18話:恋じゃなくても結構人って盲目になる
皆さんこんにちは。奇柳業です。今回は視点が渉輝→響也ってかんじで変わります。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
降りてきた神獣は俺達とズミーラたちの間に入ると、勇ましい咆哮を上げ、ネズミ共を切り裂き始めた。
「クソッ何だあいつ・・・」
「お前ら、拡散して同時攻撃しろ!」
ズミーラとトッルも指示を出しなんとか今の状況を凌ごうとするが、そんな軽い策はすべて神獣の牙に喰い裂かれ、鉤爪に引き裂かれていった。
「強い・・・」
響也が一人呟く。俺も同意見だ。俺との特訓の時はどうやら全く本気じゃなかったみたいだ。っと。いつの間にか響也の腕が元に戻ってる。制御できるようになったんだな。
「「やれやれ。とんだ貧乏くじだぜ。この街の管理簡単な仕事だと思ってたんだけどな。」」
ズミーラとトッルが、諦めた様子で肩をすくめ、自虐的な笑みを浮かべる。
「ヴァォォォォルァァァァ!!」
そのまま二人は、神獣の爪に首元を引き裂かれ、倒れた。そのあまりにも一方的な光景は、この世界に来てから見た何よりも美しかった。
◇◇◇
神獣の体が縮みだした。爪は短くなり、仮面も薄れていく。そして神獣は、バロンへと戻った。
「まずは〜お疲れ様〜頑張ったね〜二人共。」
先程までの荒々しい戦いぶりとはうってかわって、いつもののんびりした態度に戻ったバロンが俺たちに労いの言葉をかける。
「あなた・・・回復術師じゃなかったんですか?」
「いや〜回復術師だよ〜ちょっと動けるだけのね。」
響也は驚いているようだ。無理もない。だって俺さっきから驚きすぎて声出ねぇもん。顔色一つ動かせんわ。
「そういえば、呪怨龍は?」
「あーあれね〜ついておいで。」
バロンに連れられて向かった先には、傷跡まみれの無様な呪怨龍の姿があった。すこし同情する。そんなことを思っていると、響也が呪怨龍の死体の中に踏み入っていった。
「響也くん?」
「なにか・・・ここらへんにあるような・・・」
「墓荒らしかよ・・・」
全く。使えるものは何でも使うってのはいいが、だからって死体を漁るかねぇ。魍魎じゃないんだから。
「まだ呪いが残ってるかもしれないから〜早く戻ってよ〜。」
なんてバロンが呼びかけてはいるが、完璧に無視して漁り続けている。やれやれ。
「おおっ!!」
不意に響也が叫び、両手を上げる。その手には、丸型のような何かが握られていた。
◇◇◇
丸いそれを手にした俺は、渉輝とバロンのもとへ向かった。手の中のこれが何なのか。何となく分かる。
「見てくれ。これ卵じゃないか?呪怨龍の。」
俺は二人に卵を見せる。多分満面の笑みだったと思う。なんか渉輝が「なんでこんな禍々しいもの拾ってくるかな・・・」って呟いているような気がするが気のせいだろう。
「離れてて。力を付ける前に処分しよう。」
っておい!なんかバロンが力をため始めているんだが!?慌ててバロンを止める。
「ちょっと待ってくださいよ!この世界にも龍使いや龍騎兵みたいなのはいるでしょう!きちんと育てりゃ大丈夫ですって!」
「だけど・・・いや・・・うん。まずは団長に見てもらおう。」
俺の力説にバロンも納得してくれたようだ。ああ、改めて見ると卵ですら愛おしいな。そういえば昔にもこんな事があったような気がする。いつだったかな。
抱きしめる。ほんのり温かい。なんか肌が焼けてるような気がするし二人が焦っている声が聞こえ、必死に止めようとしている様子が見えるような気がするがこれも気の所為だ。幸せだな・・・
『ピキピキッ』
ひび割れるような音がした。いっけね、強く抱きしめ過ぎたか?冷や汗をかきながら卵を抱いた手を緩める。すると、卵にはヒビが入っていき、隙間から光が出てきた。思ったより神聖な雰囲気の誕生するのね。呪怨龍って名前なのに。
「響也!大丈夫か!?」
「意識はあるかい!?」
なにやら二人は慌てている。どうしたっていうんだい。
「俺は平気ですけどそれより見てください!呪怨龍ってこんな神聖な誕生するんですね。」
「いや違う!呪怨龍はそんな誕生はしない!そいつは卵に触れたものの悪しき思いを喰らって育つ!」
悪しき思い?こいつに対して?そんなもん無いぞ。あんのは深い愛情だけだ。愛情とかよくわからんから適当だけど。
「悪しき思いが可視化されると黒のオーラと化す!今響也くんから出ているのは確実にそれじゃない!」
俺から出てる?一体何を・・・と思って〈探知〉と〈魔力掌握〉を発動してみると、たしかに卵のヒビに向かって。いや、卵に吸い込まれるように白いオーラが俺から出ていた。ありゃま。と思うも時すでに遅し。ヒビは大きくなり、ついに卵は割れた。
「ピギャアァァ!!!!」
そう可愛らしく産声を上げる幼竜は、親のような腐臭はなく、白くきれいな骨と、それにくっついている赤紫のきれいな肉体。そして小さな羽を持っていて・・・
そうだな。もうこの際一言で説明しよう。俺の性癖にぶっ刺さる可愛らしい見た目をしていた。
「産まれた・・・どうすんだよあれ。」
「・・・団長に〜どう説明しようかな。」
不景気な顔をする二人を尻目に、俺は高らかに宣言した。
「『ネクロ』。お前の名は『ネクロ』だ!!」
「ピューイ!!」




