12話:犠牲が自分なら手段を選ばないっていうあれ
皆様お久し振りです。奇柳業です。なんでこんなに投稿が遅かったかと言いますと。作者の受験などがあるからです。これからも平常より投稿頻度がまばらになると思いますが、のんびりと見てくれたら幸いです。
今回は渉輝視点となっています。
彼の人生は、半分が嘘であった。物心ついたときに、彼は本音と建前を知った。その見分け方も。特に具体的な見分け方はない。ただなんとなく伝わるのだ。そんな彼は普通に生きれるはずもなく。友だちになれそうだという相手でも、少し喋れば相手の本音を見透かしてしまい、気味悪がられ。友達は本だけになった。挙げ句に親にまで見放された。大人は平然と嘘を付く。就学すらしていない頃の話である。
そんな男はいつしか何かを諦めて、自らの本心を心の中に閉じ込めた。ただ平然と嘘を付き、周りと良好な関係を保つ。他人は信用できない。玩具遊びもゲームもやる相手がいなかったせいか。いつも友達と笑っていた。子供も平然と嘘を付く。このままいけば順調に嘘と偽りの人生が完成してしまうはずだった。
しかし彼の運命は変わった。こいつになら一生騙されてもいい。そう思えるくらいの親友に出会ったことによって。彼は親友を信じるということを知った。親友への信頼というものを知った。他人は信用できない。信頼なんてできるはずもない。だけど、たった一人の親友のことならば信じれる。
彼の初めての友情は、そのためなら命すら投げ出してもいいと思えるような。深く、歪なものになった。
そしてその友情は、彼が想像すらできなかった未来へと収束していくのであった。
◇◇◇
湖に響也をつけてみたが、まったくもって良くならない。熱は下がらず、むしろ上がっている。水のおかけで火傷しないですんでいるが、そうでもなかったら火傷してただろう。焦る気持ちをあざ笑うように。ネズミが足元を笑いながら走っていった。
「おいバロン。回復魔法って・・・」
「一応かけてるよ〜効果は〜見てのとおりだけど〜。」
少し湖もぬるくなってきた。もっと奥の方へ行かなくては・・・
「あ~そこらへん苔が生えてるから〜転ばないようにね〜。」
「うおっ!?」
遅ぇよ。ってヤバい!響也から手離しちまった!
バシャン!と軽快な音がして水しぶきが上がる。やっちまった。少し足を擦りむいたかな・・・ってそんなこと今はどうでもいい。いま大事なのは響也のことだ。早く確認に行かなくては。
ドクン!バシャン!と再び軽快な音とともに水しぶきが上がる。さっきのときと違うのはなーんか聞き覚えのある妙な音が追加されたことだ。この音は確か・・・なんてことを一瞬考えると、上がっていた水しぶきが引き始め、水の塊のようなものが上がってきた。これって・・・もしかしなくても・・・
ドクン!と、もう一度高らかに音が響き、水の塊の水が吹き飛ばされる。そして中から我らの眠り王子のお目覚めかい。
「渉輝!!」
◇◇◇
「響也!大丈夫か!?」
俺は響也に駆け寄り、額に手を当てる。熱くない。さっきまでの発熱が嘘のようだ。
「心配かけちまってすまない。渉輝。だがもう大丈夫だ。」
笑顔で俺に声をかける響也は、俺の目から見ても元気そうで、嘘はなさそうだった。
「まるで奇跡だよ〜まさか〜こんなに早く回復するなんて〜治るかどうかさえ〜危うかったのに。」
たしかにその通りだ。この病にかかれば普通死ぬはずなのだ。それをこいつは数時間で治してのけた。これを奇跡と呼ばずしてなんと呼ぼう・・・と思ったが、アイツは奇跡をかなり嫌っていた。神の手のひらの上にいる気がしてきて嫌なんだとよ。
「いえ、このスキルのおかげだと思います。」
今回も、やんわりと奇跡を否定して自身のステータスウィンドウを俺たちに見せた。響也が示したスキルは『被験者』。あらゆる耐性が消滅する代わりに、回復能力が異常発達するというものだ。
「モルモットもたまには神に牙を向けるのです。ってね・・・さて。」
響也は、少し口角を上げた。嬉しい誤算だとでも言うように。
「バロンさん。今の俺の中に灼熱血液散弾症候群の抗体があるかどうかわかりますか?」
「・・・見てみるよ。」
たしかに、響也は多分この街で始めてこの病を治した。ならば、ここで確保できなかった抗体も自分の血液で作れるのではないか。と、響也は考えているらしい。その事はいいんだが・・・なにかこいつの笑顔が引っかかるんだよな。
「おお〜あるよ~すごいもんだね〜。」
「よっし。なあ渉輝。採血できるやつ持ってねぇか?」
「そんな都合よく持ってるわけねぇだろ。」
響也の頼みで、そこらの町医者からとりあえず注射器を持ってきたが・・・ん?どうやってもらってきたって?普通に事情話したら渡してくれたよ。流石に窃盗はしないさ。
「ほらよ響也。これ使ってお前の血で抗体つくんのか?」
「まあそのつもりだが・・・バロンさん。俺の血液量って見れますか?」
「見れないことはないけど〜何に使うの〜?」
「実験です。俺の血液量を測って量の変化を教えて下さい。」
そう言うと響也は自分の腕に注射器を押し当て、自らの血液を抜いた。
◇◇◇
バロンのやつはわかりやすいようにねとか言いながら、俺らのステータスウィンドウに血液量を見れる機能を追加した。何に使うんだこんなもん。
「予想通りだ!これなら何度でもいけるぜ!」
響也はさっきから小一時間ほどこの調子。俺に何度も使いっぱしりをさせて大量に血液を抜きまくっている。本人曰く血液の回復速度も異常なまでに早くなっているらしく、それを悪用・・・もとい有効活用して大量に抗体を作ってやがる。
しっかし何か引っかかる。なんだろう。うまく言えないが・・・第六感というやつだろう。俺の勘が不穏な空気を感じ取っている。
「よし。次のステップに移ろう。なあ渉輝。他の病人の血液持ってこれないか?」
数百の血液入り注射器をスタンドに立てながら、笑顔でそんな馬鹿げたことを言う親友を見ていると
「何を言ってるんだ馬鹿野郎。」
卒倒しそうだった。




