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2輪ノClover  作者: 奇柳 業
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4話:漢のロマンを喜べるのは時と場合による

 響也くん初の本格戦闘。見ての通り今回は響也視点です。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 響也(ヒビヤ)は奮戦していた。渉輝(ショウキ)がアルゴスと戦ってる間、延々と続くレノンの攻撃を防ぎ続けてきた。


 「〈霊魂狼(スピリットウルフ)(ウィンド)〉」

 「またこれかよ!」


 レノンが人差し指に中指を絡ませ印を結ぶ。すると風で作られた狼を指から召喚し俺のところへ飛ばす。


 「あらよっと。」


この狼は結構ヤバい追尾性能付きだから、ありえない角度で曲がってくる。というわけでおる程度引き付けてから本を押し当てるってことを続けているんだが・・・どうにも懸念が一つ。今の所全部本に吸収は出来ているんだが、吸収するたびに俺の脳内に〈SKILL STOCK〉と書かれた物が出てきてそれに映る数字が減っている。最初は100だったんだが今は84だ。0になったら吸収出来ないとか無いよね?


 「素晴らしい防御力です。アルゴスにも見せてやりたい。」


レノンが口を開き、俺に称賛を送る。俺はお世辞は嫌いで何となくそれが本心かどうか分かるが、どうやら心からそう思っているらしい。ありがたいことだね。


 「そりゃ光栄だ。あんたこそ素晴らしい冷静さだよ。渉輝のやつにも見せてやりたい。」

 「お互い相棒に苦労しますね響也さん。」

 「全くだよ。」


どうやらこいつも苦労人らしい。他人の気がしないなぁ・・・


 「さて、あなたともっと喋っていたいのですが仕事はしないといけません。そろそろ気絶してもらいますよ。」

 「気絶?命は取らないのかい?」

 「当然です。無益な殺生は我が主マモン様が何より嫌うものですから。」


以外だ。俺のイメージする魔王のイメージとしては気まぐれで殺戮を行うようなものだった。やれやれ、先入観とは怖いものだ。


 「それでは行きますよ、〈霊魂狐(スピリットフォックス)(フレア)〉」


今度は先程とは違い中指、薬指、親指を合わせ手で狐のような形を作る。ここに来て別の種類か。なれてきた頃に変化してくるのがやっぱ迷惑だ。


 さっきの狼は印を結んだ指から出てきたからまた手から出てくるのだろう。そう思ってレノンの手に集中すると、左右に炎の狐のような物が六匹出てきていた。すぐこっちに突撃してくるということでは無いようだ。


 「囲みなさい。」


レノンの掛け声とともに、狐が俺を囲おうと円形に広がりだす。これはまずい。俺の今持つ対処能力では一方向が限界だ。全方位からの攻撃には対応できねぇ。こうなりゃ一匹本に入れてそのまま抜ける!!


 「うおぉぉぉぉぉッ!!」


足に力を込める。なんとか抜けないと最悪焼死体だ。しかし狐どもは小賢しくもそれぞれが俺と一定の距離を保ち接近を許さない。その上だんだん大きくなってきやがる。せめて・・・せめてもっと何か武器があれば・・・


そう強く願うと、何故かその願いは顕現した。あまり期待できない形で。




     ◇◇◇




 「また・・・お前かよ・・・。」


俺の願いによって生まれたもの。それはちょっと前のオーク戦で無様にぶっ壊れた俺のバタフライナイフだった。もっと無いのかよ強い武器は!!


 「武器を創造した!?」


レノンが少し驚いた顔をした。俺がそういう特殊能力を持っているとでも勘違いしたのだろうか。その期待に答えられない自己嫌悪と武器への失望で自然と手に力が入る。


 『バキッ』

 「!?」


また折れたよ。引きこもり高校生の握力で壊れる武器って何なんだよ。


 「痛って・・・」


握りつぶしたことにより出てきた破片が腕に突き刺さる。勘弁してくれよ。ってなんだこりゃ!?


 「離れろっ、まとわりつくんじゃねぇ!」


壊れた破片が、俺の両腕をめがけて次々と飛んでくる。冗談じゃないぜ。慌てて駆けるスピードを上げるが、容赦なく破片はついてくる。


 「何やらよくわかりませんが・・・喰らいなさい。」


俺の周りを取り囲んでいた狐たちが、その大きさに見合う火球を俺に向けてきたことで俺の動きは止まった。その空きに破片がすべて腕に突き刺さり、痛みに声を上げる。踏んだり蹴ったりとはこのことだ。


 「こうなったら・・・」


仕方がないので多少の傷は承知で正面の炎を吸収し突っ切ろうと本に手を当てて違和感に気づく。()()()()()()()()()()()。掴めない。どういうことだ?


 「糞っ・・・何だってんだよ!!」


まるで他人のものになったように感じた腕がひどく気味悪くなって、左腕を振るう。一振り、二振り、三振り・・違和感は消えない。四振り目。振りかぶってから気づいた。目の前に火球が来ている。もう体制は変えられない。俺は自分の腕が炎の中に突っ込むのを、無い指を咥えて見ているしかなかった。


 空間が歪んだ。正確には、俺の周りの炎が歪んだ。まるで何かに切られたかのように。俺を囲む炎が上下に両断されてゆく。斬撃か?何にせよ運命はまだ俺を殺す気は無いようだ。だが一体どうして?


少し冷静になってくると、その答えはすぐに分かった。


「俺の・・・腕が・・・」


俺の腕がバタフライナイフになっていた。比喩とかじゃなく、そのまんまの意味で。どういうことだよこれ。俺の両手は何も言わず、不気味に光っていた。







 さてどうなる響也の腕。

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