超運命的な幸運がもたらす幸運の範囲
「今日の出来事は初めから繋がっていた」
倉庫で縛られていたダイ・ショーを救出したあと、俺たちは何度目かになるギルド長の部屋へと来ていた
何があったのか、何をしたのか、この街で何が起きているのか その全てを話すために
「お前たちが報告した地下下水路、調べてきたぞ。なんだアレは!あんなものがこの街の地下にいたと言うのか!」
俺たちが探索した地下下水路 あそこには魔物との戦闘を専門としている冒険者 アサルト の中でも特に上位層 プレデター の称号を持った冒険者複数人でも討伐がやっとな魔物 竜の亜種 メガトンクロコダイル がいたのだそうだ
初めから強大な魔物がいると分かっていたため被害は少なかったが、それでもアサルト、スキャナー合わせて10人近く死んだのだそうだ
「俺のスキルは俺たちに対する幸運全てに発動する。この街の謎を調べるという依頼を受けていたから、この街の謎を知ることができる幸運を引き寄せた」
ラックには、初めからこの結果が分かっていた
「幸運には大きく分けて2種類存在する。1つは偶然舞い込んでくる幸運。俺が今日の朝助けた執事。あれにあったのは完全に偶然だ。だが、助けたのは偶然じゃない」
「どういうことだ?」
「俺にはあの執事から大きな光が発せられているのが見えた。それで気になって声をかけた。これこそが、第2の幸運。自ら切り開いた幸運をものにする幸運だ」
ラックのスキルは、ラックに対する幸運の全てに反応する。直接的ではなくとも、ラックにとっての幸運に繋がるならば反応する
「方角を聞かれた時も、本来ならば他人に対して発動しない俺のスキルは発動した。その瞬間理解した。この他人すらも俺の幸運に結びついていると。実際そうだっただろ?この街でも強い権力を持つ人間との入れ替わり。長年支えていたやつらでも気づけなかったほど優れた擬態も俺の眼には無意味だった。もしあのまま街の重要な部分にまで入り込んでたら誰も手がつけられなかった」
「確かにそうだが、それなら」
「ん?」
「なぜ地下下水路の魔物は倒さなかった。お前の眼ではどちらも同程度の脅威だが、屋敷で倒した魔物の方がより凶悪で恐ろしいものだったんだろう。ならば、地下下水路の魔物も倒せたはずだ」
「そう言われても困るな。俺のスキルは攻撃スキルじゃないんだ。戦えと言われても」
「なら、屋敷の魔物はどつやって」
「奥の手だぜ?言うわけないだろ」
「む、」
「それに、アレは1日1度の本当に最後の手段なんだ。地下下水路の魔物に使ってたら俺たちは死んでいた。もしそうじゃなかったとしても、あの魔物を殺す機会は失っただろうな。警戒していなかったと言うのもあるが、すべては幸運な組み合わせによって導かれたものだ。絶対に外さないゼロ距離だったからこそ有効だった。さっきプレデターの連中を少し見たが、あれじゃあどう頑張っても無理なくらいには強かった」
「それも、お前のスキルで分かるのか」
「…」
「そうか 分かった。」
その日は、そのまま解散した
ラックは気になることがあると言って1人でどこかへと行ってしまった
1人で帰るというのは、少し寂しい感じがするな
今日俺たちはこの街を救った…んだよな
俺たちがなにもしなかったらどうなっていたかなんて想像つかないし、ほぼ全部ラックがやったからまるで実感は湧かない
でも、いいことをしたはずだ
明日も頑張ろう
…この街、終わったな
街を覆う黒い影が急激に強くなってる。アイツは、殺さないといけないけど、殺したらいけないヤツでもあったのか
こうなったら俺でもどうにもできないな
あーあ、この街、少し気に入り始めてたんだけどな
市場のあの子も、花屋のあの子も、雑貨屋のあの子も死ぬのか
最後だし、何か買ってくか
本当に残念だ
俺たちは活動拠点を変えることにした。これはラックからの提案で、この街、オリジンには俺たちが受けるような依頼はもうほとんどないから別の街へ行こうだとさ
異論はない 実際、この街で残っている依頼は上位層でないと受けられないものばかりだ。別の街なら俺でも受けられる適性レベルの依頼があるだろう
「どっちに進む?」
「俺たちの決め方と言えば、これだろう」
俺たちが進む道はどこへ向かうのか それは、この先に待ち受けている運命に直面するまでは分からない
「さすがに、街道から行かないか?」
「俺のスキルはこっちを刺しただけで、その方角なのか、それとも街なのか区別できない。つまり、」
「この森の中に何かあるかもしれない? はぁ、やだなぁ。俺、虫嫌いなんだよ」
カオスたちは道が舗装されているわけでもない、荒れ放題の森の中へと進んでいった
そのために、カオスたちがオリジンが壊滅したことを知ったのは3ヶ月も遅くなった