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2輪ノClover  作者: 奇柳 業
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5話:世の中上には上がある。

バレンタインにチョコがあるなんて幻想でした。チョコの代わりに少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 前回のあらすじ。ひょんなことから異世界に転生してしまった俺、響也(ヒビヤ)は、立ち寄った街で魔王軍の者レノンに会い、戦っているうちに腕がバタフライナイフになっちゃった・・・って訳わかんねぇよ。


バタフライナイフになってしまった両腕を使って数分。あらすじ風に現状を見てみる。もう半ばヤケだよねこれ。まあ何も成果がなかったわけじゃない。


 「放て。」


レノンが俺を囲む狐から火球を飛ばし、俺はすかさず武器と一体化した左腕を振るう。火球が両断される。どうやらこの左腕は、非物質しか切れないらしい。さっき地面にぶつけたらぶっ壊れた。まあ何故かすぐに直ったんだが。逆に右腕は物質しか切れないようだ。さっき炎を切ろうとしたらぶっ壊れた。


 まああと数秒で死ぬ!!みたいなピンチでは無いんだがかといって有利というわけでもないし距離は詰めれないしといった感じだ。どうしたもんかな・・・そうだ、渉輝(ショウキ)のやつはどうなっているだろう。俺はそう思い、渉輝に目線を向けた。




      ◇◇◇




 困ったもんだ。一応今の所アルゴスのやつの攻撃を防ぎ続けてはいるが、こっちからの決め手は全く無い。あの村人が介抱している旅人くんが目覚めれば少しは違うのかもしれんが・・・


 「消し飛べ、〈啄木鳥砲(ウッドペックキャノン)〉」


見た感じかなり強力そうな砲撃が放たれた。さっきから何がムカつくってこういう攻撃打つとき必ずあいつ俺の後ろに何もないようにして打つんだよ。舐めやがって。


 「無駄だぜ。」

 『〈生命録音(ライフレコーディング)〉』


おかげで全部受け止めざるをえない。お情けで避けるとかは症に合わないんでね。


 「にしてもここまで俺と戦ってられたやつは珍しいな。」


ふとアルゴスが口を開く。


 「お前見所ありそうだし俺のところに来ねぇか?稽古つけてやるよ。」


・・・何を言ってるんだこいつ。このタイミングで勧誘か?コイツ絶対空気読めねぇわ。飲み会絶対外されるタイプだわ。


 「何馬鹿なこと言ってんだ。俺はテメェらの仲間になる気はねぇよ。」


第一、魔王の手下になんぞ俺はなる気はないし世話になった旅人の敵に心を売るようなペラペラした奴でも無いんでね俺は。


 「そうだ、やめておけ。コイツはお前とは性質が合わんよ。」


?誰だ?唐突に声が聞こえた。アルゴスではない。レノンでも、もちろん響也の声でもない。どこかでは聴いたことがあったはずなんだが・・・


 「お前は・・・」


アルゴスが驚いた様子で言葉を紡ぐ。アルゴスも知っているのか?振り返ってみれば、その声の主はすぐに分かった。


 「そうか・・・(アオイ)とか言った餓鬼か・・・」


今倒れているはずの旅人だった。




     ◇◇◇




 その男、櫻木葵(サクラギアオイ)は考える。なぜこいつらは生きていられたのかと。確かに素体は良かった。資質もありそうだった。でも別れたとき、敵の気配にも気づいていないようだったのだから、戦闘には向いていないのだと思っていた。


 思い込みだったようだ。こいつらは適応力が常人より高いらしい。きっと元の世界ではー


 「あんた・・・気絶してんじゃ・・・」


さっきの奴・・・渉輝とか言ったか。が俺に声を掛ける。会話がちょっとめんどくさいから無視するか。


 「アルゴス。レノン。コイツはやられたが俺はコイツとは違うぜ。」


そう言いながら、俺は()()()()姿()()()()それを踏みつける。するとそれは『身代わり人形』と書かれた文字に変わる。


 「「「「!?」」」」


流石にこれにはアルゴスもレノンも、あと響也とか言ったやつも驚いたようだ。俺は上着の右ポケットから万年筆を取り出し、虚空に『鎌』と書く。俺の書いた文字は文字通り鎌に変わり、俺はそれを左手に持つ。


