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2輪ノClover  作者: 奇柳 業
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0話: それは唐突に訪れる

 初投稿。文章が拙い部分もあると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。

 全く。いつになったら来るんだアイツは。「一時に待ち合わせな!!」とか言っておいてもう四時にはなってんだが。


 「悪りぃ涉輝(ショウキ)遅れた!!」


突然響いた大声に通行人の視線もこっちに向く。勘弁してくれよ。そんなに視線が来ると吐きそうになっちまう。彼の名は響也(ヒビヤ)。俺の親友で同じ高校2年生。今日一緒に贔屓の本屋に行こうと約束していた。まあ三時間もの大遅刻をかましているわけだが。自己紹介が遅れたな。俺は涉輝。響也と同じ高校2年生だ。


 「いやー寝坊しちまってな〜。」

 「寝坊ってレベルじゃねぇぞ。」


第一どうやったら四時まで寝てられるんだ。・・・何も連絡せずに待ってた俺も俺だがな。


 「まあいい。そんなことより早く行こうぜ。」


時間がもったいないので響也に案内を促す。ただでさえどっかの寝坊助のせいで時間が少なくなってんだ。これ以上無駄に焦らされたくない。


 「はいはい、まあ付いてきたまえよ。きっと気にいるから。」


 悪びれもなくそう言って、響也はふらふらと歩き出した。俺もその後ろに付き、歩き始める。十分ほど歩いたところでその本屋に到着した。この街にしてはなかなか大きく。響也によれば、なんでも最近出来たばかりなのに品揃えが多く、とてつもなく安いため大盛況だそうだ。響也のやつは能天気だから「金欠には嬉しい」とか言っているが俺みたいなひねくれ者はどうも怪しいと思っちまう。

まあそんなことを言っていてもきりがない。せいぜい楽しむとするか。



     ◇◇◇


 

 俺は本屋というものを侮ったことはない。本屋に行くときは常に五千円以上の軍資金を用意している。なのに、それなのにだ。気づいたら財布の中身がレシートだけになってしまった。なんてこったい。確かにここの本屋は値段は以上に安く、その上品揃えも確かだった。ただそれだけだ。それだけなのに俺の樋口一葉は両手の紙袋へと変わった。だが後悔はない。いい店を教えてもらった。また来るとしよう。

 

 「おい渉輝、あれなんだ?」


俺と同じく両手に紙袋を携えた響也が問う。つられて響也の示した方向を見てみると、そこには何やらファンタジーチックな装飾がつけられたこじんまりとしたスペースがあった。よくわからないが少し興味がある。


 「すいません、少しよろしいですか?」


そんなことを思っているといきなり後ろから声をかけられた。心臓に悪い。振り返るとそこにはちょっと魔法使いっぽい格好をした店員らしき人がいた。コスプレだろうか?だとしたらなかなか本格的だ。


 「はい。別に大丈夫っすけどどうしたんすか?」

 「いえ、少し新作ゲームのテストプレイをお願いしたいのですが。」


響也の質問に店員が答える。テストプレイか。購入を考える上では最適だな。俺は響也に目で合図すると声を合わせて言った。


 「「喜んでお受けいたします!!」」


というわけで店員の後について俺たちはさっきのファンタジーチックなスペースに入っていった。


 「おい、さっきまでここらへんにいた紙袋下げた子供二人見なかったか?」

 「そういえば・・・いませんね。一緒にいた店員も。」

 「全く、どうなってんだ。ここんところ毎日じゃねぇか神隠しが。なんで話題にならねぇんだ?」


そんな他の店員たちの不穏な会話が渉輝らの耳に届くことはなく、店員はポッカリと空いたこじんまりとしたスペースに首を傾げ、また業務に戻るのだった。



      ◇◇◇



 中に入って程なく。俺たちはロシアかどこかの豪華な椅子らしきものに座るよう促された。


 「こちらのハードを装着してください。」


支持に従い、俺たちはよくあるVRMMOのハードを着け、電源を入れ、目を閉じる。フルダイブゲーム特有の吸い込まれるような感覚がやって来る。光りに包まれて目を開けると、そこには普段と変わらない姿をした響也がいた。少し見回すと鏡もあり、俺も普段と変わらない姿をしていた。


 『お好きな武器をお二つ選びください』


機械音が聞こえ、次の瞬間青いウィンドウが出て、武器選択画面が現れる。武器には剣や盾、弓と言った王道なものから、CDや巻物、アルミホイルといったこれホントに武器になんの?というやつもあった。というかなんだアルミホイルって。どう戦うんだよ。


 「まあ普通のやつ選んでもつまんないよな・・・・・・」


しばらく悩んだ結果俺は闘気とCDにした。操作が難しそうなもののほうが個人的には燃えるのだ。決定ボタンを押し、ウィンドウを消すと体全体をポリゴンが覆う。その中でも腰にとくにポリゴンが集中し始めた。腰のポリゴンが消え、腰袋を形作った。中には大量のCDが入っている。その後、全身のポリゴンも消え、代わりに闘気が俺の体を包んだ。自分で言うのも何だがそこそこかっこいい。


