17話:禍福は糾える縄の如しとは言うものの不幸のほうが多い気がする
皆さんこんにちは、奇柳業です。今回は主に響也視点となっています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
二匹の獣が交差する。
「ギャォァァァァァァ!!」
「ヴァォォォォォォォ!!」
呪怨龍がブレスを吐けば、バロンが聖なる波動を放ちかき消し、鉤爪で攻撃しようとすればより大きく、硬いバロンの爪が受け止め、切り返す。それはもはや戦いとは言えず、一方的な虐殺となっていた。
「ヴェルゥゥゥゥァァ!!」
最後の一撃。バロンの爪が呪怨龍の喉笛を掻っ切り、勝利の咆哮を上げる。
しかしバロンはその身に降りた神獣を還すこと無く、そのまま天を駆け出した。未来の後輩を助けるため、神獣は一心不乱に天を駆ける。
◇◇◇
「ドラァッ!!」
「セイヤッ!!」
戦況は最悪だ。さっき一発斬りつけて以来、まともなダメージを与えられてねぇ。というか防戦一方だ。俺と渉輝の二人なら有利に戦えると思っていたんだが・・・どうやら相手の方が一枚二枚上手のようだ。
「響也様!渉輝様!」
いきなり後ろから声が届く。この声は・・・誰だったっけ。
「その声・・・トッルじゃねぇか!!ここは危ねぇ!帰るんだ!」
あーそうそう、トッルね。いたわそんな人。とはいえ一応依頼人。依頼人が死んだとなればギルドも面目丸潰れだろうから、一応警戒しておこう。
「渉輝、少し下がろう。トッル。危ないから俺の後ろに隠れて・・・」
「その必要は無いですね。」
背後に気配が動く。遅れて衝撃。背中に鋭い痛みが迸る。
「響也!!」
慌てた様子で渉輝が俺の後ろのものを蹴り飛ばし、俺を抱えてズミーラから距離を取る。背中に腕を回す。何かが刺さっている。これは・・・ナイフか。
「ありゃ、言ってなかったけ。俺ネズミの化身なんだよ。俺の操る化鼠にはなかなか賢いやつもいてね。人化の秘術を覚えたやつもいんのよ。」
誇らしげにズミーラがそういうと、街のいたるところから人々がゆらゆらとした足取りで出てきた。そして彼らはニヤリと笑うと、俺達より一回り大きいくらいの巨大なネズミの姿に変わった。その奥には、ナイフをカチャカチャと音を立てて遊んでいるトッルの姿もあった。俺を刺したのもあいつか。
「トッル、お前も化鼠かよ。」
「いや、違うね。俺はズミーラの分裂体。といっても、性能は変わらんから心配すんなよ。」
最悪だ。さっきまでは2対1でやっとこさ防戦一方だったのに数の有利は消滅し、さらに大量の増援。こりゃ本格的に不味い。どうしたもんかね・・・逃げるか。
「渉輝!一時撤退しよう!」
「響也・・・後ろ。」
なんとなくこの先の展開が分かったような気がしたが、一応恐る恐る振り向く。
嫌な予感ってのは当たるもんだ。おの野郎俺たちの後ろにまでネズミ共を回してやがる。退路すら無いってかよクソが。
「「行け!お前ら!!」」
ズミーラとトッルの号令により。ネズミ共が進軍を開始した。えーいこうなりゃやるしかねぇ。
「渉輝!限界まで耐え抜くぞ!バロンが来てくれるかもしれねぇ。」
「了解。最後まであがきますか。」
火事場のクソ力。見せてやるよ。
◇◇◇
渉輝が近づいてきたネズミをぶん殴り怯ませ、そのスキに俺がナイフで目と首を切り裂く。ネズミはそんなに固くなくて助かった。しかし、たまにネズミをかいくぐってズミーラやトッルが攻撃を仕掛けてくる。今の所しのげてはいるが、疲労も溜まってきた。そろそろきついぜ。
「ヴァルェェァァァァ!!」
不意に咆哮が響く。なんだよまた増援かよもうそろ俺たちマジで死ぬぞ。
「「お前ら!!隊列を組め!!」」
何故かネズミ共が引いていき、ズミーラとトッルを守るように陣形を組んだ。これから来るであろうさらなる化け物を組み込んだ陣形でもあるってのか。
「響也。疲労度は?」
「まだ行ける。」
「俺もだ。最後まで足掻こうぜ。親友。」
そう決意を固めた俺たちだったが、いきなり俺たちの周りに黒い巨大な影が現れたため警戒を固める。上を見上げると、それはいた。
神々しい仮面。白銀の体毛。長い胴体。長い鉤爪。その姿は言うなれば神の化身。そう思うほど神々しい気を放つ獅子だった。
「ヴァォォォォォォォォン!!」
咆哮とともに、その体から白い粉のようなものが降ってきた。呆然とそれを見上げていた俺たちは避けられず、粉を浴びた。
「・・・これは?」
「疲労が・・・」
途端に、俺達の体にまとわり付いていた疲労は消え、代わりに胸の中に直接思いがやってきた気がした。
『もう大丈夫。今までよく頑張ったね。』




