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冒険者としての準備

「よし、それじゃぁ行くか」


 そういうと、ラックは席から立ち上がりギルドの外へと歩き出した

 それを俺は、席から立ち上がることができずに眺めていた


 なんだったんだ、今の感覚


 カオス、初めて受けた感覚に戸惑っていた。

 カオスは、自分が今感じた感覚を言葉で表すことができなかった

 ただ、もし今の感覚を言葉で表すのなら


 運命に導かれた


 それが、ふさわしい


「?どうしたんだ?行こうぜ?」

「あ、あぁ」


 カオスが席から立ち上がっていないことに気づいたラックが戻ってきて声をかけたことで、ようやくカオスは席から立ち上がることができたが


「さて、どっちに行くか」

「……」


 今のは、なんだったんだ


 ギルドの外にでた後でも、カオスの今起こった現象に対する疑問は晴れなかった


 今のは、ラックのスキルによるものなのか?


 ラックに対する謎が急に深まっていた

 だが、


「まずは、武器じゃないか?」


 今は、考えないことにした


「武器か。確かにそうだな。といっても、武器なんてどこでも売ってる。どこの武器屋がいいとか、あるか?」

「いや、今日冒険者になったばかりだぞ?あるわけない」

「そうか、ならそんなときは」


 そう言いながら、ラックは今度は腰のあたりに手を伸ばし


「じゃじゃーん、ミラクルステッキ~」

「…木の棒?」


 子供がチャンバラごっこに使う程度の大きさの木の棒を取り出した


「まさかとは思うが、」

「まぁ、見てろって」


 そういうと、ラックは地面に対して木の棒を垂直に立てた。当然、気の棒はすぐさまぐらぐらと揺れ始め、そして、


 !また、この感覚だ


 再び、世界の時がゆっくりと流れるような感覚に襲われた


 カラン、カラン


 木の棒は軽い音を立てて倒れた。その指し示す先は、


「…街の外?」

「みたいだな。とりあえず行ってみるか」


 もう疑ったりはしない。これは、確実にラックのスキルで起こっていることだ


「そうだな」


 俺は、コイツのスキルで何が起こるのか、見てみたい




「なるほど、運命が指示した先はここか」


 棒が指示した方角へと歩いて行った俺たちは


「フリーマーケットか。なるほどな」


 フリーマーケット 正規の店でないから安全や性能は保証できないが、中には掘り出し物があり、また正規の店よりも安く買うことができるため、見る眼を持っている人間にとってはいい市場である


「ここなら武器だけじゃなくて、防具、魔道具、薬、魔法薬 冒険に必要な小道具がなんでもそろってる。まずは何から見るか」


 そう言いながらカオスがラックの方を向いたところ


「あれ?」


 そこにラックはいなかった


 アイツ、どこに行ったんだ?


 そう思って周囲を見渡すと、ラックはすでに露店を見始めていた

 なんの声もかけずに勝手に見始めたことに若干の不満を抱きつつ、ラックの方へと向かうと、商品を見るラックの顔が妙に真剣であり、それを不思議に思った俺はラックの後ろから覗き込んだ


「おい、なに見てんだよ」

「ん?これだよ」


 そう言ってラックが指さしたものは、ところどころ錆が目立つ、古びた短剣だった


「…これがどうしたんだ?」

「買おう」

「は?」「!なんだと!」


 ラックのその発言に、俺と、そしてなぜか店の店主までもが驚いていた


「おっちゃん、これいくらだ?


