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2輪ノClover  作者: 奇柳 業
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1話:新たな世界

 今回は主に響也視点となっています。文章等拙いところがあればすいません。少しでも楽しんでもらえると幸いです。

 異世界転生。それはオタクなら誰でも一度は憧れたことがあるだろう。いつもは家で引きこもってゲームをしている様なやつでも、偶然外出した時に交差点でトラックかなんかに轢かれそうになっている見知らぬ人を助け、それが評価されて異世界に転生したり。あるいは神様からは見放されたけれど、現地の人外ケモ耳っ子たちにモテモテになってキャッキャウフフの毎日を送ったり。


 その気持ちはわかる。よーくわかる。だって俺も数時間前まではそうだったもん。普通の異世界転生に憧れる一般オタクだったもん。ただ理想と現実が違うのは世の常だ。今から君たちに僕たちの異世界転生体験談を語ってあげよう。


 まず死亡原因から上げていこう。俺たちの死亡原因は・・・・・・何と!!ぶっちゃけた話神からの言いがかりでーす。ワー、ナンダッテー?カミカラノイイガカリダッテー?いやマジで。いきなり「世界の役に立ってない」とか「生きる価値ない」とか言われて飛ばされたんだけどこの異世界に。


 ただな、一つだけ俺自身驚いていることがあるんだ。それはなぁ・・・ケモ耳っ子に今追いかけられているんだ!!「え?自慢かよ」と思ったそこのお前。まだ話は終わってないぜ。確かにケモ耳なんだよ。女性もいると思うんだよ。()()()()()だがなぁ!!


 なんとびっくり転生先がまさかのオークの食卓の上だったのだよ。そしてそのまま一緒に転生した涉輝(ショウキ)と二人仲良く晩餐会に真っ逆さま。怒ったオークから拳のプレゼントを貰い、追撃を加えようとオークどもは二人を追いかけ始めましたとさ。


 ・・・・・これが異世界転生です。もう一度言います。これが異世界転生です。運良くあった岩の窪みに、二人で隠れながらこんなことを考えます。ああ、こんなはずではなかったんだけどなぁ。



     ◇◇◇



 「あーこうしちゃいられねぇ!あのオークどもどうにかしないと何も出来ねぇぞ!!」


 とりあえず何かいい案ないかと隣の涉輝に愚痴る。それから暫く二人で考えていたが、特にいい案は浮かばなかった。


 「そうだ、こっちに来る前に持ってた武器はあるか?あれがあれば少しは戦えるかもしれん。」

 「その手があったか!」


渉輝の提案で、お互い武器がないか体を調べる。すると、俺の腰には本が、渉輝の腰にはCDの入った腰袋がそれぞれあった。


 「俺バタフライナイフも持ってたはずなんだけどな・・・」

 「あの神がまともに用意している訳ねぇだろ。俺も闘気ないしな。」


 本当にどうやって本とCDで化け物を倒せるのだろうか。全くわからない。せめて武器と思える武器が欲しい・・・


 「バタフライナイフよ表れろ!!」


俺は諦め悪くダメ元で叫んでみる。そんな奇行に走るほど俺は切羽詰まっており、同時にバタフライナイフのかっこよさに痺れていた。


 「おろ?出てきたぞ?」

 「ファ!?マジ?」


なんとびっくり〈十字刃ノ片割レ・左(ツヴァイセイバー)〉と表示されたナイフと〈十字刃ノ片割レ・右〉(ツヴァイカッター)と表示されたナイフが俺の手にそれぞれ現れたのだ。

 

 「これで戦える!!俺がなんとか奴らのすきを突くからそこでひるませて逃げよう」

 「わかった。気ぃつけろよ」


武器を持って調子に乗った俺は渉輝に指示を出し、オークの方を向いた。見ると指揮官らしい他のオークよりも少し大きいオークがいたため、そいつの死角に少しづつ移動する。指揮官を傷つければ一瞬動きは止まるだろう。(喰らえ!!)そう心の中で叫び、指揮官オークに斬りかかる。さあ、覚悟しろ!!



