35話:光の速度で・・・
皆さんこんにちは。最近新しい前書きを考えている奇柳業です。今回はフラニック主役回。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「ジロコウも十秒はもつっしょ!」
「貴様ッ・・・」
残虐な光が降り注いでいた。残酷と言ってもいい。フラニックは格闘家ではあるが、その戦い方は一般の格闘家とは程遠い。フラニックのもつスキルは〈韋駄天〉。このスキルは高速移動を可能にするスキルだ。フラニックはそれを利用したスピード感のある攻撃を得意としている。ジロコウは今や防戦一方。そもそもフラニックを目で追えてすらもいない。だが、ジロコウは負けるわけにはいかなかった。弟子たち・・・フラニックに殺された自分の弟子たちのためにも。
「調子に乗るな!!〈被甲拳ー穿山甲〉!」
ここでジロコウが反撃に出る。自身の皮膚の硬質化、その上皮膚を逆立て、殴られても逆にフラニックが傷つくように鋭利な形にした。これで迂闊に攻撃はできない。そう、ジロコウは考えていた。
「甘いんだよな〜オレが技使うまでもないか。」
「クッ・・・何故だ・・・!!」
皮膚による針はほとんど隙間なく配置した。かなりの密度な上、先程殴られた感覚からジロコウはフラニックの拳の大きさなど把握済み。当然対策を立てていた。だが、相手が悪かった。どれだけ無数に皮膚を配置しても、フラニックは針の穴を通すような正確さでジロコウ本体を殴りつけてくる。そのことはジロコウに疑問を与えた。
(そんなバカな・・・何故俺の本体を殴れる・・・俺の流派『被甲拳』は皮膚を硬質化させ、本体とは切り離し鎧のように纏う流派・・・体の再生力に恵まれた俺はその一番の後継者と呼ばれていたはずなのに・・・)
そう、従来の被甲拳は皮膚を硬質化させて体に纏うという流派。一度使えば皮膚が元に戻るまで使えない。だが、ジロコウは生まれつき再生力に恵まれ、被甲拳で使った皮膚も一瞬のうちに元通り。その特性を活かし、今も新しい鎧を何重にも纏い続けている。なのにだ。フラニックは常人ではありえないような動きで鎧の隙間を縫って攻撃してくる。
「馬鹿な・・・なぜそのように速く正確に俺の・・・それではまるで・・・ッ!!」
「へぇ・・・察しいいじゃん。冥土の土産に教えてやるよ。オレのスキル『韋駄天』はただ足が早くなるだけのスキルじゃねぇ。こいつの真髄は光化さ。」
「光化だと?」
「さあお喋りは終わりだ!締めに行くぜ!」
光の乱舞がジロコウを襲う。どれだけ皮膚を厚く重ねても、ほんの少しでも隙間があればそこを縫うように光が走り、重い一撃を加える。何度も。何度も。
「〈被甲拳ー犰狳〉」
さすがにこのままでは不味いと思ったのか、ジロコウは皮膚を集め、自分を中心に皮膚でできた球体を作った。
(仕方ない。最終手段だ。これはあんまり好きじゃないから使いたくなかったんだが・・・今はそんなこと言えたもんじゃない。とにかく今は皮膚を集めよう。一斉に放出すればいくら素早いアイツでも避けきれまい・・・)
ゴスッ、バキッ・・・ドゴッ
(何だ・・・?この音は)
不快な音。ジロコウが音のする場所を探してみれば、ドゴバキと不快な音を立てながら震えている自分が作った球体があった。
(まさか・・・まさかこれを壊すつもりか!?俺の皮膚は鉄塊よりも・・・)
この鎧が壊れるはずがないという思いは、ベコッとひしゃげた皮膚の鎧を見て消えた。それならばとジロコウは皮膚を集める。
(かかってこい!!どんな達人でも攻撃の後には必ず空きが生まれる!この鎧が破壊された瞬間お前の体を貫いてやる!!)
鋭利な皮膚を砲台のように配置し、集中力を高める。そして、時は来た。
「よっしゃ崩した!」
「喰らえ!!〈被甲斉射〉!!」
「だーかーらー話聞けって。」
フラニックの拳が鎧を貫いた瞬間、ジロコウは皮膚をフラニックに一斉掃射した。そしてそれらの狙いは過たずフラニックを目掛けて進み、すり抜けた。
「なっ・・・」
「はい遅い。」
その光景にジロコウが驚いたスキに、フラニックが距離を詰め、手刀でジロコウの首を切り落とす。
「・・・なっ・・・なぜ・・・」
「さっきも言ったしょ。オレの力の真髄は光化だって。」
まあつまりだ。と、フラニックは言葉を続ける。
「お前程度じゃ光にゃ届かないぜ。」
もう言葉を発することもできなくなったジロコウをフラニックは掴み、弟子たちの元へ送ってやった。
死体の山はまた少し盛り上がった。




