23話:試験の合否と副産物
皆さんこんにちは。奇柳業です。今回は響也視点となっています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「まったく。今の技は何だ?あんな隠し玉があったなんてな。」
地面に半分埋まったまま、ルナが俺に気さくに話しかける。さっきの俺の技〈空瞬の獄〉は、魔力による瞬間跳躍を任意の回数行う技だ。当然ナイフを構えておけば瞬間跳躍による加速のおかげで攻撃できる。しかしまだ俺自身その速さに慣れておらず、どこまで進んでどこで方向転換するかだけ決めたら終わるまで何も出来ないんだけどね。ナイフも初期の構えから動かせないし。いつかここをどうにかしたらもっと実用性が高まると思ってる。
「まあ企業秘密。それで?俺は合格かい?」
「基礎体力、反射神経、魔力の使い方。どれもまあまあだ。多分これからもっと良くなる。そして何よりあの呪怨龍とそこまで心を通わせた手腕。文句なんて無い。合格だよ。この俺、ノズリフ・ルナの名において。響也。お前を竜戦士と認める!」
「やったなネクロ!」
「ピュイピュイ!」
目標達成。これで今日から一応は竜戦士だ。しかし・・・
「それじゃあこいつの飼い方を教えてくれよ。それがここに来た理由なんだしさ。」
「ああはいはい了解。ちょっと待てよ今呪い解くから。セイド!」
そうルナが叫ぶと、ルナの体から白銀の体の神々しい竜が飛び出してきた。ちょっとバロンに似てるかもしれない。セイドとかいう竜がルナの上に立つと、神々しい光を放った。ルナの近くにいた俺たちにも当然当たる。ちょっとネクロが不機嫌そうな声を上げたが、特に痛みなどはなかった。
「やっと動くようになった。ありがとな、セイド。それにしてもどんな呪いだよこれ。セイドでもこんなにかかっちまった。」
解呪の光だったのか。そりゃネクロも顔をしかめるわ。にしても数秒。今の俺達の最高純度の呪いだったんだけどな・・・
「さってついてきな。お望みの情報を紹介するよ。」
◇◇◇
またまたルナに連れられて。やってきたのは里の中の青果店。俺こういう雰囲気大好きなんだよね。
「おっさん!居るか!」
「こんな年寄を労らねぇような呼び出し方をするのは・・・ルナだな!何の用だ!」
大声でルナが呼びかけると、それに負けないようなごっつい声の筋骨隆々のおっさんが出てきた・・・ってちょっと待て。遠くからやってきてるから気づかなかったけどなんか俺の身長の2倍くらいあった。デカ過ぎんだろ・・・
「新しい竜戦士だ。あれをくれよ。」
しかしそんなことは気にせず、ルナはおっさんに話し続けた。
「まさかお前が試練をしたのか?よく生きてたな坊主。名前は何だ?」
「響也です。よろしく。」
会話しながらおっさんは店の中をゴソゴソと漁っている。そしてしばらくすると一冊の本を持ってこちらに近づいてきた。えーっとタイトルは・・・
「『竜使いの書』駆け出し竜戦士の必需品だ。大事にしろよ。」
「ありがとうございます!そんで・・・いくらですか?」
「タダでいいさ。新たな竜戦士の誕生祝いだ。」
なんていい人なんだろう。感動しちゃったね。ここは素直にご厚意に甘えることにして、『竜使いの書』を手に取る。すると、俺の手に触れた瞬間輝き出した。あら綺麗。こんなに凝ってるのねこの本。
「あ!?何だこれ!?」
「これは・・・?」
と、思ったんだがどうやら違うらしい。あれ?これってもしかして異常事態?ヤバいね。腰が熱い。
いや変な意味じゃなくてね?なんか物理的に熱いっていうかなんか光ってるっていうか・・・おいちょっと待て何だこれ。俺の腰のあたりが光って熱いんだが。
「うお!?」
光の玉が俺の腰から分離する。そして、受け取った『竜使いの書』に近づいて融合を始めた。よく見るとその光の塊は本のように見えた。
あーあれか。そういえば存在自体忘れかけていてほぼ装飾品扱いになってるが俺は転生特典?で本ももらっていたんだった。それが何故か融合を始めた。あ、光が収まった。
「『真竜大全』?何だこりゃ。」
光が収まったとき、そこにあったのは『竜使いの書』でも『森羅万象書庫』でもなく、『真竜大全』と書かれた国語辞典くらいの大きさの本だった。
「ああ・・・お前さん『本』持ちか。『図書館』の出か?」
「『図書館』?」
様子を見ていたおっさんが俺によくわからないことを言う。何だ『図書館』って。いや図書館は知ってるんだけどね。というかむしろ元の世界では基本そこにいたもん。
「なんだ知らないのか?ってことは界渡人か。まあいい。教えてやるよ。」
曰く、図書館というのは魔導書から絵本まで、幅広いジャンルの本を期限付きで誰にでも貸し出している施設だそうな。全品無料らしい。聞けば聞くほど俺の知ってる図書館だ。ちなみに。期限を守らないと殴り込みが行われ、本と金品が回収されるという。結構アグレッシブなのね。
「まあ今度行ってみるといい。多分お前は気にいると思うぜ。」
「ありがとうございました!」
「んじゃまたな。おっさん。」
◇◇◇
青果店を出てしばらく歩き、人気のない広場へと辿り着いた。
「さて。その本のことちょっと教えてくれよ。」
ルナが、『真竜大全』を指さしながらそう問いかける。そういやまだ俺も詳しく見ていなかったな。どれ。見てみるとしよう。
『真竜大全・・・心を通わせた竜を収納し、情報を得ることができる。竜は自由に出入りできる。』
竜を収納?どういうことだ。そう思っていると、ネクロはこれを理解したのか『本を開いて』と念話を送ってきた。言われたとおりにする。
「ピュイ!」
すると、ネクロは開いた本に近づき、そのまま入り込んだ。まるで本の中に無限の空間でもあるように。
「すげぇ入った!何だこりゃ。」
ルナが驚く。一度本を閉じてまた開くと、そこには呪怨龍についてのことが載っていた。
「ピュ?」
いきなり本の間からネクロの顔だけ飛び出した。だんだん混乱してくる。やれやれ。また考えることが多くなりそうだ。
そろそろ渉輝もださないとな・・・




