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2輪ノClover  作者: 奇柳 業
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6話:人は見かけによらない・・・・・・・・・・多分

今回は渉輝視点です。少しでも楽しんでいただけると幸いです。

 目の前に立つ男を見て、疑問は山ほどある。だがまずは一番の疑問からだ。


「お前。さっきの何だよ。」


脳内に文字から生み出された鎌や、踏んだ途端に文字に変わった身代わり人形が浮かんでくる。


 「ああ、あれか。あれは俺の技だよ。それとお前じゃなくて(アオイ)だ。櫻木葵(サクラギアオイ)。」


やっと名乗ってくれたか。でも答えになってねぇな。技なことくらい解るさ俺でも。


 「おい渉輝(ショウキ)無事か?」

 「ああ。何とかな。」


響也(ヒビヤ)が俺のところに来て、心配の言葉をかける。ありがてぇが少し照れくさいな。いやというより・・・


 「お前・・・どうしたんだその腕・・・」

 「嫌・・・俺もわからん。」


なんか響也の腕がバタフライナイフになってるんだが?どういうことだよ。


 「まあ聞きたいことは山ほどあるだろ。それに答えんのは俺なんかより適任がいる。着いて来い。」


そう言って、葵が歩き出したので俺たちもその後についていく。暫く歩くと、この寂れた街には似合わないような大きい建物が見えてきた。看板には・・・何だよこの文字。よくわかんねぇ古代文字みたいなのが書いてあった。


 「これは・・・」

 「まあ入れ。」


葵に促される。本当に大丈夫か?何かの罠とかじゃねぇの?少し心配になったので響也の方を見てみると、丁度葵のあとについていっているところだった。まああいつが大丈夫と判断したなら・・・そう思い、俺は扉をくぐった。




     ◇◇◇




 中は酒場のようなかんじで、昼間っから酒盛りをしている冒険者風の人や机に寝転がって昼寝してる人。依頼を受けてくれと頼み込んでる人もいる。しかし何より目を引くのは、カウンターの中にいる案内帽っぽいものにスーツを纏った、見るからにRPGの案内人らしき女性だった。


葵様だと盛り上がってるやつもいる。こいつそんなに人気なのかよ。・・・ちなみに当然響也のやつも腕があんなだから注目を集めていた。


 「葵様。こんにちは。本日はどのようなご要件ですか?」

 「ああ。こいつらをギルドに入れたい。」


ギルドだと?この世界にもあるのか。というかそれ俺たちに許可取ってないだろ。いやまあ断る理由も特にないんだが。


 「はい・・・葵様がおっしゃるなら大丈夫かとは思いますが・・・」


受付の方がこちらを勘ぐるような目で見る。


 「一つお二人に伺いたいのですが、ここは」

 「餓鬼が入りに来るような場所じゃない。金を稼ぎたいなら他を当たるんだな。最も、ただの餓鬼じゃなさそうだがな。」


受付の人の声を遮って、大声があたりに響く。それと同時に、受付の奥から体中に古傷がついた大男が出てきた。なんかちょっと冷や汗らしきものが見えるが、まああらかた響也の腕を見たからだろ。


 「ボス。お久しぶりです。」

 「そう固くなるなよ葵。ボスは肩書だけさ。実力は対等だろう?」

 「しかし一応ボスですから。」

 「はあ、やれやれ。これだから界渡人は堅苦しくていかん。」


葵と大男が親しげに話す。ボスとか言ってたしこいつがギルドのリーダーか?ごっつくて少しばかり怖いな。響也は・・・全然余裕そうな顔してやがる。


 「さてボス。こいつらギルドに入れちゃだめですかね?」

 「うむ・・・いくらお前の頼みでも駄目だ。」

 「なぜでしょうか。」


二人の会話に、響也が口を挟んだ。相変わらずこういうとこで臆さねぇなこいつ。会話挟んだら殴られそうだけどなー


 「何故かと問うか、まずお前いくつだ。まだ子供だろう。親御さんの許可は取ったのか?金が必要なら書類をだせばいくらかの支援は出る。だからこんな仕事は辞めるんだ。」


・・・それだけの言葉を大男は語った・・・一息で。普通にいい人じゃねぇかよ。


 「親はいないっすね。少なくともこの世界には。」


響也が答える。それを聴いた大男は顔をしかめて言った。


 「なんだ・・・お前も界渡人か・・・隣の坊主もか?」

 「そうです。」


話がこっちに飛んできた。いきなりだったし変な声になってねぇかな・・・


 「界渡人は面倒なんだよ。こっちの法律が適用しづらい。それにうちに来ないとお前ら魔王の部下になるしな・・・」


なーんか物騒なこと言ってるよ。というか界渡人ってなんだよ。まああらかたこっちの世界からきた人っぽいが・・・ってことは闇落ちした同郷の人がいんのかよ。ってことは知り合いも居るか?いや。いるわけ無いか。