 そう言いながら財布に手を伸ばすラックの手を


「ちょっと待て」


 俺は止めた


「説明しろ。なんでそれを買おうって思ったんだ」

「俺の眼が言っている。これは運命だと。俺には分かる、これは見た目通りのものじゃない。これは、魔法武器だ」

「なんだと?」


 魔法武器 武器に特殊な材料からできた塗料で魔法文字を刻み込むことで、魔法の効果を半永久的に持たせた武器

 魔法の効果は、塗料に含まれる材料によって大きく変動する


「……分からん」


 これが魔法武器か?どっからどう見てもただの使えなくなった短剣だろ。それに


「もし魔法武器だったとしても、こんなに錆びてたら魔法の効果が凄くても使い物にならないだろ?使えて一回とかじゃないのか?」

「カオス、俺の幸運を信じろ。これは、そんな程度のものじゃないし、俺たちにはぴったりのものだ」

「……」

「なぁ、おっちゃん、それでこの短剣はいくらなんだ?」

「銅貨20枚だ」


 その言葉に、俺とラックは顔を見合わせた


 どっからどう見ても、もう使い道がないようなこの短剣に宿での宿泊1週間分の値段。明らかに高い。それに、


「なぁ、これは運命だとは思わないか?」

「ぐっ、」


 俺とラックの二人の持っている金を全部合わせて、ちょうど銅貨20枚なのだ


 本当にそんなことがあるのか?運命だと?馬鹿げてる、本当にそんなものがあると信じてもしガラクタでぼったくられただけだったらどうする

 そう考えながらラックの顔を見て


「……買うか」

「だよな!さすが相棒!分かってるぜ」


 俺は買うことに決めた

 そんな俺たちのやりとりを見ていた店主は


「ダッハッハッハ!」


 大きな声で笑いだした

 突然のことに思わず動揺していると


「そうかい!兄ちゃんたち!コイツを大切に使ってくれよ!」


 そういうと店主は、その場で短剣を鮮やかな動きでくるくると回しながら、魔力を流し込んだ

 すると、すぐさま短剣は店主の緑色の魔力に包まれ、次の瞬間には


 錆びや刃こぼれ一つない、純白の美しい短剣に生まれ変わっていた


「まさか、本当に」

「な、言ったろ?」

「いやー、まさか兄ちゃんたちみたいに若い子がコイツを見つけ出してくれるとはな」

「この短剣は、本当に魔法武器」

「そうだぜ。これには<浄化><修復><切断力向上>が付与されてる」

「!3つも!」


 普通、魔法武器に付与されている魔法の数は1つ、2つ付与しようと思ったらかなり高度な鍛冶スキルを持った人間でなくてはいかず、3つともなれば


「今から何十年も前の話だけどよ、俺は冒険者ランクの最上位 ベルテックス だった。俺はパーティー内では斥候、盗賊、暗殺者の3つの役割をやっててよ、最難関ダンジョン、死の迷宮を探索したときにコイツを手に入れたんだ。俺が冒険者を引退するまで何度も命を救ってくれた代物だ。きっと役に立つはずだぜ」

「なぜ、そんな代物をこんなところで」

「一般の場所で売ったら魔法武器のコレクターに買い取られて、ずっと飾られたままコイツが腐っちまう。それよりかは、ここで売ってコイツの良さに気づける人間が来るのを死ぬまで待つのもいいかと思ったんだ。ようやく商売のやり方も上手くなってきたってところで買っていきやがってまったく」

「す、すいません」

「謝るなよ。俺は嬉しいんだぜ。運命か、いいね、お前ら絶対にでっかくなれよ!じゃあな!」


 そう言い放つと同時に、店主は地面に向けて何かを投げつけた


 ボンッ!


 その何かは小さな爆発音とともに煙を発生させた。煙が晴れたころには、


「い、いない」


 店ごと店主の姿は見えなくなっていた


「……なんだったんだろうな。」

「これも運命の導きだ。ほら」


 そういうと、ラックは俺に短剣を渡してきた


「!俺が持つのか!?」

「もちろんだ。俺には近接戦闘の心得がないからな」

「いや、それは俺もなんだが。それに、」


 国宝級の代物を俺が持つなんて、いきなりすぎるし、


「なら、コイツで決めるか」


 結局、、


「よし、決まりだな」

「分かった」


 俺が持つことになった


「よし、そうと決まれば急いでギルドに戻るぞ!俺たちは一文無しだからな!稼がないと今日は野宿になっちまうぞ!」

「はいはい」


 俺たちはギルドに向かって歩き出した

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