 「やべぇこれめっちゃかっこいい。」


考えを見透かされたかと思い振り向くと、そこには両手に円形の持ち手がついたバタフライナイフを携え、腰に広辞苑くらいの大きさの本を着けた響也がいた。あいつも俺と同じく自分の姿に興奮しているらしい。客観的に見ると恥ずかしいもんだ。ただ確かにかっこいい。男なら誰もは一度は憧れる様な格好だった。


  『以上でテストプレイは終了になります。ログアウトしてください。』


 再び機械音が聞こえてきた。もう終了らしい。武器しかまだ選んでないのだが、まあどんな武器が人気かとかのリサーチか何かなのだろう。そう思い、再びウィンドウを出しログアウトを選択する。

隣で響也が「もう終わりかよ・・・」とか言っていたが気にしない。指示にはさっさと従うのだ。

ログアウトすることによってまた光が発生するから目を瞑る。フルダイブ系ゲームは、このログインとログアウトの感覚が個人的に心地よい。


現実に感覚が戻ってきて、違和感を感じる。椅子が無い。座っていたはずが立っている。

おかしいな・・・確かに座って始めたはずなのに。

 

 「おい涉輝!その格好どうしたんだよ!」


いつのまに戻ったのだろう。響也の困惑した様な声に驚き、なんのことだと響也の方を見る。


 「お前こそなんだその格好!」


するとそこには腰に本を着け、両手にバタフライナイフを持った、ゲームと同じ姿の響也がいた。

それを見て何となく、俺は察する。()()()()()()。俺もゲームの中の姿をしていると。響也もどうせ察したであろう。


 「「おい、どういうことだ!!」


その証拠に、抗議の言葉は二人一緒のタイミングだった。


 「ふっ・・・・ふふふフフふふハハハハアッヒャッヒャッヒャ!!」


何が面白いのか、店員らしき()()は狂ったように笑い出した。あまりのおぞましさに声が出なくなる。


 「おい。何が可笑しい。」


しかしそんな中でも響也は静かに、だが確かに怒りを感じられる声で再び抗議した。


 「いや〜何ねぇどいつもこいつも同じようなセリフを吐くんだなぁって思って♪」

 「だから何の話だって言ってんだよ!!」


それでも飄々とした態度を崩さない店員にいい加減響也も声を荒げる。確かにそのとおりだという憤る(いきどおる)気持ちが高まるが、同時に底しれぬ恐怖も腹の底から上がってきた。


 「テストプレイだけじゃつまんないしょ?だから僕が特別にサービスしてあげるよ。」


そう言うと彼は指を鳴らし、俺達は青い箱のような空間の中に閉じ込められた。


 「クソッ!!出せ!!」


響也が壁を叩いて必死に呼びかける。しかし箱はびくともせず、ただ鈍い音を立てるだけだった俺もそれを手伝うが変わらない。よほど強力なようだ。


 「いい加減無駄な抵抗はやめなよ。そんなことしても疲れるだけだよ?」

 

あいつはまた人を馬鹿にしたような態度で口を開く。いい加減本気でムカついてきた。


 「俺達がお前に何したって言うんだよ!!俺たちに何する気だ!!」


温厚な俺も流石に声を荒げるが、逆に奴はニヤリと邪悪に笑った。


 「やっと口を開いてくれたね・・・寂しかったよ?無視されて。その御礼に質問には答えてあげるよ。 『何したか』ってね。()()()()()()()。なんにもね。」

 「だったらなんで・・・ッ」


反論しようとして喋れなくなる。恐ろしいほどの威圧が飛んできたからだ。さっきまで壁を叩いていた響也も動けなくなっている。


 「人の話は最後まで聞こうね?君たちは何もしなかったんだよ。()()()()()()()()()()()()。そんな生きる価値のないやつに新しい可能性を与えようとしてあげているんだよ。」


 それを聞いて、二人は黙ってしまった。身に覚えがないからではない。自分でも、薄々そうなのではないかと思い始めていたからだ。少し考えるだけで浮かんでくる苦い思い出の数々。思い出したくもないのに浮かび上がってくる。

 

 「やっと静かになったか。じゃあ新しい世界で頑張ってね♪あ、そうそう。今持ってるそれは僕からのプレゼントさ♡」

 「待て。テメェの名を語れ。」


何もせずに黙っていた響也が静かに口を開いた。


 「いいよそれぐらい。僕の名は『カミェル』職業は神、かな。」

 「『カミェル』か。その名前、覚えたぜ。」


それを聞いて、渉輝は不安な顔を浮かべ、響也は不敵な笑みを浮かべた。そしてそのまま、二人は青い箱ごとこの世から消滅した。


 「さて。あの二人は何を選んだのかな?」


誰もいなくなった空間で、彼は一人そう言ってウィンドウを出す。そこに書かれた内容を一瞥し、ニヤリと笑った。


 「へえ・・・なかなかいいもの選ぶじゃない・・・」



     ◇◇◇



 二人は新たな世界で目覚め、そして一つの決意をする。これは、神を殺す物語。

ここまで見ていただきありがとうございます。もしよろしければ、☆☆☆☆☆をひとつでも★にしていただけると、作者のやる気が上がって、投稿日が早くなるかもしれません。あと、ブックマーク登録よろしくおねがいします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] CDという新しい武器を作り出す発想がすばらしいと思います。 [気になる点] 「身に覚えがありすぎたのだ」のところが、なにもしていないのに「身に覚えがある」という表現はおかしいと思います。や…
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