 「ボス!新しい依頼です。」

 「何だと?」


依頼って言うのが気になったからちょっとそっちを見てみると、さっき別のカウンターで依頼をしていた男が、別の受付の人と共に来ていた。


 「おいお前ら。少し待ってくれ。」


大男は一度俺たちとの会話を中断し、依頼男との会話を始めた。


 「よく来た。まずは名乗れ。要件はそれからだ。」


男は、かすれた声で話し始めた。


 「分かりました。私の名はモモ=トッル。ここより少し離れた街のパラノイアという街から来ました。」

 「お前についてはわかった。依頼を話せ。」

 「はい。我らが街パラノイアを救ってほしいのです。」




     ◇◇◇




 その後もしばらく話は続いた。曰く、数週間前から街に病がはびこってしまい街が壊滅状態になってしまったという。可哀想に。だがまあ俺たちには関係ないのでごめんねー


 「よし。依頼は大体わかった。丁度うってつけの奴が居るからそいつに頼もう。」

 「本当ですか!?有難うございます!!案内は私にお任せください。」

 「おい坊主共。お前らギルドに入りたいんだろ?」


このタイミングで話振られるとかやーな予感しかしないよ。


 「特例として仮入団を認めてやる。正式に入団するかは・・・おいバロン!!仕事だ!!」

 「はいはいだんちょ〜お呼びですか〜い。」


再び響いた大声に呼応して、カウンターの奥からまた一人。今度は気怠げな若い男が出てきた。


 「こいつ・・・名はバロンだ。バロンに決めてもらう。せいぜいこいつが驚くような成果を出して見るんだな。こいつが許可を出せば認めてやる。」

 「ちょっと〜本人の許可無しで進めないでくださいよ〜ま。断る理由も無いんですけどね〜よろしくで〜す。」

 「宜しくおねがいします。」

 「よろしく。」


入団試験ってやつかい。クックック。好成績を残してあの大男驚かしてやる。


 どうやら俺たちに備わった力を測る便利なやつがあるらしく、バロンとともに案内される。ようやく異世界転生っぽくなってきたじゃねえか。


 「やっと。ってかんじだな渉輝。」


俺の心を読んだかのように響也が俺に話しかける。


 「全くだ!」


この世界に来て初めて、俺は心の底からの笑顔を見せた。俺の瞳に映る親友は一瞬驚いて、俺と同じような、或いはそれ以上の笑顔を見せた。




     ◇◇◇




 三人が離れたあと、葵が口を開いた。


 「いいんすか?ボス。あいつって結構優秀だったっすよね?」

 「ああ。だから間違ってもあの二人が死ぬことは無いだろう。」

 「いやそうじゃなくて・・・」


葵は少し困ったように頭をかく。

 

 「あいつらが仕事できるかってことっすよ。ほらあいついっつもすぐ一人でやっちまうから・・・」


大男は笑って答えた。

 

 「それが狙いだよ。あいつを見て、『まだ自分らは未熟だな。』と入団を思いとどまれば良し。伸びしろはありそうだから成長したらここ(ギルド)に置くとでも言えば力の使い方を間違えることはないだろ。」

 

ひとしきり笑ったあと、大男は急に真面目な顔になり静かに話し始めた。


 「ここは餓鬼が来るとこじゃない。餓鬼は大きくなるまで生きる義務がある。そしてそんな餓鬼を危険から守んのはオレたちの仕事さ。死んじまうのはオレたちクズの役目だ。オレたちみたいなのが生き残って餓鬼が死ぬ。そんな世界には死んでもさせねぇ。」

 「そっすね。餓鬼が死ぬ世界は・・・俺たちが阻止しないと。」


二人はどこか遠いところを見た。その目は明るすぎるなにかを見るような、少し自虐的な目をしていた。


しかしそれはそれとしてと葵は少し引っかかりを感じ、大男に一つ聞いた。

 

「それはそうとボス。俺もまだ17歳の餓鬼なんですが。」

 「ハッハッハ・・・安心しな!お前は立派なクズだぜ葵。」


大男は笑い飛ばした。

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