     ◇◇◇



 幸いにもオークの動きは突進力はあっても精密な動きには向かないようで、まだ俺の動きには気づいていない。タイミングを測り、袈裟斬りの要領で両手で切りつける。え?何で袈裟斬りなんて出来るのかって?そんなもんいざという時のため(脳内シュミレーション)に決まってるだろ。二つの刃はオークの首を捉え、音を立てて・・・


 『バキッ』

 「「・・・・え?」」


折れた。


 「おっ・・・折れたぁ!?どんだけ耐久力無いんだよ!!」


 あのクソ神とことん小根が腐ってやがる。ってそんなこと言ってる場合じゃない。折れたことには折れたが一応当たったのだ。完全に気づかれた。


 「響也危ない!」


切り掛かったオークから棍棒の反撃が来る。不味い。俺は切り掛かった体勢のままだしまともに回避も出来ねぇしあんなもん喰らったら確実に致命傷だ。何か・・・何かないか!?何でもいいから奴の攻撃を防げるものが・・・・


 「ああもうこれでいいや!!」

 「え?お前それ・・・」


半ばやけくそになってとりあえず腰にあった本を開いて棍棒と俺の間に割り込ませる。俺が大勢を整えるまで少しは持ってくれよ・・・


 その時、驚くべき事が起こった。俺の本に触れたオークが、棍棒ごと本に吸い込まれたのだ。


 「「「!?」」」


 これにはオークがだけでなく俺たちも目を丸くした。え?何?この本こんなマジックアイテムなの?チート武器だったの?少しは役に立つのかあのクソ神。これで行けるか?・・・・・と思ったのもつかの間。仲間が消えて怒り狂ったオークに気づけば囲まれていた。あ、終わった。


 「響也待ってろ!今行く!」


渉輝が焦った様子でCD両手に駆けてくる。やめとけって。お前も巻き添えになっちまう。


 「逃げろ渉輝。俺のことは気にせずに。俺みたいな奴を失ったとしても悲しむな。お前にはもっと良い奴が見つかる。」


 静かに、されど確かに届くように俺は言葉を紡ぐ。俺の言葉を聞いた渉輝が呆然と突っ立ている。全く。なんて間抜けな表情をしてるんだ。今にも泣きそうじゃねぇか。まあただ・・・転生早々アイツを置いて逝っちまうのは悔しいな。あのクソ神にも復讐してやりてぇし。まあ実力不足なのだからしょうがない。俺は静かに目を閉じた。



     ◇◇◇



 あの馬鹿・・・何考えてやがる。いっつも諦め悪いのに無駄なところだけ潔いんだから。何が逃げろだ。何が悲しむなだ。出来るわけねえだろそんなこと。親友(ダチ)なのによ。


思いが決まった俺の体はさっきまでとは別人の体のように動いた。正直なとここの貧弱そうなCDではダメージは期待できないが、少しでも注意を反らせれば行幸だ。俺は再び駆け出した。


 「待ち給え。」


不意に響いたその声に、俺の動きは止まり、響也の閉じていた目さえも開かれた。そのくらい不自然にその声は響いたのだ。そして間髪入れず、俺の頭上を人影が通り過ぎる。


 それが俺たちを救う救世主なのか、それとも俺たちをさらなる絶望に叩き落とす悪魔なのか。それは今の俺達にはまだ分からないことであり、俺に出来ることは少しでもそいつを注意深く見ることだけだ。



     ◇◇◇



 誰だ?それが俺が声が聞こえた時に最初に思ったことである。オークと戦っていたとき、周りに人影は見当たらなかったし、オークは言葉を発せないようだった。つまり今の声の主は相当の隠密術の使い手か、または恐ろしい視力、身体能力の持ち主ということになる。しかし隠密術の使い手のような者なら、わざわざ声を発したりしないだろうし、後者ということになる。

    

オークの増援だろうか。それなら俺の死は確実だ。もしも俺たちを助けに来てくれたのならこの上なく心強いが・・・


 「破壊ノ円舞曲(デストロイワルツ)


彼はそう呟くと、片手で持っていた鎌を両手で持ち、空中で回転を始めた。すると異変が起こった。オーク共が急に地面に四つん這いになり、近くのものにしがみつき始めたのだ。そして一匹、また一匹と空中へ浮かび、鎌の方へ吸い寄せられていく。さらに鎌に触れたオークからどんどん切り裂かれて行く。


 不思議だ。それを真下で見ている俺にはオークの血液が雨のように降ってきて、お世辞にも綺麗とは言えないが、なぜだかそれを美しく感じた。その後彼は回転したまま高度を下げ、最後まで影に隠れて耐えていたオークの首を切り落とすと、俺の方を向いて言った。


 「大丈夫か?」


 ・・・どうやら地獄に仏という言葉は本当らしい。


 さて、二人を救った人の正体とは・・・

ここまで読んでいただきありがとうございました。よいクリスマスを!!

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