34話:切り刻むこと嵐の如し
皆さんこんにちは。奇柳業です。今回は三人称視点。というかしばらく三人称視点になりそう。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「〈月輪ノ輪舞曲〉」
「〈蟷螂之斧〉!」
葵が放った魔力弾が、イムバシズの手刀によって切り飛ばされる。
「そればっかりだなぁ・・・少しは近づいてこいよぉ・・・」
「お断りだ。」
葵は右手に万年筆を持ち、虚空に「拳銃」と書き具現化させる。葵の持つ万年筆、『運命書紀』は、虚空に文字を書くことができ、書いたものを具現化することができる。しかし、それにはいくつか条件がある。まず第一に、そのものの設計図を頭に思い浮かべること。次に、漢字を一部使わなくてはならないこと(当て字はだめ。夜露死苦とかね)最後に、具現化する時間を決めること(具現化時間に反比例して耐久力が下がる)
「喰らえ。」
拳銃を連射しながら葵は距離を詰める。この拳銃を出す時間は15秒。それ相応の威力が保証される。
「こいつは喰らえねぇ・・・仕方ねぇ・・・こっちからいくぜぇ・・・〈蜂房衰禍〉」
イムバシズの腕がスズメバチの針のように変化していく。それも蜂なんかよりも鋭利に。が、構わず葵は前進を続ける。
「喰らえぇぇッ!」
「〈静寂ノ夜想曲〉」
イムバシズがその腕で葵を突こうと動いたのと、葵が一瞬で距離を詰め、鎌を振り上げたのは同時だった。互いの獲物がぶつかり合い、一瞬だけ拮抗したが、勝ったのは葵の鎌だった。腕を弾き飛ばされ、体制を崩した
イムバシズの胸に追撃とばかりに葵は銃弾を撃ち込む。六発ほど撃ったところで、時間が来て銃は消え去った。
「痛ってぇなぁ・・・」
イムバシズが悪態をつくが、お構いなしに葵は再び、走り出す。そのまま虚空に「鎌」と書き、右手に持つ。
さらに虚空に「分身」と書き記し、両腕に鎌を持った自らの分身を作り出した。
「〈二重ノ諧謔曲〉」
「〈有穀象無〉!!」
嵐のような連撃。代わる代わる攻撃する葵は、イムバシズに反撃のすきを与えない。しかし、イムバシズも皮膚を硬化させ守りの姿勢を取り、攻撃を通さない。そんな攻防が続いていたが、その均衡は葵の分身が時間を迎えたことで終演を迎えた。いきなり消えた分身。一瞬だけ生まれた空白。そこをイムバシズは見逃さなかった。
「見えたぜぇ・・・〈炎蟲儀氷〉!!」
イムバシズの右腕からは炎が。左腕からは氷が。葵めがけて殺到する。だが、葵は慌てることなく鎌で氷と炎を切り裂くと、ステップを踏んで距離を取った。
「やっぱ先輩方みたいにはいかないか・・・」
「何の話だぁ・・・?」
「こっちの話だ。もう終わらせる。」
そう言うと、葵は両手の鎌を捨て踏み潰した。イムバシズが怪訝な顔をする。そのままさらさらと虚空に書いた文字は「大鎌」その文字は形をなし、軽く3メートルほどはある巨大な鎌に変貌した。葵はその鎌を構え、固まった。
「ッ!!〈有穀象無〉!!」
「〈破滅ノ葬送行進曲〉」
危険を察知し、イムバシズが皮膚を硬化させる。だが、無駄だった。一瞬で距離を詰められ、大鎌が振るわれる。そのスピードは凄まじく、物凄い衝撃波を伴いイムバシズを襲った。
一刀両断。イムバシズは、自分の目で自分の泣き別れになった上半身と下半身を見た。
だが、まだいける。虫の生命力を持つ自分ならまだ逆転の可能性がある。そう考え、技を使おうとしたその瞬間。イムバシズの意識は消えた。
一切の容赦もなく、葵はイムバシズを更に半分にした。今度は頭から。脳を断ち、足を断ち、腕を断ち。あらゆる可能性を考慮し、確実な死を確認するまで葵の攻撃は止まらない。結界の中の血の嵐と声になれない叫びは、まだまだ当分終わる様子はなさそうだ。




