最終話 戦士見習いは戦士になる
* * *
「う、うう……」
それから目が覚めると、俺は学園の中に戻っていた
しかしそれは連れ戻されたという訳では無い。
レッドショルダーとして正式に卒業する事になったからだ。
周りからは「1年生の癖に」やら「学園長に色目でも使ったか?」と色々言われているようだが、知った事ではない。
むしろ何故こういう事になったか俺が知りたいくらいだ。
その翌日、学園正門の前で略式ながら卒業の儀式が行われた。
参加者は学園長と一部の講師、司祭、そして数人の生徒だけだ。
リュウは儀式には参加していない。先日のダメージが深刻な為、治癒室から出る事を許されなかったようだ。
話を聞くと、俺と一緒に卒業させてくれと学園長に懇願したそうだが、昨日の戦いでラオンに気に入られて、強制的に弟子にさせられたらしい。
これで最低でも1年間はここから出れないだろうが、生き残ってくれて良かったと心から思う。
おまけに1年も経過したら昨日の”アレ”も夢だったと忘れてくれるかもしれない。うん。それを心から願う。
まぁ、あいつの卒業式には参加して祝ってやることにしよう。リュウがいないとここから出る事は出来なかったのだから。
そう考えてたら、学園長が俺に話しかけてきた。
「さて、これでお主は外面上は自由の身じゃ。おめでとう」
……外面上は、ねぇ。
俺はそれに答えるように苦々しい顔を学園長に見せつけるが、それに構わず話を続ける。
「もし、ここに戻りたいと思ったらいつでも尋ねるがよい。わしはお前の才能と特異性を高く評価しているからの」
ま っ ぴ ら ご め ん だ
しかし、一つ気になった事があるから、最後に質問する事にした。
「学園長は、俺の何処をそこまで評価しているんですか?」
それを聞いて学園長は少しだけ真剣な表情を見せる。
「わしはな、今の戦士は”型”にはまり過ぎていると思っておる」
「型、ですか……?」
「そうじゃ。今の戦士は前衛に立つ為の耐久力と体力、そして攻撃力がとにかく大事だと信じこみ、それにだけ意識が集中している。ラオンやリュウみたいにな」
思ってもいなかった話に俺は驚いていた。
「もちろん、それが間違っているとは言わんしむしろ大事な事じゃ。しかし、パーティーのタイプや戦い方により戦士のあり方も変えていくべきじゃないか。そう思っておるのじゃ」
「……」
「そして、お主は他とは全く違うタイプの優秀な戦士じゃ。きっと柔軟性に富んだ万能型戦士となり、パーティーの中心的な存在になれる。わしはそう確信しておる」
そう言いながら、ダジマ学園長は俺から離れる。
「学園長……」
「それじゃ、またお主と会える日を楽しみにしておるぞ」
…
……
………
俺は今、昨日のロリータ服ではなく、レッドショルダーの正式防具を装備している。
急ごしらえの女性用らしいが、それを感じさせない高級感があり、そしてレッドショルダーの証である、血のような赤色に塗装された右肩のアーマーが存在感を見せつけている。
敵、そして時には自らの血で大地を赤く染めながら、鬼神の如く戦場を蹂躙する戦闘集団。それがレッドショルダーであり。呪われた戦士だ。
それが何故か単身で野に放たれる。しかもそれは史上初の女性であり、おまけに完成されていない半端モノだ。
これから俺がどんな事態、どんな運命に巻き込まれるかわからない。
しかし、絶対俺はリィアに負けない立派な戦士となり、この世界を平和にするために世界中を旅するのだ。
「そう。そして、いつかきっと、リィアを……!」
そう呟きながら女レッドショルダー
カイ・ラトルは力強く歩き出した。
----- つづく? -----
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