人間と争おうなんて思ってないよ!」

「お父様の代になってからは、父様に従っている魔物は人間には手を出さないはずだ。おそらく、他の魔王の配下の魔物だろうな」

さらっと非常に重大な事を彼らは平然と述べた。

魔王が人間に対し手を出さない?他の魔王?あまりにも寝耳に水な情報ばかりで、私は全てを理解するのを辞めることにし、一つ尋ねた。

「...わかった。人間に手出しはしないんだな。..だが、何故ここにいるのかの理由にはなっていないぞ?」

「えっとね。私達、旅人に憧れてるんだ!」「絵本で読んだ勇者の物語が実に楽しそうだったからな。次第に憧れるようになったのさ。」

勇者....

あまり聞きたくない言葉に少し顔をしかめながらも、理由としては比較的納得できた。人間を襲わないという時点で型破りなのだ。今更勇者になりたいなんて言葉に驚くのも疲れていた。だが...

「そうか...何はともあれ、命を助けてもらった挙げ句、食糧まで恵んでくれた事、感謝する。何かと迷惑かもしれないが、この礼はできないかもしれないが、最大限させていただきたい!」私は頭を2人に向かって下げた。

仮に魔王の子供でも、命の恩人である事に変わりはない。

礼をしないなど、持っての他だった。

「いいから!頭なんか下げないでよ〜!」「なぁ、なんでも礼してくれる、って言ったか?」

ジャックが尋ね「そうだ、どんな事でも私は素直に聞く。」

あぁ、結局私は誰かの言いなりになる事しか知らないんだな。そう思いながらも、この礼だけは返さないと後悔する気がした。

ジャックは私の言葉を聞き「そうか、そういえば名前を聞いてなかったな 聞いていいか?」

「名前...私は元奴隷なので、本名は持ち合わせていない。好きな名前で呼んでくれて構わない」

「名前ないの?それは不便だね...じゃあ..そうだ!シュフィちゃんにしよ!シュフィちゃん!」

リリスはあっさりと私に名前を付けた。意外とアイデアは柔軟なのだろうか...

「では、今からお前にはホーリライ・シュフィと名乗ってもらう。そしてシュフィ、お前にはこのパーティの一員になってもらう。それでこの借りはチャラだ。それでいいか?」

パーティに入れ。

その言葉に私は少し迷いが生じた。

また裏切られないだろうか。その事が脳裏に浮かぶ。

でも、それでも礼だけは返したかった。

それほど、初対面の私にここまで接してくれたことが嬉しくてたまらなかった。

「分かりました、私はこれより、ホーリライ・シュフィとして、貴方達のパーティに加わります。以後、よろしくお願いします。」

これが、私の新しい生き方になるとは、この時の私は思っていなかった。

という事で..まぁ もう片方の作品と並行してやろうかなって(時間かかるのは確定してますけど)

自由にゆっくりやっていきますのでよろしくね〜

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