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目薬  作者: 青山えむ
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最終話 …目薬?

 木曜日、また映像が表れた。山口くんと知らない女子のツーショットだった。しかも私服。誰? 私服ってことはプライベートで仲良しの女子かな?

 そうだよね、山口くんだってプライベートがあるよね。何も会社の中だけが世界じゃないんだもんね。

 

 消したい、この映像。私はコンタクトレンズの上から目薬をさした。この製品は装着液にも目薬にもなると書いてある。

 うずまきの形をしているフタを開ける。目薬を二滴、目にたらした。液が溢れた。目薬をさしても映像は消えない。むしろ同じシーンばかりが映る。目薬をさした分だけ映るのだろうか。それならばもう目薬を追加するのはやめよう。すでに涙か目薬か分からないほど、目からは水分が溢れていた。



 もう同じ失敗は出来ない。私は山口くんを見ないように仕事に集中した。気づいたら昼休みになっていた。


「今日のメニュー何かなー」

「茶わん蒸しだよ、やったね」


 周りの声と自分が明らかにテンションが違う。そうか、今日は茶わん蒸しなのか。ここの茶わん蒸しは甘くて美味しい。

 食堂に着いてメニューを見るとドリアと書いていた。これは……迷う。よし、食べたいものを食べよう。私はドリアと茶わん蒸し、ミニサラダをトレイに載せた。ドリンクサーバーからアイスコーヒーを選ぶ。


 茶わん蒸しはとろとろとして、出汁(だし)が効いて美味しかった。干ししいたけが厚くてかじるとおつゆが飛び出してさらに美味しかった。ドリアはカレーとチーズがかかっていた。またカレーかと、一人でウケた。アイスコーヒーはさっぱりとしていて気分が変わった。


 午後も頑張ろう。私は持ち歩いているお菓子を食べた。ウエハースにチョコとナッツが入ってある。ウエハースの乾いた感じをアイスコーヒーが綺麗に(ぬぐ)い去ってくれた。


 今日は無事に終わった。あと一日頑張ったら休みだ。

 それに、今日はコンタクトレンズを洗わなくていいんだ。ほんの少しだけれど気が楽になる。

 私は使い捨てのコンタクトレンズ、二週間タイプを使用している。今日で二週間目なので捨てる日だった。


 捨てる前にレンズを見てみた。二週間分の汚れだろうか。透明なレンズには白い汚れがたくさん付いていた。

 あれ? そういえば今朝見た映像、現実で見てないなー。山口くんの彼女疑惑。プライベートだから見れないってことかな。

 見れないのももやもやするけれど、実際見てもショック受けるだろうし、ね。


 

 金曜日。新しいコンタクトレンズを開封する。……あれ? 装着液が、ない。どこに行った? 家族に聞いても知らないと言う。

 昨日の朝は確かにあった。けれども昨日の夜はどうだろう。基本的に夜は使わないので記憶にない。まぁ、新しいレンズだからそんなに乾燥しないだろう。私は久しぶりに、装着液をつけずにコンタクトレンズを入れた。視界がクリアだった。


「やっぱり新しいレンズは違うなー」

 独り言を述べる。今日は映像を見なかった。

 何だかいつもより視界がクリアで心が軽い。よく見える。何でも上手く行きそうな気さえする。

 それからしばらく装着液のことを忘れたまま二週間が過ぎようとした。



 今日はコンタクトレンズを捨てる日だった。捨てる前に恒例、汚れ具合を見てみた。なんと、そんなに汚れていなかった。どうして? 前回はあんなにくもっていたのに。もしかして装着液でくもっていたのかな?

 そういえば映像もずっと見ていない。幻覚だったのかな? 予知だと思っていたのも偶然だったのかな?


「まぁ、もういいや」

 どうやら私には装着液は合わないらしい。けれども目薬は欲しいので今日の帰りでも買ってこよう。



「山口、この前一緒にいた女の子誰だよ」

「妹だよ、迎えに来いって言われてアシになっただけ。そしたらお礼だって言われてこれ貰った」

「何それ、ちょっとオカルトデザイン? うずまきと目って」

「目薬だって。オシャレで安いから二個買ったんだって。けどなんでか僕にくれたんだよね」



 山口くんの手には、あの目薬があった。うずまきのフタに、本体には目のイラストが描かれてある。

 その目薬を凝視していると、山口くんに視線を摑まれた。


「あっ、富士宮さん、よかったら目薬いらない?」

 山口くんが私に向かって笑顔で問う。何と答えよう。


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