・・・やっぱ・・・俺にはこれの方があってるな。


 地面を蹴って、まずはアルゴスに接近する。


 「「速いッ!!」」

 「遅えよ。〈静寂ノ夜想曲(サイレントノクターン)〉」


アルゴスの左腕を目掛けて鎌を振り上げる。


 「〈霊魂狼(スピリットウルフ)(ロック)〉」


レノンが岩でできた狼をこっちに飛ばす。だが無駄だ。俺は右手の万年筆で再び虚空に『鎌』と書く。そしてそのまま左手で狼どもを切り払い、右手に具現化した鎌でアルゴスの左腕を切り飛ばす。


 「痛っえな・・・さっきは本気じゃなかったってかい。」


まだアルゴスには余裕があるようだ。根性のあるやつだ。最も、魔王の部下ならこれくらい当然なんだがな。レノンの方に目を向けると、何やら大規模な魔法陣が浮かんでいた。面倒くさそうだし二人にも協力を・・・と思ったが、あいつら村人連れて安全なとこに避難してやがる。図々しい奴め。


 「〈霊魂虎(スピリットタイガー)(サンダー)〉!!」


大型魔法陣から雷で出来た虎が召喚される。かなりデカいな。


 「〈残虐ナル交響曲(クルールシンフォニー)〉」


右手の鎌に回転をかけてアルゴスの右足に投げつけ、俺はレノンの方に駆け出す。そのままの勢いで左手の鎌を構える。


 「2回も喰らうかよ。」


流石にアルゴスはこれを避けたようだ。だがまあそれも想定内。回転をかけた鎌はカーブし、俺の目の前、雷の虎の前に現れる。一閃。虎が揺らぐ。その間を走り抜け、レノンの体に斬撃を放つ。


 「危ねぇレノン!!」


しかしアルゴスが物凄い速さでレノンをかばい、決定打は与えられなかった。厄介な奴め。

 

 「アルゴス。ここは少しばかり不利です。一度戻りましょう。」

 「おいおいレノン。アレ使えばこんぐらい・・・」

 「アルゴス。」

 「・・・わーったよ帰るよ。」


奴らの言葉が本当なら、今のところは一度引いてくれるみたいだ。


 「さて響也さん。あなたとの戦いは実に面白かった。いつかまた手合わせ願いますよ。」

 「OK。結果ははっきりしてる方が好きなんでね。」


 レノンの言葉に響也が答える。なんか余裕あんなこいつ。戦闘は防戦一方に見えたんだが、ブラフを貼る癖でもあるんだろうか。


 「おい渉輝。俺は戦闘放棄は嫌いだ。次は必ず決着を付ける。」

 「上等。次はお前に直接一発決めてやるぜ。」


アルゴスと渉輝もどこか通じ合ったようだ。全く。こいつら向上心だけはあるな。将来有能?かもしれんな。


 「〈帰省セシ鳩(リバーシングピジョン)〉」


アルゴスの背中に羽が生え、南の方へと飛び去っていった。これで一段落か。


 「おいお前!!生きてたのかよ!!」

 「ちょっと聞きたいことが山程あるんだが・・・いいか?」


・・・忘れてた。どうやらまだやることはあったようだ。早く帰って寝たい。


まあここで寝るわけにもいくまい。面倒だが、相手をしてやるとするか。


 「で?俺になんか用か?」


振り向いて彼らの目を見てみると、ほのかな期待の色が見えた。そりゃそうか。なにせこっちの世界に来たばかりなのだから。別に俺としてはさっさとこの街から逃げてみてもいいんだが・・・


 少し有望そうなこいつらの為に、俺は少しこの街で戯れてみることにした。

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